明治神宮探鳥会レポート 〜2006年2月


2月定例探鳥会:2006年2月19日(日)8:30〜11:30
天候:曇 風:弱 気温:7℃(11時) 湧水温:
参加者94名(うち18歳未満6名)+担当6名

 明治神宮探鳥会は,今回で700回となりました。昭和22年(1947年),日本野鳥の会が全国組織へと展開するために本部−支部体制に移行し,東京支部が誕生しました。そのときに東京支部唯一の定例探鳥会として,明治神宮で月1回の探鳥会が始められたのが,昭和22年4月のこと。以来,今日まで続けられてきました。途中,担当者不在で未開催になったこともありましたが,昭和31年(1956年)には100回,昭和39年(1964年)には200回……と回を重ね,700回。文句無しに,野鳥の会でいちばん歴史のある月例探鳥会です。

 今回は,過去に明治神宮探鳥会の観察案内を経験したOBの方にも声をかけ,何人かのOBがゲストとして参加してくださいました。
 探鳥会の内容は,通常通りの自然観察ですが,途中,ゲストの挨拶や記念品の配布などを行い,いつもと違う,ちょっと特別な探鳥会となりました。

 この日集まった参加者は100人近く。こんなに人が集まったのは8年振りぐらいのこと。いつになく盛況で,お祝いムードが高まります。しかし,今回,初めて明治神宮探鳥会に参加する人も少なくありません。現在の担当スタッフには担当歴20年を超えるのが3人いますが,これを超える会員歴を持つ一般参加者は見当たりません。時代の流れを感じさせます。しかも,参加者の大部分は,担当より年上だと言うのも,隔世の感があります。これも時代の流れなのでしょうね。

 さて,観察はいつもの通りのペース。初参加の人も多いので,明治神宮の自然史や明治神宮探鳥会の歴史などの話も多めに織り交ぜたり,OBの話に耳を傾けたりしながら,進みます。自然解説の内容は,鳥だけを見るのではなく,鳥のすむ環境を見る,生き物たちのつながりを見ながら,人と鳥の関係,人と生き物の関係を考える,いつものスタイル。
 長い間,同じ場所で探鳥会を続けていると,見えてくるものがあります。それは,数十年と言う長いスパンで捉えた,自然環境の変化。過去の野鳥の観察記録を見るだけでも,観察される鳥の顔ぶれが少しずつ変化しているのが見えてきます。もちろん,森の木々や草花も,10年,20年と言う単位で比べてゆくと,少しずつですが,様子が変わってゆくのが分かります。

 北池のオシドリ。明治神宮は昔から,オシドリが越冬していました。20年ぐらい前には,南池のほうがオシドリの数が多かったのですが,今は,ほとんどの個体が北池で冬を越します。しかも,ここ10年ほどの間に,すっかり餌付けされてしまった……。
 芝生にはハクセキレイ。ハクセキレイが1年を通して明治神宮で観察されるようになったのは,つい最近のこと。こうした,鳥の生態の変化は過去にもいろいろあります。1970年頃にはヒヨドリとキジバトが明治神宮で1年中見られるようになり,1985年頃にはコゲラも…。その一方で,昭和20年代にはサンショウクイやサンコウチョウなどが見られていますが,今は全く見られません。

 芝生広場で,支部長と,OBの代表として安西さんに,少しお話をしていただきました。安西さんは1975年から1980年に,明治神宮探鳥会の担当をしていました。今,野鳥関係の各方面に,明治神宮探鳥会の参加経験のある人や担当経験のある人が活躍しています。安西さんもその1人。明治神宮探鳥会は,日本の野鳥観察指導者に,少なからず影響を与えていた歴史もあるのです。…もっとも,昔は野鳥観察に関わっている人も少なく,「探鳥会」そのものの数が少なかった,と言う理由もあると思いますが……。

 越冬中のウラギンシジミを観察。続いて,真冬に羽化するシロフフユエダシャクの観察。こうした,小さな生き物にも目を向けるのが,明治神宮探鳥会らしいところ。

 御苑内ではルリビタキ,カワセミが見つかりました。青い鳥は人気があります。
 南池の近くでヨコヅナサシガメの越冬を確認。ヨコヅナサシガメは中国から入ってきた外来昆虫。明治神宮では2003年から観察されています。外来種だけに,今後の分布拡大や在来の生態系への影響が懸念されます。注意深く観察を続けたいと思います。


 解散後,スタッフは昼食をとりながら,高橋さんの持ってきた過去の探鳥会の写真を見せていただきました。昭和60年前後の探鳥会は,若い参加者がとても多く,参加人数も今の2,3倍。それに,担当者の若いこと!(この当時,私は学生でした)
 1997年10月の50周年/600回記念探鳥会のときの写真を見ると,1980年代に比べて,参加者の年齢層が一気に上がっているのに驚きます。データとして把握はしていたのですが,写真で見比べると,驚くほどの差がありますね。


今月の1枚

サネカズラの実。
別名ビナンカズラ。
昔はこの蔓から取れる粘液を整髪料に使ったのだとか。


【観察した野鳥】
カワウ1,オシドリ29(雌13雄19),マガモ17(雌7雄10),カルガモ13,オオタカ1,ハイタカ1,キジバト15,カワセミ雄1,コゲラ8,ハクセキレイ5,ヒヨドリ20,ルリビタキ雄1,シロハラ3,ツグミ3,ウグイス2,ヤマガラ10,シジュウカラ10,メジロ10,アオジ1,カワラヒワ4,シメ5,スズメ50,ハシブトガラス30
(以上23種)

【観察した植物】
花……サザンカ,タネツケバナ,カンスゲ,イヌコリヤナギ

木の実,草の実……イイギリ,ヒサカキ,アオキ,ヤドリギ,サネカズラ

冬芽……ムラサキシキブ,ミズキ,ニワトコ,カラスザンショウ,

【その他観察したもの】

ウラギンシジミ(成虫),シロフフユエダシャク(雄成虫),ヨコヅナサシガメ(幼虫)


→資料室にもどる
→Home