■ 鬼平犯科帳 (2) ■

 「蛇の眼」


「だが、いまのところ、一の悪のために十の善がほろびることは見逃せぬ。」


 「谷中・いろは茶屋」


「人間という生き物は、悪いことをしながら善いこともするし、人に嫌われることをしながら、いつもいつも人に好かれたいと思っている……」


 「女掏摸お富」


(やはりなあ……習慣は性格になるというが……あの女房、我が手のゆびがうごくのを、わが理性で制し切れなくなってしまったらしい)


 「妖盗葵小僧」


「われら火付盗賊改方は、無宿無頼の輩を相手に、面倒な手つづきなしで刑事にはたらく荒荒しき御役目。いわば軍政の名残をとどめおるが特徴でござる。」


 「密偵」


「ともあれ、この役目は佐嶋にしてもらわねばなるまい。佐嶋も厭な役だが……」


 「お雪の乳房」


(こうなっては……もう、いけねえわさ。このあたりが、わしも足の洗いどきだ)


 「埋蔵金千両」


「わしが……わしの、この手にかけて殺した人びとが夜な夜な、あらわれて、わしを、責めさいなむのだ。」


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