Monologue2001-38 (2001.6.23〜2001.6.26)

「2001.6.26(火)」晴・バニラアイス4個

 今日ひょんなことから、とあるところよりバニラアイスクリームを貰った。
 4つ貰った。
 普通の家庭だったら何の問題もないであろう。
 しかしこれがモテナイ独身エトランゼ(僕のこと)の家庭(?)においては次々と問題を生じていく。

 僕は甘いものが嫌いでは無い。
 むしろかつてはかなり好きであった。
 しかし今は健康上の理由で他少量を控えている。
 それでアイスクリームなどは久しく食べていなかった。

 まあしかしながらせっかく頂いたのだから、たまにはのびのび食べてみようと一箱はおいしく頂かせていただいた。

 しかしさすがのモテナイ独身エトランゼも4個はきつい。
 甘いもの好きのガールフレンドでもいれば、一緒に食べるなんてこともできるのであろうが、元よりそんなものは部屋のどこを探しても見つかるわけなど無く、見つかるのは去年セットし撤去し忘れたゴキブリ駆除剤の類い等であった。

 あと3箱のアイスクリームどーしよー・・・。
 僕は途方に暮れた。
 一時は家の近所で遊ぶガキどもがいたら、くれてやろうかとも思ったが、こういう時に限ってガキどもはこない。
 それに仮にいたとしても昨今の物騒な事件などが相次いでいる世相の中、こんな薄気味悪いモテナイ独身エトランゼオジサンの差し出す溶けかかったアイスなど貰ってくれるのであろうか?
 そうこうする内に時間は経ってアイスは待ってはくれずドンドン溶け出していく。

 冷蔵庫にいれておけばいいじゃん、と思った貴方、貴方はまだモテナイ独身エトランゼ世界を甘く見ておりますな。
 私モテナイ独身エトランゼ、実は只今冷蔵庫なる文明の利器を持ち合わせていないのである。
 正確に言うと、冷蔵庫は壊れてしまった。
 もう古いので買い替えたいが今はいろいろと余裕が無い為、そのまま放置してある。

 その冷蔵庫にはちゃんと冷凍庫もついていたのであるが、あまり有効活用されていなかった。
 今回のような事態がまさに冷凍庫の出番だったのであるが、そんな時に限って既に冷蔵庫は使用不能に陥っているのである。
 なんてモテナイ独身エトランゼ世界に起る事態は逆タイミングいいのであろうか。

 さて4個のアイスクリームのその後であるが、2個までは何とか普通に頂けた。
 ここまでは通常の甘いもの好きとして至福を味合わせていただいた。
 3個めは少し時間をおいてから賞味させていただいた。その時は既に固体から液体状に状態を変貌させていたが、カップの中心部は若干であるか氷状のものが残存し、温度もまだ冷たかった。
 一口飲んでみたら、結構いけた。
 考えようによっては、これは飲みごろのミルクセーキととれないことも無い。
 いや、むしろ最初からミルクセーキだと思って飲んだら、味の濃い上質のミルクセーキととれないことも無い。
 こう、前向きに対処することにした。

 今僕は4個目の味の濃いミルクセーキを前にし、これをシタタメテいる。
 4個目は貰ってから、もう大分時間が経っているので、温度的には飲み頃は過ぎたようである。
 既に3個たいらげているので、甘いもんはもういい、という気もしないでも無い。
 相当温くなっているだろうが、できれば明日の朝にでも回して、そこで消費したい。
 しかし今飲んでしまえば、何とかアイスへの義理は果たせる。
 さて、どうしたものかと悩む内に、また小一時間ほど経過してしまった。
 おそらくこの間にも元アイスは梅雨の陽気で、どんどん暖まり、明日にはホットミルクになっていることだろう。
 考えようによっては、アイスが固体から液体へと変貌を遂げる進化の現場に立ち会えたと、前向きに解釈できなくも無い。いっそのこと気体への進化まで見届けてあげようではないか・・・ちゃう、ちゃう!、そんな問題や無いっ!!。

 それにしてもアイスで、なぜこうも心労せなばならんのだ・・・
 かくしてモテナイ独身エトランゼのエネルギーは吸い取られ、その進化は、またしてもアイスという「小兵」に阻まれたのでありました、とさ。

 ここで一句。
 ゴミ、埃、洗濯物に、虫、アイス、寂しくも無し独り身の庵。字余り、みたいな。

「2001.6.25(月)」晴・神を聴く

 昔は音楽を聞く時は、心地良かったり楽しかったり刺激的な音楽であればそれで良かった。
 もちろん音楽というのは、そういうもんでもあるのだろうし、そうした音楽でもそれはそれで十分素晴らしいと今でも思う。音楽にはいろんな局面があり、それが音楽の素晴らしさでもあると思う。

 ところで少しづつ年を重ね、人生の荒波にも飲まれてきだしたりするようになると、今までとは違った更に新しい局面を音楽に見いだすようになった。
 それは、人間的な営みというもの以上の何か大きく普遍的なもの、適当な言葉かどうかわからぬが言ってみれば「宇宙=神」のようなものを強烈に感じさせてくれるという音楽の一面、であった。

 人生に不合理を感じるようになると、何か異次元に見えない法則があり、そちらのほうとしてはちゃんと合理的に動いているから、これでいいのだ、と考えたくなるようになってきた。
 地上のレヴェルでは不可解なものも、少し上に登ってみると実に理にかなって動いているのでは無いか。
 そういったことを人間が語るのでは無く神が何かを通じて語りかけてくる。

 そして地上のレヴェルで混乱に陥った時、ふと不変の美しさで、あるべき姿を提示してくれる。

 そういったような、言ってみれば神の御業とでも言うべき如きものを感じさせてくれる音楽に、いつしか心を奪われるようになったのである。

 どんな音楽ならば、そういうものになるのかを言葉で定義づけをするのは難しいが、僕の場合作曲家でいうと、まず最初はバッハ・モーツァルト・ベートーヴェンの御三家の音楽の中に、そういったものを聴くようになった。

 具体的にはいろいろあるが、その中では、やはりバッハの「平均律クラヴィーア曲集(全2巻)」をまず挙げたい(演奏は、やはりいろんな面でスヴャトスラフ・リヒテルのが最良のような気はする)。

 地球は太陽の回りを規則正しく回っている。
 そしてその上で我々人間が何世代にも渡って、いろいろなドラマを繰り広げている。

 例えばバッハの「平均律」は、ある整然とした規則の上に、時には軽快なものや、時にはロマン的なものや、時には豪快なもの、悲しいもの、そうしたいろんなドラマが乗っかっていて、まるでそれは地球上の営みの象徴的な姿を音に変えているかのように聴こえてくる。僕らの人生のように短調になり長調になる。
 そしてそれらの音楽を芯の通った何かが貫いて、均整の取れた調和を見せている。
 まるでそれは地球が青く丸いことを知識としてでは無く、実感として知っている人が作る音楽であるかのように聴こえてくる。

 更に感動的なのは、その音楽は取りも直さず「心地良かったり楽しかったり刺激的な音楽」であることなのである。

 更に感動的で素晴らしいことは、それらの音楽に神を見いだそうと聴く習慣をつけさせてもらったおかげで、今度はどんな音楽にも神が宿っているのを見いだそうという習慣がつくようになったことである。

 こんなような、ある種音楽の試金石でもあり、それでいてエンターテイメント性も充分あるような音楽が僕の中では音楽として最上の部類に位置づけされてくるのは、当然のこととなる。

「2001.6.24(日)」曇時々晴・母なる大地の子

 ビートルズの隠れた名曲として、真っ先に挙げたいのが通称「ホワイトアルバム」に収録されている「マザー・ネイチャーズ・サン」である。
 短い曲で、コード(和音)進行は至ってシンプルなのであるが、それに乗せて陰影に満ちた潤いのある美しい調べを、アコースティックギターの伴奏でポールの優しく、しかしどこか神秘的でもあるヴォーカルが淡々と歌い紡いでいく。

 詩が更に良い。
 そこには恋愛も無ければメッセージも無く、貧しく生まれたが只日がな一日皆の為に歌う、と、まるで自分のことを歌ったかのようなポールの歌詞。
 その淡々とした言葉の中には、しかし大いなるものの姿が垣間見られる。

 僕はふと、もしモーツアルトが現代に生きていたら、こんな曲を作ったのでは無いか?そんな気もした。

「2001.6.23(土)」曇時々晴・出雲の巨大神殿

 今日のNHKスペシャルではかつて日本一の高さを誇る巨大神殿があったとされる出雲大社から昨年発掘された、その遺構についての特集を放映していた。
 以前から出雲大社に巨大神殿があったという説はあったが、今回の発見でその神殿が実在したという事実は揺るぎないものとなった感があり、今やそれがどういうものだったかということを検証していく段階に入っているようである。
 この神殿は東大寺の大仏殿よりも高く、今で言えば13階建のビルに相当すると言われており、大きな都市のデパートより高いくらいのイメージがあるから、当時としては相当な威容をを誇っていた建造物だったことであろう。きっとそれを見た人々は、かなり圧倒されていたに違いない。

 出雲は昔から神の集まる地と言われてきたが、そんな伝承や巨大神殿のあった地なのだから、それに相応しい何か大都市の遺構みたいものが発見されたりしたら面白いのに、とも思う。

 そうなると日本の中心地が奈良京都だった時代とは、又違った文化圏が日本の別の場所にあったということにもなり、又歴史のイメージも変わる。

 まあ、これはあくまでも空論にすぎないが、とにかくこうした日本に纏わる古い概念・固定観念がドンドン壊されていくのは結構心地好い。

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