観察会の小道具たち

自然観察会や探鳥会の案内人は,何を持っているのか?
必須アイテムから,ちょっとした小道具まで,一挙公開?


明治神宮探鳥会スタッフの持ち物をピックアップしてみましょう。
まずは必須アイテムから。

・参加者名簿&集金袋
 明治神宮探鳥会は,おとな200円の参加費(18歳以下無料)を徴収するので,これは必需品。参加者名簿は,名前を書くだけ。参加者数の実績は,その探鳥会あるいは探鳥地を支持する人がこれだけいると言う証しにもなります。また,名簿に名前を書くと,行事保険の対象となります。
・パンフレット
 これは明治神宮探鳥会スタッフが独自に作っています。季刊でフルカラー印刷。DTPソフトで編集していて,手作りとは思えないほどの作りの良さです。これが欲しくて,つい,年に4回以上参加してしまう人も…。他の探鳥会とは違う,「明治神宮探鳥会らしい」アイテムの1つです。
・名札
 担当者は必ず着用。担当に声をかけるときは,名前で呼んでね。個人的には「先生」と呼ばれるのは嫌いです。だって,探鳥会の案内は,会員のボランティアで運営されているのですから,担当者だって,基本的には参加者と同じ,「1人の会員」という立場に過ぎないのです。
 できれば参加者の方にも名札をつけて欲しいんです。だって,参加者じゃない人との識別も必要だし,名前で呼んだほうがいいですから。
・双眼鏡
 基本的には自分用ですが,参加者に貸してしまうことも。
・望遠鏡
 森の中では使う場面があまりないので,必須アイテムとは言い難いのですが,看板代わりに持っていたり,柵の向こうの草花をアップで見るときなど,意外な場面で重宝していたりします。もちろん,望遠鏡はみんなで使うために持ってきています。だから,遠慮なく見てね。
・図鑑
 担当者は何でも知っているわけではありません。図鑑は必需品。「歩く図鑑」にはなれないけど,「歩く図書館」には(体力さえあれば)なれます(笑)。季節に合わせて,野草図鑑,昆虫図鑑,キノコの図鑑やクモの図鑑など,さまざまな図鑑を組み合わせて持ってきます。わからなければ,すぐ調べる。それでもわからなければ,「わかりません」と頭を下げる。知ったかぶりはいけません。
 探鳥会では,野鳥の「絵本図鑑」を持ち,観察の最後の「おさらい」の時間に使っています。絵本だから,図版が大きく,紙芝居のように使えます。
・ファーストエイドキット
 明治神宮探鳥会の場合,比較的安全な場所ですから,大したものは持っていませんが,ちょっとした怪我や虫刺されに対処できる程度の道具は持ちます。夏場には虫除けも持ちます。なお,担当者のうち何名かは救急法の講習を受けています。

……ここから先は,観察を楽しく演出するための小物です。

・小さな容器
 シャーレや採集ビンのようなもの。小さな昆虫などをみんなで観察するときに威力を発揮。キャッチ&リリースで観察しますので,観察が終わった虫を逃がしやすいことも重要なポイントです。コオロギやバッタなどには,ペットボトルで採集ビンを作ったりします。
・ルーペ,虫めがね
 小さいものを観察するときに。普通の虫めがねは倍率2〜3倍。写真用のルーペ(カメラ屋さんで1000円ぐらいで売っている)だと,5〜15倍ぐらいのものが手に入ります。これで野草の花のアップを見ると,けっこう感動的です。
・定規
 意外と便利に使っています。虫や葉っぱの大きさを測ったり,ロゼットで越冬中の草の高さを測ってみたり。
・温度計
 気温の記録はもちろん,地温や湧き水の温度など,いろいろと測っています。持っていると,なにかと便利です。レスポンスの早い温度計がおすすめ。デジタルも良いけど,写真の現像などに使う,50℃までの棒温度計を大型カメラ店で安く手に入れて使っています。
・聴診器
 ネイチャーゲームが普及して以来,需要があります。これで木の音を聞くんですが,木が水を吸い上げる音を聞くのは,かなり難しいようです。お医者さんや看護婦さんだって,ちゃんと時間をかけてトレーニングを受けて,聴診器を使っているのですから,素人がいきなり使って聞こえるかどうか……。そんなわけで,「気分だけ」体験してもらっています。最近ではアウトドア系ショップでも聴診器を扱っていますが,医療器具の販売店からナース用の安いのを買えば,カラフルで格安の聴診器が手に入ります。友達と共同でまとめ買いをすると,かなり安くなります。
 但し,聴診器の値段と性能は比例します。ナース用は1000円台からありますが,10000円クラスの聴診器と比べると,聞こえ方がぜんぜん違います。
・水質検査キット
 これは観察テーマの設定によって使います。水環境を観察するとき,5分ぐらいで結果の出る簡易水質検査キットは,かなり「使える」アイテムです。弱点としては,ややコストがかかること,数分とはいえ,観察時間を食われること,はっきりとした検査目的がないと,検査の意味が伝えられないこと。また,水質検査に興味を持たない人は,しばしば拒絶反応を示します。観察会の演出として効果を上げるには,検査をやることを予告して期待を持たせておくこと,検査目的をはっきり説明すること,得られたデータの意味をちゃんと説明することが必要です。
・ニッパ
 この秋から登場させたアイテムです。木の実の中身を観察するときに使います。参加者が木の実に興味を示したら,すかさず中身も見てしまおうというわけ。また,木の実を割って食べる鳥のくちばしとの比較,というアプローチで話を展開することもできます。

・その他,お手製の教材や紙芝居の類など,さまざまなアイテムが飛び出してきますが,ここから先は,観察会でのお楽しみ。インパクトのあるアイテムで,観察会をより印象深い,楽しいものにするよう,いろいろと演出を考えています。

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