ウーマンパワーは自然観察を救うか?


 2001年1月より,明治神宮探鳥会に,8年ぶりの担当スタッフ補充が実現しました。
 明治神宮の御近所にお住まいで,地元の子供を対象にした活動にも精力的な主婦,Hさん。
 8年ぶりの,女性スタッフの登場です。

 例えば,1人で話し相手の居ない女性参加者に声をかけるとか,例えば,トイレ休憩の後,女子トイレに「置いてきぼり」の参加者を残さないようにチェックするとか,ちょっとしたことなんですが,女性スタッフが居ると,細かいところまで手が届くようになりますし,なにより,参加者が受ける安心感や親近感などの,心理的効果も大きい。女性スタッフが居る,居ないの違いは,単に「女性が居ると華やかで云々」と言ったオジサン的次元の発想では計り知れないところにあるのです。
 今後のHさんの御活躍に期待することといたしましょう。


 さて,女性の話題が出たとこで,探鳥会やら自然観察の世界における女性の姿を,ちょっと,藪睨みしてみましょう。以下の話は,あくまでも探鳥会の「現場」における印象でしかありませんけどね……。
 実は野鳥の会も探鳥会も,「男社会」。(財)日本野鳥の会会員の男女比は,伝統的に男性が多く,女性が増えてきたと言われている最近の新入会員でも,6:4で男性が優位です。全国にある支部スタッフの男女比は,もっと男性優位です。以前は探鳥会に来る女性といえば,夫婦で参加した人の「奥様」が中心で,まして女性1人の参加は,非常に稀でした。探鳥会に若い女性が気軽に参加するようになったのは,20年ぐらい前からのことです。

 しかし最近では,女性のほうが元気です。
 山登り,自然観察,ウォーキングなど,愛好者の主力が中高年となっているジャンルの「アウトドア趣味」の世界においては特に女性の元気さが目立ちます。たとえ愛好者の人口比での主力は男性であっても,愛好者を牽引しているのは女性のように見えます。


 明治神宮探鳥会の様子を見てみましょう。
 明治神宮探鳥会は,女性の参加比率がもともと高い探鳥会です。リピーターになる確率も,女性優位。さらに,観察案内中に受ける質問も,大部分が女性から。質問内容も,男性よりも女性のほうが多彩で,知識欲の旺盛さをうかがわせます。最近では女性グループの参加も目立ちます。

 特に中高年世代の場合,女性のほうが良い意味で「人生の楽しみ方」を知っているようです。男性に較べれば,友だち作りが上手だったり,興味の範囲が広かったり,自然観察の場面でも,女性のほうが,よりエンジョイしているように見えます。男性の中には,「自分の楽しみ方」以外の楽しみを受け付けないような人もいて,こちらがいろいろな観察ネタを提供しても,全く乗ってこない人も,しばしば見かけます。男性のほうが「型にはまる」ことが好きなのかも知れませんが……特にこの年代では…。
 もちろん,探鳥会に参加する年代に男女差がある(男性参加者の平均年齢のほうが10年ぐらい上)ので,単純には比較できないのですが,女性のほうがノリが良く,頼もしく感じる場面は多々あります。

 「自然観察・自然保護」関係のギョーカイ筋で,女性が元気なのは,探鳥会参加者の主力である「生き甲斐世代」だけではありません。「生キモノ系」・「自然保護系」の学校で学ぼうとしている若い人たちも,圧倒的に女性が優位。獣医学科の学生など,6〜8割が女子と言う状況です。


 話を最初の「探鳥会スタッフ」に戻しましょう。
 現在,探鳥会で観察案内をしているスタッフは,まだまだ男性中心。しかし,探鳥会での参加者の現状を見る限り,次第にスタッフにも女性が増えてくるのではないかと予感させます。もちろん,男性スタッフも,今まで通りのやり方では,増え続ける女性参加者に対応しきれなくなる可能性も高いと思います。いろんな興味に応えられる,観察案内の守備範囲が広い人,細かい気配りの出来る人,楽しく会話の出来る人でないと,参加者に支持されなくなってくるのではないかと予測しています。……もちろん,そう言う観察案内のほうが楽しいもんね!


 近い将来,自然観察の楽しさや,自然保護などを人に伝える役割は,女性が中心になって牽引してゆくようになるかも知れませんね。特にボランティアワークで運営されているところは……。


(2001年2月12日記)

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