Monologue2001-18 (2001.3.19〜2001.3.25)

「2001.3.25(日)」雨・マラソンで言い訳

 人生はマラソンに例えられる、などということを良く聞く。
 いやオレは短距離走者だ、という人もあろう。
 まあいずれにしても、このように人生は走ることに例えられる。

 ところで我がモテナイ独身エトランゼの人生も仮にマラソンに例えてみようとした訳であるが、どうも考える内に具合の悪いことになってきた。

 「オレって、もしかして、まだスタートしてねえんじゃねえか?」
 こんな疑念が浮かび上がってきた。
 今の生活を振り返って見ると食う為に不本意な仕事をしつつも、何か将来の為になるかと思い好きなことをコツコツしようとしているつもりでいる。

 これは厳密に言うとスタート前の「ウォーミングアップ」と言うのでは無いか?という気もしないでも無い。
 しかし今までの生活が「ウォーミングアップ」だとしたら、ちょっと「ウォーミングアップ」しすぎなんじゃないか?という気もしないでも無い。
 こんなに何十年も長すぎるくらいの時間をかけて「ウォーミングアップ」とはするものなのであろうか?
 これでは単なる「ウォーミングアップ馬鹿」なのでは無いか?

 「ウォーミングアップ」は既に他の人であれば社会的地位も築き家庭を持ったりするような今の僕の年齢でするべきものなのだろうか?
 「ウォーミングアップ」中に死んでしまったら一体どうするつもりなのか?
 「ウォーミングアップ」でもう数万キロ走ってしまって、結局本編はほんのちょっとニワトリの屁くらい走るだけなんてことになりやしないか?そんなことになると「人生はマラソンである」では無く「人生はウォーミングアップである」になりやしないか?
 或いは「ウォーミングアップ」に没頭するあまり、スタートの号令を聞き逃してしまっているのでは無かろうか?
 既に僕の参加すべきマラソン大会は、とっくの昔に終了してしまっているのでは無いか?あとには掃除のオバチャンが会場の後片づけだけをしていて「アレ?アンタ選手の人?もうレースはとっくに終わっただよ」などと言われやしないか?

 最低スタートできるにしても上記のような疑念の為、レース不安は募るばかりである。
 マリッジブルーでは無いが、マラソンブルーになりやしないか?などと余計な心配もしたくなってくる。
 かくしてモテナイ独身エトランゼは益々小心者に成り下がっていくのであった。

 実際のところ「ウォーミングアップ」で既に相当疲れてしまっている感も無きにしもあらず、である。
 今「選手の皆さんスタート地点に集まって下さい!!」などと言われても、ヘトヘトでレースを棄権してしまう恐れも無いことも無い。

 しかしながら言い訳も無いでも無い。
 それは最近まで自分がレースにエントリーしているとは気づかなかったのである。
 近年「聖なる予言」などの精神世界系の著作を読み、ようやく「アレ?オレ、エントリーしてたのね」と自分の人生に気づき始めたばかりなのである。
 近年やっと自分が走ることになっているらしいと気づき始めたばかりなのである。
 近年やっと自分が走るコースがあるらしいということがわかってきたばかりなのである。

 だから言い訳させてもらえば「ウォーミングアップ」は、まだそんなにはしてないのである。
 むしろ最近やっと「ウォーミングアップ」し始めたばかりなのである。
 じゃあ一体それまで何をしてたんだ?と問われれば「今までスタート地点の横の木陰で昼寝してました!スミマセンでした!」と随分と長すぎる人生の惰眠の謝罪を只々いたすばかりなのである。

「2001.3.24(土)」晴・男性専用車両

 東京の私鉄京王線の深夜便の一部で「女性専用車両」がテスト運行され概ね好評だったそうである。
 私モテナイ独身エトランゼも、こうして女性から隔離されていってしまうのは少々寂しいが、かよわき女性諸君の為であれば致し方ない。
 かくいう僕自身だって、できれば他の男性から隔離されたい位である。

 それよりも我が男性諸氏は、まずこの実態をもっと真摯に受け止めなければいけない。
 「女性専用車両」を作らざるを得なくなったということは、簡単に言えば「男性が女性に嫌われちゃった」ということである。
 相当嫌がられていたのである。
 これは男性としてかなり情けない由々しき事態といっても過言では無い。

 嫌われたる主たる要素は男性群の中でも「痴漢類」に属する種族と思われるが、「女性専用車両」を作られるなど「よっぽどの嫌われ方」をされている、と捉えていかなければいけない。

 普通問題が発生した際は、その当事者同士で解決なり、示談なりして今まで過ごしてきたと思われる。
 あくまでも当事者同士の問題の範囲と思われていたものが、ついに一つの大きな組織を動かすまでに至ったのである。
 ここまで大ごとになったのは「よっぽどの嫌われ方」だったのである。

 この先「女性専用車両」どころか国などが動いて「女性専用路線」まで作られてしまうようになったら、日本の男性諸君の品位はガタ落ち、世界からも「ヤーイ、モテナイ国ーッ」などと嘲笑を浴びていたことであろう。

 そんな中僕にとっては全くもって驚くべき意見があることがわかった。
 それは「女性専用があるなら男性専用も作れ」というものである。
 どうやら男性側からの意見らしい。

 およそ僕の思考回路、辞書には存在しない言葉だとばかり思っていた「男性専用車両」。
 申し訳ないが死んでも乗りたく無い。そんな車両。
 一体何のメリット、何の意義があると言うのであろうか?。
 「男性専用車両」などというものができたら、僕はキッパリ電車の世界から足を洗うことにする。
 もう電車には乗らない、頼らない。
 できれば他の男性から隔離されたい位の僕が「男性専用車両」に乗ってしまったイメージを描くだけで、どっと暗くなってくる。人生に否定的になってくる。思考はマイナスに向かいドンドン悪化し、果ては世界大戦・人類滅亡にまで達する。

 そもそも満員電車が不快なのは、その過密状態であることよりも満員電車の擬似男性専用車両状態の不快さこそが原因なのでは無いかとすら僕には思えるのであるが、気のせいだろうか?(かなり男性を目の敵にしてますな)。
 その証拠に満員電車の客がほとんど女性だったら満員電車のトラブルはあれ程起り得るのか?と思う。
 僕には満員は言うに及ばず「満員では無い男性専用車両」の方が、普通の満員電車よりも不快でトラブルが起き易いのでは無いかとすら思える。
 すなわち「男性専用車両」なぞ、あってはいけない作っちゃいけないのである。
 「男性専用車両」なぞ明治政府の混浴銭湯廃止策以来の愚策とすら思える。
 だから絶対作っちゃダメったら!、ダメなのッ!!(相当嫌なようですな)。

 しかしながら「男性専用車両」を作って欲しいと願った男性の心理状態がどうなっていて、どのような心情からそのような考えに至ったのか?ということに興味は無くも無い。もしかしたら僕をして納得させるような想像もつかぬような奇抜な理由があるのかもしれない。
 故にできることならばオカマや女性恐怖症の方の意見だった、などという簡単なオチで無ければ良いが。

「2001.3.23(金)」晴後曇・カラータイマー

 往年の名怪獣テレビドラマ「ウルトラマン」に於て、主人公ウルトラマンの胸部に装着?された「カラータイマー」なるものによってウルトラマンのエネルギー低下を視覚的かつ聴覚的に判別できるようになっていた。
 ウルトラマンは3分しか地球上に滞在することはできず、彼はその「カラータイマー」の明滅により己の滞在可能状況を瞬時に確認することが出来得た。
 ウルトラマンは3分近くなると、サッサと「業務=怪獣駆逐」を済ませ、「ジュワッ!!(お先に失礼します)」などと言いつつ、残業を頼まれぬよう退社してしまう社員の如くソソクサと宇宙に帰ってしまうのである。

 相手の怪獣にとっては、このカラータイマー、何のことだかわからなかったかもしれぬが、ある意味非常に合理的な装置だと思える。
 ウルトラマンのようにどんな時でも無表情の方には勿論、普段感情を表に出さない真面目な人間にとってもカラータイマーは大変役立つ装置と成り得るであろう。
 我々の社会においても、これが導入されれば非常に効果を発揮すること間違い無し、とさえ思うが例によってこういう問題はどこに提起したら良いのか今のところわからない。
 ん?提起しても無駄だって?
 でもするったら、するのっ!!(また逆切れか・・・)。

   *   *   *

 我々の社会においても、しばしばモウダメ!、モウ許して!などとギヴアップしたい、或いはギヴアップせざるを得ない局面を多々見受ける。
 人によってはそんな危機的局面に3分と保たない人だっている。

 例えば威圧的な人に論破され執拗に責められたりした時。
 或いは何日も徹夜が続きヘロヘロになった時。
 或いは自分一人に仕事が集中しシッチャカメッチャカになり、どうしようも無くなった時。
 初めての夜興奮しすぎて入れる前に出ちゃった時(ん?)。
 などなど。

 このように精神的にしろ体力的にしろ自分のエネルギーがダウンしてしまった時に「カラータイマー」があれば、もう大丈夫!なのである。

 日本人など特に自分に無理をさせ頑張っちゃいがちである。
 普段怒っているのに顔は柔和であったり、疲れているのに笑顔を見せたり、人は社会的な苦悩の表情をひた隠しにしている。
 ところが「カラータイマー」があれば、もうそんなことで心労する必要は無い。
 「カラータイマー」は、その人のダメージ、疲労、エネルギーダウンを即時に警告し、本人に成代わって相手にその度合を適切に提示してくれる。
 必要とあらば「ジュワッ!!」などと言いつつ彼方へ姿をくらましてしまえばイイのである。
 カラータイマーで人間同士の偽りの無いコミュニケーションが取られるようになるのである。

 重要な会議で不利な要求を突きつけられた時、笑顔で素直に要求を飲んでしまうと見えたA課長の「カラータイマー」が突然点滅した。ピコーンピコーンピコーン・・・。
 この事態により、議会は議題遂行の無謀性が認識され、議決は保留となった。

 ここのところ休日はずっと出勤し続けてロクに休みをとっていないB課長の「カラータイマー」が、ある日突然点滅し始めた。顔は元気そうであったが、もう少し無理をしていれば過労死するところであった。

 ・・・などと言うように「カラータイマー」の効果は絶大である。

 「カラータイマー」が一つだと精神的疲労なのか肉体的疲労なのかの判別がしにくい。
 そこで「カラータイマー」を「精神的カラータイマー」「肉体的カラータイマー」の2種に分け、それを左右の胸にそれぞれ配置する。
 これは時に女性によってはブラジャーの代わりさえする優れものでもある。
 しかし男性にとってはヴィジュアル的誤解を招きがちであまり好ましく無い為、「肉体的カラータイマー」の方のみ股間に設置する、という方向に世論は進むであろう。こうすれば「肉体的カラータイマー」はまさに「男性自身」の肉体的疲労も象徴的に表示する為、お母さんが夜求めてきてもお父さんが疲れて眠りたい時などは効果絶大である。

 しかしカラータイマーが社会的に浸透するにつれ問題も浮上する。
 例えば映画館や劇場などで静かに鑑賞中に突然カラータイマーがピコーンと鳴ってしまう。
 超ヒンシュクである。
 そこで電車内や館内では「携帯電話の電源は切っておくように」の標語の横に「カラータイマーの電源は切っておくように」などと書かれるようになる。
 そこでカラータイマーの製造メーカーでは、音では無くバイブレーション=振動によってダメージ度を知らせる機能も開発されたりする。
 これで大事な時にカラータイマーが鳴って「カラータイマーの電源くらい切っとけよっ!」などと怒鳴られることは少なくなる。
 しかしバイブレーション機能だと、あまり効果的では無いぞとの世論も出たりするが、逆に一部の女性には結構好評らしいなどという意見も出たようである。

 それから、ある会社などでは始業何分も経たない内にほとんどの社員のタイマーがガンガン鳴り出してしまったなどと言う、ある種情けない会社も出た、などというニュースも流れたりする。

   *   *   *

 当然カラータイマーの色彩的美的側面に敏感な若者達は、自分のカラータイマーに装飾を施すようになる。
 カラータイマーにストラップやキーホルダーを付けたり、「ドラエモンカラータイマー」「キティーちゃんカラータイマー」「ポケモンカラータイマー」などが爆発的なヒット商品となる。
 なかにはカラータイマーにピアスをする者なども出て来る。

 ピコーンピコーンという従来の原始的カラータイマー音では味気ない、とそのサウンド改良に目をつけた大手機器メーカーなどが、インターネットで音源のダウンロードも出来るカラータイマーサウンドダウンロードサービス略して「COTSDL(コッツデル)」を開始し始める。
 若者には宇多田ヒカルや浜崎あゆみのヒット曲を模した音が人気が出るが、中にはアダルトサイトなどで入手できるAV女優の肉声で「もおん、いやあん、おしまいよ」などという人声の出る音源なども登場する。
 こうして街にはあらゆる音色のギヴアップ音が流れるようになり街は一層賑やかになる。

 これだけ浸透すると、新しいものには抵抗を示す人達も当然出て来る。
 「カラータイマーにはついていけん。オレは自然が一番」などと頑にカラータイマー装着を拒む人や、
 「最近の若者はチャラチャラしたカラータイマーなんか付けて、危機管理をなんだと思っているのか」だとか
 「カラータイマーにピアスはいけない」だとか
 「自分の意思表示をカラータイマーなどに委ねる日本人は危ない」などの意見も出たりする。

 週刊誌では「最近のカラータイマー事情」や「あゆお薦めのとっておきカラータイマーコレクション」「ここに行けば安く手に入るカラータイマー」などの特集記事が組まれる。

 「国会中継」はカラータイマー導入時から飛躍的に視聴率が伸びたりする。

 一見うまく行ってるように見える街頭のカップルも片方のカラータイマーが鳴りっぱなし、なんてこともあり結構人間の本性が各地で暴かれるようになってくる。

 こうしてカラータイマーは完全に生活に密着し、松任谷由実の「手のひらのカラータイマー」などのようにヒットソングの題材としても歌われるようになる。

 やがてカラータイマーは海外にも輸出されるが、あるアフリカの飢餓の国でボランティアの方が現地の住民にカラータイマーを装着した所、点滅が鳴りやまなかった、などということが新聞記事で載ったりする。

   *   *   *

 次回は「嫌いな人間退治にはスペシウム光線導入」の巻をお送りする。
 ん?ウルトラマンから無理してネタを取るなって?
 こりゃ失礼、確かにその通りですな。
 では変わって「魔法のマコちゃん」から・・・
 ん?知らないって?
 そいつは困ったな。

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