ゲッツ・ボサノヴァ' 97
KIRIN LAGER CLUB PRESENTS GET'S BOSSA NOVA'97
1997.8.9(土) 15:00〜
at よみうりランド内オープンシアターEAST
(出演アーティスト)
1.アルセウ・マイア(g)
2.クララ・モレーノ(vo)&ジョイス(vo)
3.イヴァン・リンス(vo,key)
4.All Star レイラ・ピニュイロ(vo)&カルロス・リラ(g)&ロベルト・メネスカル(g)&ワンダ・サー(vo)
5.アストラッド・ジルベルト(vo)
6.パウロ・ジョビン(g)&ダニエル・ジョビン(key)

●ボサノヴァ誕生40周年を記念して行われた野外コンサート。スター達の夢の共演。

  何でもやはり、「生(なま)」の方が重宝されるもんである。 
例えばビールなんかもそうだし、魚なんかもそうである。 
最近では「生紀香」などというのもあると聞く。 
あとここでは声を大にして言えないが、あの、その、男女間の結合関係の作業における、挿入セクションでの、いわゆるその挿入の方式だって「生」が良いというでは無いか。でもその後は、なんかあると大変そうだけどね。 

ボサノヴァだって、ビールの如く「生」がある。 
「生ボサノヴァ」である。 略して「生ぼさー」(日本海あたりで獲れる珍味じゃねえっ!つうの)。

今回僕は「生ボサノヴァ」の初体験である。 

  それまでCDや有線のボサノヴァチャンネル等、の非生ボサノヴァ体験はあったが、「生ボサノヴァ」とは、一体どんなだろう、温かいのか?固いのか?、長いのか?、大きいのか?、いろいろ期待で胸ワクワク・・・ 
あれ?何の話しだっけ?そうそう、「生ボサノヴァ」ね、失礼失礼。 

   今回は生ボサノヴァというだけではない。その生ボサノヴァを演奏するスター達が、それこそ本場のビッグスター達ばかりなのである。 
これは胸踊らないわけは無い。 
イヴァンリンス、ジョイスのようなブラジルを代表するMPBのスターをはじめとして、アストラッド・ジルベルトやワンダ・サー(元セルジオメンデス&ブラジル65)などレコードでしか耳にしたことのない伝説的アーティストのみならず、あのアントニオ・カルロス・ジョビンの血縁の方達など、貴重なアーティストの歌が聞けるとあって、このコンサートはとにかく期待大であった。 

  ところで先程ボサノヴァの生は初めてと言ったが、もう一点非常にお恥ずかしい「初めてもの」があった。 
  僕は今回の会場となったよみうりランドの所在する稲城市に現在居住しているのであるが、この「最も近い場所に所在する遊園地」であるはずの、よみうりランドには、稲城市に居住してこの方(当時で6年近くたっていた)一度も足を踏み入れたことは無かったのである。 
アパートの隣の住人に超カワイコちゃんが住んでいるのに、越してこの方一度も喋ったことが無い、というのと同じである。と言う気もする。(?何の話しだ?)。 

   そんなこんなで、初体験だらけの今回、恋人の部屋で勝負パンツを履きつつ、長いのか?固いのか?大きいのか?気持ち良いのか?と期待を胸に抱きつつ、じっと待っている処女のごとく(?何の話しだ?)当日を待ちわびていた。 
 

灯台下暗し。読売ランド侮るべからず。

   当日、近いからいいや、と思って結構ギリギリの時間に家を出た。 

   僕の入場したよみうりランド京王線側は遊園地の所在する山の上に行くまで、まず「スカイロード」と称する歩く歩道というか、人間用ベルトコンベアのようなものにのっかって、上まで 行かねばならなかった(「スカイロード」は現在は無く、ゴンドラに変わっている)。 
これに乗らないと、あろうことか「生ボサノヴァ」前に、ここで軽めの登山をしなければならない。選択肢は無い。 
休日であれば、すいてて見晴らしのよいスカイロードから我が住む町を眼下にしつつ、のんびり登っていく、ということができたのかもしれんが、やはりそこはいつものように、神が意地悪をしかけてきて、「スカイロード」の袂から長〜い行列ができていた。 
「行列」。「人ごみ」。僕をしてうんざりさせるには十分な要素・・・。 
かなりめげそうになる。 

   しかもこの「スカイロード」は搭乗に際して何と130円の搭乗料をとられる。 
い、意外なことをする・・・。 
 

   やっと乗る事ができたので、「せめて景色でもみるか・・・」と後ろを振り返ると眼前には、色白の太った青年の巨体が立ちはだかり、僕の景色鑑賞の野望はもろくも打ち砕かれてしまった。 
仕方なく前方のオヤジの尻のみ見つつ我慢を重ねヒタスラじっと流れに身をゆだねる。 

   「スカイロード」をようやく降りてから、次に僕の高揚した気分に水を 注してくれた事態は「遊園地入り口まで徒歩での距離結構ある」ということだった。 
まだ入園してないのに、開演の午後3時にもうちょっとでならんとしていた。 

  ようやく入園はしたものの、地図を見た時に「会場のEASTまではちとあるぞ」とわかり、次第にあせってくる。 
 僕の回りを歩いている連中もどうやら、このコンサートの人達らしく、あちこちから「オイ遠いゾ!」の声がとびかっている。 
事の重大さに気づき、走り出すものもいる。 

  ようやく、会場についた時は3時を若干まわっていた。 
が実際の開演は10分遅れくらいだろ、と高をくくって、「野外コンサートだから、ビール、ビール!」と、まず買い出ししてから着席だ、と売店に直行。 

  ところがまーた、ここで混んでおりました、ハイ。 
 さすがにかなり「イライラ」しはじめたが、並んじゃったのでそのまま開き直って、とにかくビールを購入することにする。 
が、そうこうしているうちオープニングの曲が舞台から流れてきちゃった!。 
「あ〜あ、やっちゃった・・・」、である。 
 

  音楽との一体感。ボサノヴァの魅力が堪能できた、素晴らしいパフォーマンス

  終演は午後7時半位の予定らしくかなりの長丁場なので、「ここでもうイライラしててもしょうがねえな」、と思いつつビールを購入し、ようやく着席状態までこぎつける。 

   指定席とはいえ中段よりやや上方。舞台からはちょっと遠い。 
ただ音響設備がかなり良くスピーカーのまん前じゃ、ちと音がでかすぎて厳しいから、これくらいが ちょうどいいかな、と いうくらいの席である。 
天気は、この時期としてはめづらしく雲が全然ない快晴状態。 
帽子等ないと日差しが きついくらいである。 

   飲み物売り場があれだけ激混みするなら、せっかくの野外コンサートなので休憩時間にでもカワイイ売り子のネエチャンでも出せばいいのにと思う。これはスポンサー等に一考を促したい点である。 

  それにしても観客にはなぜか結構奇麗な女性が多い。 
ボサノヴァファンは「アダルトで美人」という認識を得る。 
今回これだけでも、入場料の80%の元はとれたような気もする。これで入場時の落胆分は一気に取り戻す。 
「生ボサノヴァ」には、「アダルト美人」のつまみが適している。 

  さて、オープニングのアルセウ・マイア氏のインストロメンタルの演奏は既に始まっている。 

  次のクララモレーノ嬢は、その次に登場のジョイス女史の娘ということで若いせいもあってか、露出の多い服で目を楽しませてくれる。これでまた元がとれる。 
ただ曲自体は最近の曲なのか、サウンド・ビートが強く結構ノリが良すぎて、期待していたアダルティなボサノヴァという感じはしない。 
「生」は暖かくて気持ちよいと期待していたら、痛くてそれどこじゃない!ってのと似ている(?何の話しだ?)。 

  「最近はみんなこんなんかな・・・こりゃ当方の聴きに来たサウンドとはちと違いますな。まさかこのノリでこのままずっと行くのでは・・・これだと、can't get bosa nova ですな。」と若干不安になってはきた。 
  炎天下の空の下、観客の中には上半身裸になってノリノリしている青年等がおり、その青年達は、サビの合いの手に、ガッツポーズなどをいれている。 

  当初静かなアダルティなボサノヴァを期待していた僕は、それを見て次第にイライラしてきて思わず「テメ、ボサノヴァデガッツスンジャネエ!ハウンドドッグノコンサートジャネエンダヨ!」と叫びたくなる衝動にかられる。 
  が、せっかくの「生」ボサノヴァコンサート、衣服を脱ぎ裸になり、思い切りいい気持ちになりたいという気持ち、わからぬわけでも無い。女性のため固く大きくしてやらなければいけない(?何の話しだ?)。 
 ま、楽しきゃいいのかな、と思い直し、自分を「もっと ヤサシクシテネ」と諫めたりする。(?何の話しだ?)。 

   いろいろと不安で始まったこのイベントであり、只でさえ回りに結構かわいい娘がいるので気が散りがちになっているようでもありなどしていたが、その不安も散漫も次のジョイスの登場で一発で消える。 
「コレガッ、ボサノヴァデス!」と日本語でタドタドシクおっしゃった後、流れて来たのは、「Nara」という曲。 
今回参加している、ロベルト・メネスカルが作曲し、ジョイスが作詩した、今は亡きブラジルの女性シンガー、ナラ・レオンに捧げた曲。 
アコースティックギターをフィーチャーした、まぎれもない当方が望んでいた、繊細でクールで美しくロマンティックなボサノヴァのサウンドが奏でられる。納得。 

  ジョイス以降は期待通りのパフォーマンスが続く。 

   僕は最初サラボーンで知った「白い波(the island)」という題で彼女がカバーした、イヴァンリンスの「夜明け(Comecar de Novo)」は、もちろん本人版が聞ける。 
  先述のカルロス・リラ、ロベルト・メネスカル等大御所のギターパフォーマンスも 素晴らしい。 
 「やっぱボサノヴァにはギターですな」という思いを強くする。 

  特に今回、女性陣のパフォーマンスには、本当にうっとりしてしまった。 
  もちろん 曲自体の良さもあるが、ハスキーでいて力強いボーカルに、歌のサビの部分では声に引き込まれるような一体感を感じ、これが音楽の素晴らしさだ、と素直に感動できた。 
    当たり前だけど、生の音楽には立体感・ 臨場感・奥行きといったものがあって、レコード・CD等の平面的な音では味わえない何かがある。 
   やっぱビールもボサノヴァも、アレも「生」が一番だね。アレ? 

   長丁場で合間に30分位の休憩がある。 その時に飲み物などを購入しようとでも思ったら、また渋滞にはまってしまうので、舞台のパフォーマンスが間延びする感じがしたら、そこのタイミングで買いに行こうと思っていた。ところがそんな暇を与えない密度の濃いパフォーマンスだった。 

  女性陣が、うっとりする歌の後、日本語であいさつしてくれるのであるが、ラテン系で巻き舌なので「アリリッガットゴザマス!」というのが 活きのよいフィリピンバーのお姉さん的雰囲気を彷彿させ、密かに失笑してしまう。ま、それも一興か。 

 会場は自然な盛り上がりを見せ、印象的なフィナーレへ

   その後も、故アントニオカルロスジョビンのファミリー(息子・孫、といっても二人ともいい年)が出演したり, ジョビンのトリビュートコーナーもあり、ボサノヴァの名曲を生でたくさん聴くことができる。 

 そしてラストはやはり出演者全員で歌い、 ボサノヴァとはいえ、場内は総立ちの状態になる。 

  盛り上がったラストの「ディザフィナード」が終わってもアンコールの拍手が鳴りやまない。 

  ところが、いきなり「本日のコンサートはこれで終了致します・・・」のアナウンスが入ってしまい、会場はブーイング。 
僕も、ちょっとはずされた感じがして、ファイナルにしてはちょっと物足りぬ感が残ってしまった。 

せっかく途中までは気持ち良かったのに、最後は「イケ」なかった(外国ではcomeというらしいが)というのに似ている。(?何の話しだ?)。 

   そういえばボサノヴァの生みの親の一人でもあるアントニオカルロスジョビンの、トリビュートコーナーまでしといて、彼の代表曲でもあり世界的にもヒットした「あの曲」が、まだ演奏されず残ってるではないか。アンコールはおそらく「あの曲」だ・・・ 

  ブーイングの嵐がしばらく続いた中、それはすぐに歓声に変わった。 
 先程のオールスターが再び登場すると、演奏が始まり、ボサノヴァファンには馴染みのある「あの曲」のフレーズが聞こえてきたので会場も一安心。 

 これで会場も画竜点睛という感じで満足のいく一日を終了することができた。 

  僕も「久々に生でエエモン見せてもろたで、やっぱつけずに生はエエナア、ネエチャン!」という感じであった。(?何の話しだ?)。 

   空はいつしかすっかり星空になっていた。 
今宵はカップルにとっては、もってこいのロマンティックな 夜である。 

   僕はと言うと、一人で「夕飯何にすっかな・・・やっぱここは生か!」と考えつつ、アンコールの「イパネマの娘」を口ずさみつつ 、スカイロードの終わってしまったよみうりランドの山をトボトボと下って行くのであった。 

(1997.8.19 / 2000.6.1改訂) 



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