僕の点数:4.9
見た日:00.10.29
1999
Country: メキシコ
アクション ホラー サスペンス ドラマ コメディー
映画館で見た
キャスト | エミリオ・エチュバリア ガエル・ガルシア・ベルナル バネッサ・バウチエ ゴヤ・トレド |
監督 | アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ |
音楽 | グスタボ・サンタオラーヤ |
備考 | 東京国際映画祭で見てきた。本作ではティーチインもジョークを交えた楽しいものになった。 メキシコシティ。兄の妻を愛して兄と対立するオクタビオ。妻子を捨ててモデルのガレリアと結婚したダニエル。もとパルチザンで、バラック生活を送りながら暗殺を請け負う老人エル・チーボ。彼らの3つの物語が交錯し、闘犬やペットなどさまざまな「犬」がからんでいき、人間の愛、死、償いを浮き彫りにしていく・・・。 「パルプフィクション」でも見られたグランドホテル形式の集団劇。3つの物語が時期を同じくして、「父の不在」、「父の没落」、「父の再生」を語っていく。各エピソードの重要なファクターとなる犬。歴史上人間ともっとも長く付き合ってきたこの「犬」が、このドラマで戦い、死に、そして人間を慰める。監督いわく「人間の本性を映し出すミラー」として、見事な演技を見せてくれる(エミリオ氏いわく人間よりギャラが多いとか(笑))。リズミカルなラテンポップスに、極上の人間ドラマを生々しく載せていく監督の手腕は見事である。キャメラも「インサイダー」でも見られた移動の多い手持ちで、ハイテンポに物語が進展する。あっという間の2時間33分である。 第一部である兄弟の対立は、闘犬という野性的な映像との相乗効果で、激しさを増していく。監督いわくカインとアベルを意識したという。ここではオクタビオの美しい瞳が特に忘れられない。 第二部では、モデルとして頂点にいたバレリアが、不意の事故で人生の奈落の底へとたたき落とされる。しかし。行方不明だった愛犬リッチーが帰ってきて、希望を持ちはじめる。床下から出てこないリッチーを車イスのバレリアが必死で探すシーンが印象的。 第三部での、パルチザンとして分かれざるを得なかった娘へ留守録に告白するエル・チーボ。「パリ・テキサス」のガラス越しの会話に匹敵する美しいシーンである。エミリオの重く厳粛な演技がドラマをより重厚にする。そしてラストに見せる男の背中。これほど絵になる男はそうざらにいない。 「マグノリア」では、同様のテーマをポール・トーマス・アンダーソンが狙って失敗したが、この監督は長編第一作にして見事モノにした。 映画祭において、これまで見た4作の中では最高傑作。メキシコ映画界にこのような逸材が登場したことに拍手を送りたい。 |
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