将棋タイトル戦情報

第44期王位戦(2003年7/15〜9/9)

 

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挑戦者 名人、竜王、王座、王将 羽生善治

王位              谷川浩司

第1局 7月15,16日 134手で後手谷川王位の勝ち
第2局 7月29、30日 117手で先手谷川王位の勝ち
第3局 8月  6,7日 150手で後手谷川王位の勝ち
第4局 8月26,27日 172手で後手羽生四冠の勝ち
第5局 9月  8,9日 126手で後手谷川王位の勝ち

谷川王位、4勝1敗で防衛


第44期王位戦七番勝負第5局(9/8,9)

 挑戦者/王位  
四冠  羽生善治     1勝4敗
王位  谷川浩司     4勝1敗

126手で後手谷川王位の勝ち

・爽やかに風流れ行く王の道

後手番となった谷川王位の早い段階での1四歩などがあり、序盤から気を使う
展開になりました。先手羽生四冠は1日目で失敗したような感じがしてました
と言ってますが封じ手での長考しての1八飛車は苦しい選択だったのでしょう
か。後手だけに飛車先の歩を切られていますが、これはこうして指す予定では
なく、指さないといけないことになってしまった、後手に巧く指されたという
ことなのでしょうか。序盤の一手一手は難しい、難しくてわかりません。

A図は後手が5二飛車と寄った手に対して先手が4五桂と跳ねたところです。
谷川のコメントに5二飛車の講想が悪く押さえ込まれてしまいましたとありま
した。A図の4五桂が機敏だったということでしょうか。先手は角の働きが悪
いのですが、4五の桂を銀で取られても7七の桂が6五桂と跳ねられそうだし、
5筋から後手陣をばらばらにしようというところでしょう。B図は先手が▲1
五歩、▽同歩として▲1五同角としたところ。角が1五に出る勝負手ですね。
先手は5三に拠点の歩を打ってます。5二に打ち込む駒が欲しいところ。5五
で銀交換があったのですがその銀を5六に打たされて、▽5五歩、▲4七銀と
されているので、この1五角で駒を入手して攻めようというのでしょう。
ここで後手は▽1七歩、▲同飛と取らせてから▽1四歩でした。まあ、手筋の
歩打ちなのでしょうけれど巧いものですね。先手1七飛車となって、飛車が先
手玉の守りに横に効いていたのが効かなくなってしまいました。さらに遠く後
手の6二の角の筋にも入って、展開によっては質という状態です。
先手4二角成りから攻めますが・・

B図から先手4二角成りとして攻めて行きますが、後手は玉で取りました。こ
の玉が、先手の攻めを自ら振り払い、防いで、切り取っていくような猛烈、果
敢な玉でした。4二玉から5二〜6三〜5四としてC図まで。すごいですね〜
▽4二角成りを玉で取った時からこの5四玉で安心と読みきりなのでしょうね。
C図から後手は先手の8五桂、4五桂を取り、安全勝ちとなったようです。

羽生のコメントにあったように序盤から先手やや苦しかったのでしょうか。少
し無理気味に攻めてあとは案外あっさりと寄りきられた感じです。谷川は少し
有利を意識していたのか慎重な指し手もあったように思います。なにより一番
印象に残ったのは後手玉ですね〜。飛車角が活躍するのは当たり前、中には桂
香や歩が活躍する将棋もありますが、玉が活躍する将棋は珍しいですね〜。
谷川は一冠だけの王位のタイトルを守り、素晴らしい内容の将棋で存在を示し
てくれました。羽生には王座戦で頑張ってもらいましょう。


第44期王位戦七番勝負第4局(8/26,27)

 挑戦者/王位  
四冠  羽生善治       1勝3敗
王位  谷川浩司       3勝1敗

172手で後手羽生四冠の勝ち

白星をひとつ抱きて暮の夏

3連敗と後の無い後手番羽生四冠は中飛車でした。先手番の谷川王位は右の銀
をどんどん出て行きます。A図は3四まで出て行った銀に角を絡めて攻めよう
と▲5六歩と突いたところです。このあたり両者ともに相当先の変化まで読ん
でいるんでしょうね。▽5四飛車、▲2四歩から後手は先手の銀を取り、先手
はと金を作ります。先手はそのと金を捨てて飛車成りに成功。桂を取りながら
の飛車成りで、結局駒割りは銀桂交換の先手損ですが龍を作って先手ペースの
進行です。B図は先手の龍に当てて後手が3一の銀を3二銀としたところ。先
手は1一龍と香を取りました。龍が2筋から動いたので後手は2四飛車です。
後手の2四飛車が嫌ならば龍を引く手もあったはずですが、香も持ち駒にして
攻め続けることができるとの判断だったのでしょうか。今シリーズの谷川の意
気が見て取れるような選択でした。しかし羽生の受けもすごい。2一歩から2
二銀打ちと先手の龍を封じこめて、さらに先手4三歩には4一歩と打ってしっ
かりと受けます。

先手2三歩と後手の2二の銀に当てて打ってから局面がほぐれて、飛車角の振
り換りなどあって、C図は先手の4四角打ちに後手5三香と打ったところ。
もうがっちり守りましたよという香打ちです。玉を二重に囲った感じですね。
それでもここから80手余り、終局まで攻防が続きます。先手はと金で後手陣に
迫っていきますが、なにしろ遠い、堅い。その間、後手からの攻めは確実に先
手玉を追い、投了図まで172手で後手勝ちでした。大熱戦でした。谷川の攻めを
羽生がしっかりと受け止めたという将棋でしょうか。この二人の将棋はやはり
面白いですね。わくわくどきどき、させてくれます。1勝を挙げた羽生は四冠
を保持しているとはいえ、この王位戦は挑戦者ですから、4連敗での敗退を阻
止できてほっとしているのでは。次局も面白い将棋を期待できますね〜。楽し
みです。


第44期王位戦七番勝負第3局(8/6,7)

 挑戦者/王位  
四冠  羽生善治         0勝3敗
王位  谷川浩司         3勝0敗

150手で後手谷川王位の勝ち

両雄の差す手汗ばむ150

2連勝2連敗のあとの第3局、後手番の谷川王位は5筋の位を取って、先手の羽生
四冠は先手だけ飛車先の歩を切って、先に仕掛けたのは後手谷川でした。6五歩、
8六歩、7五歩と突き捨ててから6五桂と跳ね、位を取っていた5五の歩を5六歩
と突いたのがA図です。角道を通して、さあ、決戦というところです。今回のタイ
トル戦は谷川の攻めに重きを置いた気持ちが感じられますね〜。まあ、普段から攻
める将棋なのでしょうけれど。なんか特に気持ちが将棋に出ている気がします。
A図から、先手から2二で角交換し、後手はその角を3九角打ち〜7五角成りと馬
を作りますが7六でその馬を先手の銀と交換してしまいます。持ち駒はその銀と歩
一枚だけ。6五の桂馬がすごく効いていますが、大丈夫かな、切れているのではと
思わせるようなところですが、巧く攻めをつなげるのですね〜。あるいは先手が最
善の対応を逃しているという面もあるのかもしれません。わたしにはわかりません
が。B図は後手が6三の銀を6四銀と出たところ。対局後の羽生のコメントに6
銀と出られて苦しくなったとあります。ただで取れる銀ですが、同角と取れば▽7
七歩で先手持ちこたえられないのでしょうか。B図から先手は7二歩打ちを入れて
から6五歩と桂をはずしました。そのあと後手7五銀ですが先手6四桂打ちと一手
一手、息詰まる攻防の応酬が続きます。

C図は後手8七歩と打ったところ。この前に先手の龍が7一に居て後手が4四角と
7一の龍に当てて打ち、先手が7八龍と引いています。▽8七歩に▲同龍ならば龍
が後手陣にすぐには入れず後手は余裕が出来るということでしょうか。局後の谷川
はこの8七歩がまずかったと言ってます。すぐに5六銀と先手陣に迫りながら金を
取る手もあるし、7七歩も有効な気がします。C図から先手6五金、後手8八金と
なり、先手の龍は取れることになりましたが、先手玉は右辺が広く、上部にも金二
枚が居てこれで捕まるかどうか、後手は持ち駒が銀一枚ですし。難しいですね〜。
先手は後手の攻めの隙を付いて5四桂、7四角と後手玉に迫りつつ玉を上部に持っ
て行き、入玉もという模様。しかし投了図までとうとう先手玉が捕まりました。
投了図、4三の歩をはさんで先手の後手の玉が並んでいます。戦いの激しさを物語
るような、余韻を感じる終了図です。投了図からは▲6三玉、▽7四金、▲同玉、
▽7七飛車から詰みですね。
面白い将棋でした。ふたりのコメントを見ると、谷川が攻めて、攻め損なったとこ
ろがありわからなくなったが、羽生も勝ち筋を見つけられなかったということでし
ょうか。二人とも最善手を何回か逃しているのでしょうが残った将棋の素晴らしさ
に何の瑕もありません。谷川の気の充実ぶりが良い将棋の第一の源でしょう。
結果は3連勝3連敗と分かれましたが第1局から第2局、本局と面白い、すごい、
楽しい将棋でした。次も期待しましょう。


第44期王位戦七番勝負第2局(7/29,30)

 挑戦者/王位  
四冠  羽生善治           0勝2敗
王位  谷川浩司           2勝0敗

117手で先手谷川王位の勝ち

・音発てて前へと進む銀の夏

相掛りの出だしからA図となって先手谷川王位の銀がどんどん出て生きまし
た。右の銀はもう後手羽生四冠陣に入っています。左の銀も中央に出ようと
いう態勢ですごい勢いですね。先手の陣形は一見ばらばらでこれでいいのか
と思ってしまいます。でも攻める将棋は魅力です。A図から先手の2三の銀
は後手の金と交換となり、その金を2三に打ってつなげます。重たく見える
金打ちですね〜。でも2二歩と打って手になっているのでしょう。B図は4
五の銀を5四に出たところ。すごいですね〜。後手の飛車は金桂両取りにな
っていますがその飛車の効きのところに自分から出て行ったのですから。
後手同飛車ならば6五桂から後手の角を動かして後手の3五の銀は取り返せ
るということでしょうか。こんな格好良い手が出るようだともう先手ペース
ということなのでしょう。

B図で後手は2九飛車成りでした。C図はその後手龍に先手3八の飛車を3
九飛車とぶつけたところです。ここで後手2六龍でしたがただ引くしかない
ようでは後手苦しい展開なのでしょう。6五桂から先手の攻めが炸裂。投了
図まで先手の攻めの素晴らしさを堪能する将棋となりました。銀二枚が出て
行って先手玉も反撃をされると弱い形だと思うのですがその間を与えなかっ
たですね。


第44期王位戦七番勝負第1局(7/15,16)

 挑戦者/王位  
四冠  羽生善治             0勝1敗
王位  谷川浩司             1勝0敗

134手で後手谷川王位の勝ち

・相振りや青鵐鳴きゐる一局目

挑戦者の羽生四冠が先手で、谷川王位が後手番となり、戦形は相振飛車とな
りました。番勝負の一局目であり、両者ともに気持ちにゆとりがあるのでし
ょう。相振飛車で戦ってみたいという気持ちがあったのだと思います。番勝
負の一局目に相振りというのは第41期の王位戦で先手羽生、後手谷川で指し
ています。この時は83手で先手羽生が勝っていますが・・。相振飛車に未知
の部分、可能性を感じて試してみたいという気持ちが大きいのでしょうね。

A図は先手が6八の飛車を8八と寄った手に対して後手が8二に遠見の角を
打ったところ。すぐにどうこうという角ではないのですが上手く使うことが
できるかどうか、先手からみたら使わせないように指すことができるかどう
か焦点になりそうな角打ちです。8二に打ったということは7三だと先手の
桂の当たりになるということもあるのでしょうが後手玉は7一のままで良い
という判断でしょうか。B図は後手が5九角と打ったところ。先手は2三銀
打ちから金を取りながら3四銀成りとして飛車を圧迫し、後手玉に迫ろうと
し、その間後手は8五桂打ちから先手の7七の角を取り、その角を5九に打
ち攻めます。先手は角と金銀二枚の交換になっていて成り銀もありで、厚く
攻めることが出来れば勝てそうですが。後手の速さのほうが勝ってしました。
B図から6四の金を5五に持って行き、先手の銀と交換します。薄い後手陣
としては金は玉の守りに置いておきたいと思うのですが、角筋を通して銀を
手駒にして攻めるんですね〜。

B図で打った角を4八角成りとして攻め、C図は4七歩打ちと詰めろをかけ
たところ。ここから先手5七桂成りとして後手玉を詰ましに行きますがわず
かに詰みません。D図は先手4六角と王手に打ったところですが、▽4六同
飛車と取られてただです。不思議に見える角打ちです。羽生がどの時点で後
手玉に詰みが無いのを認識したのかわかりませんが、この角はわかっていて
打ったのか、あるいは詰むと思っていて打ったのか興味深いですね〜。後手
同飛車ならば後手玉に飛車の守りが無くなるので、あるいはそれで後手玉は
詰むと思っていたのでしょうか。後手が王手を受けたあとにもう一枚の角で
王手をし、後手の4二の飛車を横に動かしてから6八角と龍を外せば勝ちと
読んでいたのかも知れませんね〜。あるいは負けを覚悟していて4六角打ち
を指したのでしょうか。それだとしたらちょっと羽生らしくないけれん味を
感じます。

面白い将棋でした。相振飛車は一方的な展開になることがままありますが、
この将棋は最後までどっちが良いのか悪いのかわからない将棋で大いに楽し
めました。王位には失礼ながら先に谷川が勝ったのでタイトル戦の勝負も俄
然面白くなってきました。


第44期王位戦挑戦者に羽生名人(6/16)

第44期王位戦の挑戦者決定戦が羽生名人と屋敷八段とで行われ羽生名人が勝
ち挑戦を決めました。谷川王位との番勝負が楽しみですね〜。谷川ー羽生の
タイトル戦は前期の王位戦から一年ぶりです。前期は谷川相手に王位を失冠
した羽生ですが、すぐに挑戦者として出てくるところは、「さすがは羽生」
という感じです。
屋敷八段は残念でした。久しぶりの大舞台登場のチャンスだったのですが、
羽生を負かせなきゃあねえ。

第1局は7月15,16日です。


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