「巨龍の舞 −近未来小説 中国新三国志−」

−目次・要約−

◆北京五輪(2341字)済

北京オリンピックは予想以上の大成功に終わった。

◆昇竜(3653字)済

中国の発展は目覚しい。テクノクラートの巧みな舵取りによりそれは続く。

商社マンの吉田光一は、上海の電波塔の展望台で、日本の女優M.Iに似た中国娘の葉燕琳と出会い、夜景を見下ろすレストランで食事をする。

燕琳は有力者の家系の出だった。

◆兆し

近年、中国では大学進学率が依然と比べ数倍となり、就職浪人が急増し彼等の不満がたまっていた。

これを含め、発展に伴う様々な問題は、テクノクラートの力の及ぶ所では無く、上海万博で各国の目が注がれ政府が手荒な取り締まりが出来ないのを狙った様にいよいよ噴出し始めた。

◆群雄割拠

各地で暴動が勃発し、これを鎮圧した軍の司令官達が次々に独立を宣言。

中国の軍人は、主に西北、西南の貧しい地方の出身者が多い。

さながら、辛亥革命後の軍閥や春秋戦国時代の群雄割拠の様相。

上海万博は、中止された。

◆英雄

各地の勢力は強者が弱者を飲み込む形で集約されて行き、やがて、上海を中心とした南部、北京を中心とした中原、瀋陽(旧奉天)を中心とした旧満州に分かれた。チベット等は独立を宣言。

◆中原の覇

青年将軍、馬大石の率いる上海政府は日本及び台湾と結び、瀋陽軍区長(上将)張遼順率いる瀋陽政府はロシアと結ぶんだ。

やがて湖金雲国家主席率いる北京政府は背後の憂いを絶つため瀋陽政府と不可侵条約を結び、上海政府との対決に備える。現代の三国志か。

国連は、各地方政府に対する事態不拡大要請を決議。

アメリカは中東で手一杯の事もあり、積極的な事態打開には動かず静観の構え。

また、アメリカは中国が分裂して弱体化した方が戦略上国益に適うと考えている。

◆老師◆(7637字)済

上海政府を率いる青年将軍の馬大石は、日本から政治思想家の高岡正源を招き、巡洋艦長嶺の甲板で今後の戦略と中国の将来について教えを乞う。

「このまま中国が分裂して行くことが本当に民のためになるのかが私には未だ分からないのです。」

高岡は馬に言う。「それは私にも分からない。また、我々外国人は他国の運命を云々すべき立場ではない。中国のことは結局君達中国人が決める他はない。中国が分裂し牙を抜かれる事は日本の国益に適う。また、民主化は歴史の必然である。全てを踏まえた上で君が決めよ!

馬は北京政府との対決を辞さない決意をする。

北辰に現れた彗星は吉兆か。

◆影の首相

馬は高岡のルートを使い、日本政府に支援を要請するが、与党民進(民主進歩)党幹事長兼無所任大臣で実質的な首相の小熊義男は、国家としての介入が適当でない事と国益を理由に拒否。

日本にとって庭先の中国で戦火が開かれる事は、思わぬ飛び火や核汚染等も考えられ国益からは遠いと判断。

国連の同意を取るよう逆に要請。

◆決戦

北京政府は、馬に速やかな帰順を要求するも、馬はこれを拒否。

北京政府、上海政府双方は互いに宣戦布告し開戦したが、人民への被害と民心の支持を考慮し海戦に限定。

艦隊決戦が行われる。

黄海を制するのはどちらか。

結局、馬の知略により上海艦隊が勝利する。

◆経世済民◆(2315字)仮

黄海海戦に破れ威信を失った北京政府は、一転し上海政府に対し核弾頭ミサイルの使用を辞さない事を宣言。

再び、馬に北京政府への帰順を要求。

馬は、国際世論に訴えつつ、北京政府に停戦を提案。

馬の要請を受けた小熊は、国連の要請の形で停戦調停に乗り出す。

馬が、北京政府の顔を立てる形で、戦闘機数機に護衛された輸送機で北京首都国際空港に下り立ち停戦調停にサインした。

やがて日本政府は、PKOとして自衛隊(国連待機部隊)を中国本土に派遣。

小熊は、閲兵の為に中国の土を踏む。

◆歴史の行方◆(787字)仮

馬は、北京、瀋陽両政府に将来の国の形として連邦制を提案。

馬と北京政府首席の湖金雲は、青島のある膠州湾に浮ぶ空母鳳雛の甲板で調印をした。中国の分裂に一応の決着への方向が見えた。

だがそれは、一国三制度というべき不安定なものだった。歴史はどこに向かうのか。

この小説で度々登場した商社マンの吉田光一は、中国娘の葉燕琳と今回の一連の出来事を感慨深げに振り返り、今後の中国と日本の未来について思いを馳せる。


また、アメリカは中国が分裂して弱体化した方が戦略上国益に適うと考えている。

だが、日本にとって庭先の中国で戦火が開かれる事は、思わぬ飛び火や核汚染等も考えられ国益からは遠い。

−外伝−

2通貨制をとるべきとの強い国際的勧告を無視。

情は理に優った。その後、ドイツ以上の苦しみを受ける。

撃沈する。


−本文−

◆閉会式

スタジアムの端に聳え立つ聖火台の火が、今まさに消されようとしている。

2008年夏季北京オリンピックは予想以上の成功だった。

開催国である中国は、メダルラッシュに沸き、国威発揚は十分に果たされたがそれだけではない。

閉会式のフィナーレでは、中国の4000年の歴史と文化を示す各人物に扮した役者達によるパフォーマンスが行われた。

欧米から来た観客からは、一斉に「Wonderful」等の歓声が上がった。

パフォーマンスでは、中華人民共和国成立までが演じられたが、近代以降の欧米による植民地支配、日中戦争、国民党との内戦等は当該国に不愉快にならないように巧みにソフィストケイトされていた。

閉会の辞での湖金雲国家主席の「中国はアジアの連帯、世界との連帯を大切にし共に発展して行きたい。」の言葉とフィナーレの大団円は、正に中国は絶頂にあるように感じさせた。

聖火台の火が中国の聖火手の松明に移された。。

と、そのとき、東南の方角から轟音が近付きスタジアムの上空に複数の大きな機影が現れた。スタジアム中が一斉にどよめいた。

今回の北京オリンピックでは、中国は全世界に注目されるため、政府は強権的な行動は取れない。

その間隙を縫って、台湾やチベットの独立宣言がなされるのではないかと噂されていた。

上空の機影は、何かそれらに関係したものなのかとの思いが反射的に多くの観客の脳裏を過った。

機影は通り過ぎ、何か金属のカプセルのような物をぶら提げたパラシュートを投下した。

スタジアムの真中に着地したカプセルが割れると、中から7才ぐらいの子供が起き上がり聖火台の方向に歩き始めたが、よく見るとそれは精巧に出来た歩行型のロボットだった。

聖火を持った聖火手が歩行型ロボットの前に松明を差出すと、ロボットは器用に両手でそれを受取り、くるりと向きを変えて反対方向に歩き出した。

ようやく閉会式の演出の一つである事が伝わった客席からは、大きな笑い声が起きた。

ロボットの歩いて行く方向に待っていた次の開催地の聖火手の松明に、ロボットの聖火が移されると、一斉にスタジアム中から拍手が起こった。

その拍手に包まれるようにして北京オリンピックは終了した。

◆アメリカの動き

前述した台湾やチベットの今回の北京オリンピックに合わせた独立宣言については、数年前から囁かれていた。

またアメリカが裏でそれをサポートし、実行に向け密かにシナリオを用意しているとも言われていた。

アメリカにとっては、日本を筆頭とした周辺諸国が警戒する以上に、中国の経済的勃興と軍事的拡張路線は警戒すべき重要事項だった。

特に、中国主導で進んで行くアメリカの影響力を排除した東アジア共同体構想は、何としても阻止しなければならない物だった。

だが、アメリカは2003年のイラク戦争以降、中東でクギ付けになっていた。

非公式ながら、米国がイラク戦争を始めた主な開戦理由は、イラクのフセイン大統領が核や生物科学兵器等の大量破壊兵器の開発をしており、アメリカを含む世界が危険に晒されているというものだった。

しかし、イラク占領後も大量破壊兵器は発見されず、国民に開戦を受け入れさせる口実に過ぎなかった事が明らかになった。

アメリカが、イラク戦争を始めた動機は、表の開戦理由はともかく、石油利権等の確保・石油ドル決済体制維持、中東の覇権確立等の恣意的な要素と、多分に後付け的な部分もあるが中東民主化の理念の双方がない混ぜになったものである。それ故、この戦争の歴史的功罪と帰趨が未だ定まらなかった。

イラク戦争後、米国の中東への関与には2つの道があった。

これをデフォルメして大別すると、

  1. 米国が石油利権等の独占を捨て虚心にイラクの安定、中東全体の緩やかな民主化、パレスチナ問題の調停に尽力し現地の民心と国際協力を得て中東を安定させる。
  2. (逆に石油利権等の独占を捨てず、進んでは「中東強制民主化」を口実に例えばイラン・シリア・サウジアラビアに対し小型核を使った先制攻撃をする覇道に行き更なる泥沼へ突き進む。の2つに分けられた。 

しかし、現実には、米国はイラク戦争に2000億ドル以上の戦費と1000名以上の戦死者を費やしており今更石油利権の独占等は捨てられず、さりとて国際協力も欲しいが故に上記の中間的な中途半端な政策をとる事により、中東での消耗戦から長く抜け出せない状態が続いていた。

こうして、米国は中東へ釘付けとなり、石油の出ない東アジアへの本格的な関与は後回しとなり薄くなった。

そのため米国の代理人として、安全保障面等で日本に様々な要求をして来た。これに対して、日本は不十分ながらも何とか是々非々でかわしている。

アメリカは、中国と本格的に事を構えられない以上、北朝鮮処理に続く台湾問題では中国と話を付けソフトランディングもしくは現状維持を望んでいた。

一方の中国も、経済発展を続ける現状を失いたくないため、チベット等の独立を誘発しかねない台湾の独立さえなければ、台湾に侵攻することやアメリカと事を構えたくない。

そこで、北京オリンピックを前にアメリカと中国および台湾は、中台関係について次のような合意宣言を結んでいた。

「中台米共同宣言」

1.中国は、台湾に侵攻しない。

2.台湾は、独立を宣言しない。

  1. 中国と台湾の政治的関係は、少なくとも10年間は現状を維持し、その後話し合いにより問題を解決する。

4.中国と台湾の経済的関係は発展させて行き、繁栄の成果を共に享受する

5.アメリカは、上記の中台合意を尊重し、その維持に協力し保障する。

これについては、日本のある首相経験者が、米中関係の安定は日本を含めた東アジア安定の要だと言う事で、「最後の御奉公」と称して仲介したとも言われていた。

◆ 昇龍 ◆

◆諸問題

このように、北京オリンピック中の台湾やチベットの独立宣言は、事前の米中間のシナリオに沿って回避された。

しかし、中国は他にも急速な経済発展に伴う様々な問題を抱えていた。

バブル崩壊の危険、巨額の不良債権問題、沿海部と内陸部の経済格差、エネルギー・食糧・水不足、環境汚染、一党独裁体制の矛盾、人権問題、元切り上げの必要、知的所有権の遵守、劣悪な労働条件の改善等々の問題があった。

また、領土領海については、台湾独立問題、チベット等の辺境民族の独立問題等の他に南沙諸島等の周辺諸国との領有権問題等を抱える。

このように、中国は勃興しつつ、かつ脆さを孕みつつ、更に経済面、軍事面で周囲に脅威を与えており、東アジアのみならず国際情勢の最も複雑な要素となっていた。

中国の経済発展は上記の様々な問題のため北京オリンピックまで持たないのではとも言われていたが、成長率を少し落としたが安定していると見られていた。

これには政府の若手エリート官僚群、テクノクラートの果した役割が大きい。

彼等は国内の大学の理科系学部を出た後、主に経済学を学ぶためにアメリカを中心とした一流大学に留学した帰国組だった。

テクノクラート達は加熱した中国経済を冷ますために一部地域の不動産・建設投資、特定の原材料産業に対する銀行の投資を規制する方法を用いて、景気をコントロールした。

金利引き締めや貸出しの総量規制の手法は取らなかった。

これは、彼等が日本の90年代のバブル崩壊や1997年のアジア通貨危機を深く調査しており、日本の二の舞を踏まないための方策を複数のシミュレーションを用い研究し尽くしたからに他ならない。

未だにバブル崩壊の総括が出来ていない日本と違い、中国人は現実的だった。

◆上海電波塔

商社マンの吉田光一は、電波塔の最上階の展望台から上海の街を見下ろしていた。

「忙しくて来られなかったけれど、出張の初日にここに来るべきでした。街の様子がよく分かる。」

「そうですね、ここからなら地区毎の違いが見られます。吉田さんのお仕事にプラスになったかもしれません。」

そう答えたのは、通訳の葉燕琳である。

空港で燕琳の出迎えを受けた吉田は、日本の女優M.Iに似ていると思った。

白いブラウスにワインブラウンのカーデガンを肩に掛け、濃い紺色のタイトスカート姿の燕琳は、日本人のOLかスチュワーデスと言われても分からない程だった。

もともとモンゴロイドの日本人と中国人がよく似ているのは当たり前ではあるが、注意深く見れば服装や髪型の微妙なテーストの違い、それがなくとも一寸した仕草や表情の作り方で大体区別が付く。

これは、アメリカ等に住む日系人や長年現地に滞在した在外邦人の仕草や表情の作り方が、次第に現地の人のものに近付いて行き、国内の日本人のものから離れて行く事からも言える。

日本人と見分けが付き難い燕琳だったが、さすがに話す日本語には舌足らずの所があった。

「ここから眺めると中国いや上海の持つパワーが伝わってくる感じがありますね。」

「上海や北京等の大都市を離れると、中国はまだまだ貧しいです。」

「・・・・・・・」

「でも、上海から子供のころ遊んだ田畑や昔の街並みがどんどん消えて行くのは少し寂しい感じもします。」

「地域格差が激しいんですね。」

「政府は格差解消の政策を数年前から本格的に取り始めていますが、まだまだこれからです。」

「都市戸籍、農村戸籍の区別は、まだあるんですか。」

「一部で農村戸籍の人も都市に定住できる様になっていますが、政府はむしろ農村を豊かにする方に力を注いでいます。」

「地方では格差が原因で暴動も起こっているとか。何処の国でも急激な経済発展は摩擦を生むものですが。」

「私達ではどうする事も出来ない難しい問題です。ところで、明日は何時に羽田に発つんですか。」

「8時に上海を発ちます。」

「では、上海の街を歩くのは今日が最後ですね。」

燕琳が長い睫毛を少しを伏せた。

「この1週間お世話になりました。葉さんのお陰で商談も上手く進み、必ず成功するでしょう。ささやかなお礼をしたいと思うんですが、今夜はご予定がありますか。」

吉田は思いきって誘ってみた。

◆摩天楼にて

吉田と燕琳は貿易センタービルの最上階のレストランで向かい合って食事をしている。

席は大きな窓というよりも全体が窓になった壁に面していて、上海の夜景が美しかった。

足元にも境無く夜景が繋がっているので、そこから落ちそうになる感覚もあったが、それもこのレストランの演出の一部だった。

「葉さんが日本に留学したのは何年前ですか。」

「こちらの大学を出てすぐでしたから、5年ぐらい前になります。日本語学校と大学に2年通いました。」

「専攻はなんですか。日本文学と世界史です。」

「東京の印象は。」

「そうですね、皆忙しい様子ですね。もっとも上海も最近は変わりませんが。あと表参道の街並みは素敵です。よく友達とウインドーショッピングをしました。」

「葉さんはワインでよかったですか。」

「ええ。この赤ワインは少し酸味があって、とても美味しいです。でもすぐ酔ってしまうので、いつもはグラス一杯程です。吉田さんはお酒はやはりワインですか。」

「ワインは好きな方ですが、中華料理にはやはり、特に蟹料理には紹興酒が合うように思います。」

「上海は好きですか。」

「ええ。」

燕琳の大きな目が更に大きくなったように感じられた。

「葉さんが今夜着ている服はとてもお似合いですね。最初見たとき目を見張りました。」

「ありがとうございます。」

燕琳は、はにかんだ様に少し俯き、青いチャイナドレスの裾を直した。

少し違う青い糸で、目立たぬように一面に花の刺繍が施されていた。

「吉田さんは結婚はなさらないんですか。」

「ええ。色々と忙しくて、30半ば過ぎの今まで中々機会がありませんでした。」

「またお会いできると良いですね。頂いた名刺のアドレスにメールを差し上げても良いですか。

「もちろん喜んで。必ず返信致します。そうだ、今日は葉さんのために詩を作ってきました。」

「まあ、素敵。」

吉田はウエイターに鞄を持って来てもらうと中から色紙を取り出した。

色紙に書いてあるのは、漢詩を日本語で読み下したものだった。

 「勃興 −上海にて−」

 摩天楼より望む 往時の魔都

 河口を往来す 東西の船

 曲折を経て 再び栄華の道

 古来勃興は危うきを孕むと聞く

 願わくば平和裏に栄えよ

 発展と調和、天帝共に望む所

「中国語は読み書きできないし、学生時代は漢文の授業は興味が無かったんで、言わば野狐禅のような代物ですが、自由律漢詩と称して旅先で興が乗ると無手勝流で手帳に走り書きして作ったりします。今日の昼、電波塔で葉さんと眺めた上海の街が印象に残ったもので。」

「漢詩では絶句や律詩のいわゆる近体詩が出来る唐代以前は、比較的形式に囚われない古体詩も詠われており、その中に更に長短句混在の雑体と言うものも在ったと言います。」

「戦乱の時代の英雄等は雑体を好んだと聞いた事があります。

韻も踏んでいないので冷や汗ものですが、例え偽物であっても、漢詩を詠むと何故か浩然の気が身体から湧き出る感があります。

日本の短歌に益荒男振りというのがありますが、短歌や俳句ではどうしても瑣末軟弱に流れてしまう気味があります。

漢詩は西洋の詩歌と比較しても、天下国家を盛り込み易いと思われるのは、例えば三国時代随一の英雄、曹操が同時に当時冠たる詩人であった様にその歴史によるのかと考えています。

反面、中国語は分裂語に属し、膠着語である日本語、屈折語である英語等に較べて繋ぎの言葉が無く、幾通りにも読める事が逆に儒学を訓古学と化し、歴代中国王朝の政治が硬直化した一因となったのかもしれません。」

「・・・・・・・」

「ごめんなさい。ムードも何も無い無粋なもので。」

「いいえ、吉田さんが中国に深い関心を寄せてらっしゃる事がよく分かりました。ありがとうございます。13億人を代表して御礼を申し上げます。」

燕琳は少し怒った様子だった。しかし、その表情はワインで紅潮した頬と相俟って逆により美しく見えた。

2人は、レストランのある貿易センタービルを出た。

「少し散歩しましょう。」

「なれないお酒で、酔ってしまったみたいです。」

燕琳の足取りが僅かだが覚束ない。

「酔い冷ましに河辺を歩きましょう。」

河辺につくと、対岸には戦前の列強の租界時代のビルが林立しライトアップされていた。白いベンチは地元のカップルで占領されていた。空いているベンチに腰掛け少し休んだ。

「今日の事は忘れません。素敵な夜でした。」

「必ずメールします。」

「約束の証拠を下さい。」

「えっ。」

少し驚いた表情を見せる燕琳の肩を抱き寄せ、吉田は彼女の髪を掻き揚げ、唇を合わせた。

流行りのツヤのある口紅の塗られた燕琳の唇は、小振りながら少し厚みがあり、そして柔らかだった。

吉田の舌を受け入れ、躊躇いながら応じてきた。

吉田の腕に当たっている燕琳の形の良い胸の鼓動が、チャイナドレスを通して伝わった。




◆老師

◆国際電話

馬は、日本に一本の国際電話を掛けた。

「はい、高岡事務所です。」

「私は上海の馬と申す者です。高岡先生にご相談したい事がございましてお電話致しました。先生にお取次ぎ頂けますか。」

「高岡は只今講演で仙台に行っておりますが、連絡を取る事は可能です。」

「ありがとうございます。実は私は日本語は片言だけでして、ここからは英語でお話しても良いでしょうか。」

「オーケー サー。アンド ウジュー ライク トゥ リーブ ユア メッセージ トゥ マスター タカオカ?」

馬から国際電話を受けた事務所秘書の小川遥子は仙台の高岡の宿泊するホテルに連絡し、馬からホテルに直接電話を入れさせるよう書生の高岡から指示を受けた。

高岡の部屋の電話が鳴った。

森田が取って、高岡に繋いだ。

「もしもし、高岡です。」

「お久しぶりでございます。上海の馬大石です。」

「おお馬君、いや馬将軍。今回は随分と大変な事になったね。」

馬の日本語が片言と知っている高岡は、北京語で応えた。

「実は今回の事について先生に是非ご相談、ご教示頂きたく、ご連絡差し上げた次第です。」

「結構だが、この電話は盗聴されているのではないかね。」

「その可能性もあり、具体的な話は出来ません。そこで大変失礼ながら先生に上海に来て頂きたいのです。」

「分かった。細かい事は聞かん。後は森田と詰めてくれ。」

森田は高岡のように中国語は話せない。英語で10分近くやり取りをして電話を切った。

高岡正源は、陽明学者にして政治思想家、また歴代の首相の指南役的な存在でもある。

もっとも、その交わりは時の首相により濃淡はあり、「水魚の交わり」と称して高岡を煙たがる者も多いが。

高岡は、当然に漢籍全般に通じているが、仏典、神道を含む東洋哲学は元より、ヘーゲルを中心とした西洋哲学全般、歴史、宗教、政治、経済、経営、軍事、芸術他、森羅万象にも通じており、政治家、財界首脳、全国の経営者が教えを乞う。

国外にも高岡の見識を慕う者も多く、馬大石もその一人であった。

10年程前、当事まだ少佐の時に高岡の著書を読んでいた馬が、中国に視察旅行に来た高岡をホテルに訪ねて来たのが出会いであった。

高岡は、元々は政治学者であったが、西洋から発祥した政治学の限界を悟り30台で東京大学の助教授を辞め、陽明学を中心とした諸学の研究に没頭すると共に、私塾を興して以来40年、齢70半ばの今日に至っている。

◆甲板にて

上海には、便数は減ったが情勢が小康状態を得て、定期便が再開している。

上海浦東国際空港に羽織袴姿の高岡と詰襟の森田がタラップから降り立つと、黒塗りの高級車紅旗が迎に来ていた。

他の乗客は、入管手続のためバスに乗り空港ビルへ向かった。

階級章から佐官クラスと思われる軍人が近付いて来て高岡等に敬礼し、紅旗へ導くとドアを開けて二人を乗せると運転手に指示してそのまま空港の敷地内から高速道路に乗って、軍港まで案内した。

軍港に着くと司令部のビルから中将の軍装をした馬が迎えに出てきた。

「高岡先生、遥々上海までようこそおいで下さいました。この度は無理を言いまして申し訳ありません。」

「馬将軍、ご無事で何よりだ。情勢も落ち着いて来ている様だね。」

「先生もお元気そうですね。さあ、未だ日が落ちていませんが、よろしければささやかな宴の用意をしております。」

「そうか、その前に少し軍港の中を案内してもらうと有り難い。」

馬は、高岡らと紅旗に乗り込み、軍港内をゆっくり一周した。

空母、巡洋艦、駆逐艦、大中小の潜水艦等が、多数停泊していた。馬はそれらの艦艇について簡単な説明をした。高岡は軍事全般にも通じているが要所要所で馬に質問し、上海政府の海軍戦力の概要を把握すると共に、この機会に兵器の知識を更新した。

港内を一巡し終わり、賓客もてなす広いホールに通されると、宴席が用意されていた。

小さな円卓に高岡、馬、書生の森田の三人が着き、甕に入った老酒を馬自らが盃に注ぎ乾杯をすると、前菜に続き次々に料理が運ばれて来た。

「この上海蟹は、今が丁度旬に当たり身が詰まっています。」

「なるほど、美味だ。上海蟹には日本の蟹にはない独特の甘味と滑らかさがある。」

高岡も馬もいきなり、生臭い話はしない。

食、酒、詩、美術、故事来歴の話をし、会話を楽しむと共に相手の教養とセンスを確認しあう。

宴が始まり少し経つと、青や赤のチャイナドレスを着た女たちが現れ、胡弓や二胡を奏でたり、舞踊と歌を披露した。女たちは皆、顔立ちと立ち振舞いが美しかった。

「二胡は西域の楽器です。この音を聞くと故郷の事を思い出します。」

「おお馬将軍、戦時にここまでの歓待を受けるとは。」

「せめてもの私の気持ちです。今夜はご堪能下さい。」

二時間足らず宴を楽しんだ後、馬は高岡を巡洋艦長嶺に案内した。

甲板に出ると、満天の星空に半月が掛かっており、9月の風が心地良かった。

「高岡先生、私はこうやって星座を見上げると何時も、我々人間の小ささと、それを大きく越えた人の運命や歴史の行く末を支配する大きな意志の存在を感じるのです。」

「西洋人も星座の配置で吉凶を占うと言うから、そう言った感情は人類普遍のものなのだろう。」

「先生、私は迷ってるのです。中国は再び統一されるべきなのか、あるいはこのまま分裂して行く事のどちらが本当に民のためになるのかが私には未だ分からないのです。」

「我々外国人は他国の運命を云々すべき立場ではない。中国のことは結局君達中国人が決める他はない。」

「・・・・・」

「君が中国人であるように、私は日本人である。その立場から言うと中国が分裂し牙を抜かれる事は日本の国益に適うと言える。

君は、私が数年前に日本の雑誌に書いた日本の外交戦略についての論文は読んでいるだろうか。」

「『我が国の外交戦略の今後』ですか。読んだ上で保存しております。」

「あそこに書いた事が、日本の立場から見た外交戦略のグランドデザインだ。」

◆日本の戦略

少し長いが、以下に高岡の論文を全文転載する。

■我が国の外交戦略の今後 −緊張する東アジアと多極化する世界−

「日本は、米国の力を利用すると共にアジア諸国を味方に付けて中国の牙を抜き、アジアの盟主としてやがて来る米国の没落と多極化世界に備える事を外交戦略のグランドデザインとすべきである。」

世界は現在、冷戦終結から米国の一極支配を経て、多極化・流動化に向いその流れが加速している。

日本もそれに応じて、統合的な中長期的外交戦略を持つ事が不可欠である。

しかし、個別的、対処療法的な外交政策は在れど戦略は不在といえるのが現状だろう。

戦略とは、勝つための、差別化された、決然とした覚悟を伴なう包括的シナリオであり概略作戦書でなければならない。

この観点から、以下に外交を中心とした国家戦略についての筆者の考えを述べる。

◆情況と趨勢および基本戦略◆

先ず、我が国と世界を取り巻く情況と趨勢を整理する必要がある。

筆者は、以下のように整理している。

−情況と趨勢−

◆北朝鮮の暴発可能性、中国の軍事力増強等の東アジアの不安定要素の増大

◆EU、中国、インド、ロシア、ブラジル等の勃興による中長期的な米国の相対的衰退と一国支配の終焉、それに伴う世界の多極化と世界各地の地域紛争の増加

◆上記に歯止めを掛けるべく行われる、イラク戦争のような米国の単独行動傾向の増大

これを受けて、我が国が採るべき基本戦略は次のようなものでなければならない。

−基本戦略−

◆日本は、米国と共同してその力を利用すると共に、国際社会なかんずくアジア諸国を味方に付け、中国等を囲い込みその牙を抜くべきである。

◆日本は、再びアジアの盟主を目指すべきである。

ただし、今回は武力に拠らず、周囲から推される形でなければならない。

◆日本は、やがて来る多極化世界に向けて、新世界秩序建設を模索すべきである。

◆中国の囲い込み◆

中国は、領土領海については、台湾独立問題、チベット等の辺境民族の独立問題、南沙諸島、尖閣列島等の周辺諸国との領有権問題等を抱え、明らかな領土拡張傾向を示している。

また、バブル崩壊の危険、沿海部と内陸部の経済格差、エネルギー・食糧・水不足、環境汚染、一党独裁体制の矛盾、人権問題、元切り上げの必要、知的所有権の遵守、劣悪な労働条件の改善等々の様々な問題が指摘されている。

しかし、今後曲折を経ながらも、経済的、軍事的に強大な国家となって行く事はほぼ間違いないだろう。

我が国にとって、中国の経済発展自体は、隣接する生産工場及び巨大マーケットの拡大としてメリットをもたらすものである。

しかし、一党独裁体制の中国が経済力と軍事力によって我が国とアジア諸国を支配する事は大きな脅威でありデメリットである。

従って、日本の採るべき戦略としては、中国の経済発展を許容しつつ一党独裁体制を終わらせ民主化させ、軍事的に突出させない事、即ち中国の牙を抜く事である。

民主化しても侵略戦争をしたり、反日である国は幾らでもあるが、民主体制では行き過ぎた動きに対しては、やがて時間の経過と共にバランスが働き揺り戻しが起こる傾向がある。

中国は現在発展途上にあり、貧富の格差についての不満が鬱積し各地で爆発しているが、政府が適切に対策を打つなら国民は経済発展を優先させ開発独裁体制を甘受し、民主化要求が具体的なパワーとなるのは暫く先になるだろう。

従って当面は中国の軍事力の突出を押さえる事が主眼となる。

このためには、米国の軍事的プレゼンスが不可欠であるが、米軍は石油の出る中東と西アジア世界以外から兵を引き始めており、その穴埋めは日本が中心になってやらざるを得ないし、そうすべきである。

また国際社会なかんずくアジア諸国、ロシア、インドを味方に付け、国際世論として、あるいは経済的、軍事的に中国を囲い込み牽制する事が必要である。

なお、喫緊の課題として北朝鮮が核実験・核兵器保有へ向けて動いている。

米国による体制保障と引き換えにした北朝鮮の核兵器保有放棄が、現時点で我が国にとって最善のオプションであり、これに向け各国を主体的に誘導すべきである。

また、拉致問題は、北朝鮮が核抜きに向かう中でないと実際の解決は難しい。

◆アジアの盟主◆

世界の各地域にとって、その全体の利益と安全保障について主体的・中心的に責任を負う盟主(リーダー)は不可欠である。

日本がアジアの盟主とならない場合、中国が盟主の地位につく事になるが、少なくとも一党独裁体制のままの中国にそれを許すわけには行かない。

従って、日本はアジアの盟主を目指すべきだし、目指さざるを得ない。

ただし、今回は武力に拠らず、周囲から推される形でなければならない。

そのためには、先ず歴史認識問題を整理する必要がある。

明治の開国から太平洋戦争敗戦に到る時代を総括をした確固たる歴史観の確立と、それに対して国際社会なかんずくアジア諸国の理解を得る事が不可欠である。

先の戦争は、弱肉強食の植民地争奪戦の中で欧米に対しては覇権を掛けた普通の戦争、アジアに対しては侵略戦争の要素が強かったとした中曽根元首相等の歴史観は概ね妥当なものである。

東京裁判とサンフランシスコ講和条約については、歴史的経緯から見て不当な面があり、何れは国際社会に対し正式に見直しを求めるべきだが、少なくとも当時の記憶のある世代が存命する今後20年間は声高に行う時期ではない。

さもなくば、国際社会から孤立する恐れがある。

次に、安全保障面であるが米国の軍事的プレゼンスが減る中で、日本がその穴を埋めアジアの安全保障に責任を持つためには、集団的自衛権の行使を可能にすべく憲法改正をする必要があるだろう。

◆米国の衰退と多極化◆

9・11同時多発テロを契機に米国は、アフガン攻撃とイラク戦争を起こした。

アフガン攻撃については、タリバン政権とアルカイダの関係があったが、イラク戦争については、フセイン政権とアルカイダとの関係、大量破壊兵器の保有は何れも無かった事が現在実証されており、大量破壊兵器開発の危険性もほぼ否定されている。

国民を戦争に導くためには、どの国、どの時代でも危機感を煽る必要があり、大量破壊兵器の危険性はそのための方便として使われた。

イラク戦争は、米国が石油ドル決済体制を揺るがすサダムフセイン退治と石油資源と石油、軍事、復興利権獲得のために始めた戦争である。

大きく観れば、EU、中国等の勃興により米国が相対的に衰退する事に歯止めを掛ける必要に迫られたのが戦争目的だった。

これに多分に後付けながら、開戦直前に唱えられ始めた中東民主化の大義が加わる。

イラク戦争と今後予想されるイラン攻撃等、これらを含む中東強制民主化とも言うべき「拡大中東構想」は、かつての大日本帝国による大東亜共栄圏に似ている。

新興工業国としての生存のため資源と市場を獲得するために始められた満州事変以降の戦争は、「八紘一宇」やアジア諸国を欧米の植民地状態から解放すると言う大義が掲げられ、これらが表裏一体となっていた。

日本は、太平洋戦争で緒戦の勝利に引き続き敗戦し、その結果、欧米列強のアジアからの撤退 → 日本の撤退 → 欧米列強のアジア復帰に抗した独立戦争 → アジアの独立という弁証法的展開が起こった。

米国は、「拡大中東構想」により軍事力の行使やそれを背景にした米国スタンダード・ルールの押し付けにより、自国の衰退に歯止めを掛ける事を図っている。

また、中東の石油を押さえれば、石油を輸入に頼る中国の増長を戦わずして制する事が出来、一石二鳥であるとも考えている。

しかし、拡大中東構想は軍事費の面やテロ等の安全保障面で持続的なシステムとは成り難く、冷戦後続いた米国の一極支配に代って世界は次第に多極化して行くと見るのが自然である。

◆新しい世界秩序と日本◆

さて、このような中で新しい世界秩序の仕組みが打ち立てられなければならない。

世界が多極化して行く中では、国連等の超国家機構の機能強化が求められるようになるだろう。

中長期的な課題としては、国際紛争への予防的介入や国連常備軍の設置等の権限・実力強化の面と、安保理常任理事国の増席や総会での圧倒的多数が反対する場合の拒否権の制限等の加盟国の納得性の向上の2つが大きな柱になる。

こうした中で、日本は常任理事国に加わる事を本気で成就させ、安保理が決議した場合の集団的安全保障では武力行使、部隊の供出等に積極的に協力すべきである。

一方それと並行して、防衛力を強化し米国への過度の依存から脱却し、主体性を持った自主防衛をすると共に、安保理が決議するまでの間、アジアで集団的自衛権の行使も可能とすべく法整備をしておくべきである。

さもなくば、中国等の増長を許し、アジアの盟主足り得ない。

ただし、イラク戦争のような米国の戦争に自動参戦させられないように、憲法改正に於いては国際貢献と集団的自衛権の行使を条文を変えて書き分けて置くと共に、集団的自衛権の適用条件を明記して置くべきである。

核兵器に関しては、現状のNPT(核不拡散条約)体制は心許ないが、日本はこれを遵守して核保有を放棄し、核への防御としては米国の核の傘とミサイル防衛の充実によるのが適当である。

さもなくば、世界の核拡散は更に進む事になり日本は倫理的に非難され、唯一の被爆国という使い方によっては強力な切り札となり得る外交プロパティを失う。

一方同時に、 NPT体制の許す範囲で比較的短期間で核兵器に転用可能な原子力技術とミサイルに転用可能なロケット技術を確保して置き、場合によっては核武装出来るが敢えてそれをしないというスタンスを取るのが、現状最も国際的発言力を高め国益に適うだろう。

米国が何時までも、またどんな条件でも日本に核の傘を提供する保障は無い。

また、スーツケースで持ち運べるような「使える核」は世界に拡散する方向にある。

国際機関による核管理の強化、核を無力化する監視・破壊システムの開発、核廃絶への具体的道筋作りが今後の国際社会の課題である。

前述したように、日本はアジアの盟主を目指すべきだが、国連の強化に加えて、横の連携、即ち東南アジア諸国に加えてイギリス、米国、オーストラリア等の海洋国家群と結んで、中国、ロシア、大陸ヨーロッパ等の大陸国家を牽制する事も必要である。

古来、大陸国家は、海洋への出口を確保しようとして海洋国家と利益が対立する傾向がある。

明から様な対立構造は、双方にとってマイナスだが、暗黙の牽制によって住み分けを図るべきである。

日本の安全保障は、このようにアジアの連携、国連、海洋国家連合の3つによって担保されるべきであろう。

以上縷縷述べてきたが、国際情勢は予測し難くまた理屈通りには進まないものである。

特にたとえ大まかな傾向が予想できたとしても、事態の起こる時期や規模、前後関係を予測する事はほぼ不可能である。

しかし、仮定を立てて基本戦略を練って置く事は国家にとって不可欠である。

事態が変われば、戦略を修正すればよい。

戦略無く行く事は、海図無き航海に等しく、流れに身を任せる主体制の欠如した態度に他ならない。

戦後60年は米国依存でこれでも通用したが、歴史的に観れば異常な情況である。

日本は、経済規模、人口及び総合的な国力で大国であり、自立して戦略を携えて自国の生存と繁栄を確保すると共に、周辺諸国や国際社会に対して応分の責任を果たす義務がより一層高まろう。

以上が、高岡の論文である。

◆彗星

高岡が続けた。

「また、ヘーゲルは、歴史を自由を目的とした絶対精神の自己展開として捉えた。

これを私の言葉で言い換えると、人類の認識力の拡大とそれを可能ならしめる国家社会の建設が歴史の向かうべき方向と言う事になる。

いずれにせよ、民主化は歴史の必然と言える。

生活レベルを先進国並に引き上げたいというヘーゲル言う所の『対等願望』が満たされるまでは、政府が民主制を犠牲にして開発独裁的体制を続けようとしても、国民もある程度はそれを甘受する。

しかし人間の持つ自然の性である別な側面での『対等願望』やマズローの唱える『所属・愛情欲求』により、民主化要求はどの国民間にも必ず噴出する。」

「先生は二つの事を仰いました。中国が分裂し牙を抜かれる事は日本の国益に適うという事と、民主化は歴史の必然であると言う事と。」

「日本の国益と中国の国益は当然に矛盾対立する部分が大である。また国家としての中国と民族としての中国人の幸福もまた必ずしも一致するとは限らない。

これら全てを踏まえた上で君が中国の将来を開いて行け。

その時、二人が見上げている北辰(北極星)の近くにすっと彗星が現れて消えて行った。吉兆だろうか。

少し冷えてきた。

甲板から戻ると、艦橋の入り口に森田が片膝を着いて白木造りの日本刀を立てて師の帰りを身じろき一つせずに待っていた。

馬は北京政府との対決を辞さない決意を固めつつあった。




◆経世済民

◆核の雨

黄海海戦に破れ威信を失った北京政府は、一転し上海政府に対し核弾頭ミサイルの使用を辞さない事を宣言。

再び、馬に北京政府への帰順を要求。

◆国際世論

馬は、CNNの取材を受ける事にした。

「アイム グラッド シー ユー」

取材クルーに続き執務室に現れたのは、若い女性インタビュアーだった。

こげ茶色のスーツにセミロングの金髪が良く似合った。

「アイム グラッド シー ユー、トゥー」

国際世論に訴えつつ、

北京政府に停戦を提案。

◆停戦調停

秘書が携帯電話を取り次いだ。車の中だ。

馬からだった。

小熊が携帯を受け取ると、馬の軍人らしい響きの有る声が聞こえてきた。

「閣下。お久しぶりです。実はお願いしたい事がありご連絡しました。」

「私で、将軍のお役に立つ事があれば。」

「我々上海政府は、国連安保理に停戦調停を要請します。その際に各国の間を取り持って頂き、その停戦調停が実質的なものになるように閣下にご尽力頂きたくお願い申し上げます。」

「分かりました。出来るだけの事はして見ましょう。」

小熊は、車を官邸に向かわせ首相の伊藤に馬の要請を伝え、外務大臣をアメリカに派遣し、EU諸国に元首相の政府特使を派遣する事を提言し閣議決定する承諾を得た。

小熊の目的は、停戦調停が成就したら直ちに大規模なPKOを組織し送り込む事を前提に、中国各政府に調停特使を送る国連決議を通す事だった。

中国は広い。

小熊の目論見では、アメリカ、EU、アジアそれぞれから1個師団に当たる1万人を供出させ計3万人を各停戦ラインに張りつかせると言うものだった。

日本の提案に対して、アメリカは中東に兵を割いている事を理由に、EUも供出兵力と費用負担の面で難色を示したが、停戦調停自体には同意を得る事が出来た。

安保理の席で、上海政府からの要請を受ける形で中国各政府に調停特使を送る国連決議について討論が始まった。

日本は今期は非常任理事国ではなかったが、オブザーバーとして外務大臣が出席した。

当事国である北京政府代表は欠席し、決議は可決した。

早速、中国各地方政府に調停特使が送られた。

何度かの調整の末、速やかに停戦し2週間後からPKOを受け入れる停戦案が作られ、中国各地方政府が同意した。

PKOは周辺国であるアジア諸国を中心に構成される事、しかし歴史的経緯から日本が主体とならない事が条件とされた。

馬が、北京政府の顔を立てる形で、戦闘機数機に護衛された輸送機で北京首都国際空港に降り立ち、空港に張られたテントの下で世界各国から集まった外務大臣級の政府オブザーバーと報道陣を前に停戦調停に、北京政府代表の湖首席と共にサインをした。

上海政府代表の馬、北京政府代表の湖が、堅く握手をすると大きな拍手が起こった。

国連事務総長が「誠実に停戦が守られ、PKO配備が速やかに着実になされる事を望む」旨の演説をして停戦調印式が閉め繰られた。

馬は、すぐに輸送機に乗り上海に帰った。

◆派兵

やがて、日本政府は、国連の要請を受ける形でPKO本体業務として自衛隊(国連待機部隊)を中国本土に派遣した。

国際貢献に武力を供出出来るようにする事と、制限付きの集団的自衛権行使を容認する憲法改正の議論は与野党を越えた形で進んでいたが、この時点で憲法は改正されておらず戦後のマッカーサー憲法のままであった。

社会党、共産党が激しく反対したのは予想の通りであったが、現憲法下ではPKO本隊業務への自衛隊派遣が許されないとして保守陣営である野党自明党と与党民進党内部からも反対が湧き起こっていた。

政府は、国連指揮下の活動であれば、武力の行使も集団的自衛権の行使に当たらない事を一貫して主張した。

時間が無いため、国会の同意を得る事は考えなかった。

世論調査でも派遣の賛否に五分五分と言う結果が出たが、押しきった。

マスコミは派遣反対の論陣を張ったが、首相の伊藤のハト派的キャラクターと丁寧な説明がそれを緩和した。

もし、実質的な推進者である小熊が正面に出ていたら、マスコミの凄まじいバッシングが起こり世論によって派遣は不可能になっていたかもしれなかったが、小熊は徹底して伊藤を正面に立てる事によってマスコミの攻撃をかわした。

停戦調印から2週間後、予定通り先遣隊が組織され4百名の自衛隊員が山東省と江蘇省の間の徐州に近い土地に降り立った。

小熊は、追って1週間後に隊員の激励の為に中国の土を踏む。実質的には閲兵であった。

青い国連旗のはためくキャンプで、背広姿の小熊を前に隊員が整然と隊列を組んでいた。

「閣下に向かって敬礼!」隊長の号令が掛かり一斉に敬礼した。

「諸君!諸君は日本の兵であって、日本の兵ではない。日本の兵である前に先ず国連の兵である。アジア諸国が、そして国際社会が諸君を見ている。

平和構築、平和維持の大義のために全力を尽くし、もって世界に向け日本の国威を発揚して欲しい。」

隊員達も小熊が今回の派遣の実質的な推進者である事を認識しており、演説を聞いて一気に士気が高まり歓声が上がった。

日帰りの旅であった。小熊は、帰りの機中から中国の地を眺め感慨に浸っていた。

夕暮れの中、都市の明かりが見えた。

ここから一番明るく見えるている光の塊は、上海の街だろう。

戦後初めて日本の武装部隊が中国の土を踏んだ。

ここまで来るのに、何年経っただろう。

政治家になり40数年、理想の国作りを志して与党を離れ、曲折を経て一時は二度と政権を取る事は出来ないと諦め掛けた時もあった。

小熊は慣れぬ漢詩を詠んだ。

中国の地は、時に人を詩人にするようだ。漢詩人に。

多少の感傷が混じるも読者は許し給え。その叙情は小熊の心底からのものであるから。

「青雲」

機窓より見る異国の灯火

今朝、閲する義旗の精鋭

青雲の志、未だ途上に在り

何れの日か 四海に大義を敷かん

小熊は、北の空を見上げた。七つの星に囲まれた北極星が一瞬輝いたように見えた。

◆歴史の行方◆

◆国の形

取り敢えず停戦は実現した。

しかし、今後の中国の形は決まらない。

馬は小熊に連絡を取った。

今の中国には連邦制が相応しいと思う旨を伝えた。

「承知しました。私の考えも将軍のものと同じです。中国の運命は中国人が決める。そのための枠組み造りのためなら尽力致しましょう。」

「よろしくお願い致します。」

小熊の仕事は早い。

首相の伊藤の了解を得ると、各国首脳に直接根回しをして、安保理の中に事務総長を議長とする委員会を造り、そこで中国各政府の意見調整をする筋道を付けた。

やがて、馬はその枠組み「国連安保理中国特別委員会」出来ると早速連邦制を提案。

一年後に連邦制に移行する同意を各政府から取り付けた。

馬と北京政府代表の湖、それに今度は審陽政府代表の張と旧少数民族自治区代表が集まり、渤海に停泊する空母「鳳雛」の上で連邦制移行の調印式を行った。

馬は、ヘリコプターで着艦した。

今度は甲板上のテントの中に宴席が用意されていた。

酒が強くない馬も、老酒を空け何度も乾杯を繰り返した。

◆未来へ

上海電波塔の上で、若い男女が話し合っている。

この小説の中で、何度か登場した吉田光一と葉燕琳である。

「貴方の国も連邦制という一応の形に落ち着きそうですね。」

「でも、具体的な事はまだ決っていないです。」

「そう、各地方政府の権限、とりわけ通貨の発行権、税金と予算、陸海空軍を同切り分けるのか。極端言うとアメリカの州のような弱いものになるのか。旧ソ連のCICS(独立国家共同体)のようなものになるのか。ちょっと極端過ぎるけど。」「その中間のいずれかなんでしょうけど。」

「いずれにしても、中国の人達がこれから試行錯誤をして、造り上げて行く事になりますね。中国の未来は貴方達の手に。」

「そして、私達の未来は?」

「それは僕たちが、作って行く。」

吉田は、燕琳の細い体を引き寄せると、ゆっくりと唇を重ねた。(了)

(了)

−ジャンク−

さて、今日、例えばイラク戦争を巡り世界の言論は喧しいが、どうしてもそれらは双

方自陣営に向かうものに留まり勝ちで、相手陣営にも届くものになっていない。

筆者は、ここに散文の限界性を感じる。

世界で活躍するミュージシャンの坂本龍一氏が、先日自作の曲「戦争と平和」の日本

語詞を募集していた。

音楽の事はこれまた疎いが、漢詩によって天下国家を盛り込み、それに何らかの曲を

付ける事は可能だろうか。

それによって、広がりと現実性を持った、大きく世論を方向付けるツールが出来ない

ものだろうか。

なお、実際は相互に重なる部分が多いが、便宜上、経済通商面、安全保障面、外交面に分けた。

◆経済通商面

中国は魅力的な生産基地であり、巨大消費市場である。

ここへの進出に臆病過ぎるのは、企業に取っては戦いの放棄とも言える。

しかしながら、今後の元切り上げと賃金の上昇、中国のバブル崩壊の危険、WTO加盟後であるも法治の未整備と人治による契約や課税面等の不確実性等を考えれば、私企業においてはこれらのリスクを計算し、余程体力のある企業でなければ逃げ足の早い投資に止めるのが適当だろう。

これ等はあくまでも個別の私企業の判断の問題であるが、一方でODAを使っての中国への新幹線の売り込みの計画が、(1)日中友好の象徴とする、(2)日本企業の受注機会増加、(3)新幹線の高速鉄道スタンダード化、等を理由に財界・政府主導で積極的に進められている。

しかしながら、当のJR各社は中国側の運行保守体制や契約面でのリスクから揃って否定的である。

実務を司る事になる当事者がそう見る以上、国際版の第三セクター問題のようになる可能性が相当に高い。

従って、この件は商算ありと見る積極的企業・業界が身銭を切り自らのリスクだけで行うべきプロジェクトでこそあれ、国民の税金を使って行うべきものではない。

新幹線に限らずこの種のプロジェクトでは、企業・業界益と国益は相互に関連はあれども基本的にリスク負担の面では峻別されるべきである。

次に「東アジア共同体」構想についてであるが、中国がASEAN諸国との2国間FTA(自由貿易協定)で先行している以上、我が国は東アジア共同体構想を積極的に推進する事によって域内関税撤廃でのメリット享受を目指すべきである。

しかしその際、原則農産物も自由化するも食糧安保を確保するための仕組み作り、社会的コストを考慮した労働者受容れの高度技能労働者への限定と出入国管理の強化、中国の影響力の過大を防ぐためインド・台湾・香港・オーストラリア等への加盟国拡大と米国を関与させるべき事等には留意すべきであろう。

総じて「東アジア共同体」は、中国の影響力増大の道具とさせる事無く、牽制の道具とし、中国封じ込めと言っては言葉が過ぎるが、中国囲い込みを図るべきである。

◆安全保障面

領海侵犯等については、これを防ぐ艦船等の充実、排除手順の整備等を伴い厳しく対処するべきなのは言うまでもない。

しかしながら、05年度予算での政府・財務省の装備削減方針はこれに逆行しており、政治主導での修正がなされるべきである。

また、中国の核ミサイルの照準が日本を向いており、日本がNPT(核不拡散条約)  により核を持たない選択をしている以上、ミサイル防衛(MD)を充実させる事は喫緊の課題であり、その予算7000億円〜1兆円は惜しむべきではない。

これは、当然ながら第一には北朝鮮の暴発に対する抑止力となる。

次に、前述した「東アジア共同体」構想においては、どこまで有効なものとなるかは別として、地域紛争の緩和、テロ対策、核兵器配備の縮小、昨年末のような津波被害への対処、その他突発的事態の防止のためにも、信頼醸成と安全保障の枠組作りにも取り組むべきである。

東アジア地域の安全保障については、現在米国のプレゼンスは欠かせないが、米国が負担軽減のためそれを弱める傾向がある以上、各国との話し合いの下、その空白を埋めるため日本がプレゼンスを高めて行くべきだろう。

そうしなければ、中国の軍拡傾向等を伴いこの地域のパワーバランスが崩れ不安定地域となる恐れが大きい。

◆外交面

次に外交面であるが、首相の靖国参拝問題が日中間の最大の懸案となってしまっている。小泉首相が就任後最初の参拝を8月13日に行った足して2で割ったような対応が、問題をより拗らせてしまった。

最初の参拝を正面突破で8月15日に行い、同時に内外に向け諸戦争と植民地支配等について、村山談話のような単なる表面的な反省に止めず、その功罪を近代世界史の大きな鳥瞰図の中に位置付け総括された歴史観を表明するべきだったが、今となっては手遅れであり、また元々小泉首相にそれを求めても無いものねだりであった。

今後の参拝については元より内政干渉されるべき問題ではないが、A級戦犯合祀の下での参拝が外交問題化し戦前の全肯定と受け止められ兼ねない以上、中国を含めた諸外国への前述の歴史観を基にした説明が欠かせない。

筆者は、本来はその説明内容こそが重要であり、実際に参拝するかどうかは、それを行った上で諸般の事を勘案して判断されるべき問題と考える。

また、対中ODA廃止削減問題については、有人宇宙飛行実験をするまでの国に対しては当然廃止して行くべきである。

しかし、実質的に戦後の準賠償という意味もあった事を考えると、急激な削減廃止は中国のナショナリズムに火を付け、一旦放棄した戦後賠償問題をまた持ち出してくる恐れも十分にあり、特に今年は第二次大戦後60年に当たり慎重な対応が必要である。

ODAの環境対策事業等への特化 → その基準の強化及びそれとバランスを取ったODA額の削減 → ODAの廃止のプロセスを、何年掛かりで行うかを含め日中間で粘り強く詰めて行く必要がある。

台湾の独立問題については、中曽根元首相が唱えている様に、10年間の台湾独立宣言の封印と中国による台湾不可侵で合意を結び、良い意味での先送り戦略をとるのが当事国および周辺諸国の利益に最も適う。





しかしながら、米国が中国の勃興を警戒している事も事実であり、もし中東情勢で比較的余裕が出る状態が実現できれば、東アジアへの関与を高めてくる事が考えられる。中東情勢と東アジア情勢はこのように米国によってリンクしている。



台湾の独立問題については、中曽根元首相が唱えている様に、10年間の台湾独立宣言の封印と中国による台湾不可侵で合意を結び、良い意味での先送り戦略をとるのが当事国および周辺諸国の利益に最も適う。

中東情勢と米国の動向

中国が今後どう行動するかは、当然ながら米国が東アジアにどう関わってくるかに大きく左右される。




−シナリオ−

・北朝鮮は金正日亡命で小康状態


−ストーリー−

これに、太平天国の乱や日清戦争、義和団の乱、辛亥革命、満

州事変にいたる日本との関わりを思わせるエピソードを絡めて、

諸々のキャラクターを借りた登場人物が権謀術数、組んずほぐれつする。

その背景に、中原の再統一の志と民主化の理念の葛藤、大アジ

ア主義と中国囲い込み戦略やアメリカ、EU、ロシア、イスラム、

日本との合従連衡が加わり、やがて大団円に到る。

私の政治的、現実的な意見としては、中国を囲い込んで漸進的な

民主化、連邦制等の比較的穏やかな分裂へソフトランディングさせ

るシナリオを描いていますが、小説としては群雄割拠の方が面白い。

−キャラ−

・女スパイ

・安岡正篤

・瀬島龍三

−要素−

・バブル崩壊

・経済格差、暴動、、、

・食糧、水、石油、資源枯渇

・台湾独立、チベット独立、朝鮮民族独立、内モンゴル、、、、

・米中戦争

・民主化

中国分裂は歴史の必然とも言われるが、本当に不可避なのか、不可避だ

とすればどういう工程で分裂するのか、また分裂後はどうなるか。

From: "K.Sato" <ew7k-stu@asahi-net.or.jp>

To: <oosaka@quickml.com>

Sent: Thursday, December 23, 2004 2:37 PM

Subject: 中国分裂をテーマに冒険小説

加藤さんの快復をこころからお祈りします。

ところで、中国分裂をテーマに冒険小説を書こうと考えています。

坂本竜馬を主人公に、幕末を書こうと色々研究してきましたが、

すればするほど、どうも幕末は事件もその背景の思想も複雑で

ちまちましていて、司馬のような思いきった単純化をしないと小

説化には不向きかもしれません。

今は、青い目に幕末がどう映るかの感覚を得るために、たまたま

昔、主に英語の勉強用に買った

[SAKAMOTO RYOMA AND THE MEIJI RESTORATION]

BY MARIUS B. JANSEN

(1961 / COLUMBIA UNIVERSITY PRESS / NEW YORK)

を読んでいますが、幕末は長期テーマとする事に決めました。

さて、それに対して大陸は大雑把で分かりやすい。

なんとか北京五輪まで乗りきった中国が、その後バブル崩壊等

を機に、群雄割拠しやがて3つに分裂し、現代の三国志を繰り広

げる。

これに、太平天国の乱や日清戦争、義和団の乱、辛亥革命、満

州事変にいたる日本との関わりを思わせるエピソードを絡めて、

劉備、曹操、諸葛公明や洪秀全、袁世凱、曽国藩、李鴻章、孫文、

勝海舟、横井小楠、宮崎韜天、石原莞爾、川島芳子等々のキャラ

クターを借りた登場人物が権謀術数、組んずほぐれつする。

その背景に、中原の再統一の志と民主化の理念の葛藤、大アジ

ア主義と中国囲い込み戦略やアメリカ、EU、ロシア、イスラム、

日本との合従連衡が加わり、やがて大団円に到る。

私の政治的、現実的な意見としては、中国を囲い込んで漸進的な

民主化、連邦制等の比較的穏やかな分裂へソフトランディングさせ

るシナリオを描いていますが、小説としては群雄割拠の方が面白い。

大陸には何かイマジネーションを膨らませ血を騒がせるものがあり

ます。

鴻全


145 :名無しさん@お腹いっぱい。 04/09/19 22:13:56 ID:1diy1TKH

中国に投資している人たちは、いつ、バブル崩壊するのか、警戒している。

皆、その時期は、2010年の上海万博が終了した時期と見ている。

もし、その時期、少しでも、バブル崩壊の兆候が見られたら、

皆、バブル崩壊を恐れて、一斉に引きに転じ、暴落し、中国バブルは終了する。

新このホストでは、しばらくスレッドが立てられません。

またの機会にどうぞ。。。

彗星 (0 , 1)

ホストj106041.ppp.asahi-net.or.jp

●中国分裂のシナリオとその後●

名前: 彗星

E-mail

内容:

・バブル崩壊

・経済格差、暴動、、、

・食糧、水、石油、資源枯渇

・台湾独立、チベット独立、朝鮮民族独立、内モンゴル、、、、

・米中戦争

・民主化

中国分裂は歴史の必然とも言われるが、本当に不可避なのか、不可避だ

とすればどういう工程で分裂するのか、また分裂後はどうなるか。

そのシナリオを客観的に語り合おう。

53 :名無しさん@お腹いっぱい。 04/08/25 09:17 ID:pwLaqTqc

>>1

民主化革命、共産党政権崩壊。

いくつかのグループに分裂し、その内の一部が

台湾と結ぶ。

57 :名無し 04/09/19 19:44:19 ID:UY8sYhp5

歴史を直視しなければならないのは中国人。

「通州事件」昭和12年7月29日

 

通州の日本人居留民に中国保安隊と暴民が襲いかかり、略奪、暴行のあげく、婦人・子供を含む日本人2百余名が

虐殺された事件である。

 事件は真夜中に起きた。中国の保安隊はまず日本の特務機関を襲い、応戦した細木中佐と甲斐少佐を銃殺し、喊声をあげて日本人街になだれ込んだ。

日本人住宅を襲い、略奪・暴行をほしいままにして、婦女子を含む260人の日本人を城壁のところに連行し、そこで皆殺しにした。見るも無惨な殺し方であった。

街の中央にある日本人旅館近水楼を襲った中国兵は、銃声を放って闖入(ちんにゅう)し、数十人の日本人客や女中を惨殺した。ある者は耳や鼻を削がれ、女性は陰部に

丸太を突き刺され、乳房を削がれ、ある者は鉄線で数珠つなぎにされて池に投げ込まれた。

84 :名無しさん@お腹いっぱい。 04/10/13 19:59:12 ID:js8cO9xo

中共は北京オリンピック絡みでの台湾独立宣言をかなりマジに心配している模様。

これに対しアメリカは空母戦力の増加及び攻撃型原潜の増加をケテイ。

台湾は2006年のICBM量産化を目指している。

さて、日本はいかに動くべきか。

25 :名無しさん@お腹いっぱい。 02/01/20 23:32 ID:XQO8kWq6

若し21世紀が中国の世紀になりそうなら、日本がすべきことはそれを阻止することだな。

はっきり言って今の中国には突っ込むべき弱点が凄い多い。

1.台湾の独立。台湾の独立は中国の指導層にとっては権力の失墜に繋がりかねない。(権力を失っていた保守派、派閥争いに敗れた北京グループ、広東の楊兄弟がこの機に乗じて反撃しようとするから)

これを共産党の指導層がどう治めるかによるが、場合によっては大きな混乱が来る事も考えられる。また、チベットやウイグルでの動きが活発になるのは避けられない。

2.米国との確執。中国人のある人はアメリカが日本よりも中国を結びつきを強めるなどと単純に考えていたが、それは安直である。

現段階で比較的良好な関係を維持したとしても(それでもブッシュになってから悪化しているが)、アメリカという国家の本質を理解していない。

アメリカが世界の覇権やアメリカ企業・国民の世界に散らばる利権を手放す事を許容する事は絶対に有り得ない。

中国がたいした事のない国家である内は比較的良好な関係を維持したとしても、中国が発展すればするほど彼等は中国を警戒し、自らの地位を脅かす競争相手とみなし必ず攻撃してくるだろう。(軍事的とは限らないが)

アメリカと真に有効な関係を維持できるのは、アメリカの世界支配(これには当然アジアの支配も含む)に全く負の影響をもたらさない国だけである。

3.中国経済の不透明性。これは書き始めると面倒なのでパス。国内の過剰な設備投資による供給過剰など。

はっきり言って、21世紀が中国の世紀になりそうだと思うんなら、それに適合していく事を考えるより、それを阻止する方がいいぞ。

本当に中国の世紀になるか自体に大きな疑問符が有るんだから、それに適合する事を考えるより、阻止する事を考える方が効果的。

26 25 02/01/20 23:52 ID:5s5CImNQ

前のカキコの、“2”の補足。

なぜクリントン政権が中国を重視したか分るか?

1980年代、ジャパンマネーが世界を席巻し、アメリカの企業の利益や国家としての覇権を脅かしていたため、90年代の初めはそれを巻き返す事が重要だった。

そのため、中国と結びつきを強め、アメリカの地位を脅かしつつあった日本を押さえつけることに主眼が置かれた。

なぜ、ブッシュが日本重視、中国警戒の政策を取っているか分るか?

1997年以降、日本の経済が急激に弱まりアメリカの脅威でなくなった事が明白になった。ところが、それに変わるように中国が発展してきた。

(勿論現段階での中国は、以前の日本のようなアメリカの地位を脅かすほどには全く至っていないから、警戒感も当時のジャパンパッシング程ではないが)

そのため、日本を重視して中国を押さえつける政策に転換する雰囲気にワシントンの意見が変容したんだ。

別に、クリントンが中国好きで、ブッシュが日本好きだからではない。

中国人の中には、アメリカは日本より中国を選ぶ筈だと考えている奴も居るようだが、本質的にそれはパラドックスを内包している。

アメリカが日本よりも中国と手を結ぶのは、中国が弱い国家で日本がアメリカの覇権を脅かす時だけ。

中国が発展すればするほど、アメリカは中国を押さえる必要が有ると言うインセンティブを持ち、その為に日本を使おうと考えるだろう。

中国

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中国

1)一般に中華人民共和国のこと。2004年現在総人口が約13億人で、GDP(国内総生産)が伸びつつあるあることから「世界最大の市場」と誤解されているが、国内は地域間、民族間、階級間の所得格差が大きく差別が厳しいため、統一国家とは言い難い状況にある。

中国人民(国民)13億人は、都市戸籍を持つ「都市中国人」4億人と農村戸籍を持つ「農村中国人」9億人に区別される。

1990年代以降、市場経済の導入で経済成長を実現して豊かな生活を実現しつつあるのは前者の4億人だけで、後者は中国経済の発展とはほとんど関係がない。中国の農村には病院がほとんどなく、農民には病院に行く習慣がないうえ、電気も水道もろくにない生活を強いられている地域も珍しくない。農村中国人は貧しく、都市への居住移転の自由がなく、政府当局の許可なく都市に移住して働くと「不法就労」となり「外来人」と蔑まれ、まるで外国人か二級市民のように差別される。中国は、少数派の都市中国人が多数派の農村中国人を搾取するアパルトヘイト(人種隔離)社会である。

農村中国人を含めた13億の中国全体が経済成長を実現したときこそ、中国は真の超大国になる…………わけではない。もし中国全体が日本やアメリカ並みに豊かになり、13億人が豊かな生活を送ろうとするなら、世界は深刻な食糧不足、エネルギー不足、環境破壊に直面するので、そんなことは世界が許さない。

それ以前に中国自身が許さない。農村中国人が繁栄することは、中国全土で食糧、水、石油、資本、外貨が著しく不足することを意味し、そうなれば都市中国人の繁栄が終わってしまうからである。

2004年の中国では、もちろんまだ農村中国人は貧しいままだが、それでもすでに黄河の水が干上がるなど、水不足が始まっている。1990年代「サイバースペースは面積が無限だから、IT中心の経済成長は永遠に続く」と言われたが、結局ITバブル≠ヘはじけた。2000年代「中国には安い労働力が無限にあるから、経済成長は永遠に続く」と言っている(都市中国人と農村中国人の区別もつかない軽薄な)エコノミストが日本にも世界にも少なくないが、中国バブル≠ェはじけるのも時間の問題である。

【尚、中国は1980年代以降の「一人っ子政策」の影響で急速な人口構造の高齢化(高齢者を支える若年労働力の不足)が進行中であり、その意味でもまもなく経済成長が止まると見られる。この問題については、1999年にまとめられた米国防総省の基本報告書『アジア2025』が、「日本は豊かになってから高齢化したが、中国は豊かになる前に高齢化する」と喝破している。同報告書は、21世紀も経済成長を続ける新たな大国としては、人口が十数億に達するインドのほうが有望と結論付けている。】

あと10年も経たないうちに、中国の経済成長は止まる。そのとき中国は、低成長下で雇用が伸びない中、人口増もあって失業者が増えて国民の不満が爆発する、あの「スハルト独裁体制」が崩壊した1998年のインドネシアと同じ状況になる。

日本などの民主主義国家なら、国民は選挙や世論の力で政府の責任を問い、政権を交代させればよい。しかし、中国は1998年のインドネシアと同様の独裁国家であり、政権交代のルールはない。となれば、不況と失業で国民の不満が爆発したときは、体制崩壊するしかない。

それなら中国は、事実上共産党の一党独裁である現体制をやめて、複数政党制を導入して民主的な政権交代ができるように改革すればいいか、というと、そうもいかない。中国で複数政党制をとるのは、きわめて危険である。

中国4000年の歴史を見ると、春秋・戦国時代、南北朝時代など、分裂している時代がかなり長く、通算すると分裂の時代のほうが統一の時代よりも長い。つまり、中国は外国の侵略者などが外から「意地悪」をしなくても、自分で勝手に、何十年かに一回必ず分裂するのである。

中国は一つの国というより、ヨーロッパのような「一つの世界」であり、現在中国語(標準語、普通話)と言われている言語は北京地方の言語に基づいているが、ヨーロッパで言えばラテン語のような、超民族的な世界言語である。また、上海語や、香港などで話されている広東語などは方言ではなく、フランス語やドイツ語のような独立した言語である(大阪弁と名古屋弁で話しても、同じ日本語なのである程度通じるが、北京語と広東語で話しても、外国語なのでまったく通じない)。

日本のような統一性の高い国では、政党はすべて全国政党であり「北海道独立党」などという地域政党はない。しかし、中国のような統一性の薄い国で複数政党制をとれば、「チベット独立党」「広東独立党」などの地域政党ができて、あっというまに国が分解してしまう。

つまり、中国は永遠に民主化のできない国なのだ。

この中国の悲しい宿命については、精密な政治・軍事シミュレーションでこのテーマを描いた小説『龍の仮面(ペルソナ)

http://www.akashic-record.com/dragon/cntnt.html

または「週刊アカシックレコード」

http://blog.melma.com/00042082/20040313

を参照のこと。

2)日本の中国地方。鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県の5県で構成される。

ふりがな:ちゅうごく

カテゴリー:ビジネス&政治・経済/地域情報

編集

中国を含むblog

宮じいさんの花紀行 (2004-12-26 08:38:06)

life is a joke (2004-12-26 07:07:17)

■私のシチリア■...の元。 (2004-12-26 07:00:05)

大学受験日本史講座 (2004-12-26 06:00:23)

告知版0 (2004-12-26 04:30:02)

nao_sap通信 (2004-12-26 02:46:38)

地上波テレビ映画鑑賞日記 (2004-12-26 00:00:14)

【日中環境戦略研究家レポート】 (2004-12-25 23:44:01)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・芙蓉日記■ (2004-12-25 22:52:04)

新華タイムズ(中国新華社日本語情報) (2004-12-25 21:38:48)



■「東アジア共同体」の青写真 −中国とアメリカをどう考えるべきか−

先月末のビエンチャンでのASEANプラス3首脳会議の合意を切っ掛けとして東アジア共同体が本格的な注目を浴びつつある。

<参照>

■東アジア首脳会議初開催へ 来年クアラルンプールで■

 【ビエンチャン29日共同】東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は29日、ビエンチャンで開いた首脳会議で、来年中にクアラルンプールで初めての「東アジア首脳会議」を開催することで合意した。ASEANと日中韓の13カ国を軸とした自由貿易地域創設を含む将来の「東アジア共同体」創設に向けた大きな一歩となる。

ASEANに日中韓を加えたプラス3首脳会議も同日開かれ、東アジア首脳会議開催について協議した。

プラス3首脳会議の議長声明案は、域内の関税を原則撤廃する東アジア自由貿易地域創設について「可能性を調査する専門家グループの設置を歓迎する」として、前向きな検討を表明。東アジア共同体創設を長期的目標として確認した。

日本は東アジア首脳会議の共同議長国となることを提案している。開催時期や会議の在り方など詳細は、来年初めにフィリピンで行われるASEAN非公式外相会議などを通じ調整する。(20041129() 共同通信)

http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20041129/20041129a3340.html

米国からは、早くも東アジアサミット開催が決まった翌日に、「米国外しではないか」(米国務省のリース政策企画局長)と不快感が表明された。

これらの動きを念頭に、以下に「東アジア共同体」について我が国の取るべきスタンスと戦略について考察してみたい。

「東アジア共同体」を取り巻く情況を整理すると、概ね以下のようになる。

(1) EU、NAFTA等の先進

自由貿易協定(FTA)が世界的に拡大している。

FTAは、2国間や特定域内での物品の関税その他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃、進んでは人的交流や通関や知的所有権の手続き、投資環境の整備等の幅広い分野を内容とするものである。

既に欧米では、特定域内自由化のEUやNAFTA等が推進され、国際的大競争時代に備える態勢となっている。

日本は2国間FTAでも中国に大きく遅れを取っているが、今後の自由貿易体制の徹底により大きな利益が見込まれ、自ら積極的に推進していくべき情況にある。

一方で、人的交流の活発化に伴う移民問題、経済統合、通貨統合に伴い各国の経済政策の自由度が制約される等のマイナス面も指摘されている。

(2) そもそも「東アジア共同体」が必要なのかという疑問と米国の懸念

経済的な枠組みについては、米州やオセアニアを包括したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)という枠組みが既にあり、新たに「東アジア共同体」を作ろうという動きに対し、米国側に前述した「米国外しではないか」との懸念がある。

「東アジア共同体」という言葉は、90年にマレーシアのマハティール首相(当時)が提唱した経済圏構想が出発点とされる。この構想は米国の強い反対で発展しなかった。

また、97年のアジア金融危機のさなか、影響を受けた諸国の復興を助けることを意図して、日本が提唱したアジア通貨基金構想もIMF(実際には米国)の反対で潰えた。

米国は代りにAPECを強化することで、東アジアへの関与強化の装置としたという経緯がある。

なお、安全保障についても、ロシアや北朝鮮を含めたARF(ASEAN地域フォーラム)という枠組みがある。

(3) 「東アジア共同体」の範囲

前項と関連して、東アジア共同体といっても、地図上の明確な範囲があるわけではなく、EUのような文化的、言語的、宗教的、人種的同一性の低いこの地域の特性からその範囲は思い描く者により大きく異なる。

概ね、ASEAN加盟国(タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの10カ国)に日本、韓国、中国を加えた「ASEAN+3」が「東アジア共同体」のコア部分として語られるが、台湾や香港を加えた「10+3+2」やインドを加えた「10+3+1」といったアイデアもある。

また、これらに豪州を加えようという動きとそれに真っ向から反対するマレーシアのマハティール前首相を筆頭とした「豪州人はアジア人になりえない」の意見や、国際政治学者フランシス・フクヤマ氏のように、「東アジア共同体」のかわりに北朝鮮核問題への対処を論じる六カ国協議から北朝鮮を除いての五カ国の協議をアジアの地域安全保障の恒常的な制度にすべきとの提案もある。

(4) 「東アジア共同体」の内容

その内容として、単に自由貿易協定(FTA)を結んで自由貿易圏にするという経済的なものだけでなく、前項フクヤマ氏の提案とも部分的に重なるが、安全保障も考えた政治的な枠組みを目指すべきだという見方もある。

(5) 中国の影響力の強まりへのASEAN諸国の警戒

報道によれば、初の東アジア首脳会議についてマレーシアで来年開く方向でまとまりかけたが、ビエンチャンで行われたASEAN外相会議で妥協点を見い出せず、中国の影響力の強まりを警戒するインドネシアやベトナムなどが「時期尚早」と反対し、暗礁に乗り上げていた。

その結果、開催時期や会議の在り方など詳細は、来年2月か3月にフィリピンで行われるASEAN非公式外相会議などを通じ調整するとして先送りになった。

また、当然ながら日本、米国にも中国がアジア地域での経済的、政治的な影響力をさらに強めることに対し警戒感がある。

◆◆ 我が国の取るべきスタンスと戦略 ◆◆

これらを踏まえ、筆者の考える「東アジア共同体」への我が国の取るべき基本的なスタンスと戦略を以下に列記してみたい。

◆域内の関税を原則撤廃する東アジア自由貿易地域創設等については、我が国の利益に適い積極的に推進すべきである。

また、どこまで有効なものとなるかは別として、地域紛争の緩和、テロ対策、核兵器配備の縮小、その他突発的事態の防止のためにも、信頼醸成と安全保障の枠組作りにも取り組むべきである。

◆外国人労働力の受け入れや移民は、単純労働者は避け、高度な知識・技能保有者に限定すべきである。

単純労働者の受け入れは、ドイツのトルコ移民の例が端的に示すように、国内労働人口減少の中でも社会的な摩擦を避けられず、たとえ企業コストの削減になっても、社会的コストは増大する。

◆EUのような経済的、政治的に1つの国のようになるのを目指すべきではない。

当面は、所得格差、政治体制が違い過ぎ元々不可能な事であるが、遠い将来的な画としても、EUの壮大な実験の成否を見極めてから考えるべき問題である。

中国封じ込めと言っては言葉が過ぎるが、中国囲い込みを図るべきである。

そのためには、台湾や香港、インド等加盟国は多いほど良く、決定事項は全会一致方式を取るのが望ましい。

また、米国の代理人として豪州を正式加盟させるか、もしくはより直接的に米国を顧問格として関与させて、「米国はずし」の懸念に対処しつつ中国を牽制させるべきである。

米国は、石油の出る中東では非理性的とも言える恣意的行動様式が目立つが、東アジアでは少なくとも安全保障面では今後も比較的現実的な対応を取ると予想される。

◆通貨統合は不要だが、何らかの形での「アジア通貨基金」は必要である。

前述したように、97年のアジア金融危機のさなか、影響を受けた諸国の復興を助けることを意図して、日本が提唱したアジア通貨基金構想はIMF(実際には米国)の反対で潰えた。

しかし、ヘッジファンドの冒険心やアジア金融危機の再来、中国のバブル崩壊等を防ぐ意味でも、通貨バスケット・ペッグ制を使う等の何らかの通貨安定策は必要であり、ドルの機軸通貨からの退位を何よりも恐れる米国の懸念を説得と調整により解消させつつ、粘り強くこの実現を図るべきである。

◆共同体の共通理念、共通価値は、自由と民主主義にアジア的調和が加味されたものとすべきである。

東アジアは、EU等と違い、文化的、言語的、宗教的、人種的同一性が低く、共同体形成のための求心力が低い。

ここに、何らかの共通理念、共通価値を見出すとすれば、世界史的流れとしての「自由と民主主義」を掲げるのが適当である。

これにより、長期的に中国等の民主化を促し、安全保障上の脅威を削減するべきである。

また、それだけでは他の地域との差別化を図れず、ノッペラボウのようになってしまう。この地域に特徴的な共通項としては、比較的温暖で多雨な気候や仏教、儒教により醸成されたアジア的調和と言う事になろう。

◆◆ 西洋思想と東洋思想 ◆◆

アジア的調和に言及したので、ここで西洋思想と東洋思想について述べて見たい。

両者にはそれぞれの特徴と、これに由来するメリットとデメリットがある。

難しく細分化された思想研究は他に譲るとして、筆者の考える概略を示すと以下のようになる。

まず、西洋思想は、ギリシャ哲学、キリスト教、ヘーゲル、マルクスのように、演繹性、または実証性、弁証法的理論展開、直線史観等を特徴とする。

これらは、社会を動的に改革し科学を発展させる一方、植民地主義、ナチズムの様な自己中心的なものも生み出す。

一方、東洋思想は、仏教の八正道、儒教の仁義礼智信の様に、事象を多面的に捉えた上でこれらを並列し、包括的に把握する所や循環的史観に特徴がある。

これらは、社会の調和安定を指向する一方、停滞、腐敗を生み出す。

なお、日本の思想的特徴は、赤き清き心、穢れと祓い、恨みと鎮め、神州不滅、平和主義、集団主義のように単一価値観、単線的思考にある。

これらは、短期間の富国強兵や戦後復興等をもたらす一方、戦前の拡張主義の破綻、バブル崩壊と今日の停滞等を生み出している。

筆者は、アジア的調和を共通価値とすべきと考えるが、それを思想の見取り図の中に位置付けてメリットとデメリットを踏まえて置く事で、初めて地に足が着き現実的な政策に演繹出来るツールとなると考える。

◆◆ 今後の展望 ◆◆

話を元に戻して、そもそも「東アジア共同体」のような地域共同体は、域内の共存共栄を図ると共に、理念としては戦前のブロック経済のような閉じられたものでなく、世界の貿易の自由化促進のために開かれたもので無ければならない。

実際にEUやNAFTAが今後どう展開して行くかは予断を許さないが、そういった理念、大義を掲げて「東アジア共同体」を進展させて行くことは、 EUやNAFTA陣営との交渉材料ともなり得る。

また、我が国が域内で中国を牽制してASEAN諸国等を味方に付けるには、「大東亜共栄圏」での功罪、即ち欧米の植民地からのアジア解放、日本自らによる植民地支配と敗北、その後戻ってきた旧宗主国とのアジア諸国の独立戦争と勝利等について、単なる表面的な反省に止めず、近代世界史の大きな鳥瞰図の中に位置付け総括された歴史観を持ち表明するべきだろう。

筆者は、それが日本が東アジアのリーダーシップを握るために必須と考える。

前述したように、APEC やASEAN地域フォーラムが現存する中で、「東アジア共同体」不要論がある。

しかし、もう日本政府と中国を含めた各国はその実現のために走り始めている。

もし不要なら、「共同体」と呼ぶかどうかは別として、単に緩く弱いものとして作っておけば良いだけの事である。

問題なのは、日本国民が無関心でいて、限定された関心と狭窄した視野しか持たない官僚及び族議員とそれに乗っているだけの現政府に任せて置く間に、中国等各国の思うままにデザインされた「東アジア共同体」が作り上げられてしまう事である。

筆者はその懸念の下に、乏しい知識と能力を搾って拙案を示した。

たとえ1つ1つは当たり前で掘り下げの浅いものでも、集めて並べて見なければ戦略にはなり得ない。

まだ、ビエンチャンの首脳会議から日が経っておらず、それを受けての「東アジア共同体」についての我が国のスタンスと戦略についての全体的な画を示した言説は現れていない。

筆者の見るところ現在の日本でその見識を持つ政治家、言論人は数少ないが、各方面から今後積極的な発言が必要である。

戦略とシナリオなしに今後の世界に臨む程、我が国にとって危険な事はないだろう。


必要なのかという疑問と米国の懸念

経済的な枠組みについては、米州やオセアニアを包括したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)という枠組みが既にあり、新たに「東アジア共同体」を作ろうという動きに対し、米国側に前述した「米国外しではないか」との懸念がある。




そうであれば、東アジア共同体という枠組みが中国を取り込み、日本やASEANがそのなかで中国を牽制する構図は、米国の国益にかなったと考えているのではないか。

西洋思想と東洋思想にはそれぞれの特徴と、これに由来するメリットとデメリット

がある。

難しく細分化された思想研究の前に、先ずこれらについて単純で鳥瞰的な自分の視

点での見取り図が描けているかが問題である。

次にその得失を掴み、現実の戦略なり政策に落として行く事が必要だろう。

西洋思想は、ギリシャ哲学、キリスト教、ヘーゲル、マルクスのように、演繹性、

または実証性、弁証法的理論展開、直線史観等を特徴とする。

これらは、社会を動的に改革し科学を発展させる一方、植民地主義、ナチズムの様

な自己中心的なものも生み出す。

東洋思想は、仏教の八正道、儒教の仁義礼智信の様に、事象を多面的に捉えた上で

これらを並列し、包括的に把握する所や循環的史観に特徴がある。

これらは、社会の調和安定を指向する一方、停滞、腐敗を生み出す。

日本の思想的特徴は、赤き清き心、穢れと祓い、恨みと鎮め、神州不滅、平和主義、

集団主義のように単一価値観、単線的思考にある。

これらは、短期間の富国強兵や戦後復興等をもたらす一方、戦前の拡張主義の破綻、

バブル崩壊と今日の停滞等を生み出している。








◆理念

◆仕組み


◎東アジア共同体に向けて、予想外に早い動き

平成16年7月8日

 「数年前には考えられなかったことだ」ある日本の高官は東アジア共同体に向けての動きが加速化の兆しを見せていることについてこう言っている。どのくらい早く共同体が実現するかを予測するのは尚早だとしても、この地域の政治指導者や政策形成者たちも予想以上に早い動きに驚いているように見える。東アジア共同体の予想されるメンバーは日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN10カ国である。

 この目標に向かって採られた重要な一歩は、昨年12月、東京で開催されたASEAN10カ国と日本の首脳会議(ASEANの全首脳が域外で集まった初回会合)の後、発表された「東京宣言」で、東アジア共同体実現を目指すことが明確に表明されたことである。この宣言は東アジア共同体の実現が地域にとっての正式な課題として認知されたことを意味する。

 1990年代の初頭、当時のマハティール・マレーシア首相が提唱した東アジア経済グループ(EAEG)がアメリカの反対にあって挫折したことはまだ記憶に新しい。日本もアメリカの意向を損ねたくないことからEAEGには消極的だった。さらに1997年のアジア金融危機のさなか、日本が提唱したアジア通貨基金構想もIMF(実際には米国)の反対で潰えた。これはアジア経済危機で影響を受けた諸国の復興を助けることを意図したものだった。

 域内諸国政府も東アジア共同体に至る道に控えている多くの明らかな困難を目の前にして、その実現性については極めて懐疑的だった。このような経緯があったため、最近の動きの高まりが驚きをもって受け止められているのである。どのような域内外の事情がこのような変化をもたらしたのだろうか。

◆進む域内経済統合

 とりわけ重要な要因は、域内の経済的統合と相互依存の高まりである。2000年には域内輸入が輸入全体の57.6%に達している(EU62.2%)。同様に、域内の直接海外投資は1998年には699億ドルと1985年の41億ドルに較べ20倍近い増加となっている。同共同体は、日本、中国という2つの大きな経済を抱えているので、域内経済取引の増大傾向は今後も続くことが確実である。金融の分野でも、通貨危機が起こった場合に対処するため、ASEAN各国と日本、中国、韓国との間の二国間通貨スワップ取り決めを順次締結することが2000年に合意された。日本はこのいわゆるチェンマイ・イニシアティブに対して、域内の債券市場育成に積極的に動いている。東アジア域内には大きな規模の貯蓄があるにもかかわらず、これが有効に活用されないままになっており、資本の借り手は国際金融市場で外貨で資金調達せざるを得ない状況である。

 もっと最近の注目すべき動きは、二国間の自由貿易協定(FTA)締結を目指す動きの活発化で、中国と日本が東南アジア各国との締結に熱心であり、二国間協定の網が域内を覆うことになりそうだ。日本はシンガポールとすでにFTAを締結、さらにタイ、マレーシア、フィリピンなどと交渉を行っており、政府は2010年までにASEAN各国すべてと取り決めを結びたい意向を有する。

 貿易や投資など経済分野のほかに、海賊や麻薬取引に対する共同行動、安全保障面での信頼醸成といった面での協力も進行している。

 域内の指導者たちが共同体形成を推進させている域外の要因としては、北米自由貿易協定(NAFTA)の成功や欧州連合の拡大などがある。域外のこうした動きは、指導者たちに東アジアが取り残されているという思いを抱かせており、砦とはいわないまでも自分たちの家を構築しなければ、米国や欧州に飲み込まれてしまうのではないかという不安を感じさせている。

 さらに、地域として共同して対応しなければならないと感じさせるような共通の外的脅威の認識も影響を与えている。199798年のアジア金融危機の苦痛に満ちた体験は、国際的なホットマネーとその背後にある国際金融ビジネスが地域にとっての外からの共通の脅威であることを教えた。

 東アジア共同体に関する懸念の一つは、それが人種主義的な文脈で捉えられるかもしれないということだ。マハティール氏の西側世界や欧米人に対する往々にして遠慮のない、激しい発言故に、彼の当初の東アジア経済グループ構想(それはまさにASEANプラス3で構成されていた)はそのような意味合いで受け取られていたのである。日本がオーストラリア、ニュージーランドという欧州人の子孫の国を含めないかぎり、この構想に乗れないと主張したのもそれが理由であったし、マハティール構想からは両国が排除されていた。

 米国は東アジア諸国による排他的ブロックの形成に対する警戒を明らかに捨てたようである。米国はイラクや反テロ政策に没頭しているからだと言う向きもある。しかし、基本的なことは、アジア諸国の指導者たちがアジアの繁栄は強い米国経済と、米国がこの地域にもたらしている安全保障上の秩序と安定があってはじめて可能であることを認めていることである。シンガポールのリー・クワンユー上級相はアジアにとっての米国の重要性を強調している。

 東アジアを地理的にどう定義するかもすでに結論が出ているように見える。それがASEANと日本、中国、韓国から成り、それ以上でもそれ以下でもないという事実上のコンセンサスに疑問をさしはさむ者はもはやいない。

 東アジア共同体に向けての動きの高まりにもかかわらず、その提唱者はいずれも今後の道のりは困難に満ちたものであろうことを付け加える。東アジア統合にとってのモデルは、小さな一歩から始まり、数々の困難を乗り越えて今日に至った半世紀の歴史を持つ欧州連合であると考えられる。しかし東アジアをヨーロッパに比較することは必ずしも重要なことではない。東アジアの文化的背景はあまりにも変化に富んでおり、多様である。政治体制も国によって非常に異なり、経済発展の段階も違っており、生活水準や所得の格差も大きい。


◆日本、中国、韓国の直接の話し合いが必要

 アジアの将来に関する最近のシンポジウムで、中曽根康弘元首相は、日本、中国、韓国の北東アジア3カ国の首脳が、現在のようにASEANプラス3の一部として、すなわちASEANのゲストとして会談を行うのではなく、自分たちだけで首脳会談を定期的に行うことを提案した。

 目標に向かって互いに協力しあうこの3カ国のイニシアティブがなければ、東アジア共同体はなかなか実現しないことは明らかである。また、この3カ国が自分たちだけで首脳会談を行うことについて乗り気でないという事実は、それが克服すべき問題であることを物語っている。“歴史問題”に悩まされている日本の中国、韓国との関係がこの点で重要な要素である。核のない、統一された朝鮮半島をどう実現するかももう一つの大きな問題である。。

 7月初めジャカルタで開かれたASEANプラス3の外相会議では、マレーシアが2005年までに第1回東アジア首脳会議の開催地になる意欲を表明した。もし実現すれば、同首脳会議は東アジア共同体に向けての大きな一歩になるだろう。しかし重要なことは、関係諸国が共同体のコンセプトに具体的な中身を盛り込む努力をすることである。直面する相違にもかかわらず追求すべき共通の利益が何であるかを明確に認識することだ。

(了)


「ニュースDrag」 November  29, 2004

「東アジア共同体」の広がり

高成田 享

タカナリタ・トオル

経済部記者、ワシントン特派員、アメリカ総局長などを経て、論説委員。

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先週、フォーリン・プレスセンターが主催した「アジア太平洋ジャーナリスト会議」に、文字通り浅学・浅英語力を顧みず、パネリストとして参加し、「東アジア共同体の創設とメディアの役割」というテーマの討議に加わった。

「東アジア共同体」という言葉は、90年にマレーシアのマハティール首相(当時)が提唱した経済圏構想が出発点とされる。この構想は米国の強い反対で発展しなかった。しかし、97年にASEAN(東南アジア諸国連合)と日中韓の首脳がクアラルンプールで会合して以来、「ASEAN+3」という枠組みが確立すると、これが核になる形で、東アジア共同体構想が現実味を帯びてきた。とくに、小泉首相が03年末にASEAN首脳を招いた東京会議で、この構想に積極的な姿勢を見えたことで、日本でもこの論議が熱を帯びてきた。

ジャーナリスト会議に参加した韓国、タイ、フィリピン、中国の各記者も、それぞれの地域でこの構想が論議されていることを報告した。私も含め、参加した記者は、各国・地域で東アジア共同体への期待が高まっていることを示したが、中国の記者は、「日本の歴史問題」が中国では、わだかまっていると語り、「共同体」がすんなりとできるわけではない現実を示した。

たしかに、東アジア共同体といっても、地図上の明確な範囲があるわけではない。ASEANの加盟国は、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの10カ国で、これに日本、韓国、中国を加えた「ASEAN+3」(「10+3」という言い方も)が東アジア共同体の「実体」として語られることもあるが、台湾や香港を加えた「10+3+2」やインドを加えた「10+3+1」といったアイデアもある。

また、その内容も、自由貿易協定(FTA)を結んで自由貿易圏にするという経済的なものだけでなく、安全保障も考えた政治的な枠組みを目指すべきだという見方もある。

経済的な枠組みについては、米州やオセアニアを包括したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)という枠組みが先行しているし、安全保障についても、ロシアや北朝鮮を含めたARF(ASEAN地域フォーラム)という枠組みがあり、あえて東アジア共同体に集中という難しさもある。

とはいえ、私はこの構想を多面的に追求していく価値はあると思う。中期的な東アジアを展望したときに、日中関係がとげとげしいものになっていれば、アジア全体が不安定になりかねない。日中が「衝突コース」に入るのを避けるには、ASEANという第三者が加わった枠組みが役立つと思うからだ。

日中のFTAなぞ今はとても不可能に見えるが、日本とASEAN、中国とASEANがFTAを結ぶようになれば、「ASEAN+3」のFTAは現実化するし、日中があらためて経済協力協定を結ぶ土台にもある。経済的な相互依存を高め、けんかしようにもできない、そんな状況を作り出すことが必要だろう。

興味深いのは米国の姿勢だ。マハティール構想については、「太平洋を分断する」と、猛反発した米国だが、最近は「米国を排除するものでないかぎり、歓迎する」という姿勢だ。東アジアがWTOにも反するような貿易障壁を他の国に対して作らない限りは、容認するということだ。

米国の心変わりは、いろいろと考えられる。マハティール構想のころは、それが実現したときに、日本がこの地域への経済的な支配を強めることを恐れていた。しかし、日本が1990年代の「失われた10年」を通じて、経済力を弱めた結果、その懸念は薄れた。米国がいま懸念するのは、中国がアジア地域での経済的、政治的な影響力をさらに強めることだろう。そうであれば、東アジア共同体という枠組みが中国を取り込み、日本やASEANがそのなかで中国を牽制する構図は、米国の国益にかなったと考えているのではないか。

ASEAN諸国にも米国と同じような思惑があると思うし、ジャーナリスト会議でも参加者からそうした見方が語られた。しかし問題は、中国がそんな思惑を知りながら、素直に乗ってくるとは思えないということだ。中国の記者は、経済的、政治的な協力ということなら、中国は、かつて領土問題などで敵対したこともあるインドやロシアと新しい協力関係を強めようとしていると語った。

「歴史問題」などで国民に不信のある日本が含むことを前提として「ASEAN+3」だけではない選択肢を中国は持っているということを示唆したのだろう。「中国はプラグマチックだから」という言葉を何回も使っていた。

東アジア共同体という概念の弱点のひとつは、その共通する価値観がないことだ。儒教、漢字文化などある程度、共通するものはあるが、決定打はない。ほかの選択肢が出てきやすいわけだ。私は稲作文化というものを共通する価値観として提案してみた。水田耕作を考えると、「ASEAN+3」という地理的な概念と稲作文化圏がかなり一致するからだ。しかし、その一致する範囲が大きいとしても、それが「共同体」の意識にまで高めるには、東アジア・米祭りを開くなど、相当な努力が必要だろう。

中国の「建国の父」である孫文が1924年に神戸で「大アジア主義」と題した講演をした。日本との関係が孫文にとって、これが最後の日本訪問となり、翌年、孫文は死去する。中国と日本が連携することの重要性を説いたこの演説の最後で、孫文は次のように聴衆に語りかけた。

「われわれが大アジア主義を語るのは、王道を基礎となし、不正排撃の叫びをあげるためであります。アメリカの学者は、いっさいの民族解放の運動を、文化に対する反逆とみなしました。だからわれわれがいま提唱した不正排撃の叫びをあげる文化とは、覇道に反逆する文化であり、全民衆の平等と解放をもとめる文化であります。あなたがた日本人は、すでに欧米の覇道の文化を手に入れているうえに、またアジアの王道文化の本質をももっておりますが、いまより以後、世界文化の前途にたいして、結局、西方覇道の手先となるか、それとも東方王道の干城となるのか、それはあなたがた日本国民が慎重にお選びになればよいことであります」(中央公論社『世界の名著 孫文・毛沢東』)

日本は「大東亜共栄圏」という王道のビジョンを掲げながらも、実際には「帝国主義的な侵略」の覇道を進めた結果、1945年の敗戦を迎えることになった。日本が今後、東アジア共同体を進めるにさいして、この教訓を忘れてはならないし、日本が経済的な覇権国家として振る舞わないようにするには、やはり中国との健全な関係が不可欠だろう。孫文に笑われないような取り組みが必要ということだろう。

363−3.東アジア自由貿易圏構想

 とうとう、このコラムで主張していた東アジアの経済共同体が、

動き始めた。

ASEANは、経済共同体の方向で動き始めていた。なぜか?

中国に負けたためです。今、中国で製造するよりASEAN諸国で

製造する方が高い。品質も東南アジアよりいいくらいである。この

ため、アイワが危機的状態になっている。

船井電機が中国で全量製造しているが、その値段がシンガポールや

マレーシアで作るアイワ製より20%から30%安いのですから。

このため、アジア諸国は通貨下落が起きたが、それでも中国の水準

より高い。このため、再度通貨危機になっている。これは、中国に

負けたために、米国への輸出が中国に取られてできなくなったため

なのです。

このため、この中国に対抗するためには、広い範囲で分散したレベ

ルの人的資源を持ち、適所適材な工場をつくり、中国に対抗しよう

としていたのです。しかし、それだけでは、まだ不足で中国や日本

を入れて、地域の安定や経済的な結合を通じて、通貨安定策・軍事

的な重荷の分担などを指向し始めたようだ。この裏を仕切っている

のはシンガポールであろう。シンガポールは東南アジア諸国との経

済共同体ではメリットがない。シンガポールとミャンマーでは10

倍以上の1人当たりのGNP差がある。このため、シンガポールは

オーストラリアやニュージーランド、そして日本、韓国、カナダ、

米国との2ケ国間の自由貿易協定を結ぼうとしていた。

 このため、シンガポールはASEAN+中国・韓国・日本の昔、

マハティールが主張していたEAEGのような東アジア共同体を目

指していたのです。この東アジアの中では、日本の存在大きいので

す。アジアの通貨危機は再度起きる可能性もあるため、日本を含め

ると通貨同盟に一歩踏み出すせるのですから。中国は、日本とアジ

アの覇権を争う関係上、日本だけの加入には反対したが、ここへ来

て、日本の力がないと中国自体の西部開発もままならないと感じて

いる。日本の金と技術が必要なのです。

 勿論、日本は賛成するべきでしょうが、この新しい地域主義を

米国はどう見るかだ。私の見解は、米国の支持は得られると思う。

今、米国は自国経済の舵取りで忙しく、アジアのことは日本やシン

ガポールに任せたいでしょうから。それと、米国の覇権外交による

歪みが各所で出て、国粋主義や反米主義が跋扈している状態を知っ

ているために、あまり自国に不利にならなければ、許す方向のよう

な気がする。

 今後重要なのは、東アジアの3ケ国、中国・韓国・日本が真に

友好関係を築けるかに掛かっている。対日中国外交が変化するかど

うかだ。韓国の対日外交は大きな変化が起き、韓国に対する日本人

の感じも大きく変化した。これと同じ変化が中国にも起きることを

願うものです。そのためには、戦争中の日本のありもしない悪行を

言い募るのを止め、かつ、反日日本人(特に反日新聞)との関係を

精算することであろう。

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 東南アジア諸国連合(ASEAN)は24日、シンガポールで第

4回非公式首脳会議と、引き続いて日本の森喜朗首相、中国の朱鎔

基首相、韓国の金大中大統領を加えた「ASEAN+3」首脳会議

を開いた。ASEAN+3をより緊密で一体的な協力枠組みにする

ために「東アジアサミット」として体制を整えるべきだ、との提案

が議長国・シンガポールからあり、検討を始めることになった。

 また議長国からは「東アジア自由貿易圏」、「東アジア自由投資

地域」の可能性をさぐる作業グループを設置してはどうか、との提

案も出た。今後、論議になるとみられる。

IT革命から取り残されないための長期的指針である「e―ASE

AN枠組み協定」に調印した。IT分野では英語が「基礎体力」と

なるとの認識から、ASEANの共通言語として英語教育に力を入

れていくことでも意見が一致した。

(11月24日22:06朝日新聞より抜粋)

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森喜朗首相は24日朝、シンガポールのホテルで中国の朱鎔基首相

、韓国の金大中大統領と会談した。3国首脳がそろって会うのは昨

年に続いて2回目で、来年以降もこの会談を定例化することで合意

した。また2002年を「日中韓国民交流年」とすることで一致。

来年に予定される中国の世界貿易機関(WTO)加盟をにらみ、加

盟後の3国間の貿易・投資協力について共同研究を始めることを確

認した。日中韓首脳会談の定例化による3国の対話の枠組み強化は

、朝鮮半島情勢など今後の北東アジア地域の安定に影響を与えそう

だ。

(11月24日21:41朝日新聞より抜粋)

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東アジア自由貿易圏へ作業部会設置で合意

【シンガポール24日=黒河剛】東南アジア諸国連合(ASEAN)

と日本、中国、韓国は24日、シンガポールで首脳会議を開き、AS

EAN10カ国と日中韓を包含する「東アジア自由貿易圏」作りを目

指し作業部会を設置することで合意した。この作業部会ではASE

ANと日中韓が地域の諸問題を幅広く話し合う「東アジア首脳会議

(東アジア・サミット)」の実現可能性について検討することでも

一致した。これまでアジアの経済統合の動きはASEANが先行し

てきたが、北東アジアも含む「東アジア」全体で統合を模索するこ

とになった。

 東アジア域内の関税や非関税障壁の原則撤廃を目指す東アジア自

由貿易圏作りの提案は、ASEAN自由貿易地域(AFTA)が

2002年に具体化するのと見込み、より広い範囲で自由貿易圏を作ろ

うという構想。日本とシンガポールや日本と韓国などアジア・太平

洋地域で二国間自由貿易協定締結に向けた機運が高まっていること

もあり、地域全体で検討することにした。

(日経新聞)

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東アジア首脳会議先送り インドネシアなど反対

 【ビエンチャン28日共同】開催をめぐり調整が難航していた「東アジア首脳会議」構想について、東南アジア諸国連合(ASEAN)のオン・ケンヨン事務局長は28日、ASEAN内で合意に達せず、継続協議となったことを明らかにした。

 東アジア首脳会議構想は、ASEAN10カ国と日中韓の計13カ国の首脳による協議の場で、自由貿易地域創設などを含む将来の「東アジア共同体」の核となる試み。初の首脳会議をマレーシアで来年開く方向でまとまりかけたが、中国の影響力の強まりを警戒するインドネシアやベトナムなどが「時期尚早」と反対し、暗礁に乗り上げていた。

 事務局長によると、ビエンチャンで27日行われたASEAN外相会議で妥協点を見い出せず、結論は来年2月か3月にフィリピンで開かれるASEAN非公式外相会議に持ち越された。

(共同通信) - 11281825分更新

日中韓、再開へ連携確認 6カ国協議

小泉首相、拉致問題で協力要請

 【ビエンチャン=田北真樹子】東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議出席のためラオスを訪問中の小泉純一郎首相は二十九日午前、首都ビエンチャン市内で中国の温家宝首相、韓国の盧武鉉大統領と会談した。三首脳は北朝鮮の核開発をめぐる六カ国協議の早期開催を北朝鮮に求めていく方針を改めて確認。小泉首相は北朝鮮による日本人拉致事件の解決に向けた協力を中韓両国に要請した。

 六カ国協議は実務者や非公式レベルなどの形式にとらわれない形で協議継続を模索する動きも出ている。首脳会談で小泉首相は「六カ国協議が問題解決の唯一の方策だ。ブッシュ米大統領とも平和的に解決することで共通の考えをもっている」と強調した。

 この日の首脳会談では「日中韓三カ国協力に関する行動戦略」を採択。六カ国協議について「実質的な進展を迅速に達成するために緊密な連携を更に強化する」ことが盛り込まれた。

 行動戦略は、昨年の日中韓首脳会談が経済、貿易、政治など十四分野での協力のあり方をまとめた「共同宣言」の方向性を示したもので、「今後の協力の基礎となる文書」(外務省筋)と位置づけられる。

 具体的には、日中韓の自由貿易地域について経済的効果に関する共同研究支援を打ち出し、議論の進展を目指している。投資分野でも日中韓の政府間協議の立ち上げに向けた協議を行うほか、エネルギー面での三カ国協力を促進し、戦略対話を進める内容となっている。

 また、「東アジア共同体構想」の実現に向けて、日中韓が共同体形成のための概念や目的などに関する議論を深めることなどが明記された。

(産経新聞) - 11291548分更新

ASEANプラス3 来年サミット開催 「東アジア共同体」を視野

 【ビエンチャン=岩田智雄、田北真樹子】東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟十カ国の首脳会議は二十九日、ラオスの首都ビエンチャンで開幕、初の東アジア首脳会議(サミット)を来年、マレーシアの首都クアラルンプールで開催することで一致した。続いて開かれたASEANプラス3(日本、中国、韓国)首脳会議でもこれを歓迎しており、これら十三カ国を中心とした自由貿易地域の創設を含む「東アジア共同体」へ向け一歩を踏み出した。

 ASEAN首脳会議の議長声明は、参加国など東アジア首脳会議の具体的内容は今後、関係国で協議するとしている。

 東アジア首脳会議をめぐっては、来年のASEAN議長国、マレーシアと、二〇〇七年の第二回会合の主催国に名乗りを上げる中国がかねて開催に積極的だった。

 だが、ASEANプラス3首脳会議で、小泉純一郎首相は「ASEANプラス3と東アジア首脳会議の関係を明確にする必要がある」と、開催の決定を先行させたASEAN側にクギを刺し日本の慎重姿勢を示した。

 また、韓国の盧武鉉大統領も「二つの会議の関係はどうなのか。今後、よく検討していく必要がある」と慎重だった。

 一方、ASEAN首脳会議は同日、「ビエンチャン行動計画」も採択。また、ロシアは同日、来年からASEANと首脳会議を開催することで合意、東南アジア友好協力条約(TAC)への加盟文書に署名した。中国はASEANとの自由貿易協定(FTA)でモノの自由化を来年七月から始めることで合意した。

(産経新聞) - 113033分更新

迫られる戦略的外交 強まる米中の覇権争い

 小泉純一郎首相は1日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議などラオス訪問の日程を終えて帰国した。同会議ではASEANと日本、中国、韓国の13カ国による「東アジア首脳会議」を来年末にマレーシアで開催することで合意したが、米国務省高官が米国抜きの秩序づくりを進める動きに懸念を表明し、さざ波が立っている。外交、安全保障、経済の各分野で「対米」と「対アジア」のバランスをどう取るか、小泉外交に戦略的思考が求められる。

 首相は先月30日のビエンチャンでの記者会見で、東アジア首脳会議に触れ「東アジア共同体の形成は地域の将来の発展に大きく資する」と力説した。しかし、来日中のミッチェル・リース米国務省政策企画局長はこの日の講演で、同首脳会議を「懸念を持って見ている」と公言。東アジア首脳会議の背後には、アジアでの影響力拡大を狙う中国と、それに対抗する米国の覇権争いの構図が透けて見える。

(共同通信) - 1211937分更新

東アジアサミット “同床異夢”の関係国 綱引き本格化

影響力拡大狙う中国/「安保」両立探る日本

 【シンガポール=藤本欣也】将来の「東アジア共同体」の発足を視野に、マレーシアでの来年の開催が決まった東アジア首脳会議(サミット)の波紋が広がっている。米国からは懸念の声が上がっているほか、核となる東南アジア諸国連合(ASEAN)もまだ足並みはそろっていない。アジアでの影響力を拡大したい中国、日米安全保障体制との両立を探る日本など、“同床異夢”の関係国の間では早くも、サミット参加国などをめぐる激しい綱引きが水面下で行われている。

 マレーシアの首都クアラルンプールで六日、アジアの将来像を話し合う「東アジア・フォーラム」が開かれ、各国の政財界の有識者が参加。来年、東アジアサミットの議長を務めることになる同国のアブドラ首相が「サミットは経済、安保を含む東アジアの統合に向けた一里塚になろう」と演説し意義を自賛した。

 しかし、東アジアサミットをめぐりASEANは一枚岩ではない。サミット開催を決めた十一月末のASEANプラス3(日、中、韓)首脳会議では、インドネシアなどが、中国や日本に主導権を奪われるとしてサミット懐疑論を展開した。

 背景には、東南アジアを舞台に影響力拡大を目指す中国と、政府開発援助(ODA)などを通じこれまで築き上げてきた“権益”保護に動く日本の激しい争いがある。

 域内の自由貿易協定(FTA)交渉で先行する中国に対抗し「東アジア共同体構想」を提唱した日本としては、小泉純一郎首相が「開かれた地域主義として発展することが重要」と指摘するように、将来の共同体に豪州が参加することを望んでいる。日本同様、米国と軍事同盟を結ぶ豪州を関与させることで、中国への対抗軸を強化するとともに、共同体に参加しない米国の不安を解消させたいとの思惑がある。

 だが、東南アジアには地理的・歴史的にも距離感がある豪州をアジアとみなすことに否定的雰囲気が残る。六日のフォーラムでも、マレーシアのマハティール前首相が「豪州人はアジア人になりえない」と代弁した。

 また、豪州自体が関与に消極的な姿勢をみせている。ASEANはこのほど、域内の武力不行使を規定した「東南アジア友好協力条約」の調印を打診したが、豪州側は「米国との同盟に抵触する恐れがある」と拒絶した。同条約は、サミットへの参加条件ともみられているもので、日本政府は今年七月、米国に照会した上で問題ないと判断し調印した。今回の豪州の拒否について「米国のスタンスが変わったシグナルでは」(外交筋)との見方も浮上している。

 米国はすでに、東アジアサミット開催が決まった翌日、「米国外しではないか」(米国務省のリース政策企画局長)と不快感を表明している。サミットの今後が、超大国・米国の動向やそれを受けた日本の対応、中国の外交戦略に大きく左右されるのは避けられない情勢だ。大国の中で埋没しかねないとするASEAN側の懸念は早くも現実のものとなっている。

(産経新聞) - 12950分更新

<FTA>基本方針最終案 東アジア共同体構築促す

 自由貿易協定(FTA)推進で、政府が21日にまとめる「経済連携基本方針」の最終案が14日、明らかになった。FTAを柱とする経済連携協定を「WTOを中心とする自由貿易体制を補完し、日本と相手国の構造改革に資する」としたほか、FTA交渉の相手国は東アジアを中心に選び、東アジア共同体の構築を促している。

(毎日新聞) - 12141518分更新

東アジア中心にFTA網構築=交渉相手国の決定基準も−政府の基本方針案判明

 自由貿易協定(FTA)の推進に向け、政府が検討している「基本方針案」の全容が11日明らかになった。FTAを柱とする経済連携の推進が「東アジア共同体の構築を促すなど政治、外交戦略上、日本に有益」と明記し、東アジア中心の協定網構築に取り組む姿勢を強調。また、FTAを具体的に進めていく上での指針とするため、12項目にわたる今後の交渉相手国・地域の決定基準も作成した。

 政府は今月下旬にも外務、経済産業、農林水産、財務、厚生労働など関係各省の閣僚会議を開き、正式決定する。 

(時事通信) - 121271分更新

20041129()

東アジア首脳会議初開催へ 来年クアラルンプールで

 【ビエンチャン29日共同】東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は29日、ビエンチャンで開いた首脳会議で、来年中にクアラルンプールで初めての「東アジア首脳会議」を開催することで合意した。ASEANと日中韓の13カ国を軸とした自由貿易地域創設を含む将来の「東アジア共同体」創設に向けた大きな一歩となる。

ASEANに日中韓を加えたプラス3首脳会議も同日開かれ、東アジア首脳会議開催について協議した。

プラス3首脳会議の議長声明案は、域内の関税を原則撤廃する東アジア自由貿易地域創設について「可能性を調査する専門家グループの設置を歓迎する」として、前向きな検討を表明。東アジア共同体創設を長期的目標として確認した。

日本は東アジア首脳会議の共同議長国となることを提案している。開催時期や会議の在り方など詳細は、来年初めにフィリピンで行われるASEAN非公式外相会議などを通じ調整する。

20041129()

東アジア首脳会議初開催へ ASEANと日中韓

 【ビエンチャン29日共同】東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は29日、ビエンチャンで開いた首脳会議で、来年末にクアラルンプールで予定されるASEAN首脳会議に合わせて、初めての「東アジア首脳会議」を開催することで合意した。ASEANと日中韓の13カ国を軸とした自由貿易地域創設を含む将来の「東アジア共同体」創設に向けた大きな一歩となる。

ASEANに日中韓を加えたプラス3首脳会議も同日開かれ、東アジア首脳会議開催で合意した。



「東アジア共同体」構想という妖怪がアジアを徘徊(はいかい)している−。

 やや陳腐な形容かもしれないが、マルクスの「共産党宣言」の表現がつい連想されてしまう。いまや日本の外交課題として浮上したようにみえる東アジア共同体という言葉はその実態を知ろうとすればするほど、奇々怪々な側面が影を広げる。実態がどうにもつかめない。だから妖怪などという形容が頭に浮かぶのである。

 ワシントンで最近、東アジア共同体なる構想についていやでも真剣に考えさせられる機会があった。11月中旬に開かれた米国民間のアジア研究機関主催のセミナーでこの構想に米側の学者らから鋭い批判が浴びせられたからだ。

 「東アジア共同体というのが当面、貿易や投資など経済面での地域統合を目指すのならば、なぜアジア太平洋経済協力会議(APEC)ではいけないのか。背後に米国やオーストラリアをアジアから排除する意図があるからではないのか」(ジョージワシントン大のハリー・ハーディング教授)

 「いまの構想では米国、オーストラリア、ニュージーランド、台湾を排除し、排他的方向に動いており、このままだとその『共同体』は中国のパワーに圧倒されてしまう恐れが強く、米国としては座視できない」(外交評議会のエドワード・リンカーン上級研究員)

 では東アジア共同体とは何なのか。明確な定義はその構想を推進する中国や日本の当事者たちの発表をみても出てこない。文字どおりに解釈すれば、東アジアの諸国が一つの国のように統合しての共同社会ということになろう。日本での東アジア共同体評議会の第一回会合に外務省を代表して加わった田中均外務審議官らの説明では、中国、韓国、日本に東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国などが国家間の垣根を下げて、経済、社会、文化、ソフトな安全保障などを共通にする東アジア地域社会を共同体としてつくることだという。

 アジアではすでに日本がシンガポールとの間で結んだ自由貿易協定(FTA)の拡大が始まった。その延長としての東アジア自由貿易圏という構想も考えられる。さらには経済の交流をもっと進める東アジア経済地域統合も目標としてはありうる。だが「共同体」となると、単に国家間の物と人の流れを自由にする経済統合を超えて、参加各国がもっと単一性を強める、つまり一つの国家のようにさえなる状態が当然、意味される。

 東アジア共同体の構想を唱える側がよく類似例にあげるのは欧州連合(EU)である。周知のように西欧諸国は国家の主権を大幅に削り、国境をなくし、単一のコミュニティー(共同体)をつくり、通貨の統合から外交、安全保障の統合にまで進み、連合を結成した。

 東アジア共同体の構想も理論的な目標としてはこの欧州連合と同じだと思える側面が多々ある。違うのだと明確に否定する当事者も少ない。まして中国がこの構想を「東亜共同体」と記すのをみると、日本を中国などと単一の国家連合にすることが最終目標のようにみえてくる。日本と中国が一つの国家ふうの共同体となるというのなら、これは大変な事態である。日本という国家の在り方の根幹にかかわってくる。

 現に欧州をみても各国が共同体や連合へと進むには、国をあげての議論に徹し、議会で審議し、表決し、さらに国民投票までを経た末だった。いわずもがな、各国はみな民主主義や法の統治を確立し、文化や宗教を共有し、領土紛争がない。だが日本ではいま国論と呼べる議論さえないまま、中国と同じ国になるにも等しい重大な構想が前進し始めているのだ。そもそも世界貿易機関(WTO)から市場経済の認定も得られない中国とは自由貿易協定さえ困難である。発展段階のまるで異なる複数の経済地域がどう一つになれるのか。自国内で移住の自由がない中国からの人の流れを日本はどんな理屈で自由に受け入れるのか。米国との経済のきずなはどうなるのか。

 さらに重要なのは安全保障である。核兵器を保有する中国との共同体は日本にとって軍事大国へ吸収されるに等しい。日本を守る最大手段となってきた日米同盟はどうなるのか。そして尖閣諸島の領有権での日中両国の衝突、靖国問題に象徴される両国間の価値観や世界観の天と地ほどの断層、その背後にある中国側の国民にしみついた反日の思考と感情はどうするのか。この種の疑問は共同体構想をまじめに考えれば考えるほど数が増えていくようなのだ。

[『産経新聞』2004年12月4日号「緯度経度」欄より転載]

20041209() 産経新聞

東アジア共同体構想 米排除なら安保に有害 フランシス・フクヤマ氏

国際政治学者

http://news.goo.ne.jp/news/sankei/kokusai/20041209/m20041209011.html

 【ワシントン=古森義久】米国の著名な国際政治学者フランシス・フクヤマ氏が六日、中国や日本の一部で提唱されている「東アジア共同体」構想に対し米国を排除するのであれば、アジアの安全保障には有害だという見解を語った。同氏はかわりに北朝鮮核問題への対処を論じる六カ国協議から北朝鮮を除いての五カ国の協議をアジアの地域安全保障の恒常的な制度にすることを提案した。

 ジョンズホプキンス大学院教授のフクヤマ氏は同日、「米韓同盟と北東アジアの将来」という国際セミナーで基調演説し、米国、中国、日本、ロシア、韓国、北朝鮮の六カ国による北朝鮮核問題協議を北を除く五カ国による恒常的な多国間協議制度とし、アジアの安全保障に寄与させることを提案した。フクヤマ教授によれば、この制度は多国間の同盟ではなく、あくまで安全保障の協議機関とし、在来の日米同盟や米韓同盟はそのまま存続させ、同協議機関で補強するとしている。

 同教授はまたアジア各国間で最近、盛んな自由貿易協定や経済統合への議論に対し「この種の多国間制度は現在のように経済の専門家が経済や貿易の観点からのみ進めるべきでなく、政治や安保の側面を考えるために非経済の専門家も加えねばならない」と述べ、アジアでの「東アジア自由貿易協定」的な構想は政治や安保への影響も大きいのにそれらの側面がほとんど考慮されていないようだ、と指摘した。

 フクヤマ教授は「東アジア共同体」構想については「東アジア諸国が東アジアだけで米国を排除し、安保面をも含む地域機構をつくろうとするのなら、アジアの安保には有害だといえる。とくに中国はこの種の構想で経済だけを強調し、安保面をも含む拡張主義の刃(やいば)を隠している」と述べ、反対を明確にした。

海外ニュース - 1117()235

「東アジア共同体」構想 戦略面依存続く・金融基軸ない・中国が圧倒

米国排除に、批判相次ぐ

 【ワシントン=古森義久】米国ブッシュ政権の二期目とアジアの関係を論じる会議で、日本の一部で外務省も巻き込んで唱えられている「東アジア共同体」構想が米国をアジアから排除する排他的な色彩が濃いなどとして非難された。米国の代表だけでなくインドネシアの学者も「米国に依存する東アジアの戦略の現実をみていない」と批判した。

 米国民間のアジア研究機関「米国アジア太平洋評議会」はこのほど、ワシントンで「米国とアジア太平洋=次期政権の課題」と題する討論会を開いたが、その中のセッションで「米国を排除? 東アジアの地域主義とその不満」と題し、最近、日本の一部で提唱されるようになった「東アジア共同体」構想などへの広範な意見が述べられた。

 インドネシアの学者でジャカルタの戦略国際研究センター代表、ハディ・ソエサトロ氏は「東アジア共同体は定義として米国やオーストラリアを排することになるが、東アジア諸国が戦略面で米国に依存する状態が続くなかで米国の東アジア関与を排除はできない」と述べ、もし東アジア諸国の連合を説くのであれば「米国などを含めてのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を基盤にすべきだ」と主張した。

 日本国際問題研究所の佐藤行雄理事長(元国連大使)は、東アジア諸国だけの連帯という構想にはテロの脅威などへの地域的協力の意識など多様な動機があるとしながらも、「共同体という言葉は欧州連合(EU)のような主権国家が相互に条約を結んだ共同体を連想させるが、日本でいま論じられるのは国家間のもっと希薄な連携であり、名称が誤解を与えかねない」と説明。「東アジアといっても東北アジアと東南アジアでは状況が異なるうえ、日本にとっては米国との安保のきずなが不可欠だ」と述べた。

 米国外交評議会のエドワード・リンカーン上級研究員は「東アジア共同体という構想が排他的方向に動くと、この地域の平和と安全にも悪影響が出て、米国としても座視はできない」と指摘。同構想に対し(1)アジアは日本が求めた「アジア通貨基金」が誕生しなかったように経済・金融圏としても中央銀行的な基軸がない(2)アジアは人口、政治、文化などの面で非常に多様性が高く、共通項が意外と少ない(3)いまの構想では米国、オーストラリア、ニュージーランド、台湾を排除しており、経済共同体としてはゆがんでしまう(4)東アジア共同体構想に最も近い現存の国際組織はASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3(日韓中三国)だが、その枠内では米国が入らない限り、中国のパワーに圧倒されてしまう−などの諸点をあげ、明確な批判を表明した。

(産経新聞) - 1117235分更新

「東アジア首脳会議」に米国務省局長が懸念…米排除と

 来日している米国務省のミッチェル・リース政策企画局長は30日、都内で講演し、東南アジア諸国連合と日中韓3か国(ASEANプラス3)が来年開催することに決めた「東アジア首脳会議」について、米国を排除するものだと懸念を表明した。

 リース局長は「個人的見解」と断った上で、米国は東アジア地域の安定と安全に貢献し、同地域に権益を持つ太平洋国家であると指摘、「米国を東アジアにおける対話から排除するような制度的取り決めや協力(体制)を作り出すことを懸念をもって見ている」と述べた。そのうえで、「東アジア首脳会議」がそのような米国排除の取り組みの一つであると断言した。

 一方、リース局長は、次期国務長官に指名されたライス氏の東アジア政策に関しても、「変化より継続の傾向が強くなるだろう」と話し、パウエル現長官の路線と大きく変わることはないとの見方を示した。

(2004/11/30/19:37 読売新聞 無断転載禁止)

東アジア連合構想

1 :東亜の虎 04/09/30 14:16:29 ID:iNLOcP84

日本・中国・韓国が連合を体制を築けば、アメリカなんて屁じゃない。

航空機の共同製造や朝鮮海峡トンネルを作れば、将来は世界一の経済圏も

夢じゃないと思いませんか?

373 :名無しさん@お腹いっぱい。 04/10/31 03:27:17 ID:geP8zVx4

親日か非親日という子女の感情論は抜きで、

中国と朝鮮国(民主的統一が望まれる)とは経済的に市場の

自由化を行い投資流動の自由化や規制緩和や流通や入札自由化を

行っていかないと日本の経済成長が維持できず国民の

個人資産の付加価値を下げてしまう。地域不安定要因への対処

には東洋の協力体制の構築が必要になる。東南アジアの購買力

を上げて市場育成をするにも日本だけではできない。

374 :名無しさん@お腹いっぱい。 04/10/31 03:28:05 ID:uu6wbanC

安い!早い!うまい!たこ焼き騙しスレ!

http://food6.2ch.net/test/read.cgi/konamono/1097366937/

375 :名無しさん@お腹いっぱい。 04/10/31 12:12:27 ID:eERVWuYD

親日か非親日は子女の感情論ではない。決定的要因だ。

中韓は日本の植民地化を狙っているんだよ。


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