電車の中の奇妙な人々



 通学通勤と、電車を使って何年になるのだろう。時間にしたらどのくらいなのだろうかなんて、考えたこともなかったけれどちょっと興味あるな。
通勤ラッシュ時は特にそうだけれど、あの狭い箱の中に知らない人達と一緒に閉じこめられているのって考えてみるとちょっと変だよね。今まで何人くらいの人と同じ車両に乗ったのかなぁ。まあ、それだけ沢山の人と遭遇しているのだから、中には変な人もいる。そりゃぁそうだ。

 今までで恐かったといえば、西武新宿線。
日曜の夕方だったせいか車内は比較的空いていて、席は埋まっていたけれど立っている人もほんの数人といった感じだった。私の前には制服を着た女子高生が座っていた。
眠くてうとうとしていると、"シュッ"という音が聞こえてきた。何かと思って目を開けると、もう70才くらいのおばあさんが、前に座っている女子高生の目の前で100円ライターに火をつけているんだよ。
びっくり!!もう、前髪が燃えそうな距離でライターをすっているのよ。それまでの眠気はふっとんで、どうしたらいいのかわからずにそのまま見ていたのだ。
しかしその女子高生っていうのが、そんな自分の状況に全く気がつかずに寝ているんだな。たいしたもんだ。なんて感心している場合じゃないよ。電車の中に火ぃつけられたひにゃぁ、いくら私でもどうしようもない。消火器なんて携帯していないし。
時間にして10分もしなかったと思うけれど、さすがに女子高生もその音に気がついた。目を開けて、自分のおかれている状況を把握するまでしばし硬直しているなと思ったら、席を立ったのだ。
しかしそのおばあさん、席を立って歩く女子高生の後ろから、まだライターをすっているんだよ。と、そこで車掌さん登場。おばあさんは次の駅でおろされてしまったのでした。一体何だったんだろう。その後も私の眠気はふっとんだままだった。

 また別の日、これは通勤帰りの車内での話し。高校生の4人組(男子2人女子2人)が話していた。
まあ他愛もない話しなのだけれど、そのうち話しのテーマが"感動して泣いたこと"になっていた。「フランダースの犬の最終回」とか、なんだか忘れちゃったけれどトヨエツの出ていたドラマのラストシーンとか、そんな事を一人一人が話していた。
そのなかの1人が、「南極物語見て、すっげー泣いたよ」と言っていた。
「ああ、あの犬のやつ?」
「そうそう、タロジロだよ」と3人が話しにのっている。
女の子の1人が南極物語という映画を知らなかったらしくて、「なに?それ?」と質問する。
もう1人の女の子が簡単に説明したあと、「それって、実話なんだよ」と最後につけ加えた。
聞いていた子が「なに?その犬、まだ南極にいるの?」と言うと、笑いながら1人がこう言った。

「もうとっくに死んじゃったよー!それで今、くんせいになっているよねー」

・・・それを言うなら、剥製だろーーっ!!くんせいじゃあなくて、は・く・せ・い!!
と、思わずつっこみたい気持ちをぐっと押さえた。そして大笑いしたい気持ちもぐーーっと押さえた。
ふと周りを見回してみると、みんな笑いたいのをこらえている様子だった。となりに立っている私と同い年くらいのサラリーマンも、逆隣の中年のおじさんも気のせいかうつむきつつ小刻みに震えていた。
そして問題のその学生達。そのくんせい発言の後、しばし沈黙があったかと思ったら別の1人がつぶやいた。
「それ、剥製じゃないの?」
彼らもつらかったんだろうなぁ。

 またまた別の日、今度はものすごく混んでいる帰りの電車の中。
ドアに挟まれんばかりの状況で電車に乗って外を見ながらぼーっとしていた。隣には中年のご婦人が同じように外を見ながら立っていた。後ろで高校生らしき3人の男子が話している。
「○組の○○って、ものすごく霊感が強いんだよ」
「ああ、聞いたことがある」
「俺、この間、ばあちゃんが死んだじゃない。その後何日かしてからそいつに"君、最近おばあさん亡くした?"って聞かれたんだよ」
「それで?」
「なんで?って聞き返したら、"だって君の肩の上におばあさんが座っているぜ"って言われたんだよーーー」
いや、この会話って私はおかしかった。とっさに笑い出したかったのをこらえた。
しかしその時、となりのご婦人が思いっきり大きな声で笑い出したのだ。
もう、そうなるとどうしようもないね。私も一緒になって笑ってしまいました。ついでに周りの人達も笑っていた。その学生はもちろん笑わせるために話したのではなかったようだが、「おいおい、笑われてるよー」なんて言いつつ一緒になって笑っていたっけ。いつもならあまりの混雑に不愉快になる車内なのに、やたら楽しい気分になってしまったのだ。

電車内での話しはつきないね。続きはまたいづれ書く事にしようっと。



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