将棋タイトル戦情報

第51期王座戦(2003年9/2〜10/15)

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挑戦者 五段      渡辺明

王座 名人、竜王、王将 羽生善治

第1局 9月 2日  95手で先手羽生王座の勝ち
第2局 9月12日  69手で先手渡辺五段の勝ち
第3局 9月25日 126手で後手渡辺五段の勝ち
第4局10月 7日  99手で千日手 指し直し局は133手で先手羽生王座の勝ち
第5局10月15日 128手で後手羽生王座の勝ち

羽生王座、3勝2敗で防衛


第51期王座戦五番勝負第5局(10/15)

  挑戦者/王座  
五段   渡辺明 2勝3敗
王座   羽生善治 3勝2敗

128手で後手羽生王座の勝ち

冷まじや頭に金を乗せるまで

矢倉の将棋になりました。振り駒で後手となった羽生王座は角を右に転換して
右の銀も4二銀と玉側に引き付ける構え。先手の渡辺五段は3五歩から3五で
銀を交換して端から攻めて行きました。A図は後手が交換した銀を1四に打っ
たところです。2四に打ちそうなところですけれどね〜。1四のほうが良いの
でしょうね。先手からの角切りや1四への打ち込みを消しているのでしょう。
A図から先手が1二に銀を打ち込んで攻めます。B図は後手が反撃、6六桂と
打ったところ。先手の1筋の攻めは成功して、後手としては1筋を破られるの
は仕方なしで、1四の銀で先手の2五の桂を取り、反撃開始の6六桂打ちです。
後手としては先手の端攻めを受け止めることが出来れば一番良かったのでしょ
うが、そうは行きませんでした。攻め合いの将棋になりました。

C図は先手が7九に桂を打ったところ。このあたりの一手一手は力の入った攻
防の着手が続いてすごかったですね。先手が1二香成りとして、後手3一玉の
一手に先手6三銀と挟撃の銀打ちです。この6三の銀打ちで後手玉は一気に狭
くなってしまいました。▲8三歩、▽同飛から▲5二銀成りの手がまわれば後
手玉はすぐに詰みまで行ってしまいそう。6三の銀は、7四銀成りと後手の飛
車と角を牽制する手も含みにして好手に見えるのですが、7四銀成りは後手玉
から遠くなって後手玉を少し楽にする面もあるし、難しいですね〜。結果は投
了図にそのまま残っているように後手玉に迫ることも出来ず、後手の飛車角に
働きかけることもできずに、せっかく打った銀がどっちつかずになってます。
まあ、そういうふうに指した羽生が巧かったということでしょう。先手6三銀
打ちに後手は直接相手をせずに▽8六歩でした。後手玉が挟撃態勢になってい
るなかでの▽8六歩は力のこもった歩ですね〜、かなり読んで決断しなければ
ならないような手でしょう。このあとC図の▲7九桂となるのですが、先手は
7九桂でなく、1三に桂を打って攻める手もあったようです。後手の8六歩は
この先手1三桂からの攻めも読んで攻め合いでも勝てると判断しての8六歩だ
ったのでしょう。C図で先手が桂を受けに使ったので後手は少し安心できたよ
うです。C図のあと後手2七銀から▲5八飛、▽6九銀として、2七の銀で1
八の香を取ってさらに自玉が安全になり、6九の銀で7八の金を取りその金を
6四に打って万全となりました。

渡辺はタイトルを取ることはできなかったのですが、羽生をあと一歩、半歩、
あと一押しというところまで押し込んだのですから充分存在感を示し、強さを
見せてくれました。このあとの飛躍が期待される活躍でした。これからが楽し
みですね〜。


第51期王座戦五番勝負第4局(10/7)

  挑戦者/王座  
五段   渡辺明   2勝2敗
王座   羽生善治   2勝2敗

99手で千日手 
指し直し局は133手で先手羽生王座の勝ち

一瞬の香にはじける露の玉

指し直し局

先後が変わって後手となった渡辺五段は8五飛車から5五飛車、5四飛車と構
えます。先手は交換した角を8二に打ち込んで馬を作ります。この馬が使える
かどうか、馬が働く前に後手が先手陣に攻め込めるかどうかが焦点に。この8
二角打ちは難しいですね〜。どうしてもすぐに有効に使うことが出来ないので
後手の攻めの成否が問題です。本局は先手の飛車が4九に行き、先手は飛車も
攻めに使うには厳しいことになってしまいました。A図は後手が3六歩と打っ
たところ。3七の馬を取られてもと金を作って攻めをつなぐ手ですがこの一瞬
の隙を捉えて先手▲3四香と反撃に出ました。後手陣に手を着けてから▲3七
金と馬を取って、その角を1五の打って3七のと金を外して先手陣は安全にな
りました。それにしても鮮やかな返し技でした。武道の達人の一瞬のきらめき
を見るようです。しかし▽5七桂成りに先手が同玉と取った手があとあと効い
ていたんですね。5七同金左でも5七同金上がるでもどちらもまずいことにな
るので同玉は自然といえば自然な手なのですが。それと後手に5七桂成りとさ
せた先手の6六歩がやはり当たり前の手のように見えますが的確だったんだな
あと思います。これで2勝2敗となりました。戦前は羽生が圧倒的に有利と思
っていたのですがここまで渡辺も頑張ってきています。最終第5局は「強い羽
生」を見ることができますかね〜。

 

千日手局

図は先手の7五桂打の飛車取りに後手が8三の飛車を8一に引き、先手が7二
銀と打ったところ。このあと後手は▽6六歩、▲6八金引きを入れてから8二
飛車と逃げ、先手は8三銀不成、7二銀不成を繰り返し、後手は8一飛車、8
二飛車を繰り返して99手まで、千日手成立となりました。うーん、この千日手
はしょうがないでしょう。どちらも手を変えて指すゆとりはないでしょう。 
後手は飛車が4筋などに行ったら8六の歩を払われてしまいますからね〜。 
先手も後手の8六歩と6六歩があり、3九の馬の効きで7筋から手を着けられ
ると崩されてしまいそう。3七の桂も質になっていることですし。この局面に
来るまでに先手が若干指せそうな感じだったので手を変えるとしたら7二に銀
を打つ前に妙手があれば手を変えることが出来たのでしょうか。苦労していた
羽生のほうが千日手になって少し得をした感じです。


第51期王座戦五番勝負第3局(9/25)

  挑戦者/王座  
五段   渡辺明     2勝1敗
王座   羽生善治     1勝2敗

126手で後手渡辺五段の勝ち

銀漢や言葉の出ない敗者あり

また横歩取り8五飛車になりました。A図は29手目先手羽生王座が3六の飛車
を5六に寄ったところです。ここまでは第2局と同じ進行です。第2局は後手
番だった羽生が▽4五角と打って乱戦に突入しました。今回後手番の渡辺五段
はA図から▽6二金でした。中段の飛車の移動と手持ちの角でお互いに相手陣
にわずかでも隙を作ろうという細かいやりとりがあり、じっくりとした展開に
なりました。先に角を打ったのが先手でした。4六に角を打ち、先手が局面を
リードしたようです。B図は後手が▽7三歩と打ったところ。辛抱の歩打ちで
すね〜。

先手がリードを保ちながら進んでC図へ。ここで先手▲7四歩ならばリードを
保ちながら進めていけたとのことですが、先手は4▲4六飛でした。飛車をぶ
つけて後手に▽6四飛車と逃げさせてから▲3六飛車でした。このあと先手は
9筋から攻めてと金を作ります。ゆっくりとリードを広げていけば勝ちかと思
われたのですが、D図、後手は先手の桂の効いている6五に角を出る勝負手で
す。後手の8三の角はあまり働いていなかったのですが先手9三歩成りに7四
に逃げ、▲7五歩に▽6五角と先手の手に乗って、どうぞ取ってくれの角出で
す。羽生は軽視していたのでしょうか。このあと▲6五同桂、▽同桂、▲6六
角となり、後手は角は取られましたが桂が急所に跳んで捌けた感じです。先手
は飛車角が窮屈になってしまいました。▽4四桂、▲4六飛と進んでから後手
に▽9三香とと金を払われてしまいます。先手は手数をかけて作ったと金を簡
単に払われてしまい、もう逆転した感じです。

羽生は第2局に続いて連敗ですが、第2局の負けは羽生が試してみたかった手
を試してみての負けで、まあ、負けても納得の負けでした。本局は途中で優勢
になり、そのまま優勢を保っていけば勝ちの将棋を、勝ちに行って逆転負けし
てしまったので、ちょっとこれは悔しい負けでしょう。このあとの対局に影響
が出るのかどか、第4局は羽生がどんな将棋を指すか注目です。


第51期王座戦五番勝負第2局(9/12)

  挑戦者/王座  
五段   渡辺明       1勝1敗
王座   羽生善治       1勝1敗

69手で先手渡辺五段の勝ち

身に入むや4五角の裏おもて

後手番の羽生王座は8五飛車から先手渡辺五段の7七桂に2五飛車とする趣向
でした。先手2六歩に後手2四飛と引き、先手の5六飛車に後手が角を4五に
打ったのがA図。普通ならば先手の5三への飛車成りを防ぐところだと思うの
ですが羽生は飛車成りを放置しての角打ちでした。▲5三飛車成りだと▽2七
角成りなのでしょうか。あるいはいったん龍を押し返してから2七角成りなの
でしょうか。いずれにしても先手に龍を作らせても後手も馬を作って充分戦え
るという判断でしょう。しかしA図から渡辺は▲6五桂でした。先手の飛車一
枚の攻めは何でも無いが桂が参加するとなると、角を持っているし後手もきち
んと対応を迫られることになりました。先手は龍を作り5五に引いてから3六
歩で後手の角成りを防いで、さらに3五龍で後手の飛車角の動きを封じてしま
いました。その後も先手がリードを広げて行き、渡辺は羽生に初勝利となりま
した。A図から角が成れなかったのは明かに誤算という感じです。▽4五角が
いけなかったのでしょうか。その後の対応がいけなかったでしょうか。良く分
かりません。先手6五桂以後も後手になにかうまく応じる手がありそうな感じ
なのですが・・。羽生に隙があったとしてもそこを的確に突いて、そのまま勝
ち切った渡辺には自信になったことでしょう。第3局がどんな内容の将棋にな
るか楽しみです。


第51期王座戦五番勝負第1局(9/2)

  挑戦者/王座  
五段   渡辺明         0勝1敗
王座   羽生善治         1勝0敗

95手で先手羽生王座の勝ち

若武者の歩のみだれけり秋の陣

後手番となった渡辺五段の8五飛車に先手羽生王座は7七桂から5五角打ち、
6五桂と積極的な指し回し。2三で後手銀を取っての飛車切りからその銀を打
ち込んで行き、1一銀と香を取った手に後手が2八歩と歩を打ったのがA図で
す。後手陣の左辺はもう先手にあけ渡しです。先手は飛車を切っての攻めで金
と香を手にし、と金も出来そうですが、ひょっとすると攻めが切れるかもとい
う展開です。先手の8六香からの後手の飛車取りが見えているし、後手はいろ
いろ手がありそうな局面ですが渡辺は2八歩でした。飛車は取られても先手に
香、金を使わせて、その金を取ればそんなに損ではないというところでしょう
か。2八歩からと金を作ってそのと金の攻めで間に合うという判断でしょうか。
しかし先手羽生はここでひょいと4八銀でした。と金を相手にしないという手
でした。3八銀として2九歩成りに同銀でと金を消す手を指したいと思うとこ
ろですが、▽5七桂成りをからめた▽4五飛車打ちで後手に攻めの調子を与え
るので▲4八銀とかわす手を選んだのでしょうね。後手の思わくは外れてこの
2九のと金は2九から動くことができずに最後まで残ってしまいました。
B図は先手5五馬と3三から引いた手に対して後手が△5四歩と突いたところ
です。ここで先手は▲3八金でした。後手の2七の馬が動けば後手玉は詰みで
す。後手は2七に馬を作って、これを足がかりに攻めようという馬を消される
ことになり、攻めの手がかりを失ってしまいました。

さらに先手羽生が、もう負けませんよという歩を打ったのがC図です。後手か
らの角打ちや飛車打ちを消した4九歩打ちで、もう先手は安心という手でした。
途中までは前例のある将棋だったみたいですね。先手飛車切りからの攻めをし
のいで後手は2八歩打ちからの攻めを間に合わせようとしたのに間に合わなか
ったというところでしょうか。後手玉は7二かあるいは8筋まで行って6二金
と7一銀を生かしたかったのでしょうが、それもできませんでしたね〜。
四冠王の貫禄勝ちの一局でした。


 

第51期王座戦挑戦者に渡辺五段(8/5)

第51期王座戦挑戦者決定戦が8月5日行われました。阿部隆七段と渡辺明五
段の勝負は案外と一方的な展開で渡辺五段が阿部七段に勝ち挑戦を決めまし
た。渡辺五段は19歳。10代でのタイトル挑戦は3人目だそうで、新鮮で
良いですね〜。羽生王座相手にどんな将棋を指すか楽しみです。羽生四冠を
始め同世代の棋士が中心の将棋界ですがいろいろバラエティに富んでいるほ
うが面白い。谷川王位も頑張っているし、若い世代にも頑張ってもらいたい。
渡辺五段は一局でも多く指したいと言っているみたいですが、タイトルを獲
る気持ちを強く持って望んでもらいたいですね。

王座戦第1局は9月2日です。


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