身近な自然にひそむ危険 〜実例編〜
ウルシ科植物に注意! |
ウルシと言うと,かぶれることで有名です。ウルシ科ぶれの原因物質は,ウルシオールと呼ばれるもので,量の多少はありますが,ウルシ科植物はウルシオールを持っていると考えておきましょう。この「かぶれ」には個人差もありますが,特に,いちどウルシに接触してかぶれた経験のある人が再接触した場合,激しい症状が出る危険が高いので,十分な注意が必要です。そのような事例を投稿していただきましたので,体験談を紹介します。
紅葉シーズンの前に,是非,御一読ください。
山花さんの体験記 参考に、以下に経過を示します。ハゼノキでウルシかぶれが起こる、という知識はあったものの、今までかぶれたことはない、という油断と、触ってから2〜3日、後で症状が出ることが判らなくて不安でした。 02/08/17 午前、公園のハゼノキに接触(種を採取) 昔は蝋を採ったとのことで自分でもやってみようと思った。紅葉もきれい。 02/08/20 午後、手首付近に発疹があるのに気づく。夜寝るときいやに顔がかゆい。 02/08/21 朝起きると顔がひどくはれている。全くおいわさん状態。驚いて皮膚科へ。軟膏と内服薬(ステロイド、かゆみ止め)。 この時点ではハゼノキが原因とは思いつかなかった。 02/08/22 顔のはれが昨日より激しい。左目ほとんど開かず。手も発疹と腫れがひどい。 自分の行動を遡って見ると、可能性としてハゼノキが浮上した。インタネットでハゼノキとかぶれをANDで調べたら3年前に同じ失敗をやった「先輩」を見つけた。 02/08/23 顔の腫れはややおさまるが、手の腫れと発疹は続く。かゆみは厳しい。無意識に掻いている。再度、皮膚科に行き、薬をもらう。軟膏は顔と体と分けた別のもの、内服薬も変更し、殺菌作用のあるものを追加。 02/08/26 手の発疹、違和感少なくなる。5日ぶりに出勤 02/08/28 掻くためか、手や足のかゆみがなかなかひかない。 再度、皮膚科にて薬を。ステロイド系の内服薬は半錠になり、体だけの軟膏をもらう。 02/09/03 内服薬は飲まなくなった。かゆみはほとんど引いたが、完全ではない。 場合によって外用薬をつけるようにしている。 先輩の経験則からあと、1〜2週間くらい完治するようだ。 改めて言いますが、ハゼノキの葉は何度も触ってますが、何にもなかったのです。 やはり、樹液に触ることが問題点のようです。 |
この症例は,症状が出るのにタイムラグがあること,接触部位以外に,全身に症状が出たことから考えて,遅延型のアレルギー反応と考えられます。つまり,以前にウルシ科植物に触れた際,ウルシオールに感作していたのでしょう。ウルシオールは単なる接触刺激によるかぶれを起こすだけでなく,アレルゲンとなって,これに感作した人が触れると,非常に激しい症状を起こします。ウルシオールに対する抗体を大量に作る能力を持ってしまった人ほど症状は激しく,マンゴ(これもウルシ科で,わずかにウルシオールを含む)に触れただけでも発症したり,ハゼノキやウルシの木の近くを通っただけでも反応する人もいます。
強力に感作してしまった場合,対策法はアレルギーとまったく同じです。
・原因となる物質に近づかないこと。
・不幸にして,接触してしまった場合,病院でアレルギー性の過敏反応を抑えるための処方を速やかにしてもらうこと。
・また,パッチテストなどでアレルゲンを特定しておくことも,今後の事故予防策になります。
ハゼノキもウルシの仲間。紅葉の時期には美しい紅色に葉を染めます。ウルシやツタウルシ同様,秋が深まると,「紅葉が美しいから」と,うっかり手にする可能性が高くなります。十分に御注意ください。
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ハゼノキの紅葉。 身近な場所でも,けっこう見かけます。 |