BARNES、GPA銅弾、フェールセーフ等の実猟レポート

 北海道では、猛禽類への鉛中毒被害対策として非鉛弾頭によるエゾシカ猟が奨励 されています。また、来年度からはエゾシカ猟に使用するライフル弾頭に関し ての規制が始まる可能性(非常に高い)もあります。

 しかし、非鉛(銅弾、またはフェイルセーフ)のエゾシカ猟に対する実証例 は非常に少なく、専門家である銃砲店においてすら十分な情報を持っていない のが現状です。そこで、少ない例ですが、信頼できる実証例を集めてみました。

これらの実証例では薬量等が出ていますが、データはあくまで参考として用い てください。本例は安全性その他を保証するものではありません。自己責任に おいて使用してください。

 また、もし提供しても良い例がありましたらメールで送ってください。本ペ ージケースに追加させていただきます。できれば既書式に合わせてもらえると 掲載が早くなります。
事例はできれば本人以外が確認できているものが望ましいですが、ネット上 では確認できませんので各自のモラルを信じて自己申告をそのまま載せます。

     Rev99.12.06 ページ公開
     Rev99.12.17 学術調査追加(BARNES弾頭の部)
     Rev2000.01.03 スラグデータ追加
     Rev2000.08.29 Barnes銅弾、GPA銅弾写真追加

事例、質問、感想等のメールはここまで!

Barnes&GPA銅弾写真
左がバーンズ150gr(ノンコート)、右が GPA 143.8gr の写真です。


スラッグの部

ケース1

 99/11 に道東において、ハンドロードしたバーンズSGS弾頭(12番)でメスを射獲  DATA   弾頭  バーンズ12番SGS   火薬  IMR4756 31gr   使用銃 ブローニングAボルト 1/2ライフリング   射距離 約80m 状況   斜面の上段を左に移動中のメス(2歳程度)を谷の下から打ち上げにて発射。   狙点はネック。着弾は頭骨の下10cmの脊椎に当たり、脊椎の下側をを若干   削って弾道が曲がり右側ネック後部に抜ける。入射口と射出口では若干射   出口が大きいが顕著な差はない。   着弾時ゲームは即倒。斜面を谷まで転げ落ち数回痙攣後死亡。   弾頭は抜けたため未回収。

ケース2

 データ提供 下村塾(注1)  99/11 に道東において、市販バーンズ装弾(12番)でメスを射獲  DATA   弾頭  バーンズ12番SGS   火薬  フェデラルバーンズサボ既製装弾   使用銃 モスバーグ 1/2ライフリング   射距離 約80m 状況   弾頭は右後足から入り背骨に当たり背骨5本程度を粉砕する形で背骨上で  止まっていました。見て判るように弾頭に関してはほとんど変形はありませ  ん。弾頭に切れ目も入ってましたが、羽の1枚が変形した程度でした。ただ  し肉に関してはライフルと違い、弾の通った場所以外は十分食用できます (子鹿、距離80m)。恐らくスラッグではライフルほど弾速が出ていないた  めと考えられます。  弾頭は回収。 注1 下村塾  下村塾とは全国の若手有志が集まって主にエゾシカ猟を通じて猟技術、マナー  等の向上を塾長を中心に行っている団体。

ケース3

 99/12 にハンドロードしたバーンズSGS弾頭(12番)でオス(1叉2梢)を射獲  DATA   弾頭  バーンズ12番SGS   火薬  IMR4756 31gr   使用銃 ブローニングAボルト 1/2ライフリング   射距離 約100m 状況   対岸100mの距離で停止中のオス(チョキ)の前共胸に向け発射。   着弾はネック後部に入り、そのまま反対ネックから射出。入射口と射出口では若干射   出口が大きいが顕著な差はない。   着弾時ゲームは即倒。弾頭は抜けたため未回収。

バーンズ銅弾の部

ケース1

 データ提供 下村塾(注1)  99/11 に道東において射獲  DATA   弾頭  Xブレツト150グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 30-06口径ボルト式   射距離 約250m 状況   約250m強の距離で静止している牧草地のオス鹿に発射。約50〜100m走って   倒れ絶命。被弾個所は心臓部で、心臓を二つに裂いて命中。(射獲時塾生T   氏現認、解体時塾生全員現認)   被弾損傷の程度は、通常の鉛弾頭の約2〜3倍。弾は貫通。射出口も鉛弾に比   べると損傷が大きい分、射出穴が大きい。

ケース2

 データ提供 下村塾  99/11 に道東において射獲  DATA   弾頭  Xブレツト150グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 30-06口径ボルト式   射距離 約150m 状況   約150m先の距離を全力で逃げ走る数頭の内、オス鹿の胸部に命中。即倒。 若干息があり、早い回収をめざし首の動脈を切断。   損傷の程度は1例目の鹿と殆ど同じ程度。弾は貫通。

ケース3

 データ提供 下村塾  99/11 に道東において射獲  DATA   弾頭  Xブレツト150グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 30-06口径ボルト式   射距離 約150m 状況   約150m先での撃ち上げにて静止しているオス鹿のネック部に命中即死。   損傷の程度は首の周りのみひどいが、他の肉の部位は差ほど影響を受けず。   しかし、そこから出た血液は前脚の付け根まで達しており、肉と脂の層を   毛細管現象のように走って、思いがけない部位にまで達しておりました。   この事は第1第2例のゲームもまったく同じ状況で、過去鉛弾においてはこ   のようにひどい現象はあまりありませんでした。   弾は貫通。

ケース4

 データ提供 下村塾  99/11 に道東において射獲  DATA   弾頭  Xブレツト150グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 30-06口径ボルト式   射距離 約100m 状況   約100mの距離を、真っ直ぐに小走りで向かって来るオス鹿の胸部に向け発   射。被弾するも走り去る所へ2弾目が命中、腰部が砕け即倒。さらに半矢の   為3弾目を発射し、最後はナイフで動脈を切断し止め。   このオス鹿に関しては地元の人も驚くほどの大きなオス鹿で、生命力もハン   パな強さではありませんでした。   弾は貫通。   3弾を被弾したこの鹿は、前脚1本と背ロースの約1/3、後脚の1本がかろうじ   て使える程度で、殆どの部位がひどいダメージを受け、見るも無残な状態で   何とも複雑な罪悪感が走りました。   今遠征は私自身1日1頭の回収でしたが、これらの事例から判った事は180グレ   インのXブレットも150グレインのXブレットも、ゲームに対するダメージは   そんなに変わらないと言う事実です。(前期までは180グレインXブレットを   使用していました)つまり、Xブレットそのものの破壊侵徹力は、同じよう   にエクスパンションによって引き起こされる通常の鉛装弾のダメージの比で   は無いと言う事です。    また、命中精度についても自身の銃に見合った弾頭重量と、それにベストマ   ッチする薬種薬量を選択しさえすれば、なんら鉛装弾と異なる事はありませ   ん。今回は中程度の静止遠射と、全力疾走するゲームへの動的射撃を数回試   みましたが、どれを取っても命中している事から、これら精度については間   違いの無い報告であると共に、幸い今回は現認する証人が複数いる事がこの   レポートに対する自信でもあります。   ただし、180グレインのXブレットに関しては、弾頭全長が長い分薬量がマキ   シマムで得られず(06の場合)、集弾性能に疑問が残りますが、150グレイン   弾頭でも異常な程の破壊力が得られる事が判明した以上、エゾ鹿程度の大き   さのゲームに対し、あえてXブレットの重量弾頭を選択する事は、はなはだ   正当な理由を見つけられません。

ケース5

 データ提供 HIRO  99/11 に道東において射獲  DATA   弾頭  35/284 (ワイルドキャット:350レミントンマグナム/35ウェーレンと同等)       35口径200グレインXブレット 2600フィート/秒前後   火薬  −−−   使用銃 サコーAII ミディアムアクション   射距離 約50m 状況   6ポイントのオスは、写真でお解りの通り、射入口と射出口が、背中の真後ろを   切った線から、それぞれ、5センチも離れていません。つまり、背中の頂点で、   両者が10センチも離れていない、完全に、背中の皮一枚と肉の間の脂肪を、スル   リと抜けただけです。   それにも拘わらず、獲物は何と、その場で倒れてジタバタして居りました。急所   は全く外しているので、止め矢は必要でしたが、通常弾頭は勿論のこと、ノスラ   ーパーティションでも、完全に半矢で逃げれれている様な当たり所です。この事   は、Xブレットが、その精度の若干の悪さを補って余りある威力が有る事を示し   ています。

ケース6

 データ提供 HIRO  99/11 に道東において射獲  DATA   弾頭  35/284 (ワイルドキャット:350レミントンマグナム/35ウェーレンと同等)       35口径200グレインXブレット 2600フィート/秒前後   火薬  −−−   使用銃 サコーAII ミディアムアクション   射距離 約10m 状況   雌鹿は、肺に命中し、逃走距離も僅か15mと、今までだと50mは逃げたであろ   う当たり所でも、確実にダメージが上がっていました。が、この当たり所だと、通   常弾頭なら、バラ肉の一部を損傷する程度のところ、バーンズは、バラ肉の全てと、   両前脚の肉をドロンドロンに粉砕して居りました。背ロースと両後脚のみの回収です。

ケース7

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 165gr   火薬  IMR4350 73gr   使用銃 300WinMag   射距離 約10m 状況   メス、仔が並んだ状態でメスの頚部を貫通、直後の仔の首をも貫通。(1発で2頭捕獲)   逃走距離は共に0.(即倒)

ケース8

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 165gr   火薬  IMR4350 73gr   使用銃 300WinMag   射距離 約10m 状況   メス、仔が並んだ状態で最初にメス(88.5Kg)の頚部を貫通、直後の仔(28.8Kg) の首をも貫通。(1発で2頭捕獲)   逃走距離は共に0.(即倒)

ケース9

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 165gr   火薬  IMR4350 73gr   使用銃 300WinMag   射距離 約30m 状況   メス(69.5Kg)の右頚つけ根に着弾、左脇腹から射出。   逃走距離は0.(即倒)

ケース10

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 165gr   火薬  IMR4350 73gr   使用銃 300WinMag   射距離 約50m 状況   メス(49Kg内蔵除く)の右頚部より射入し左頚部より射出。   逃走距離は5m

ケース11

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 165gr   火薬  IMR4350 73gr   使用銃 300WinMag   射距離 約30m 状況   メス(16.5Kg内蔵除く)の右頚部より射入し左頚部より射出(真横)。   逃走距離は0m

ケース12

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 165gr   火薬  IMR4350 73gr   使用銃 300WinMag   射距離 約50m 状況   メス(93Kg)の右頚部より射入し左脊椎の高さより射出。   逃走距離は0m 即倒。

ケース13

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XLC(青弾) 165gr   火薬  IMR4350 43gr   使用銃 300WinMag   射距離 約20m 状況   メス(79.5Kg)の左胸部より射入し左胸壁より射出(腸が脱出)。心臓破裂。   逃走距離は0m

ケース14

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XLC(青弾) 165gr   火薬  IMR4350 43gr   使用銃 300WinMag   射距離 約50m 状況   メス0歳(内臓なし16Kg)の右胸部より射入し肩甲骨を破壊、左斜め前方に向かい後部頚椎、   前部胸椎を破壊し貫通。   逃走距離は0m

ケース15

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XLC(青弾) 165gr   火薬  IMR4350 43gr   使用銃 300WinMag   射距離 約150m 状況   メス(82.0Kg)の胸腔と腹腔の境目を右から左に貫通。心臓、動脈等のバイタル部を   それたため、長く走ったものと思われるが坂を登れず、下り方向に逃走。肝臓分断。   逃走距離は100m

ケース16

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 185gr   火薬  −−−   使用銃 338WinMag   射距離 約40m 状況   メス(83.7Kg)の右肩甲骨前より射入し左胸壁より射出。   逃走距離は8m

ケース17

 データ提供 学術捕獲許可による調査例  99/9 に道東において射獲  DATA   弾頭  XBT 185gr   火薬  −−−   使用銃 338WinMag   射距離 約20m 状況   メス(71.0Kg)の前胸部を貫通。   逃走距離は0m ※ケース7〜17は学術調査として非猟期に行ったデータです。このため、実猟に比べると  射距離が短い傾向にあり、命中部位もほとんどがネックであるため、即倒、貫通がほとん  どです。

フェールセーフの部

ケース1

 データ提供  99/11 に道北において射獲  DATA   弾頭  フェイルセーフ180グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 300WinMag口径ボルト式   射距離 約80m 状況   左側胸部(肩甲骨の直後)からはいり,右胸部(射入口よりやや後)から抜   けた3叉4尖のオス(やや小ぶりで恐らく2歳か3歳).射距離は80メート   ルで,逃走距離は約20メートル(ただし,その後で急坂を転落).左の肺は   前半部が上下の2部分に完全に裂け,大動脈など心臓に出入りする部分の血   管が粉砕.裂けた肺を元の状態に配置してみると,約10センチの径で組織が   消失してました.なお,心臓破壊後のパワーは減少しており,右側の肺の外   側表面(射出口に接した部分)では,直径4.5センチの穴(組織は消失)が開   いているのみ.当たり所もありますが,無駄になった肉はほとんどありませ   んでした.

ケース2

 データ提供  99/11 に道北において射獲  DATA   弾頭  フェールセーフ180グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 300WinMag口径ボルト式   射距離 約50m 状況   少々恥ずかしい事例です.獲物は成獣のメス(射距離は50メートル).狙い   が下にそれ,左前脚の肘直下を貫通し,そのまま反対側の同部位に着弾・貫   通.最初に当たった左脚はほぼ皮1枚でぶら下がった状態,右脚は筋肉は残   っているものの複雑骨折.撃ち挙げた状態だったので路肩付近まで落ち,そ   こで止め矢を撃てました(とは言っても後脚だけでかなり早く前進し,かな   り難儀しました).これも肉の損傷は皆無.

ケース3

 データ提供  99/11 に道北において射獲  DATA   弾頭  フェールセーフ180グレイン弾頭   火薬  −−−   使用銃 300WinMag口径ボルト式   射距離 約70m 状況   正面から撃った成獣のメス.射距離は70メートル.首下部の中央部に着弾し,   背部の前端(首と背の角度がついてる部分)から抜けました.頚椎破砕のた   め即倒.射出口近くの皮下は,直径約8センチの穴が開いてました.肉は,   肩ロース前部と肩甲骨上部の一部に血が回りイヌ用となりました.血の広が   りは胸部まで見られましたが,幸いに皮下・筋肉間にとどまったもので,丁   寧にそぎ落とせば付近の肉の質には影響ありませんでした.
 ※今後何処までケースが増えるか不明ですが、出来るだけ資料として残していき   たいと思います。