ちいさいおうち
バージニア・リー・バートン・作
岩波書店
1450円


 静かな田舎に小さい家がありました。四季の流れとともに家の周りの景色も
変わります。木々のつぼみがふくらみ、花が咲き、畑の作物は実り、
リンゴは赤く色着きます。日が短くなり雪が積もります。最初は何もない田舎でしたが、
すこしづつ開発されていきました。小さい家のまわりの道が整備され、自動車が走り、
家が建ち並び、そのうち何十階もあるビルへと変わり、とうとう太陽が見えるのは、
お昼の一時だけになってしまいました。小さい家は昔を懐かしんで
悲しくなっていました。ところがある日その家の前を通りかかった人が、
その小さい家が自分のおばあちゃんが昔、住んでいた家であることに気づきました。
「昔は何もない田舎だったのに」とショックを受け、都市の中で窮屈そうにしている
小さい家をその人は広い田舎に移してもらいました。新しい丘の上で小さい家は
ニッコリしました。

 1942年のアメリカの作品。古典絵本と言ってもおかしくないでしょう。
まだまだ便利=幸福という考えが主流だった頃、自然環境問題、本当の豊かさに
ついて描いているなんて驚きです。この小さい家を大都会から田舎に移した人は、
小さい家を建てた人物の孫の孫のそのまた孫にあたる人という設定ですが、
この当時バートンが考えていたより何百倍も早く土地開発は進められています。
孫どころか子供の代ですでに山がビルに変わる時代ですから。
近代化し便利になることがいちがいに悪いとは言えませんが、少し立ち止まって、
この絵本を読んでもいいんじゃないでしょうか。
 そういう意味も込めてこの絵本は、もう少し小さいサイズで、
訳し直して(詩的な少し難しい表現で、漢字も多用して!)、
大人版「小さいおうち」としても出してくれることを切に望みます。


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