将棋タイトル戦情報(かつおの尾)

第15期竜王戦(2002年10/23〜2003年1/8)

 

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挑戦者 七段   阿部 隆

竜王 王座、棋王 羽生善治

第1局 10月23,24日  64手で千日手、
               指し直し局は64手で連続千日手

第1局 11月  6,7日  67手で先手羽生竜王の勝ち
 (指し直し局)
第2局 11月20,21日 100手で後手羽生竜王の勝ち
第3局 11月28,29日  88手で後手阿部七段の勝ち
第4局 12月 9,10日 257手で先手阿部七段の勝ち
第5局 12月18,19日  84手で後手阿部七段の勝ち
第6局 12月26,27日 106手で後手羽生竜王の勝ち
第7局  1月  7,8日 120手で後手羽生竜王の勝ち

羽生竜王4勝3敗(2千日手)で防衛


第15期竜王戦7番勝負第7局(1/7,8)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆 3勝4敗
竜王  羽生善治 4勝3敗

120手で後手羽生竜王の勝ち
羽生竜王4勝3敗(2千日手)で防衛

 

・去年今年貫く羽生の強さかな

振り駒で阿部七段の先手となり矢倉の将棋になりました。後手羽生竜王は先
手の後を追うような展開で進み、先手の4六の角と後手の6四の角が先手か
らの▲6四角で交換。先手は2六銀と出て攻めて出る態勢でしたがA図、後
手の▽6九角打ちに長考して▲4八飛でした。この辺は良くある形で、角打
ちもある手らしい。この角打ちは先手からの1五歩からの攻めも牽制してい
て、まあ、普通の手らしいのだが・・。先手が4八飛と角成りを防ぐと後手
7五歩からの攻めで後手も指せると、ある程度分かっている手だというのだ
が・・。阿部は先手となり、当然この局面での1五歩からの攻めを見て指し
ていたのだろうが、ここで長考しての4八飛はどうしたのでしょう。方向転
換ですね。いやな手が見えたのでしょうか。受けの手に期待できる手を発見
したのでしょうか。分からないですねえ。羽生の攻めはするどく受けきれな
かったですねえ。阿部はせっかくの先手を生かせなかった感じです。羽生は
自然体で勝った感じ。阿部は「羽生」の名前の大きさに負けたか。踏み込ん
で攻めてもらいたかったです。


第15期竜王戦7番勝負第6局(12/26,27)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆   3勝3敗
竜王  羽生善治   3勝3敗

106手で後手羽生竜王の勝ち

羽生竜王がタイに持ち込みました。
矢倉の戦いから難しい中盤を制した羽生竜王が力を見せました。
さすが羽生というようなびっくりするような手は出なかったの
ですが地力を発揮したというところでしょうか。
決戦の最終第七局は1月7,8日です。

・年の暮れタイトル未だ定まらず

後が無い羽生竜王は後手番矢倉。先手阿部七段は3八飛、3七桂から2五桂と
跳ね出して攻めようという構え。A図は後手が▽4四歩と銀取りに打ったとこ
ろです。先手の銀が死んでいますね〜。もちろん阿部は承知の展開。▲5五銀
と出て、▽4五歩、▲同歩で7七の角のにらみも効かせて、4五歩を拠点に後
手玉に迫ろうというねらいですが・・ ▽3三銀上がるがしっかりと受けた手
でした。先手▲4四銀と突入して行きますが、駒の損得の差が大きかったよう
です。後手に2五銀と桂をはずされて、4七銀から飛車を追われてどうもいけ
ません。後手は1三玉から入玉も視野に入れての指しまわしです。後手玉の入
玉を阻止するにも先手は駒不足でなんともしようがありませんでした。
先手は仕掛ける時に3五歩と突いておく選択もあったのでは。阿部はこの第6
局で一気に決めてしまいたかったでしょうが羽生を生き返らせてしまいました
ねえ〜。一番勝負となる最終第七局はこうなると羽生に分有りでしょうか。


第15期竜王戦7番勝負第5局(12/18,19)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆     3勝2敗
竜王  羽生善治     2勝3敗

84手で後手阿部七段の勝ち

阿部七段が2連敗のあと、なんと3連勝です。びっくりですね〜。
タイトル奪取にあと1番としました。決めるのなら次、第6局か。
1差ですからね〜。このあと羽生竜王2連勝も十分ありですから。
羽生に冴えが戻るかどうか。
第6局は12月26、27日です。

・駒放る手にもこの夜の寒さかな

先手番羽生竜王の横歩取りの将棋になり、先手から角を交換、お互いにその角
を6六と4五に打ちつけて、さあこの角がどうなるか、どちらの角が働くかと
いう展開になりました。先手は3五歩と後手阿部七段の桂頭をねらいますが、
後手は6筋の歩を突き捨ててから5三銀と銀を上がって先手の角にプレッシャ
ーをかけます。A図は後手が5三銀としたところ。先手が後手の角のにらみか
ら7八金を守り、8七銀と上がっているあいだに後手はこの銀がさらに出て、
結局先手の角と後手の銀が交換になります。先手駒損ですね〜。この辺は阿部
が上手く指しまわしている感じがします。羽生は自分の構想とは少し違ってき
ているのでしょう、ちょっと押されている感じ。先手は角と交換した銀を3四
に打ちますが後手▽同金から▲同歩、▽同角となりこの角が最後まで効きまし
た。先手は後手の角頭に3五金と打ちますが後手6七角成りとされてあとは一
直線、終了まで行ってしまいました。結局、交換した角をお互いに打ち合いま
したが、後手の角の働きが勝っていました。先手は後手の角に対処して8六歩
8七銀としましたが、なんかちょっと手の感じがおかしい。お互いの読みの深
さなど私にはわかりませんが、後手の角筋を止めるのに先手は4六歩から5六
歩、金銀も上がるという指し方もあったのではないでしょうか。投了図、先手
の4八の銀が玉の逃げ道を塞いでいるのはなんとも皮肉です。羽生は案外あっ
さりと指した感じ、手に冴えが見えませんね〜。このままあっさりと「竜王」
を手放してしまうとは思えないのですが、次は大一番になりますね。


第15期竜王戦7番勝負第4局(12/9,10)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆       2勝2敗
竜王  羽生善治       2勝2敗

257手で先手阿部七段の勝ち

257手という大変な将棋になりました。
大いに変な将棋でしたが結果は羽生竜王の負け。
出だし2勝したときは羽生竜王が簡単に防衛かと
思われたのですが、わからなくなりました。
第5局は12月18,19日です。

・初雪のどさりと落ちる帰り道

257手の長手数の将棋になりました。後手番羽生竜王の雀刺しの将棋だったの
ですが、結果は雀刺しは失敗だったか。先手阿部七段の対応が上手かったとい
うことでしょうか。A図は雀刺しからの攻防が一段落して後手が3一の角を▽
4二角と上がったところです。後手は竜を作っていますが自陣に引いた形で先
手は馬を作って先手の攻撃を制限していますね。後手としてはできれば3一の
角は切ってでも一気に攻めつぶしたいところだったのでしょうが、角を攻めに
有効に使えなかったですね。4二角と上がってちょっと方向転換という感じで
す。先手の8七金ががっちりとしてますね。ここから後手は竜と馬を交換して
▽3九角から▽2八金で先手の1八の飛車を取ります。竜馬の交換で先手で先
手は入玉の可能性が俄然大きくなりまりた。実際先手は入玉するのですが、普
通は入玉、不詰めが確実となれば投了となってもおかしくところです。この将
棋は入玉の替わりに後手に飛車を一枚渡しているので、大変なことになりまし
た。駒数、点数の勘定が微妙でなにがなんだかわかりません。B図は先手が6
一の飛車を2一飛車成りとして決めに出たところ。このあと257手まで延々と
手は続くのですが、とうとう先手が後手玉を捕らえました。先手陣に残った先
手のたった一枚の駒、1七歩が皮肉にも効いていました。先手玉が入玉してか
ら後手も入玉に専念していれば大駒が多かったのですから勝っていたんじゃな
いでしょうかね〜。先手玉を詰ましに行ったりしていましたからね。羽生に気
持ちの揺れ、ぶれ、みたいなものがあり、指し手に出てしまったという印象が
します。なんにせよ、2連敗のあとで挑戦者阿部が2連勝したのはちょっとび
っくりです。このあと、羽生の気合いも変わってくるのではと思われますが、
どうでしょうか。


第15期竜王戦7番勝負第3局(11/28,29)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆         1勝2敗
竜王  羽生善治         2勝1敗

88手で後手阿部七段の勝ち

後手番阿部七段が8五飛戦法から両桂を上手く使い、1勝をあげました。
これで面白くなりました。
第4局は12月9,10日です。

・こんなんのあべおどりだす帰り花

後手番阿部七段の8五飛戦法の将棋になりました。A図は先手羽生竜王が角を
換えてから▲3四歩と銀取りに打ったのに対し阿部が▽3五歩と打ち返した場
面。▽3五歩を▲同飛と取れば▽4四銀と出る手があったらしい。飛車を素抜
かれる順があるんですね〜。先手▲5六飛ですが、飛車を3筋から動かさせた
のは後手のポイントかな。▽3四銀から先手はねらいの▲6六角打ちです。飛
車香の両取りです。ねらいの一手だったのですがこれが案外効果が無かったと
いう結果になりました。1一の馬は後手の3三角打ちで交換となりその交換し
た角は投了図まで駒台に残ったままとなりました。香は5五香と後手の5四の
飛車取りに打ってから5三香成りとしましたが後手5三同銀に、後手に香を渡
したので5三同飛車成りとできないのでは6六角打ちからの構想が上手く行か
なかったということでしょうか。阿部七段は好手がでましたね〜、勝つ時はこ
んなものでしょうか。先手の1一馬に合わせた3三角で桂馬が3三から4五、
5七桂成りと理想の展開。忙しいところでの▽8八歩打ちの効かしも投了図を
見てのとおり、しっかりと効いています。最後は開き王手で格好良く決めまし
た。


第15期竜王戦7番勝負第2局(11/20,21)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆           0勝2敗
竜王  羽生善治           2勝0敗

100手で後手羽生竜王の勝ち

矢倉の将棋になりました。後手番羽生竜王が4一玉のまま雀刺しで先手阿部七
段陣に強攻。羽生の攻めに阿部は受け切れずに反撃できないまま投了。羽生の
攻めはすごい。
第3局は11月28,29日です。

・小雪や雀に刺されて返り討ち

相矢倉の将棋になりました。先手番の阿部七段は早めに矢倉を完成させて8八
玉と玉を入城させた時に後手番羽生竜王は9五歩と突き越しました。後手の9
五歩を見て阿部は長考して3八飛と寄りました。ここでの長考で後手からの先
攻について読んでいたと思うのですが・・・。後手は4一玉のまま雀刺しの態
勢を取り、先手も3筋からの攻めをにらんで3七桂とあがり、どちらが先に攻
めることになるのだろうと思っていたら羽生は玉を4一に置いたまま▽9七桂
成りと先攻します。阿部は一気につぶされることはないと読んでいたのでしょ
う。後手の攻めは一息つくはずだし、攻めて来た後手の飛車がいったん引くこ
とになると思うのは当然かな。しかし結果は羽生の攻めは鋭く、先手に反撃の
機会を与えずに攻めきってしまいまいました。A図は後手の飛香香の攻めに▲
9五桂と打ったところ。うまく行けば後手陣に成り駒を作って入玉もあるかと
というところです。後手の飛香香と先手の角角桂桂が対峙している面白い図に
なってますね〜。A図から羽生は8七香成りから金を手にしてその金を8四金
と打ち、角に換えてその角を4九角と打ち飛車と換えて、その飛車を後手陣に
打つつけて攻めます。すごいですね。流れるような攻めです。構図ができてい
たのでしょうね。投了図、後手の矢倉と4一の玉は仕掛けた時のまま残ってい
ます。先手の3七桂もそのままですね。この3七桂と跳ねた瞬間に羽生が9七
桂成りと攻めて出たのですから、終了図に両者の気持ちの有り様が出ているよ
うな気もします。


第15期竜王戦7番勝負第1局指し直し局(11/6,7)

 挑戦者/竜王  
七段  阿部 隆             0勝1敗
竜王  羽生善治             1勝0敗

67手で先手羽生竜王の勝ち

先日の連続千日手で仕切り直しとなった第1局は67手の短手数で先手羽生竜王
が勝ちました。後手番阿部七段の8五飛戦法でしたが、難しいですね〜。どこ
が悪かったのかわからないのですが早い段階で悪くしたようです。構想のミス
があったのでしょうか。
第2局は11月20,21日です。

・四日がかり勝負がついて冬に入る

後手番阿部七段の8五飛車戦法からA図は封じ手の局面、▽2五歩と先手の飛
車先に打ったところ。良く見るような局面だと思うのですが、どうなんでしょ
う。阿部は指しにくくしたというようなことを言ってますね〜。どこが悪いの
かさっぱりわかりませんが、このあとの先手羽生竜王の▲4六飛が好手だった
らしい。普通は3六飛とのこと。この飛車が8六から8一飛車成り、9一龍と
後手陣に進入します。その間後手は5六歩、4五桂と先手玉を正面から攻めよ
うという態勢を取り、実際に5七歩成りからから攻めるのですが、羽生はこの
後手の攻めは届かないと読みきりだったらしい。じっと9一龍ですからね〜。
先手8一飛車成りはやはり大きいでしょう。後手は先手の飛車成りを止めよう
と思えば8四歩で止めることができたのですが、それをせずに5六歩でした。
もう劣勢を意識して5六歩からの攻めに賭けたのでしょう。でもやはり届きま
せんでした。先手玉は中段に出て後手の持ち駒ではこれで大丈夫と前からの読
み筋通りという感じですね。手の流れを見ると後手の2三銀、2四銀が空振り
に終ってしまったという印象です。しかし最後、羽生の収束は持ち駒豊富とは
いえ見事ですね。


第15期竜王戦7番勝負第1局(10/23,24)

64手で千日手

後手阿部七段の中飛車の将棋になりました。A図は後手阿部が▽8四歩と突い
たところ。これから白熱の攻防が繰り広げられるかというところなのですが、
ここから先手羽生竜王は▲3八飛と寄ります。そのあと後手▽4二金と寄り、
先手▲2八飛と戻し、後手も▽3二金と戻して、以下寄る、戻すの繰り返しで
64手までで千日手となりました。

指し直し局も64手で千日手

指し直し局は一転、矢倉の将棋になりました。先後が換わって先手が阿部七段
です。総矢倉となり、B図は後手羽生竜王が▽2一玉と寄ったところ。ここか
ら▲2九飛、▽8一飛、▲2八飛、▽8二飛の繰り返しで64手で千日手が成立
しました。連続の千日手となりました。こちらは全然駒がぶつからずに、駒を
組み合ったところでの千日手で、ううむ、なんとか打開することはできなかっ
たのでしょうか。残念。

タイトル戦の連続千日手は1994年1月17日の第63期棋聖戦第3局の羽生ー谷川戦
であったようです。この時は81手と100手の千日手だったらしい。
千日手も将棋のうち、「これも将棋」なので、あって当然なのですが、それで
も戦いの始まる前の千日手は寂しいですね〜。対局は台湾で行われたのですが
台湾のファンは2局分見ることができて良かったと思ったのか、ぎりぎりの攻
防を見ることができずにがっかりしたのか、どちらだったのでしょう。がっか
りしたファンのほうが多かったのではないかしらん。指し直し局は持ち時間が
少なかったので変化に踏み込めなかったという面もあるらしい。このあとは面
白い将棋を見せてもらいましょう。


第15期竜王戦挑戦者に阿部七段(9/13)

第15期竜王戦の挑戦者決定戦3番勝負が阿部隆七段と中田宏樹七段
とで行われました。1勝1敗のあと決戦の第3局が9月13日行わ
れ、阿部七段が勝ち2勝1敗で挑戦を決めました。タイトル戦は初
めてですね。羽生竜王との七番勝負、どんな将棋になりますか、楽
しみです。
中田七段は残念でしたね〜。どちらかが負けるのは仕方ないことで
すがここまで来ての1敗は痛すぎます。今後の活躍を期待しましょ
う。
第1局は10月23、24日です。


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