Monologue2001-02 (2001.1.8〜2001.1.12)

「2001.1.12(金)」・さくらや恐るべし

 安さ爆発の「さくらや」の最近のCMをご存じであろうか。
 男性の客に対して、女性店員が水商売のオネエチャンさながらのしなを作りながら愛想タップリに対応する、といったものである。
 普通はこんなCMを見たって、まあ大抵は「こういう気持ちで頑張ってるってことなんだろうな」と、まさか本当に、このような対応をしているとは、よもや思わないであろう。

 ところが昨日行った、東京のとある「さくらや」の支店では、CMの通りとまではさすがにいかないまでも、女性店員のCMを彷彿させるような大変ハートウーォミングな接客態度に、非常に好感を抱かせてもらったのである。

 僕が購入したものは、AV機器の備品で千円もしない大したものではなかったのであるが、レジで清算時に店員のオネエチャンに、その時に客が他にいなかったこともあってか、大変丁寧な対応をしていただいた。
 特に感心したのは、僕が財布から小銭を出そうとして、誤って1円玉が2・3枚床にこぼれ落ちてしまった時である。
 僕は、すぐに拾ったのであるが、レジのオネエチャンは大変心配してくれて、今にもレジから出て来て私が拾います、と言わんばかりの気の遣いようを見せてくれた。僕は大丈夫な旨を告げたので、レジから出て来ることは無かったが、まさに勢いでは全くCMの通りであった。たかが1円にである。
 オネエチャンは僕が小銭を全部拾い終えたかどうかを、アデランスのCMのコンサルティングのオネエチャンばりに確認してくれた後、お釣りを両手を添えて、そっと僕の手を暖かく包み込むように渡してくれてた。
 この時点で僕は、そのオネエチャンが、それ程好みのタイプでは無かったのにも関らず、ポッとなってしまったのは言うまでも無い。

 「さくらや」恐るべし。

「2001.1.11(木)」・LOVE PSYCHEDELICO

 最近の日本のアーチストの歌を聴く時には、以下のようなランクづけをしてみたりする。

 1.興味は沸かない
 2.悪くはないが特に進んで聴く気はしない。
 3.好きなタイプの曲では無いが、面白い気はする。
 4.僕的に面白さは無いが客観的に良い曲だと思う。
 5.楽曲もヴォーカルも水準以上。
 6.(無条件に)イイじゃん、これ。
 番外:楽曲の善し悪しに関係なく、歌っているアーチストで聴く。

 LOVE PSYCHEDELICO(ラヴ・サイケデリコ)のファーストアルバム「THE GREATEST HITS」は上記で言うと「6」に位置づけられる。
 随分諸手を挙げて誉めてるじゃネエカ、と思われてしまいそうであるが、確かにヴォーカルが女性ということで既に僕的なハンディキャップがあるかもしれん。
 ともあれ僕などのように1960〜70年代の洋楽で基盤を培ってきたような者にとっては、このLOVE PSYCHEDELICOのようなテイストは全然抵抗無く受け入れられる、ということはある。

 えっ?番外ってどんな人があるかって?、そうですね・・・モーニング娘。とか・・・モーニング娘。とか・・・、それからモーニング娘。ですね・・・って皆モーニング娘。じゃねえかって、・・・ごもっとも。
 (ところがこう言いつつ、なんと実は僕はモーニング娘。のCDは一枚も持っていないのです。有線のダビングMDのみ)。

「2001.1.10(水)」・裏返せないお好み焼き

 自分が今ひとつ自分を変えていくことができないところは、どんなところにあるのか少し考えて見た。

 僕の特徴であるのは物が思い切って捨てられない、というのがまずある。

 ウォークマン用のステレオヘッドフォンの片側が断線か何かで聞こえなくなってしまう。
 こうすると通常の用途はなさなくなってしまい仕方なく新しいのをまた購入する。しかし壊れた方のやつは片側が聞こえなくなったからといって、どうしてもこれを捨てることがなかなかできない。
 「片方だけでもラジオのイヤホンみたいにきっと使える日が来るのよっ!」と少女マンガチックに目をキラキラ輝かせつつも、それを大事に保管しておくのであるが、それがその後にラジオのイヤホンとして使われたためしは無い。
 いつぞやは、そんな不遇の次期イヤホン候補君達が3つくらい溜まっていた時期もあった。
 結局それらはラジオのイヤホン時代を経過することなく不燃ゴミとして捨てられていったのであるが、やはり後味の悪さが残った。「クッソーッ!、結局こーゆーことだったのかーっ!、だましやがってーっ!、いい夢見させといて結局これかいっ!、だったらもっと早くに捨てちまっててもらった方がよっぽど良かったヤイっ!」などという彼らの僕への悪態・罵詈雑言が聞こえてきそうであった。
 これだけ後味が悪いのなら、いっそのことお美しいSMの女王様に「なーにグズグズしてんのっ!、それも、あれも、パッパと捨てておしまいっ!ピシッピシッ!」などとお叱りを受けつつ踏みつけられつつヒイヒイ言いながらも強制的に捨てさせてもらえでもしたら、きっと後味は悪くならないかもしれんな・・・、などと想像してしまうのであった。

 それから結構下らないことでイライラするというのもある。
 ちょっとした文具、例えばクリップの類いとかホッチキスの針など、普段は文具用の棚にしまってある。
 ところがこれが使おうとした時にその棚に無い時がある。
 あまり頻繁に使用しない文具だと、前回使用した際に元あった場所に格納するのを忘れ別な場所にしまってしまうと、それを次回に使用するインターバルが長すぎて、収めた場所をつい忘れてしまう。
 僕は当然あると思っていた場所に、それも自分の管轄内でよもや予期せぬことも起らないであろうと思われる場所で、予想外のことが起ってしまうと、途端に爆発状態になってしまう。その起因がちょっとした文具のような取るに足らぬものであればあるほど尚更、ちょっとした者の分際でっ!などと、なってしまう。
 更にこんな狭い部屋でなぜ見つからんのだ?という憤りと、単純な探索を妨害する無限に続くとも思えるくらい累々と立ちはだかっている無数のビデオや本の類いを目の当たりにした時の言い知れぬ絶望感に苛まれる自分が、どうにもこうにもいたたまれなくなる。
 それで「ちょっとした文具が、すぐに出てこねえなんて、ちょっとした文具じゃねえっ!!」などと意味不明のことを喚き散らしつつ、近くにあった座布団に八つ当たりする、なんてことになりかねない。
 原因は自分の仕舞い忘れなのに・・・。

 きっと小市民というのは、こうした小さい小ーさいことに、過剰なエネルギーを消費して腹を立てたり、打ちのめされたりしてるんだろうな、とふと思ったりする。

 只短所は長所の裏返しというから、これらのことはきっと裏返すと長所になっていることもあるんだろうな、という希望も無いことも無い。
 しかし裏返したら虫が巣食ってただけだったとか、お好み焼きの失敗例みたいにまっ黒こげだった、なんてえ可能性も無いことも無い。
 今は失敗してグダグダになってしまったお好み焼きのように、裏返すに裏返せない状況にもあるような気もしないでも無い。
 こうした場合やっぱりグダグダは捨ててしまって、新しいお好みを焼いた方がいいのだろうか・・・?それとも・・・?
 結局わからんのであった。チャンチャン(ちと古い締め方かね)。

「2001.1.8(月)」・21世紀初頭の平凡な一日

 風呂場の掃除をした。
 これで20世紀からやり残した家の中の主要な部分の掃除は終わった。
 世紀が開けても結局家の中はトっ散らかったままであるが、一応これで僕の大掃除的20世紀は事実上の終焉を迎えた。
 昨日から東京地方では雪が降り積もった。言ってみれば今世紀最初の雪である。
 書き残した年賀状の返事もようやく書き終え、夕方近くには晴れ間も出てきた為、葉書を出す為に外出する。
 いつもならば自転車で外に出るのだが、雪の為徒歩で行く。
 ポストまでは歩いて10分程かかるので、普段運動不足気味のモテナイ独身エトランゼ(僕のこと)は、こりゃかなりの運動になるな、などとたかが外出に、気合いを入れ覚悟などを決めている。

 陽のおかげで大分雪が溶けた部分もあるが、まだかなり残っている。
 モテナイ独身エトランゼは、すっ転んでこれ以上カッコワルイ部分を増やさぬように、と一歩一歩慎重に雪を踏みしめながら歩いていく。
 外では子供が坂の斜面上になったところでソリをしながら遊んでいる。
 更に行くと、今度は小学校高学年か中学生くらいの少女の集団がキャーキャー言いながら通り過ぎていく。
 モテナイ独身エトランゼオジサンも思わず嬉しくなってしまう。
 そういえば最近ミニモニがテレビで「じ〜ぶ〜ん〜を〜し〜ん〜じ〜て〜、いくのだぴよ〜〜ん〜〜」などと歌っているのを見つつ、一人で「もーっ!、わ〜い〜い〜っ」などと呻いている自分に気づくにつれ、モテナイ独身エトランゼも遂に末期症状が出始めたか・・・と嘆息する。
 そういえば昨日テレビでやってた「鉄道員(ぽっぽや)」での広末涼子ちゃんの劇中の役の名前が「雪子」ちゃんだったな、などということもついでに思い出す。

 駅前にあるポストに向かいつつ、ふと近くにある地域密着系のコンビニの前にもポストがあったことを思い出し、ついでに食料を仕入れようと、進路をその店に変えることとした。
 普段はセブンイレブンやローソン、サンクスといったメジャーコンビニを利用することが多いので、その店には余り行くことが無かった。
 今日は久しぶりということになる。
 
 店の前ではご主人が雪かきをしている。
 僕は年賀状を赤い小さなポストに放り込む。
 店内ではレジにやはり地域密着系のバイトの女の子が立っている。
 この店は24時間では無いし品揃えも少ないが、レジには必ず若い女性が立ってくれているので、モテナイ独身エトランゼ的には、捨て難い魅力があることは否めない。
 久しぶりに自分で焼きうどんでも作ってみっか、と、うどんの玉とそれに入れる為用のキャベツなどを購入してみる。自炊の気が起るなど又雪が激しく降ってこなければ良いが。
 清算時にレジのカウンターに井村屋のあんまんボックスがあるのが目に止まった。
 モテナイ独身エトランゼはちょっとイイ気分になってきていたので、ふと久しぶりに肉まん・アンマンをも購入することにした。学生時代は毎日のように買っていたが、最近は間食を控えていたので、すっかりご無沙汰をしていた。

 帰りは山沿いの裏道をトボトボと歩いていく。
 こんな道では滅多に車も通らぬだろう、と思っていたが、後ろから軽自動車がやってくる。
 僕は早めに脇の広場にどいてやった。
 車が通りしな、中から地元系のオジサンが「ゴメンネーっ」と一声かけて静かに通り過ぎていく。
 僕は軽く会釈を返しつつ高倉健さん風に「まっ、お互いさまっしょ・・・」と一人心の中で呟く。
 そしてふと、オレって今かなり地域密着系してるな、と思う。
 普段余り地元に根ざした生活をしていないが、たまに近所を歩いて見ると、何か地元との距離が縮まった気もしないでも無い。

 帰ってから今肉まんを食べつつ、これを書いている。
 BGMは妹の旦那が好きだと言っていた、椎名林檎の「丸の内サディスティック」という歌。
 
 21世紀は何かを変えたい、大それているが社会や世界すら変えていきたい、などとこのしがないモテナイ独身エトランゼにそんな思いも無いことも無い。しかしその前に自分に向かって「まず、テメエが変われよな・・・」と言いたいことは確かである。
 自分を変えたいが、相も変わらず平凡な一日が今日も暮れていこうとしている。
 曲は林檎の中では僕が最も好きな部類に入る「茜さす 帰路照らされど・・・」に入っていく。

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