ものづくり 模型編 サンダーバード THE MOLE(塗装編)
始める前に残念な知らせ
工作編を書いて半年以上が経過してからの塗装編ということで,だいぶ間があいてしまいましたが,その間に残念な知らせが届きました。それは,株式会社イマイの廃業の知らせです。(2002年2月10日)サンダーバードシリーズのみならず,帆船模型などの製造販売会社として世話になったイマイが無くなってしまったというのは寂しい限りです。そんなこともあって塗装には力を注ぎました。私のプラモデル歴の第一歩はイマイの製品ですから,この作品は,大事にしていきたいと思います。(※注 その後アオシマより同モデルは再販となった)
キットについて
MOLEというようりはジェットモグラと言った方が日本人には馴染みの深い,サンダーバードの救助メカです。キットや資料についてはTHE MOLE(工作編)の方で述べているので割愛させていただきます。
塗装のポイント
1 まず,下塗りです。私は模型用のサーフェイサーを使用します。組み立てが終了した段階で下塗りをすることは大事なことだと思います。まず第一の理由は表面の傷や,パテが上手に削れていなかったところなどが発見できて,補修ができるということです。第二に本塗装がのりやすくなるという利点があります。
2 次に,本塗装に移ります。私はグンゼ産業のミスターカラーをエアブラシで塗装することがほとんどです。塗料の乾燥が早いのが特徴ですが,エアブラシを使って夏場に塗装しますと糸を引くようなことがあります。これは,塗料が若干濃い場合に起こりますので,夏場は薄め液を多めにしたり,リターダーシンナーを混ぜるなどして対処します。塗装はまず,基本色より濃いめの色を全体に塗装し,次に基本色より薄めの色を凸部を中心にスプレーします。
3 次にウォッシングを行いました。ウォッシングとは薄く溶いた黒などの塗料を全体に塗ることで,雨風にさらされて汚れた状態を再現する技法です。用いたのはタミヤのエナメル塗料の溶剤と,油絵の具の濃い茶色です。エナメル塗料の溶剤に油絵の具を薄く溶き,全体に筆で塗布します。その後,余分な塗料はティッシュでふき取ります。エナメルの溶剤をそのままにしておくと,プラスチックが割れてしまうことがあるので,早めにふき取ってしまいます。油絵の具は粒子が細かく仕上がりが自然になりますが,乾燥が遅いのが欠点です。せっかちな人はタミヤカラーのエナメル塗料を用いるとよいと思います。
4 この段階でデカールを貼りました。3の作業の前にデカールを貼る場合もありますが,たいした大きさのデカールではないので,この順番にしました。この順番の方がデカールがウォッシングの溶剤で侵されるといった心配はありません。デカールはマーク・ソフターを使うと凹凸にもなじむようになります。細いラインのデカールも多いので注意して貼ります。このキットはテレビ映画を撮ったときに使用したプロップ(撮影用の模型)を忠実に再現したというふれこみだけあって,車体の右側のデカールはほとんど付いていません。そう言われれば,MOLEの資料の写真も左側から撮ったものしかありません。デカールはツヤのある上質のものです。
5 パステルを削った粉を筆で塗り,ほこり汚れを再現します。本体側面のキャタピラ周りを中心に黒やグレー,ブラウンのパステルを使って汚します。このあとフラットクリアーをかけるので,少し大げさにやってしまってもかまいません。フラットクリアーを上からスプレーすると,パステルの色合いはトーンダウンします。このへんの加減は経験が必要です。パステルは一番最後に仕上げといて使う人もいますが,触れば当然落ちてしまい,指紋などが残ってしまいますので,私は上からクリアー塗料を塗る方法をとっています。
6 全体の光沢をそろえるために,つや消しクリアーをエアブラシで塗装します。使用したのはタミヤのアクリルカラーです。クリアーにフラットベースを混ぜてつや消しクリアーを作りました。それに,専用の溶剤を少し加えて塗装します。この後,食器乾燥機に入れて強制乾燥させます。食器乾燥機で乾燥させると,乾燥時間が短縮するほか,塗膜が固くなり光沢が増すという効果があるそうです。(今回はつや消しなのであまり関係ない)
7 最後にドライブラシで凸部にハイライトを付けます。台車はタミヤカラー(エナメル)のライトシーグレイ,ドリルなどの金属部分と本体はフラットアルミでドライブシをしました。なぜこの段階でドライブラシをかけたかというと,ドライブラシをかけた後でフラットクリアーを塗ると,ドライブラシの繊細なタッチが損なわれたり,金属色がグレーの様に見えてしまったりするためです。ドライブラシとは毛先の短いハケにほんの少しの塗料をつけ,紙に塗料をなすりつけるなどしてほとんど乾いた状態にして,凸部になすりつけると,凸部に塗料が残り,凸部が引き立つという技法です。やりすぎると,実感を損ねますので,いらなくなったモデルなどで練習することを勧めます。
以上でMOLEは完成です。決定版的なキットですので,他社からの再販が望まれるところです。着工から完成までには10か月もかかってしまいました。もっとペースを上げたいところですが,暇がないのも現状です。
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写真1 下地塗装をしたところ |
写真2 本塗装終了 |
写真1
下塗りをしたところです。左に写っているのが今回使用したタミヤ・スーパーサーフェイサーです。缶スプレーは気軽に使えますが,ノズルを塗装面に近づけすぎますと,タレの原因となりますので注意しましょう。
写真2
本塗装を終えたところです。本体の黄色が気に入らず,写真を撮ったあとで結局塗り直しました。資料ではもっと赤みがかっているのですが,少し黄色が強すぎたようです。このようなミスを犯した原因は,私の使っている電気スタンドにあります。白熱灯を使用しているため,どうしても赤みが強調され,太陽光の下で見たときにイメージと異なった色になってしまいました。塗装をするときの理想は,スタンドなどを使わずに,自然光の下で行うことです。
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写真3 ウォッシングをしたところ |
写真4 デカールを貼り,パステルで汚す |
写真3
写真2と比べてもらえば分かりますが,黄色の色調が気に入らないので塗り直しました。そのあとウォッシングをして乾かします。
写真4
デカールを貼り,パステルで汚してさらにつや消しクリアーをかけて食器乾燥機に入れたところです。くれぐれも食器洗浄機には入れないようにしてください。