スマトラのシジミチョウの絵
Some pictures of Lycaenidae from Sumatra

写真・文・標本所蔵: 高波 雄介

このサイトは、スマトラのシジミの話が多いが、名前ばかりで絵がほとんどない。少なくとも想像力を養うためには役に立ったはずである。ビジュアル教育などは、かえって子供を阿呆にするのだ。しかし、ここは別に鍛練の場ではない。そろそろ絵でも載せて、人気回復に努めようと思うのである。しかも、コレクターに人気のある、いわゆる良いものシジミばかり集めて。俗に言う(私が言うだけ)「長田・関シジミ」だ。ご指名で標本屋から入手可能だから、これらは実は普通種なのだが、私以外には誰もそう思っていないらしい。日頃お世話になっている標本屋の恩に報いるためにも、ここでますます人気を煽ることにしようと思った次第である。(頼みますよ、セレベスのJamides!)

写真が使えるようになった前世紀後半以降も、絵を用いて蝶を図示している図鑑類は多い。今でこそ絵図は美術作品として評価されもするが、それはまさに制作者の望外の喜びだろう。当時の写真技術、特にカラーがでないということもあるだろうが、絵にした一番の理由は、翅の欠けていない完全な標本を揃えるのが、ほとんど不可能であったからに違いないのである。現在のように標本が次々供給されることがなかった時代、写真にすればあちこちにボロの標本が目立つことになる。しかし絵であれば、不完全な部分は描き足せばいい。絵は最初から動機が不純なのである。だから往々にして、Seitz の Vol.9,pl.159,h8 に描かれているフィリピン産 Drina discophora (写真左)の様に、「こんなの有り?型」も登場してしまう。知らない人はいくら実物を集めても「完全品」が得られない。おかしいと気が付いたときは、すでに山のように標本を抱えている。尾状突起の長さは、もともとこの絵の半分以下しかないのである。どうか頭の中で本物を描き直してほしい。

カラー写真が自由に扱える現在、わざわざ図鑑に絵を使う理由は、科学的観点からしてほとんどない。それでも時々出版されるのは、明らかに美術品的な視点をも考えているのである。ところで、三流コレクターの私の場合、完全な標本を揃えることができないという点では、未だに100年前と変わらない立場にある。だから、図版が以下のようなになってしまったのは、当然の帰結なのである。実はここまでが全て、デジタル写真の出来が今一つであちこち修正を重ねた言い訳なのだ。どうか勘違いして、ゲージツ性も見出して下さらんかのう。

1. Austrozephyrus absolon thamar (Toxopeus, 1935) ♂ アブソロンネッタイミドリシジミ
2. 同 ♀

長谷川氏がシバヤク山の上で狙っていたのがコレ。いわゆるゼフィルスの類で、日本人には大変人気がある(その点で私は日本人ではない)。マレー半島とスマトラ、ジャワに分布。山地帯に広く産するものと思われるが、梢を敏速に飛翔するため採集は困難。近似種がボルネオとパラワンにそれぞれ1種ずつ知られる。
3. Eliotia jalindra burbona (Hewitson, 1878)♂ ヤリンドラカワセミフタオシジミ
例のタジュ系シジミの一種。実物の色調はもう少し一様だが、雰囲気は良く出ていると思う。あの丸山氏がKutacaneで採ってくれたヤツ。幼虫はヤドリギ類を食べる。分布は広く、インドからスンダランド、フィリピン。
4. Sithon nedymond nedymond (Cramer, [1780}) ♂モンツキハカマシジミ
インドシナ半島南部からスマトラ、ジャワ、ボルネオに分布。スマトラ産にはmegabatesの亜種名があるが、ジャワの原名亜種と区別できない。
5. Poritia sumatrae sumatrae (C.& R.Felder, [1865]) ♂ スマトラエキララシジミ
6. 同 ♀

人気のキララシジミ類の中でも普通種。♂のベタっとした青、♀の花火のような紫は、割と私の好みである。マレー半島からスマトラ、ボルネオに分布。
7. Simiskina pharyge deolina (Fruhstorfer, 1917) ♂ ファリゲマダラキララシジミ
このキララシジミは、裏面はぼんやりしたまだら模様の黒褐色だが、後翅の外縁部にチョロッと青の光沢部があってかわいい。スンダランドに分布。
8. Poritia fruhstorferi nila Eliot, 1957 ♂ フルストファーキララシジミ
偉大な蝶の研究家Fruhstorferの名の付いたキララ。山地性。スマトラ、ジャワに分布。

[Jamides]