太陽を見つめるオオイヌノフグリ


 早春。
 …と言うより,まだ冬の寒いうちから,オオイヌノフグリは,陽だまりで花を咲かせています。

 陽だまりは,寒い冬の日でも,そこだけぽっかりと暖かくなる,生き物にとっては,とっておきの空間です。
 気象台では顔の高さぐらいで気温を測りますが,冬の,風の弱い晴れた日には,地表付近の気温は,気象台やアメダスの観測データよりも,5〜15℃ぐらい暖かくなることもあり,ハナアブやハエ,成虫で越冬しているチョウなどが活動できる温度になります。その,わずかな暖かい空間の中に,オオイヌノフグリは花を咲かせているのです。



 陽だまりの中,地上2cmで花をつけるオオイヌノフグリ。
 キラキラと,日の光を良く反射して,光っています。
 ヨーロッパで,この手の小さくて丸い花のことをBird's eyeと呼びますが,きらりと光る鳥の目のように,目立っています。

 ……よく観察してみると,どの花も日の光をたっぷり浴びています。
 もしかして,太陽のほうを向いているのでは?

 そこで,北側から逆光条件で撮影してみると……



 あ,全部,後ろ姿……。

 どうやら,オオイヌノフグリの花の向きと太陽は,関係がありそうです。
 さっそく,調べてみました。


・観察条件:
  冬の日辺りの良い日の正午ごろ,傾斜の無い,平らな土地で,日光がまんべんなく当たる場所に咲いているオオイヌノフグリの花の向いている方角を観察。

・観察日の気象条件
  2005年1月某日の12〜13時。快晴。気温10℃。西の風風力3。風がややあったので,なるべく風の当たらない場所を選んで観察。

……この条件で,168個のオオイヌノフグリの花の,傾いている方向を8方位に分類し,集計しました。


 観察結果をグラフにしてみます。



 見事に,30%以上の花が,南を向いていました。
 この季節に太陽が正面から当たる方向(南東〜南〜南西)を向いていた花の数は168個中116個。実に69%の花が,日の光を正面から浴びていたのです。

 具体的に観察して数字をはじき出してみると,なるほどなぁ,と思いますね。

 冬に咲く花の,生存戦略の一端が見えてきました。


(2005年1月19日記)

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