エコツアー


 「エコツアー」を知っていますか?
 聞きなれない言葉だと感じる人のほうが多いでしょう。
 2000年2月21日の朝日新聞の記事によれば,
「自然観察や文化との対話など,明確な目的を持って自然地域を利用するツーリズム」と定義しています。
 いわゆる自然観察ツアーや,自然体験,地域文化の体験などの「体験型」ツアーなども,この範疇に入ることになります。子供向けの農業体験からアフリカの野生動物観察まで,その内容はさまざまです。

 こうしたツアーが成り立ち始めている背景には,「自然体験」を気軽に行いたいというニーズや,自然の中で癒されたいと言う願望もあるようですが,単なる「観光旅行」では飽き足らなくなった旅行客に,目先の変わったツアーを提供すると言う意味もあるでしょう。いずれにせよ,自然観察が商売として成り立ち始めているのは間違いなさそうです。

 ツアーの内容や,ツアー参加者の意識と言ったものは,どうなんでしょう?

 日本旅行業協会(JATA)が1999年に行ったアンケートによれば,「エコツアーと言う言葉を聞いたことがない」と言う人が55%,「聞いたことがあるが,関心がない」と言う人が11%と,認知度はそれほど高いとは言えないのではないでしょうか?
 また,「ゴミの持ち帰り」「ルールが厳しい」と言った,マイナスイメージも根強いようです。「学習」的な面を否定理由に挙げる例も…。この辺は,「環境教育」に対する否定的イメージに近いものがありますね。
 しかし,「自然体験型」のエコツアーの場合,相手は自然ですから,少なくとも危険のないように,最低限の予備知識は必要でしょうし,ツアー参加者が自然を破壊するようでは,「エコツアー失格」と言わざるを得ないでしょう。これはあくまでも「楽しむためのルール」であり,「自分の安全を守るためのルール」ですから,そのルールすら守れない参加者を受け入れる必要はないと思います。

 でも現実には,ツアーの採算性などの問題もありますから,どうなんでしょうね?

 ある意味では,身近な場所で行われている自然観察会や探鳥会などは,もっとも身近な「エコツアー」だと思います。決して「お勉強」と言う形ではなく,自然に触れ,楽しみ,考える場を提供していると言う意味で。
 しかし,「探鳥会」と言う,もっとも簡易なスタイルの「エコツアー」ですら,環境学習面は二の次で,楽しみ優先,さらにはフィールドマナーも徹底されていない状況ですから,高いツアー代を払ってエコツアーに参加する「お客さん」が,何を求め,どんな行動に出て,それがどんな結果を生むのか,ちょっと不安な面もあるわけです。主催者側の立場としても,エコツアーは収益の出る「商売」であり,多くの観察会/探鳥会は非採算事業であると言う点も,大きく異なります。

 私が観察会や探鳥会を通じて経験したことから類推すると,日本での「エコツアー」は未成熟な市場であると考えられます。それは,主催者側が未成熟である以上に,参加者側の成熟度が足りないのではないか,と言う危惧を持っているからです。現状では,観察会や探鳥会が,お金のかからない,ちょっと毛色の変わったレジャーとして認識されている面があるように,エコツアーも,観光旅行の一変形として捉えられている面があるのではないでしょうか?
 本当に「エコツーリズム」が実践できる人は,わざわざ観察会などに参加する必要性を感じていなかったりします。つまり,観察会や探鳥会は,初心者のための「道標」ないしは「ガイド付きの自然体験ツアー」のような利用のされ方をするわけですから,それと同じようなことが,「エコツアー」にも要求されてくるのではないでしょうか?

 観察会/探鳥会の今後を占うためにも,「エコツアー」の状況は,注目してゆきたいと思います。


(2000年2月29日記)

→もどる