将棋タイトル戦情報

第16期竜王戦(2003年10/21〜11/27)

 

表紙に戻る」「将棋トップページ」「終了棋戦


挑戦者 九段      森内俊之

竜王 名人、王座、王将 羽生善治

第1局 10月21,22日 130手で後手森内九段の勝ち
第2局 11月  4,5日 103手で先手森内九段の勝ち
第3局 11月12,13日  94手で後手森内九段の勝ち
第4局 11月26,27日 121手で先手森内九段の勝ち

森内九段4−0で奪取、羽生四冠は三冠に


第16期竜王戦七番勝負第4局(11/26,27)

 挑戦者/竜王  
九段  森内俊之       4勝0敗
竜王  羽生善治       0勝4敗

121手で先手森内九段の勝ち

森内九段4連勝で奪取

風花や春の思ひの色おぼろ

後手番の羽生竜王は四間飛車でした。先手の森内九段は穴熊しました。A図は封じ
手の局面で先手が4五歩と仕掛けたところ。先手の5五歩と5六銀が「がっちり」
という感じですね。3三で桂の交換があり、後手は8五桂と跳ねて端から攻めます。
B図は先手が8六歩と催促したところ。後手の端攻めの間に先手は6五歩と拠点を
作り6四歩と決めて、8九玉と寄っています。この辺の指しまわしは上手いですね。
8九玉は後手の角筋を避けて、▽9七桂成り、▲同銀のあとの8七桂をかわした意
味もあったのでしょうか。後手角は5五歩で一応止まっているし、後手の8五桂も
消して先手が負けない将棋になりました。

後手は5筋からの反発でなんとか角を使って攻めたいところですが、C図の先手4
七桂打ちが絶妙でした。決め手になりました。後手は▽6六歩、▲同角、▽5四桂
としますが▲5五角に▽同角と取れずに▽4四銀としなくてはいけないようでは勝
てません。5五で駒を取り合っても最後に先手に5五桂が残る展開になるのでは後
手が悪いのでしょう。最後は、森内のきれいな勝ちでしたが羽生もあっさり指した
感じです。後手は端攻めに期待したのでしょうが上手く行かなかったですね。中央
も押さえられて飛車角が使えなかったし、あの強かった羽生の「強さ」に?です。

名人戦の時は羽生の4−0でしたが今回は逆の結果になりました。どうしてこう一
方的な結果になるのか不思議ですね。
羽生は竜王を手放したといっても、それでもまだ3冠王です。これからの防衛戦で
羽生がどんな将棋を指すのか注目です。


第16期竜王戦七番勝負第3局(11/12,13)

 挑戦者/竜王  
九段  森内俊之         3勝0敗
竜王  羽生善治         0勝3敗

94手で後手森内九段の勝ち

・黄落や竜のまなこの力なく

矢倉から後手森内九段は雀刺しです。先手羽生竜王は5八飛車から右の銀が足早
に出て行き、5四で先手の銀と後手の金が交換、先手は飛車を7四にまわして、
後手7三銀打ち、先手8三金打ちとそれぞれ交換した金銀を打ち合ったのがA図
です。こうなるとお互いに飛車を取り合う他は無いところ。先手は9二金とした
形があと桂香どちらかが取れるのだが遊んでしまうかもしれないですね。でも、
飛車を取ると後手陣は今のところ飛車の打ち込みに弱い格好なので指せるという
ことでしょう。B図は後手が3一の角を6四に出たところ。これで後手玉は3一
から2二への道ができました。先手は5一歩成りとと金を作りますが5九の香が
攻めに参加できないのがつらいところ。9三で金香を交換して後手が金を持って
いるので先手玉は5九の香がいなくなると詰んでしまいます。先手は端と下段に
気を使いながら攻め手を作っていかなければならない展開になりました。

C図は後手が5九のと金を5八に引いた手に先手が6八の角を7九に引いたとこ
ろです。先手は飛車を打ち込んで後手の銀二枚を手にしましたが3段目、4段目
の銀取りで龍の後手玉への響きがいったん小さくなってしまいました。6三龍と
迫っていったのですが、C図で後手森内は決断の9七角成りです。良いですね〜。
勝算ありと見て踏み込んで行ったのでしょうがこうでなくっちゃね。先手も5四
角打ちと後手玉に迫っておいてからD図で8六歩と玉の逃げ道を開けながらの桂
取りです。が、森内はD図から7九飛車成りとしてから9九角打ちでした。鮮や
かに決まりました。9七角成りから7九飛車成り、9九角打ちと見事でしたね〜。
こう格好良く決められてしまったということはもう先手が悪かったということで
しょうけれど。

E図は先手が最後の頑張りに6八銀と打ったところ。先手は金銀4枚居るのです
が後手のと金が効いていますね。後手6八同とから終了図まで最後はさっぱりし
た形での終局となりました。E図から後手6八とに先手同玉で先手玉が右に逃げ
ることができそうですが駒を取られながら追われて駄目ですね。
先手矢倉の守りの金銀を巧く避けて手を作って行った後手の攻めが成功した感じ
です。先手は飛車を打って銀を二枚手にしたのですがその分攻めが遅れてしまい
ました。飛車が2段目のままで攻めることができれば違っていたのでしょうけれ
ど、そうすれば攻め駒不足かもしれず、難しいですね〜。
ぎりぎりの攻防はその深さ、広がりは分からないのですが、分からないなりに、
それなりに楽しめました。将棋の面白さですね〜。しかし、勝ち負けの結果は出
ます。羽生竜王は3連敗になってしまいました。このまま竜王を手放してしまう
のでしょうか。1勝も出来ずに4連敗での失冠は避けたいでしょう。


第16期竜王戦七番勝負第2局(11/4,5)

 挑戦者/竜王  
九段  森内俊之           2勝0敗
竜王  羽生善治           0勝2敗

103手で先手森内九段の勝ち

角出でて望みし山の初紅葉

先手番の森内九段は横歩取り、後手の羽生竜王はいったん8四飛車としてから
8五飛車と構えました。A図は封じ手の場面。羽生はA図からすぐに▽5六歩
として決戦にでました。ここでは5六歩の前にいろいろと小技を利かしておく
指し方もあったようです。▽2五歩とか。▽5六歩となれば角交換から本格的
な戦いに突入となります。B図は先手が▲7七桂と飛車取りに跳ねたところ。
ここで後手は▽8四飛車と引きました。局後の羽生のコメントにここで▽8七
歩成りといけないようでは・・とありましたが、作戦変更だったようです。
なにか嫌な手が見えたのでしょうか。▽8七歩成り、▲8五桂と取り合うのは
▽7八とから角を使って攻めても先手玉は右辺に広いですからね。先に2五歩
が入っていれば少し違ったことになっていたかも。あるいは先手の8五桂から
の7三桂成り、6二成桂が思いのほかきついのかも知れません。後手玉は先手
の飛車が素通しなので4三に駒を打ち込まれての攻めが厳しいですからね。
後手は8四飛車と引いて▽7五歩からの攻めが間に合うようなゆっくりした展
開にしたいのでしょうが・・。

C図は先手が6六の角を5五に出たところ。お互いに角を打ち合って、後手も
5四角打ちから7六角で先手の7六の歩を取ったのですがこのあと角を9四に
引いてから▽7六歩打ちとようやく歩を打てました。このあたり後手の角はあ
んまり効いていないし、ちょっともたもたっと攻めている感じがします。
先手の5五角は後手の飛車の動きを限定したのでしょうか。ちょっと不思議な
角出です。D図は先手が6六銀と5七の銀を出たところ。後手の陣形は玉と金
が入れ替わっていて普通という感じです。D図から飛車が逃げていては完封さ
れてしまいそうな後手は5五飛車としてから▽7七歩成りと攻めて行きますが
攻めに使いたい角桂も出遅れているし苦しい攻めです。

E図は後手が2六に桂を打って先手陣に迫ったところですが先手の2五桂が読
み切りの桂跳ねでした。後手は5八歩成り〜3八桂成りとしますが先手玉は今
度は左辺が広く捕まりません。▲3三桂成りから森内の見事な収束でした。
どのあたりから読んでいたのか分かりませんが最後は詰みまで読み筋通りとい
う感じですごいですね〜。
森内は力を出して堂々と寄りきったという将棋でしたが、羽生のほうは負け方
がひょっとして不調なんじゃないかと思わせるような負け方でした。そうは言
っても、なにせ四冠王ですからね〜。『羽生』ですからね〜。このあとの巻き
返しがあるかどうか、次局は羽生の指しかたに注目です。


第16期竜王戦七番勝負第1局(10,21,22)

 挑戦者/竜王  
九段  森内俊之             1勝0敗
竜王  羽生善治             0勝1敗

130手で後手森内九段の勝ち

気に押され竜王の歩の迷ひだし

挑戦者として出てきた森内九段はこの春の名人戦で羽生三冠(当時)の挑戦を
受け、4連敗で名人を失ったばかりです。羽生竜王を相手にここは期するもの
があるでしょう。後手番となった森内は飛車を振りました。先手は2二飛車成
りと竜を作り、その間後手は5五で先手の角と銀を交換。A図は先手が1一竜
と2二の竜で香を取った手に後手が▽5六歩と打ったところ。この5六歩が封
じ手でした。このあたりは中盤の難しいところでお互いに時間を使っています。
羽生は▲6六銀でしたが、局後のコメントではこの6六銀がまずかったとのこ
と、1時間近くの考慮で指した手でしたが後手に攻めの調子を与えてしまった
か。B図は後手5五飛車に先手が6六香と打ったところ。後手の飛車が生きて
来ましたね〜。6六香は5六銀で飛車取りと6三香成りのねらいで、その通り
に進むのですがB図で後手のは4六角と打ちました。この角が攻防に効いて、
大きい一手でした。先手5六銀に後手同飛として先手に6三香成りとさせて、
森内は自玉は追われても詰むまでには手数がかかるので5筋から先手陣を粉砕
してしまおうということでしょう。4八歩成りから攻めて行きます。

C図は後手が5六の飛車を5四に引いたところ。先手の7九銀打ちが後手の8
八金打ちなども受けている好手で、後手はいったん飛車の撤退です。一気に攻
めつぶすことができずに先手にも4三歩成りからの攻めがまわってきました。
D図は先手の7一銀打ちに後手玉が9三に逃げたところ。先手も後手玉に迫っ
て来ましたが持ち駒は飛車です、後手は3七の馬も受けに効いているし、後手
玉を詰ますにはもう少し駒が欲しいところか。

E図は先手が6二に飛車を打ったところ。ここでは4四飛車も有力だったらし
い。このあと▽5二飛に先手9二歩でした。羽生が局後悔やんでいた手です。
7七桂が良かったらしい。9二歩は後手に同香と取らせて、後手玉の逃げ場を
無くした手ですが緩手になってしまいました。▲9二歩のあとの後手7三玉が
先手の飛車の清算を玉で催促した決め手の一着になりました。

森内の気迫の攻めでしたが、羽生も巧くしのいで、もたれて指していたのです
が、羽生の方が何回か最善手を逃して負けにしてしまったようです。
森内は大きな一勝を手にしました。この勝ちで次局からは気持ちにも余裕が持
てるでしょう。挑戦者が勝って、この先が面白くなりました。


第16期竜王戦挑戦者に森内九段(9/17)

挑戦者決定戦三番勝負の第3局は森内九段が中原永世十段に勝ち、2勝1敗で
挑戦を決めました。森内は今年の春の名人戦で0勝4敗で羽生三冠(当時)に
負けて名人を失ったばかりです。名人が1勝も出来ずに挑戦者に敗れたのです
から屈辱でしょう。その借りを返すチャンスをつかみました。羽生竜王を相手
にどんな将棋を見せてくれるか楽しみです。
中原は残念でした。もう少しで久々のタイトル戦登場となるところでしたが、
最後に力尽きた感じです。会長のほうをがんばってもらいましょう。
竜王戦第1局は10月21,22日です。


表紙に戻る」「将棋トップページ」「終了棋戦