気をつけて!身近な有毒植物

 アウトドアでの遊びには,いろいろな危険もあります。
 身近な草花にも猛毒のものがあったり,身近な場所に毒キノコがひょこっと生えてくることもあります。有毒植物,毒キノコによる中毒事故の大半は,十分な予備知識がないことや思い込み,,子供のいたずら,間違った言い伝えなどを信じたための事故です。これらの事故は,ごく基本的な予備知識さえあれば回避できます。また,万一,子供が中毒を起こした場合も,有毒植物に関する予備知識があれば,迅速で確実な対応によって,被害を最小限に食い止めることが出来ます。
 有毒植物,毒キノコによる事故を防ぐために,最低限必要な情報をまとめました。

☆なお,毒物を用いた犯罪を目的とする利用は,厳禁します。
☆犯罪予防のため,有名な毒物を除き,あえて詳細な記載を避けている部分があります。
☆アウトドアでの安全管理のために,より詳細な情報を必要とされる方は,専門書やリンク先を当たってください。


身近な野草にも,いろいろな毒がある


 身近な場所に生えている野草。この中にも毒を持った種類がたくさんあります。トリカブトを用いた殺人事件も起こっていますが,野草による中毒事故の多くは,食用になる野草と毒草を間違えて食べた事例です。最近では,アウトドアブームに伴って,毒草に関する予備知識のない採集者が増えているのも事実です。さらには,薬草採取を目的にして,毒草に手を出した例もあります。薬草も,処方を誤れば毒草です。リスクも考えずに民間療法などを試みてはいけません。
 ほぼ毎年,事故が話題になるのは,トリカブト類ハシリドコロの若葉の誤食です。特にニリンソウの若葉と間違える例が多いようです。若葉や新芽の場合,図鑑に図版が載っていない場合も多く,じゅうぶんな注意が必要です。
 また,ドクゼリによる事故も,しばしばニュースになります。これはセリと間違えて食べて事故を起こしたものです。
 以上の毒草は神経障害を起こし,重症例や死亡例が発生しやすく,事故件数も多いので,時折新聞記事になりますが,この他にも,身近な野草に毒を持つものはたくさんあります。いちどにたくさん食べてしまうようなことはないので,致死的になることは滅多にありませんが,タケニグサヨウシュヤマゴボウなどの中毒例も少なくありません。また,トウダイグサツタウルシのように,皮膚に刺激性を持つ毒草もあります。

ヨウシュヤマゴボウの実。
致死的な事故にならないのでニュースにはなりにくいが,
誤食による中毒事故は少なくないらしい。
野菜のゴボウ(キク科)とはまったく別物。
「山ごぼう」と言う名の市販ゴボウが,誤解を生んでいる。

 しかし,毒草を1つ1つ覚えるのは大変なことです。そこで,大づかみな知識で毒草から身を守るコツを,このコンテンツの最後にまとめてみました。参考になさってください。

花壇にも有毒植物!

 ガーデニングブームにより,さまざまな園芸植物が流通し,花壇やプランターで楽しまれています。こうした,市販の草花や木にも,毒を持ったものが少なくありません。
 「エンジェルトランペット」などの名前で売られているヨウシュチョウセンアサガオ(洋種朝鮮朝顔)。最近,よく見かけますが,この植物は,チョウセンアサガオと同様の,強力な神経毒を持っています。また,ジギタリスキョウチクトウは,健康な人が摂取すると,心臓停止する危険があります(ジギタリスの成分は心疾患の薬として利用されますが,心臓が正常な人にとっては毒物です)。ヒガンバナはネズミやモグラを避ける目的で,わざわざ毒を利用するために,植栽が広がった花です。また,スズランスイセンタマスダレなどにも,有毒なものが多く,さらに,フクジュソウアセビ,観賞用のケシの類など,さまざまな有毒植物が,ガーデニングにも利用されています。これらはもちろん,花や葉を楽しむためのものですが,ハーブ類を植えている庭では,口に入れるものと毒物が同居することになりますから,誤って収穫しないよう,じゅうぶんに注意すべきです。
 本当なら,有毒植物を植えないのが,いちばん安全なんでしょうけど,おそらく,有毒と気づかずに植えてしまった植物をお持ちの方も多いと思います。

キノコは基本的に手を出さないこと

 自然観察会でキノコの案内をしていると,参加者の目が輝くんです。まず,キノコの名前を教えると,その次に返ってくるのが「…で,これ,食べられるんですか?」。キノコは野草以上に,「食」と直結しています。
 「食べられないキノコ」は無いんです。問題は,食べた結果,どうなるか,なのです。
 特に神経毒を持ったキノコは,症状が出るまでに数時間〜1日ぐらいタイムラグのある種類もあり,症状が出て苦しみ始めた頃には,食べた毒は大部分,体に吸収されてしまっている場合もあります。

ニガクリタケ。
クリタケと間違えて事故を起こす例が多い。
加熱すると苦味が消えるので,気づきにくくなる。
いちどに大量に収穫されるので,毒の摂取量も多くなりやすい。


 また,キノコに関しては,さまざまな民間伝承があります。茎が縦に裂けるキノコは安全だとか,派手な色のキノコは毒だとか,ナスと炒めて食べると毒消しになる,と言ったものですが,これはいずれも誤りです。毒に関する正しい知識と情報だけが,我が身を救います。
 初心者はキノコを食べないのが鉄則。どうしても食べたいのであれば,熟練者について行って学ぶくらいの姿勢が必要です。もちろん,毒に関する知識だけでなく,乱獲にも気をつけ,自然を荒らさない配慮も身につけてください。

テングタケ。有名な毒菌だが,死亡例はまれ。
身近な場所にも,これより毒性の強いキノコが何種類もある。


アウトドア初心者のための,有毒植物から身を守るための心得

1.むやみに野草や木の葉を口に入れない
2.むやみに葉や茎を折らない(接触による被害の予防)
3.民間伝承,言い伝えを鵜呑みにしない
4.有毒植物を覚えるのがベストだが,まずは,有毒植物の多い「科」の特徴を覚え,フェイルセーフを図る


・有毒植物の多いグループ
  キンポウゲ科(トリカブト,キンポウゲ,フクジュソウなど)
  ケシ科(園芸用のケシ類,タケニグサ,ムラサキケマンなど)
  ナス科(ハシリドコロ,ヨウシュチョウセンアサガオ,イヌホオズキなど)
  ヒガンバナ科(ヒガンバナ,スイセン,キツネノカミソリなど)
  トウダイグサ科(トウダイグサ,ネコノメソウなど)
  ユリ科(スズラン,イヌサフランなど)
  ツツジ科(アセビ,シャクナゲなど)

☆注)ジギタリスはゴマノハグサ科,キョウチクトウはキョウチクトウ科、ドクゼリはセリ科

5.もし,毒草,毒キノコによる中毒が疑われる場合,食べた可能性のあるものをメモし(出来れば採集場所も),食べ残しを処分しないでおく(原因の特定が迅速になり,的確な治療が出来る)。

イヌホオズキの花と実。
ナス科植物には神経毒を持つ植物が多い。
「ホオズキ」と言っても,赤い実をつけるホオズキとはまったく別物。


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