2000年8月5日(土)朝日岳〜清水平〜三本槍岳

    那須の茶臼岳には何度も登りました。峠の茶屋まで車で行って、峰の茶屋跡を回って一気に茶臼岳に登るコースです。いつも登るたびに疑問に感じていたことがありました。峰の茶屋跡から左に回るのが茶臼岳なのに、右に行く人も多いのです。その方向を見ると、赤黒い険しい山がそびえていました。道しるべを見ると朝日岳でした。でも、茶臼岳の方が有名だし標高も高いのに、なぜたくさんの人が朝日岳に行くのか分かりませんでした。見るからに険しく危険そうな山なので、そのスリルが魅力なのかなと思い、挑戦したくなりました。

    今度はいつものハイキングのような準備ではいけないと思い、まず書店に行って登山の入門書を買いました。その本に従って、トレッキング用の靴や衣類、登山用の地図やコンパス、ストック等を購入しました。驚いたのは、登山用の地図を見た時です。那須の山で登れるのは、茶臼岳と朝日岳だけではありません。無数の山が連なっており、縦横にトレッキングコースがのびて、北は福島県まで至っていました。その地図では、茶臼岳や朝日岳は南のほんの入り口でした。いわゆる那須連峰の大きさに気付いたのはこの時でした。天候などのことも勉強し、いよいよ8月5日(土)に挑戦です。今までの家族とともに登る茶臼岳とは違い、今回は一人での挑戦です。なぜかわくわくしていました。

朝7:30に別荘を出て、約15分後に峠の茶屋に着き、駐車場に車を停めました。写真の一番手前のワゴン車(フォードのフリーダ)が私の車です。すでにたくさんの車が来ていました。写真の正面奥の山が朝日岳です。登山者カードを記入して箱に入れ、8:00ちょうどに出発しました。初めのうちは、整備された階段状の登山道です。木々も大きく日陰を行きます。はやる気持ちを押さえ、本に書いてあったように、一定のペースでゆっくり登りました。






8:20に、広々と見渡せる所にでました。まわりは所々に低木があるだけです。朝日岳がよく見えます。赤黒く不気味な色です。のこぎりのようにぎざぎざしていて、あんな所を登れるか心配です。今日は子どもをおいてきて正解でした。








8:30に、峰の茶屋跡に着きました。以前来た時は壊れた古い小屋でしたが、立派に避難小屋として新築されていました。すでに多くの人が休憩していました。地図を見ると、ルートが3方に別れています。南に茶臼岳、西に三斗小屋、そして北の朝日岳方面です。注意してみると、朝日岳方面へ行く人が一番多いようです。30名程度の登山ツアーの団体もいました。
   私は、少し休憩し、偶然そのツアー団体の後ろについて出発しました。左の写真がその時の様子です。そのリーダーが言うには、これから危険な道だそうです。見るからに危なそうです。でも、東側(写真の右方向)の眺望はその分すばらしいです。見とれて落ちないように気を付けなければなりません。予想通り、険しい山道でした。足場がとれないところもあり、チェーンにつかまって斜面を渡ります。事故がないのが不思議です。たぶん、事故がないからこのままなのでしょう。でも、この緊張感もなかなか良いです。


9:30分に標高1,896mの朝日岳の頂上に着きました。ツアーの団体もいっしょなので狭い頂上は賑わっていました。とんぼもいっぱいいました。この時期のとんぼは涼しい山の上にいて、秋のおとずれとともに里に降りていきます。








頂上では眼下には雲が広がっていました。ここで地図を見ました。










北に茶臼岳より高い三本槍岳(1,916m)があります。その方向をみると、行きたくなるようなすばらしい尾根が伸びていました。そこを目指すことに決めました。左の写真を見てください。ね、行きたくなるでしょう。気持ちがはやり、休憩も10分足らずで朝日岳を降りました。








ここからは、なだらかな尾根沿いの道です。ぜんぜん疲れず、どこまでも行けるように感じます。眺めは4方に広がり、茶臼岳に上って降りてくる登山では味わえないさわやかさです。








しばらく行くと、眼下に信じられない景色が広がってきました。いきなり大きな平原が現れました。木道も見えます。どうも湿原らしい。地図を見ました。清水平とありました。予想外の、知られざる湿原です。走るようにしてその湿原に降りていきました。登山の入門書に反して走って降りたせいか、ひざが痛くなりました。まだまだ初心者だということを自覚しました。







木道の上で写真を撮りました。いつかは家族をここへ連れてくるつもりです。山奥にこんな平原が突然現れたら、誰でも驚くに違いありません。多くの人が、茶臼岳と反対の方向に行く理由が今分かりました。こちらの方がすてきです。ここでのんびりしていたので、ツアーの団体は見えなくなってしまいました。三本槍岳に向けて出発しました。

写真の左に隠れていますが、だんだん三本槍岳が見えてきました。標高は茶臼岳より高いのに、外観はそう見えません。緑に被われ、丸いおだやかな感じの山です。岩だらけの険しい茶臼岳とぜんぜん違います。茶臼岳は数十年前に噴火したと聞いています。それまではハイマツに覆われていたそうですから、茶臼岳も元々はこんな山だったのでしょう。



11:20に三本槍岳の頂上に着きました。頂上は、ツアー客で賑わっていました。みんなお昼ご飯にしていました。私もここでおにぎりを食べました。小型のストーブでラーメンを作って食べている人もいました。これもなかなかおいしそうです。(さっそく今回のトレッキングの後、私はすぐにガソリンの小型ストーブと一人用のステンレスの食器を買い、次のトレッキングで楽しみました。)遠くで雷の音がかすかに聞こえました。入門書にも、午後の天気は変わりやすいと書いてありましたので、11:40に三本槍岳を下山しました。あとは来たときの道を戻ります。さっきの緊張や感動を思い起こしながら、雷を気にして急ぎました。

帰りもまだ疲れていません。那須連峰は、いったん山の上に登ってしまえば、あとは尾根が続きハイキングのようです。水と食料さえあれば、どこまでも歩いて行けます。予想外の風景にも出会えます。14:40に朝出発した峠の茶屋の登山口に到着しました。

すっかり、トレッキングの虜になってしまいました。別荘に戻って、さっそく次に行く所を地図で検討しました。すると、いきなり目に入ったのは、"気持ちの良い尾根"という言葉でした。その説明は、茶臼岳から南月山までつづく尾根のことでした。そういえば、何年か前にロープウェーで登った時に、茶臼岳に登る途中に南に伸びる尾根がありました。
次は、南月山に行くことに決めました。あとで、気持ちの良い尾根に行ったことをご紹介します。