十数年ぶりの高尾山で見たもの


 初詣を兼ねて,久しぶりに高尾山に登ってきました。
 十数年ぐらい,登っていなかったかも知れません。

 東京の山手線の西側で育った私にとって,高尾山は最も身近な山の1つ。小学生時代から何回も登り,あらゆる登山ルートを歩きました。中学,高校時代には,望遠鏡を担いで登って天体観測をしたり,大学時代は,仲間とムササビの観察のために夜間登山をしたり,さまざまな角度から,この山を楽しみ,自然を見てきました。

 さて,久しぶりに見た高尾山。変わっていないようで,けっこう変わっていました。
 メインの登山道であり,薬王院の参道でもある自然研究路1号はよく整備され,ほとんどが舗装路になっていました。山の北側を見ると,圏央道の裏高尾ジャンクションの工事が見え,山肌が盛大に切り取られていました。そう遠くない将来,高尾山の山腹をトンネルが貫通します。
 セキュリティの都合なのか,自然研究路1号以外の道は,夜間立ち入り禁止となっていました。

 一方,道の両側の自然環境は,昔に比べると,かなり単純化して,あんまりダイナミックさも感じません。さすがに木の太さは十分にありますし,ブナなどの生えているエリアはダイナミックな風景が広がりますが,都市近郊の丘陵地帯を利用して作った公園緑地みたいな部分も多くなっています。それに,鳥の数も明らかに減っています。個体数も種類数も。

 良い面もありました。ゴミ対策が進んだこと。ゴミの持ち帰りも,以前よりは定着してきたようです。少なくとも目に見える場所に大きなゴミ捨て場のあった時代よりは,ゴミは目立ちません。しかし,人目につかないような,物陰の部分を見ると,やっぱり,いろいろなゴミが落ちていましたけどね。ゴミ箱廃止,持ち帰りの徹底が,かえって,目立たないところ(それは,拾いにくい場所でもあります)にゴミを投げ捨てる要因にもなっているようです。
 多くの登山者の来るポピュラーな山に共通した悩みでしょう。

 ここしばらくの登山ブームや山野草趣味の流行は,身近な山の様子も少しずつ変えているのでしょう。利用者のモラル向上を呼びかけていても,利用者による自然破壊は進んでいるようです。管理者のガードが固くなっている様子も,あちこちから感じます。
 かつては大規模開発と自然愛好家の対立と言う単純な構図だった自然保護活動も,今では肝心の自然愛好家が自然環境の敵に回る場面も少なくありません。こうした様子が,山の利用者の様子や登山道周辺の自然環境,管理者の立てた看板の文字などから,感じられます。

 …高尾山は国定公園でもあり,第一級の観光地でもあるわけですから,「売り物」である自然環境の維持管理には,かなり苦労しているのでしょうね。

 いずれにしても,ちょっと昔の様子を知っている者にとっては,寂しい光景でした。



(2002年1月9日記)

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