今時のいとにくし 其の壱
●コンビニにて
 コンビニにもうけ(食料)買い求めるほどに、まさに棚入れ替えの時に行き当たる、いとにくし。
 レジにて清算するに横から中年の割りいりて、こちらの事し終わらぬうちに台に おのが物うち広げたる、待つことかなわぬにやあらむと、かへすがえすもいとすさまじ。

【現代語訳】
 コンビニに食料を買いにいくと、ちょうど棚の入れ替えをしている最中に行き当たってしまうのは、まことに残念で腹が立つ。 レジで清算をしていると、後ろからおじさんが割って入ってきて、こちらがまだ清算中なのに、自分の買った商品を レジの台にひろげてしまう、ちょっとくらい待てねえのかよと思うのも、まさしくもってあきれてしまうことだ。

 

●独り者の食事
 カップ麺の調味料引き開けんとするに、切り口の有りけるが、つゆも開かず、切り口の引き伸びたる。つひには歯で引きちぎりたる、いと口惜し。中身の飛び散りたるは、いとあさまし。
 切り口無き袋の「こちら側のいずこよりも開くべし」と申しけるに、いと安く開きたるは心ゆくことなり。

【現代語訳】
 カップラーメンなどの調味料の袋を開けようとした時に、切り口があるのに、そこからは全然開かずに、切り口が伸びたような状態になってしまうこと(は腹が立つ)。結局歯で開けることになるのは、大変残念だ。(その際)中身が飛び散ってしまうのは あきれはてて声も出ないものだ。
(ところで)切り口の無い袋でも「こちら側のどこからでも開けることができます」と書いてあるので、簡単に開けることができるのは気持ちの良いことであるよ。

 

●電車にて
 車内のいとさびしげなるに、座る間のそちこちにありけり。しかるにいとせわしき様したる男のわざと近くに寄り居たるは いみじう憂きことなり。息臭きはさらなり。げにかようの男ほど、咳、貧乏ゆすり、くさめ、独り言、独り歌いなどすなるは いと見苦し。

【現代語訳】
 電車内はガラガラで、座るスペースはあちこちにある。ところが、大変落ち着きなさそうな様子の男が、わざわざこちらの 近くにすり寄るように座ってくるのは、大変うっとうしいことであるよ。(その男が)口臭の臭いのは(うっとうしいのは)言うまでもない。いかにもこういう男に限って、(座ったとたん)咳、貧乏ゆすり、くしゃみ、独り言、鼻歌なんかをするのは、 大変見苦しく情けないものだ。

 

●明け方に
 まだ夜明けやらぬ内に、新聞屋の来りて、ドアポストにはさみて行きぬ。 たまさか目覚めたれば、ドアポストより新聞とらんと欲するに、内側よりは紙の厚みによりて 取り難し。ドア開けて外よりまさに取らんとすれば、「ばちん」とドアポストの蓋の大きなる音し、夜のしじまに響きわたりぬ。いとあさまし。

【現代語訳】
 まだ夜も明けぬうちに、新聞屋さんがきてドアポストに新聞をいれていった。 たまたま目ざめていたので、新聞をとりにいこうとすると、内側からは新聞が厚くぬきとれない。 (仕方なく)ドアを開けて外に回って新聞をぬきとると、「バチン!」とドアポストの蓋が(戻る時に)大きな音を出して、あたりの静寂の中に響きわたった。とても驚きあきれたことであるよ。

 

●予約録画
 予約録画する程に家に戻りて再生しければ、ナイターのずれこみて、しまひの欠けぬ。いとすさまじ。もとより楽しみにしつれば ことさらあへなし。ナイターの次なる番組はとくと心置くべきなり。

【現代語訳】
 予約録画をしておいて、戻ってそれを再生してみると、ナイターが延長してしまい、終わりの部分が(時間内に入りきらず)欠けてしまった。大変がっかりである。以前から楽しみにしていた番組なら、なおさら落胆する。ナイターの次にくる番組(を録画する時)は 十分注意すべきである。

 

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