明治神宮探鳥会レポート 〜2000年3月


3月定例探鳥会:2000年3月19日(日) 8:30〜12:00
天候:曇 気温:15℃ 湧水温:未測定
参加者75名+担当5名

 今月から春のパンフレットに模様替え。この春の観察テーマは「こだわって,春の色」。3月のテーマは「早春の色にこだわる」。早春の色って,なんだろう?春一番に咲く花の色?春の陽射しの色?……探鳥会に参加した人それぞれに,ちがうと思います。さぁ,「早春の色」は見つかったでしょうか。
 木々の芽吹きはまだですが,森の中には春の息吹が感じられます。遠くからでも匂ってくる,ちょっと変わった花の香り……ヒサカキです。1年ぶりに嗅ぐんだなぁ,この匂い……。この匂い,福神漬けの匂い,とも言われていて,初めて嗅ぐ人にはあまり評判が良くなかったけど,1年以上明治神宮に通っているリピーターは,春一番に匂う花だと,喜んでいます。匂いに関して,これほど意見の分かれる花も珍しいですね。
 ニワトコやアオキの花芽が伸びています。
 森の木の下には,アマナやシュンラン。気の早いスミレ類も発見。アマナはちょうど満開で,チューリップの原種に近い,と言われる,小さな白い花をたくさん見ることができました。
 さて,野鳥のほうは,「冬鳥」が姿を消し始めています。先月の観察データと見比べてみてください。シジュウカラ,ヤマガラ,メジロなどのさえずりが始まっています。繁殖のためのなわばりを確保し始めたのですね。

 例年,春は植物観察の時間をを多めに取ります。花の観察が楽しい季節ですし,野草の観察をはっきりと予告しています。この時期,例年だと植物観察を希望する人が大半を占めるのですが,今回は非常に少ない。あれ?と思ったら,マスメディアや野鳥の会本部の会誌に出ている行事案内を見て来た人が過半数。初めて探鳥会に参加する人も半分ぐらい。これらのメディアには,観察内容がきちんと掲載されません。……と言うことは,「植物観察」をまったく予期していなかった人が半数は居たと言うこと。これはちょっと予想外。そこで,最初にかなり丁寧に,「探鳥会といっても,鳥を見ることだけを目的にしているのではなく,鳥を良く知るためには,自然環境全体を含めてきちんと観察して理解する必要があるし,そういう観察をしたほうが,はるかに視野が広くなり,より深く自然観察をを楽しめる,と言った説明をしました。どのくらい伝えたいことが分かっていただいたか,想像がつきませんが,とりあえず,鳥も花も十分に良い観察ができたので,何とかなったかなぁ……。

 ここ数年,3月,4月の探鳥会は,参加者が多めです。実はバードウイークのある5月の参加者数が落ち込んでいたりするんですけどね。
 特に今回は,参加者層の2極分化が目立っていました。1つは,「生き甲斐世代」。退職後や子育て後の生き甲斐探しのために,とりあえずバードウォッチングでもやってみようか,と探鳥会に参加した人や,何回か鳥を見に出かけているうちに,すっかりハマってしまった人など。もう1つは,子供に自然体験をさせつつ,自分達も楽しもうと言う親子連れ。明治神宮探鳥会なら気軽に行けるし,安全だし,親も子も楽しめる内容だし,他にも年齢の近い子供が来ているし,……と言うことで,少しずつ親子連れの参加が増えてきています。
 1つの探鳥会で,いろんな年齢層の人,いろんな志向の人に対応しなければいけないので,なかなか大変です。あんまり欲張って,あれもこれもとやっても良くありませんね。まずは,自分達が探鳥会を通じて「何を伝えたいのか」をはっきり意識して,探鳥会を作らなくては……。最近では,自然観察者に対する評判も,必ずしも良くはありませんから,きちんと自然環境を理解する目を育て,自然保護を意識しながらスマートにフィールドを利用できる,知的な観察者を育ててゆけるようになりたいな,と本気で思っています。もちろん,その前に,自然観察は楽しくなくてはいけませんけどね。


今月の1枚

アマナ。この角度から見ると,花の構造が
チューリップと同じなのがよく分かります。
最近,野草マニアの盗掘が多いので,ちょっと心配…。


観察した野鳥
カイツブリ1,コサギ1,オシドリ30(雌19雄11),マガモ2(雌1雄1),キジバト15,カワセミ2,コゲラ10,キセキレイ1,,ハクセキレイ2,ヒヨドリ30,ツグミ4,ウグイス2,ヤマガラ20,シジュウカラ40,メジロ20,アオジ1,カワラヒワ3,シメ1,スズメ10,ムクドリ3,ハシブトガラス50(以上21種)
番外ドバト15

※さえずりを確認→ウグイス,ヤマガラ,シジュウカラ,メジロ

観察した植物
[]ヒサカキ,アマナ,セントウソウ,トキワハゼ,オオイヌノフグリ,ヘビイチゴ,タネツケバナ,シュンラン,マツバラン,コスミレ,タチツボスミレ,…

[昆虫]キタテハ

→資料室にもどる
→Home