ラテン星人のラテン的日常



さて、シンガーソング平社員のラテン系の方のお話である。
現在は私の前の席にいらっしゃるこの方は、一見して大変に誠実で真面目、そして親切。どんな時であろうと相手の方を立てるのを忘れない、サラリーマンの鏡の様な人なのだ。
アイドル並みの人気の彼は、10メートル先から自分の席に帰ってくるのにも一苦労だ。色々な人に声をかけれるからね。しかしそんな彼の実体は、超ラテン系なのである。その実体を知るのは、彼の近くの席の人間に限られているようだ。その事実には私も驚いたのだが、ちょっと席の離れた人に彼の話をしたところ、「ええーっ、あいつがそんな言動を・・・」と大変に驚いていたので間違いないと思われる。なにしろ、常にテンションが高い。スタンダードな状態でも、かなりのハイテンション。上機嫌な時は、更にそれより高くなる。おそらく無限なのだろう。

そんなわけで、うるさい。
電話に出るときなどは、「よしっ、今度は低音で出るぞ」とか言ってから低い声で電話をとり、その内容によって、受話器を置いた後も「アディオース!!」とか「ヘイ!メーン」とか、何かを電話に向かって言わずにはいられない様だ。パソコンのスイッチを入れるときは「スイッチ、オーン!」、マスター画面を見るときは「ヘイ!マスター!」と、なにしろ自分の仕事ぶりを周囲に披露する。周囲としても、テンションの高い人を見ているのはそんなに悪いものではない。結構楽しめるので、それはそれでとっても良いのだけれど。

ラテン星人の特質としては、机の上と周りがいつも書類だらけというのがある。この山の中からどうやってお目当ての書類を探し当てることが出来るのか。それも特質の一つかも知れないな。書類で埋もれているため、机の表面は非常に綺麗だったりする。先日、ちょっと見ることが出来たのだが、普通は使えば汚れる机の表面も彼に限ってはその上に書類を置き、その上で仕事をしているために真っ白でピカピカだった。
問題点としては、重ねた書類が雪崩を起こすことがあるということ。雪崩によって書類が押し出され、前の席で働く私の机の上が狭くなっている事がある。まあ、そのまま押し返せばいいので、大事には至らないのだが。

ある日、ラテン星人がOAタップを探していた。なにしろ探し物は得意なのだ。すぐに探し出す事が出来たらしく、それを左手に高らかに挙げると「オーエータップー」とドラえもんライクに叫びながらタップダンスを踊ってくれた。ひとしきり踊り終えると突然真剣な面もちで「しかしどうしてタップダンサーというのは、"タップこそが人生"なんて言ってしまうのでしょうねぇ」と質問してきた。知らないって、そんな事は。
そんな彼だが、ここのところ気になることがひとつ。あの書類だらけの机の片隅に置かれた「オカリナ入門」のちらし。もしかして、オカリナ入門する気なのだろうか。非常に気になるところである。



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