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千夜一夜物語



妖艶・演歌歌手西川峰子の巻

 歌手デビューが16才というから、山口百恵や森昌子、桜田淳子の中学生トリオの先駆け的な存在だった。いまはもう、すっかりお色気が出て男どもを手玉に取るいい女になって、最近はヌードまで披露しているが、昭和49(1974年)年7月25日に出た大ヒット曲「あなたにあげる」では、歌謡界は久々の大型新人の登場に沸いたものだ。あの張りのある、演歌にしては珍しく明るいイメージで世の中年男性のハートをつかんだ。

 会社近くの喫茶店に、すらりとした彼女が現われた。やや地味な柄の白っぽい夏のワンピース姿がまた体の線をはっきりと見せるせいかセクシー。体つきがポッチャリとしていてきれいな目をしている。17才にしては妙に色気を感じさせる女の子だった。

 話が年令のことになって、「私って、年のわりに老けて見えるでしょう。まだ、17才だというのに周りは20才ぐらいに見られていやなんですよ。だから、いつも着るものに気をつけているんですが、茶系の色が好きなのでどうしても年令以上に老けてみられて・・・」と屈託なく笑う。身長161センチ、体重42キロ、上からのスリーサイズは80−58−86センチというのが公表された数字だったが結構スタイルはいい。

 九州出身らしく、はきはきとしゃべるので姉御というか、当時からやはり大人っぽさ感じをさせていた。今はもう、そんな初々しい年代から38才の熟女の域に入って、泣かせた男の数もさぞかし多いのではといった風というのも分からないではない。この時は、昭和50年7月4日で、彼女が当時、まだ千代田区平河町にあった古ぼけた印刷工場のような報知新聞社に、次の新曲のPRのためにやってきた。取材場所がなくてやむなく会社近くの喫茶店に場所を移したのだった。

 彼女とは、数回会っていたが、物覚えがよくこの前、お会いしましたね」と、言ってくれるのは心憎い。その反面、「結婚したら歌はやめます」と古風な一面もあわせもっている女性である。

ライバルは麻生よう子

 当時は、ライバルに麻生よう子というやはり同じ年にデビューした、こちらはポップス系ながら外見の大人しさとは違って、一度歌い始めるとパンチのきいた歌いっぷりは実にうまいとしかいいようがないほどで、いつも西川と比較されるほど、この麻生と西川はいろいろな賞の新人賞部門で争っていた。

 西川は49年暮れの恒例の日本レコード大賞で最優秀新人賞の最右翼に挙がっていた。ライバルには麻生のほかに、伊藤咲子や男性歌手では、「うそ」のヒット曲で知られる、あの中条きよしもいて歌謡界はなかなか豪華絢爛の時代でもあった。

 西川は、昭和49年10月17日の新宿音楽祭で、中条とともに、金賞に輝く。同月29日のラジオ関東主催の第1回横浜音楽祭では、中条が最優秀新人賞、西川は審査委員賞に甘んじた。注目の日本レコード大賞は、11月19日にまず、新人賞がノミネートされ、西川もこれに入り、26日の第5回日本歌謡大賞で放送音楽新人賞を取った勢いで、暮れに発表される最優秀新人賞は西川で決まりかと思われたものだが、いざふたをあけてみると、麻生の手に渡ってしまっていた。しかし、その後をみると、麻生はいい曲に恵まれず、むしろ、西川の方が活躍が目立っている。賞とはそんなものなのかも知れない。

橋幸夫の記録破る

 彼女の人気の凄さは多くの賞取りの成果ばかりではなく、デビュー後わずか8ヵ月で、ワンマンリサイタルを開いたところにある。それも浅草の国際劇場という大舞台だ。これまでの記録だった橋幸夫の9ヵ月を破っているから驚きだ。

 西川は、福岡県の片田舎の赤村の出身。田川市の中学2年の時、歌手になろうと長兄と一緒に上京、東京の歌謡学院で歌を学んだという。48年秋に、フジテレビの全日本歌謡コンテストで優勝したのを機に、日本ビクターがスカウトして、幸運にも歌手デビューできた。

 東京に出てきた頃のことを聞くと「東京では葛西中学に転校したけれど、あまり学校にはいけなくて、登校する日だけしか先生に言わなかった」という。その後、歌手としてデビューした西川に先生や同級生もその突然の”変身”に唖然としたそうだ、と笑って話す。

 「作曲はしないけど、詩が好きで、中学時代からノートに詩集を書いている」とか。占いも得意で、よく歌手仲間の恋占いもしているそうで、そういえばどことなく霊感の強い感じがするのでうなづける。自分の恋占いについては、「あまり、よくない」とか。歌手としては大成功をおさめた幸運な名前だが、結婚運はいまひとつとかで、今にしてみれば当たっているわけだ。

 若い頃は「やまびこ演歌」のうたい文句でデビューし、「活きのいい明るくて、リズム感のある演歌」を見せていた彼女だが、「年がいったら、笹みどりさんのような女の悲しさ」を表現してみたいといっていたものだ。

 結婚したら歌手はやめるつもりといっていた西川だが、38才になったいま、結婚する前にもう一度、西川演歌を花開かせてもらいたいものだ。


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