ITコーディネータ資格取得体験記
2002.06.05 初版
2002.07.02 改定
1.前準備段階
私がITCに関して始めて知ったのは日本システムアナリスト協会(JSAG)ML上でだったと思います。
その後、ITSSPでのパブリックコメント等の募集(この辺、既に記憶があやふやですが掲示板だったかも知れません)での意見収集等を経て、インストラクタ募集が始まりました。
個人的には出来るものならこのITCインストラクタに応募したかったのですが、東京・大阪でのみの研修開催、それに仕事との調整が難しく断念しました。
その後、一般ITC研修が始まりました。当初会社負担での受講を目論み、本社人事・教育担当と話を進め、なんとか勤務地で開催されるなら受講OKとの方向になりました。
2.実務・実績審査(第2期)
既にシステムアナリストの資格を保有しているのでプロフェッショナル特別認定(プロ特認)コースを選びます。これは通常必要なITC補を飛ばしていきなりITCに認定される期間限定の特別コースです。プロ特認のスタートは実務・実績審査申請からです。これではねられる様では話しになりません。とりあえず過去の実績からカッコよさそう(?)なものをピックアップして書いてみます。こんなんで良いのかなぁという感じではありました。とりあえず、実務・実績審査は無料ですし、いくらなんでも書類審査で落とされることはないだろうという観測で楽観していました。
しばらくして、ITCAから合格証(ハガキ)が届き、合格しました。
合格番号 2001-02-*** (***は伏字)
しかし、なんとここまで来て会社の教育費削減という方針が決まり、実績の無い資格教育に金は出せない。暫く様子見のため凍結!ということになってしまいました。
個人的にはシステムアナリストの次はITコーディネータ(資格の意義には共感していましたので)と考えていたため、またこの機会を逃すといつ勤務地で研修が開催されるかも判らないため、個人負担で申込むことを決めました。結構な投資額で経済的リターンの保証も無く悩みましたが、逆に個人負担の方がスキルが身につくかなという気持ちも有り決めました。
3.専門知識研修(H13.9.20-23)
まず、専門知識研修を受講しました。この受講に関して、4日のうち2日は平日のため、会社との折衝が必要になり、「ITCとは?」という説明を何度も行うことになりました。(ITCの知名度が低すぎますね)直属の上司の理解を得られ、これはなんとかクリアし、専門知識研修へ参加できました。専門知識研修は事前にテキスト16冊+おまけのBSC解説本が送られてきました。開けては見たものの中味を読む暇が無いまま(言い訳ですが)研修に突入。この研修にはIT系4名(何故かインストラクタも2名一緒に受講)、経営系3名の構成でした。以前、経営計画システムを手がけた経験があるので言葉だけは何とか判ると思っていたのですが・・・・。英頭文字熟語のオンパレードで、正直参ってしまいました。だた、専門知識研修インストラクターの講義が実務経験をもとに進められたため興味を失うこと無く続けられたのは流石と思いました。
4日間の専門知識研修はなんとかクリアし最後にアセスメントテストを実施します。これは自己採点なので出来不出来は問題ではなく自分の知識の弱点を知って自己学習してくださいという趣旨のものです。ちなみに、自己採点の結果は70%ぐらいでしたが、特にその後自己学習しなかったような気もします。
☆ここまでの投資 16万強+4日(事前・事後学習をしていないので・・・)
4.ケース研修前半(H14.1.19-2.3)
次はケース研修です。専門知識研修の受講者数からもしかしたらという予感が当たり、第一回目の地元でのケース研修は参加者過少のため延期になってしまいました。仕方が無く東京で開催のケース研修を受講する方もいらっしゃいましたが、自費参加の身ではそれもかなわず途方に暮れてしまいました。
それでも結局(1クール遅れたが)3ヶ月後に再度募集があり、2002年1月から地元でのケース研修がなんとか開始されました。
ここで、専門知識研修で共に学ばれた方2名、JSAGメンバ1名の他に初対面の方が7名受講生としていらっしゃいました。インストラクタの4名中2名は一緒に専門知識研修を受けた方でした(インストラクタの力量に問題はないのですが、このITCAの運用は外から見ると理解しがたい部分もあります)。
初日は、まずITCAのオリエンテーション、続いて各自の自己紹介を行います。その後ミニケース研修として5日間の研修を経営系(税理士、中小企業診断士等)とIT系(情処試験、技術士等)に大きく分けて別個の研修室で実施します。IT系はさらにグループ分けをして研修に臨みます。まずは各自宿題回答の説明からです。
宿題とは
事前にITCAよりパワーポイントの課題回答用紙ファイルがメールで届きます(一括して)。
前日に指定された課題の回答を研修当日の朝に提出することが必要です。課題は100%こなすことが研修終了条件となっています。この課題(宿題)ははっきり言って難敵です。特に土日日連続の場合土曜の回答により日曜の回答内容が変わってくるため、予め用意した回答が大幅に修正されることも珍しくなく、その結果土曜の夜は徹夜という場合もありえます。(これはB教材週末コースの例で、平日コースの修羅場は経験していないのでわかりません。また、A教材では宿題はないとも聞いています。)
各人各様の答えを其々説明し、グループとしての回答を相談して決めて行きます。これは理解させ説得するというコミュニケーション能力の鍛練の場となります。しかし、参加者は各自それぞれのバックボーンがあり、自信はなくても(私だけ?)そう簡単に妥協はしません。とはいえ回答時間は制限されているので短期スケジュール(10分単位)を建てながらの時間との勝負になってきます。この辺はプロジェクト管理っぽい部分です。
当時はこりゃ大変と感じていましたが、ミニケース研修ではまだIT系という共通の出身母体を持つ者同士の協議になるので考え方がまったく違うということは少なく実は楽な部類だったのでした。また、グループでの発表は積極的に担当しましょう。特に人前で話すのが苦手気味という(IT系に多いかな)人はこれもお金のうちですから積極的に発表の練習をした方が良いでしょう(結構辛いですが)。
このミニケース研修で私は1日風邪で熱を出して病欠してしまいました。出席率は90%必要なので欠席は1.5日までしか許されません。つまりもう後が無い状態に追い込まれてしまいました。
また、課題回答はパワーポイントファイルで行いますが、グループ意見の集約は出来ても素早くパワーポイントファイルを作成するというのも実は大変で、個人的にはこのスキル習得も大きな成果の一つとなりました。
基本的にIT系のミニケースは経営戦略策定〜RFP発行までです。専門知識研修で習った知識を実際にケーススタディの企業に適用して行く訳です。しかし、専門知識研修の内容はおぼろげになっていて何もかも始めてという感じが正直しました。おおまかには、
SWOT分析->CSF->BSC(KGI,KPI)->APQC->DFD->RFD->RFI->RFP
という流れです(見事に英頭文字ばっかりですね!)。DFD等にはジェネリックモデルという汎用モデルが用意され、それと対象企業の差異を反映させたモデルを作成することが重要です。そして、あるべき姿(To-Be)を作成して行きます。
ミニケースでは初日を別とすると土日連続が1回だけでした。この土日連続が後半では修羅場になってくるのです。威張れることではありませんが専門知識研修では使わなかった専門知識テキスト(16冊)を始めて一生懸命読むことになりました。
5.ケース研修後半(H14.2.9-3.24)
ケース研修の後半は経営系、IT系合同で、経営戦略策定から運用・デリバリまで一貫して10日間で行います。今回の例では3〜4名の班に分け、必ずIT系、経営系の両方がメンバになるようグループ分けされていました。
IT系にとっては前半はミニケースの復習的なものなのですが、対象とする企業がまったく違い、また日頃慣れ親しんでいる製造業や卸小売りという形態とは違っている映像分野企業ということもあり、最初から躓いてしまいます。
さらに、経営系の方の参加により視点が複数(基本的には人数分の視点あり)になり意見集約が難解となっていきます。更にグループ発表に対する質問内容も経営系出身者とIT系出身者では大きく違ってくるのでとても勉強になりました。
また、ITCプロセスを進めて行く上でのチェックポイントとして役員プレゼンがあります。ここでは実際に役員役の受講生にプレゼンを行って計画の了承を取るという課題がで表現されます。相手は役員ですので何をどう説明するか、いかに自分たちの計画を納得させるかということを十分考慮しなければなりません。
さらに、対象の企業の役員・キーマンの人間関係も十分考慮することを要求されます。これは、教科書的に進めても実場面では人間関係から破綻することも有るといういわゆるITC業務ノウハウ的な部分になっています。つまり、論理だけではすまないのが実社会ということを肯定しての実習ということになります。このあたりは、インストラクタを始め参加者の体験を共有するという感じで非常に参考になります。
逆に言うと、ケース研修に実務体験の無い方がこられてもWin-Winの関係にならず不満が出て来るかも知れません。プロフェッショナル特認の場合は、実務実績審査があるのでその様なことは無いと思いますが、ITC補試験に制約はないので今後はもしかしたらその様な場合もあるかもしれません。
ケース研修については、実際に研修を受けている時には大変で振返る余裕も無いのですが、終わってみると貴重な体験であったと思います。また、参加者との交流も深まり、人脈形成(ITC研修の大きな目的の一つに挙げられている)を行えたと思っています。個人的には、ケース研修をせっかく受けるのなら宿題有りの方をお勧めします。とっても大変で苦しいですが、得るものも大きいと思います。
6.プロフェッショナル特別認定試験
プロ特認の場合、最終日に認定試験が有ります。ちなみにITC補に必要なケース研修の場合には最終日の認定試験はありません。ケース研修の終了だけでOKです。
最後の課題課題が終わった後に少し時間を置いて別会場でITCAスタッフ(インストラクタは試験時には同席しません)の監督下で試験を行います。試験はマークシート式の選択問題です。基本的にはITCプロセスガイドラインにそった内容の問題と、コンサルとしての一般常識的な問題が出題されます。しかし、私にとっては結構難問で選択肢中2個までは回答を絞られてもそのどちらかが確信を持てないという問題ばかりでした。結果、合格する自信のないまま試験終了。その後の打ち上げでは試験の事は意識して忘れていました。
7.合格
合格発表日に、一緒にケース研修を受けた同期から電話が有り、ホームページに発表が載っていて全員合格とのことでした。慌ててITCAのホームページを参照し、自分の名前があることを確認。ただし、合格番号、認定番号が受験番号と違っていてもしかしたら同姓同名かも…という不安は少しだけ有りました。その後、地域での合格者数を確認してやっと自分の合格を確信できました。せめてホームページには受験番号も同時記載して欲しいものです。
認定番号 001746****C (****は伏字)
資格者番号 0000****
☆ケース研修の投資 50万+14日(ミニケースで1日病欠)
+α (宿題対策:たぶん1回4時間として60Hぐらい)
★厚生労働省の教育訓練給付金 30万支給(ただし、研修を無事終了した後に申請となる 注1)
差引き 20万+14日+60H
注1 厚生労働省の教育訓練給付金は1度使うと5年間は使えません。また、公務員や経営者の方も使えません。その他詳しくはハローワークにご確認ください。
☆ITC取得に関する総投資合計
36万強 + 18日 + 60H
この36万+約26日(1日8H換算)という投資は私にとって決して少ないものではなく結構大変でした。特に、ITC認定を取ったからといって仕事や収入が保証される訳では有りません。この辺は今後のITCAの活動に大いに期待したいところです(高い受講・認定料をとってアフタフォロー無しでは困ります)。
※今後、地元でも年1回程度はケース研修が開催されそうですので興味のある方はぜひ金策をして参加してみてください。プロフェッショナル特認は2003年度で終了ですが、ITC補資格取得->ITCへのルートがあります。