探鳥会に着て行く服って?


 はじめて探鳥会に参加するとき,意外と悩むのが,服装と持ち物。
 情報誌やTVを見ていると,鳥を見ている人って,なにやらポケットの多いベスト(フィールドベスト)を着ていたり,アースカラーの地味な服,場合によっては迷彩服などを着ているのを良く見かけます。確かに,機能的で,それなりに理由があって,あんな格好をしているのです。
 鳥を見るときには,小道具が多い。図鑑,双眼鏡,行き先によっては望遠鏡+三脚のセット,メモ,筆記用具……人によってはルーペやサンプリングようの小さな容器,写真をやる人はカメラと交換レンズ……これに食料とか飲み物,雨具,着替えなども加わりますから,かなりの重装備となります。小物をよく整理して,すぐ使えるようにしておくのは便利なので,あの,ポケットだらけのベストを着るわけです。さらに,派手な色の服を着ると,野鳥に気づかれて逃げられる可能性があると言うことで,地味な色の服が好まれます。

 ……ここまでが「教科書どおり」のお話。
 しかし,探鳥会と言うのは個人での観察旅行とは条件が違いますし,まして,明治神宮探鳥会のように,都会地の緑地帯を舞台にした探鳥会では,さらに事情は違います。

 明治神宮探鳥会では,普段着プラス少々の装備で十分です。もともと初詣の時には晴れ着で歩くような場所です。特に探鳥会のような,お気楽な観察をするレベルでは,重装備をする意味はあまりありません。ハンディな図鑑をポケットにねじ込み,なるべく手はフリーになるように,デイパックに身の回りの小物をちょこっと入れておけば,十分です。双眼鏡も小さなもので間に合いますが,大きな双眼鏡を持っているのであれば,そのほうが良く見えるのは確かです。がしかし,双眼鏡を使う場面はそれほど多くありません。私は半日の探鳥会の中で,双眼鏡を使っている時間は,トータルで5分以内です。夏場にはゼロのこともしばしば。双眼鏡はあくまでも肉眼の補助。双眼鏡に頼りすぎると,周囲の景色が見えなくなります。……究極的には図鑑も双眼鏡も要りません。鳥や花の名前は,誰かが教えてくれますし,双眼鏡を使う場面もそれほど多くありませんし,誰かに望遠鏡を覗かせてもらえば,かなり満足出来ますし。

 もし,冬場の探鳥会に参加するなら,いつもの街歩きのときよりも,少しだけ防寒具を増やしておきましょう。戸外でじっと観察すると,底冷えしますから……。また,夏場には虫よけ&虫さされの薬を持っていると安心です。

 このほかに,特に注意すべき点はありません。
 派手な色の服を着ると鳥が逃げる,と言うのも,都会の鳥には当てはまらないことが多いようです。むしろ,突然大きな音を立てるとか,急に走ったりして激しい動きをするとか,そういった行動に対して鳥はは敏感です。こっちが森の中でじっとしていれば,目の前数mのところまで鳥が近づいてくることもしばしば。ゆっくり行動することが基本です。
 むしろ,フィールドベストに迷彩服などと言う格好だと,探鳥会が終わったあと,その姿で原宿や渋谷,新宿辺りを歩かなくてはいけなくなることを考えると,ちょっと恥ずかしいかも。本格的に,ニッカーホースに登山靴で来る人も,たまにいらっしゃいますが,これも過剰装備でしょう。

 探鳥会によっては,派手な色の服を着てくると怒られる所もあるそうです。でも,私は敢えて,派手な服を推奨します。アウトドアと言えども,お洒落でなくては楽しくありませんし,もっと重要な理由として,狩猟期にハンターに誤射されないように,自分の存在をアピールするほうが安全なのです。


 さて,私の明治神宮探鳥会での装備を少し御紹介しましょう。
 服装は,そのまま新宿の街歩きをしてもおかしくない,普通の服装です。特に冬場の冷える日には,意識して1枚プラスするか,手袋を持つか,どちらかで対処します。足回りはウォーキングシューズかスニーカー。デイパックは大きめの物を使い,観察会主催者サイドで必要な,事務用品や解説の小道具を入れていますが,図鑑などはなるべく取り出しやすいように,ウエストポーチに入れます。探鳥会終了後はウエストポーチも望遠鏡も三脚も,みんなデイパックに押し込んでしまい,もう,バードウォッチャーであることが判別出来ない状態にまで荷物をまとめてしまいます。必要にして十分なものをコンパクトにまとめる。そうすれば,探鳥会終了後も楽しく遊べると言うわけ。

 ……どうです?こんな程度なら,気合いを入れて装備を買い集める前に,とりあえず気楽に探鳥会に参加しても,明治神宮なら大丈夫でしょ。
 そこが我々の狙いでもあるのです。
 とことん装備を揃えてから鳥を見に行くのではなく,最初は手ぶらでいいから,気軽にフィールドに出て欲しいのです。装備品を買うのは,その後でも十分です。


 気軽に,楽しく遊べるのが,都会の緑地を舞台にした,明治神宮探鳥会の良い点でもあるのです。


(2002年11月25日記)

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