小人閑居して不善をなす

「A.I.」。その愛と限界。

最近、バイクばっか乗ってて、マジで更新してない。
確かに仕事もそれなりにあって、閑居してないのも事実なんだが、 見るべきものは見てます。
「AVALON」。いつの間にかDVDとかも発売になっちゃうけど、見ました。
これは、後で必ず書く。
「サトラレ」。泣きました。これもDVDになる。オススメ作品。
「吸血ハンターD」。純粋アニメでは、今年のNo.1。とにかくファン必見。
「メトロポリス」がNo.1でもいんだが、これは今回の本題なので、詳しくは後述。
で、俺にとって今や映画見るのは「DVD買うための下見」 みたいな感じで、
あえて、いい映画館とかに行くことがほとんどなくなった。
とりあえず、内容がわかれば近場でOK。
基本的にそう思っているのは本当。
ただ、最近は「MYCALシネマ」なんてところに行くのが好き。
俺が行くのは市川妙典にあるところだ。
ここ、かなりレベルの高い映画館がいくつもある複合シアターで、
もちろん1F、2Fはショッピングセンターもある。
なんと言ってもいいのは、
チケット売場が広い!!
待ち合わせ場所にもできるし、飲み食いもできる。
映画なんて、今やありふれたイベントが、
すごくゴージャスな ものに感じられるから驚いちゃうね。
これの秘密っていうか理由は、
経営がタイム・ワーナーでやっているからだと思う。
TDLとかがそうなんだけど、
アメリカ人って奴は、
やっぱエンターテイメントをよく分かってる
なんつうか、ジェットコースターが面白ければOKじゃなくて、
そこに至るまでの待ち時間さえアトラクションなのよ。
スタッフはもちろん、便所まですべてそうでしょ。
ここまで徹底しているから、TDLは満足度が高いんじゃないか?
で、MYCALシネマも考え方は同じで、
なんつうか、映画をすごく大事にしていると思う。
「よし、映画みるぞ!!」って気分になるもの。
まあ、有楽町とか行けば、そういう日本の映画館もあるんだけど、
最大の違いはこれだ!
ポップコーンがアメリカンサイズ。
日本人はスモールでOK。
レギュラーは一人では喰えません。俺は喰ったが胸焼けした。
ラージはかなりやばい。
いやしかし、たまらないよ。
俺は映画館では必ずポップコーンを喰う主義なので、
ここの馬鹿みたいにデカイポップコーンは大のお気に入り。
ポップコーンクラブ(シネマ会員みたいな奴)入りてえ!!

で、ようやく本題だ。
最近のバイク馬鹿でも余談が長いんだが、さすがにここの余談は無駄に長いね。
ほとんどの人、本題読んでないかもな。
だいたい、余談書くので本人疲れちゃうから、本題が短くなっちゃう。
本末転倒だろ、それ。
つまるところ、ここのところ「キカイダー」とか「鉄腕アトム」とか、
日本独自のウェットなロボット物に凝っていて、まあ、そういう話だ。
いわゆる、「ロボットには果たして魂が宿るのか?」みたいなテーマは、
日本に限らず、「2001年宇宙の旅」でも「ブレードランナー」でも、その他いろいろ語られている。
でも、俺的にはやっぱこの手のジャンルは和物が最高峰。
しかも、手塚治虫「鉄腕アトム」じゃなく、
石ノ森章太郎「人造人間キカイダー」&「サイボーグ009」がオリジナル。
これは、産まれた時代とか、最初に読んだのが「キカイダー」だっていうだけ。
どっちが優れている。ではないよ。
とにかく、「キカイダー」はTV版の救いのない終わりも良かったが、やっぱ原作の衝撃的なラストが良い。
「サイボーグ009」は、天使編が未完なのが辛い。
想像するに、かなりスゴイことになるはずなんだが、もう読めない。
で、原作に忠実なアニメ版「キカイダー・ジ・アニメーション」がスタート。
絵柄も石ノ森ライクで、かなり期待できる。
見たら、相当ヘコんだ。
原作のメインテーマである「人間ではない機械の悲しみ」ってのが濃厚で、
見終わった後、すごく気分が重くなる。
ジローが悲しすぎて、見るのが辛い。
ジローのCVである関智一のあわれみをさそう演技もハマりすぎ。
これは、人気出なかっただろうな(笑)
もちろん、毎回ダークのロボットとかも出て、アクションもあるんだけど、
そのシーンの印象以上にストーリーが重い。
原作ファンとしては「たいへんよくできました」であることは確か。
やりすぎって気もするけどね。
でもまあ、続編というか完結編である「キカイダー01 ジ・アニメーション」がスタートするので、
それはそれで良かった。
TV版と同じく、「キカイダー01」はアクション主体の展開になるらしいので安心。
「原作に忠実」 って意味でも、キカイダー01やらないと中途半端だし。
で、ここでメインとなるメッセージの、
「だが、ピノキオは人間になって本当に幸せになれたのだろうか?」
これ、考えちゃうなあ、俺は。
このへんのことは、「キカイダー02」でもうちょっと突っ込んで描かれるので、楽しみでもある。
そんでもって、「メトロポリス」。
原作も読んだよ。最近。
さすがに古い。当時としては画期的だと思うが、最新のマンガを読み慣れた身には辛い。
内容はさておきとしてもね。
「メトロポリス」に出てくるロボットは、ミッチィというバイオテクノロジーみたいので産まれた存在。
キカイダーより先を行っている。
こっちは、あっさりと人間と同じ心を持っているし、それゆえに自分がロボットだと知って、
人間に対して反乱を起こすことになる。で、死ぬ。
映画でもこのへんの筋書きは一緒。
問題は、あくまでも人間側が主体になっていて、ロボットはあくまでも小道具。
「進みすぎた文明は、人間さえも滅ぼしてしまうのではないか?」的なテーマだから、
これはこれでOK。
ただ、俺的にはその可哀想な存在である機械に対してもちっと感情移入したい。
勝手に作られて、勝手に死んじゃうのではあまりにも可哀想だから。
「メトロポリス」でもそのへんは描かれているんだけどね。
キカイダーの重さからすると、ちょっと物足りない。
ただ、これに「鉄腕アトム」をセットにすると評価は逆転するかも。
だいたい、死んじまった自分の子に似せてロボットを作り、
そのくせ、ロボットだから成長しないって理由で、アトムを捨てる親!!
人間は傲慢だよねえ。ひどいよねえ。
俺達人間を生み出した神様が仮にいるとして、やっぱ同じことしてるんだろうね。
俺達は愛されていないよ。
神様からすれば、所詮はできそこないの人形なのだから。

このへんを踏まえて、「A.I.」へ行く。
この映画、もともとはスタンリー・キューブリックが自分で撮ろうとして企画していたもので、
いよいよ制作ってところで、お亡くなりになったものだから、
彼を敬愛する監督の一人であるスティーブン・スピルバーグが引き継いで完成させた。
これは原作を読んでいないので本当かどうかは不明だが、
ここに「ピノキオ」テイストを加えたのは、スピルバーグらしい。
スピルバーグって、石ノ森ファン? キカイダー読んでた?
ま、ちょっと邪推だな。
俺、そもそも知識としてはこの程度で、最初はこういう話だと思っていなかった。
っていうか、A.I.って言葉の通り、コンピューターに魂が芽生えるとか、
実体を持たないデジタルデータの中にだけ存在する魂。
みたいな押井守ライクな路線かと思っていたわけよ。
これがそのままキカイダーなんだから、評価は厳しくなるよね。
だいたい、10年以上も前から、俺なりに考えているテーマなんだから。
最初に言うと、きちんと感動的な物語になっていて、悪くはない。
一応、ディビッド君も救われた形にはなっているし。
俺はまったく泣けなかったけど、泣いている女の人多かったし。
泣ける映画ってのはいいよね。疲れ目癒すにも泣くのが一番いいわけだし。
ただ、中途半端。
まさしく、人間の都合で生み出されて、
魂までもかなり精密にシミュレートされて、
しかも、永遠に母を愛するようにプログラムされた少年が、
人間に対して怒りを覚えることもなく、
ひたすらに母の愛を求める姿は、
確かに涙を誘う。

でも、結局人間にはなれなかったし、なれたとしてもその時母はもういない。
(悪い、かなりネタバレするわ、これ)
全然、救われてない。
しかも、繰り返すが、彼の動機である母への愛は、人間がプログラムしたものだぜ!!
なにこれ。この映画のテーマって、人間がいかにわがままで勝手な存在かを訴えるもの?
人間嫌い万歳!! 映画?
よく見ると、そういう毒のあるメッセージだらけなんだが、
当然ながら、そういうのはしっかりとオブラートに包まれている。
これがキリスト教社会の限界って気もしたね。
はっきりと名言しておくが、この「キカイダーテーマ」って奴は、
「人間」と、それが作った「ロボット」。
その関係が、そのまま「神」と、それが作った「人間」にあたる。
だから、ジローの悩みと悲しみ、ミッチィの怒りと憎しみ、ディビッドの尽きることのない母への愛は、
そのまま、我々のそれと符合する。
で、八百万の神の末裔であり、それらに祝福された存在でありながら、
世界で最も神から縁遠い人間でもある日本人は、当然、神を呪う
神に対して反逆を企てる。愛されていなくても、「生きて行くぞ」と誓う
それができるから、表面的なテーマである安易にロボットを作った人間、
あるいは人間の文明に対する批判を行うことができる。
逆に、キリスト教社会では、これができない。
「A.I.」はそういう意味で、このテーマを扱うには、キリスト教的な限界に達している。
日本人が、薄っぺらいと感じるのは仕方がないな。
ま、宗教観を失うことははっきり言ってかなり不幸なことなので、
いろいろな意味で日本人はもっとも幸せから遠い人種だ。
滅びるのも早かろう。
さておき、そういう見方をするのではなく、もっとストレートに「A.I.」を見てみたい。
(俺はこの映画気に入っているよ。それなりに)
なんといっても、ディビッド少年がすべてである。
樋口真嗣監督曰く「捨てられた子犬の目」を持つ少年。
彼が、理不尽な運命に翻弄され、「捨てられた子犬」全開で苦難に立ち向かう話。
そうやって見ると、きっと泣ける。
と、思う。
だから、ストーリー前半のクライマックスである、
母に捨てられるディビッド君の姿。
これが、この映画のすべてでしょう。
そう思えるならば、ラストシーンは母と再会した幸せなエンディングになるのだから。
まだ見ていない人へ。内容が矛盾しているでしょ。
前述の限界などもあって、どうしたって話がおかしいのよ。
キューブリックはどうまとめるつもりだったかな?
同じ西洋人だから、限界はあるんだろけど、うまいことやるような気がする。
いや、映画というエンターテイメントの分野ではやらないかもな。
実際、西洋の小説やら文豪の著作にはかなり冒涜的なものだって多いからなあ。
やっぱり、エンターテイメントってものをよくわかっているのかもな。

なんだかんだ言って、エンターテイメントでこういうことするのは、日本人にまかせなさいって。
だいたい、「A.I.」のテーマって「愛」でしょ?
これを、タイトルから読みとることのできる言語は日本人だけなんだから。
「愛」=「A.I.」(人工的な知性あるいは感情)?
うわ、怖い。
人間嫌いは当分直りそうにないですな。

追伸 映画館で飲むビールは美味しい。だが、飲み過ぎると途中で寝る。
(あ、あんた寝たんだな!?)

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