デジタル・スチル・カメラの電脳美女画質比較


 デジタル・スチル・カメラ(以下、デジカメ)のブームだ。カシオQV−10が発売された昨春から、人気が急上昇し、いまやカメラメーカーはほとんど全社が参入。パソコンユーザーの欲しいもの調査でもトップに来る勢い。

 デジカメは、これまでお馴染みの銀塩写真カメラと異なり、電子の目=CCDで撮像し、メモリーに静止画のデジタル情報を蓄積するというハイテクカメラ。撮ったその場で、即時に再生でき、パソコンに画像を取り込んで加工したり、パソコン通信で画像伝送したり、インターネットのホームページに貼り込んだり……がいとも簡単で、映像の記録、映像ライブラリー、映像利用と、実にさまざまな分野に活用できるのがデジタル・カメラのメリットなのだ。

 パソコンを買ったけど、何に使っていいか分からない、という人からの相談を私は、よくうけるが、そんな時は「デジタル・カメラを使うと、パソコンがもっともっと楽しくなるよ」とアドバイスしてあげている。

 デジカメは経済的である。銀塩写真カメラなら、撮れば撮るほどフィルム代、DPE代のランニングコストが加算されるが、デジカメは、何枚撮ろうが無料! いや、撮れば撮るほど1枚当りの単価(購入価格÷撮影枚数)は安くなっていく。今時そんな魔法のような商品が他にあるだろうか。フィルムだと、焼き増しのコストや保管場所のことを考えなかなか気軽には撮れないものだが、デジカメはその点気楽だ。気に入らなければいくらでも撮りなおしができる。1枚単位にデリート(削除)でき、失敗写真を消して行けば、その分未使用枚数が増えるのはデジカメならではのマジック。

 動画と静止画では、動画のほうが面白いという人が多いが、実は意外に静止画もエキサイティングなのだ。8ミリビデオなどの動画撮影では動いている映像を撮るためには、撮影者はその間じっと構えていなければならない。カメラが動いてしまうと、たいへん見ずらい絵になってしまうからだ。ところがスチルカメラは「静止画」を撮る。つまり「一瞬だけ」撮るので、その時だけ静止してシャッターを押せばよい。「じっと構えなければならない動画」と「一瞬だけ構えて撮ればよい」静止画の、撮影時の撮り易さの違いは明らかだ。

 さらに「映像をゲットする」という心構えもまるで違う。動画はよほどの名人が撮らないと、ダラダラとしてしまい観賞に耐えないが、「一瞬を切り取る」静止画なら、誰でも意義あるショットが撮れる。このことは、後にビデオプリンターでハードコピーを取る場合にきわめて重要なことだ。ダラダラ撮った動画の場合、1秒に60枚のフィールド画から決めの1枚を選びだすのは結構難しい作業だ。

 ところがデジカメの場合は、すでに撮影時に撮る対象が選択され、その結果意味のあるシュートが収録されていることが多い。したがってプリントする際に選択する必要はまったくないか、ひじょうに少なくてすむ。というわけで、デジカメのシューティングにおけるメリットがお分かりになっただろう。

 さて、いま話題の最新機、3台の実際の画質をオーディオフェアとエレクトロニクス・ショーのコンバニオンにモデルになってもらって、比較しよう。パナソニック、ケンウッド、シャープの美女たちだ。


カシオQV−100

 まずカシオQV−100。あの大ヒットしたQV−10のアップグレード版。CCDを25万画素から35万画素に上げた。

 QV−100は、ひじょうにエンターテインメント性が高いカメラだ。まずカメラとしてとても操作性がよく、快適に撮影できる。それは何といっても、後面に配置された1.8型のTFT液晶の威力だ。狭いフアインダーで被写体を窮屈に覗いて撮影するのではなく、ゆったりとした気分で画面から離れてモニターしながら撮影できるというのは、気持ちがよい。

 しかもQV−100だけの仕業として、レンズ部と本体画面部が独立して回転する機構も備える。画面の位置を傾けることができ、自然な角度でモニターできる。しかも液晶画面の弱みである”上下の視野角の狭さ”もカバーできるという、一石二〜三鳥のグッド・アイデアだ。これは実用新案がカシオから出ているので他社では真似できないメカニズムである。これがあるとないとでは魅力度が大幅に違う。ハイアングル、ローアングル撮影も楽々だし、180度回転すると自分が撮れる。

 TFT液晶自体も、意外なほど美しい。それはTFT液晶の基本的な画質の高さに加え、バックライトで常に光が透過されるから、光の粒子の確実な描写が得られ、クリアーで透明感の高い画質として見える。屋外での使用も日光が直射しない限り、問題は少ない。

 パソコン画面で見る画質はややノイズがあるが、これはチェック機が試作機ということも一因だろう。画質はコントラストが豊かで、ひじょうに力感がある。その点は、次の富士フイルムのDS―7とは対照的な仕上り。モデルにグッと迫れ、画面を見ながらコミュニケーションできるのが魅力。ケンウッドのコンパニオンは、とても乗りがよかった。それに可愛い。

左から、ケンウッド、シャープ、パナソニック。 フォトショップでイコライジングしたため、コントラストが強調されています。


富士フイルムのDS―7

富士フイルムのDS―7はデジカメの、今の売れ線である。

 コンパクトカメラには絶対つきものの光学ファインダーを外し、液晶パネルのモニターのみとした割り切りが新しい。1.8インチの液晶パネルを搭載し、その場で画像を確認しながら撮影ができるというのは、まさにQVスタイルだ。

 ただしQVと異なるのは、カメラ部とモニター部が一体になっており、独立回転はできないこと。したがって、常にDS―7を目の前まで掲げて、被写体に対峙しなければならない。

 DS−7で注目されるのは、そのトレンドセッターとしての役割だ。今、デジカメの世界では、CCDについて、1.正方画素方式、2.原色フィルター方式、3.全画素読み出し、の3つの条件が必須とされるようになってきた。このところ立て続けに発表された各社のデジカメには、この3条件を採用したものが急増している。DS−7は、この3つをすべて備える。

 正方画素方式とは、パソコンがスムーズに処理できる画素の形に設計したCCDであり、カムコーダー用のCCDを使った場合に必要な縦横の比率変換作業がいらない。これはアプリケーションを展開する時、きわめて重要な条件になる。アスペクト変換のためのソフトなしに、直接映像処理ソフトに連結することができるからだ。

 原色フィルター方式について述べると、もともと無彩色のCCDからカラー信号を取り出すのがカラーフィルターの役割だが、その色着けのやり方に補色(シアン・イエロー・マゼンタ)でやるか、原色(レッド・グリーン・ブルー)で行くかの2つがある。感度を重視するなら補色、正確な色再現には原色というのが原則だ。DS−7の原色方式は、いかにもフイルムメーカーらしい選択である。

 全画素読み出し方式は、フルフレーム方式ともいう。カムコーダー用のNTSC(日米放送規格)CCDは縦方向の半分の画素数を同時に読み出すフィールド画像方式であり、縦方向の解像度が240本程度しかない。これでは垂直解像度が低い。そこで、デジタル・カメラでこれを搭載する時は、特別のメカニカルシャッターにより、フィールド画像を2枚重ねて、縦方向の解像度を確保するという特別な対策を取らねばならない。

                            超小型カードのSSFDC(ソリッド・ステート・フロッピー・ディスク・カード、通称スマートメディア)に記憶する。これは東芝、富士フイルムなど五社が提唱(賛同メーカーは38社)する厚さ0.76ミリの切手サイズのメモリーカード。この手の超小型記憶媒体の分野では、他に複数のライバルフォーマットがあり、激しい競争状態になっている。

 画質はバランスを重視したもの。デジカメでは、いかにもデジタル調のハイコントラストで、輪郭を激しく立てるというものもあるが、DS−7は比較的グラデーションも滑らかで、あまり人為的な絵づくりの跡が少ない。あたたかで、バランスのいいもの。カシオQV−100と同じモデルの写真が2枚あるから比べて欲しい。

左から、ケンウッド、シャープ、パナソニック


キヤノンPowerShot600

 この製品はパソコン用の「画像入力装置」という位置付けで、オフィスユースをねらったもので、個人向けとは考えていないという。しかし、その性能の高さは一般のパソコンユーザーにも大いに魅力である。

 本機のこだわりは、まず画質。オフィスユースでは画質が最大の条件だ。そのためまずを撮像素子に普及型のデジタルカメラとしては最高の57万画素1/3インチCCDを採用。832×608という高解像画像が得られるカメラは、本機だけ。カムコーダー用のCCDをメカニカルシャッターによって全画素同時読み出しとしている。このシャッター性能は画質の優劣に効くから、特にこだわったという。

 レンズは、中央部はもちろん周辺部にわたり解像度を高くした。これは文書の撮影などの用途に向けての仕様だ。焦点距離は7mm固定(35mmフィルム換算で50mm)で、最短撮影距離は10cm。ズームがないのが惜しいが、単焦点による描写力を重視したとしている。

 撮影する画像データはJPEG方式をサポート。圧縮率によってファイン/ノーマル/エコノミーの3つの記録モードを選択する。

 ユニークなのはデザイナーなどプロユースにも対応する記録モードとして、撮影画像を色補正や圧縮をかけることなく、生データの状態のまま記録するCCDRAW(生のCCDという意味)モードを装備していること。これはファイルサイズは約0.5MBという巨大なもの。

 記録媒体としては1MBのフラッシュメモリーを内蔵し、さらにPCMCIA/ATA規格のPCカード(タイプIII)も使う。内蔵メモリーでは最大で832×608/エコノミーモードで15枚撮影できる。タイプIIIのPCカードが使えるということは、この形のハードディスクも使えるということ。170MBのHDカードを使用すれば最大2500枚もの記録が可能だ。CCDRAWの超高画質画像も、たっぷり撮れる。

 画質はさすがに解像度が高い。はっきり、くっきりのデジタル・トーンで、「画像入力装置」としての使命には合う。

左から、パイオニア、三洋電機、メーカー名忘れた

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