セミの卵を探してみる
夏も終わりに近づくと,ぽつりぽつりとセミの死骸が目立つようになってきます。彼らはちゃんと天寿を全うしたのか,それとも,何らかの事故などで非業の死を遂げたのか。いずれにしても,セミの死骸→夏の終わりと言う連想で,ちょっとセンチメンタルな気分になります。
それはさておき,セミは死ぬ前に,大切なことをしなくてはいけません。
それはもちろん,子孫を残す作業です。
晩夏……セミが静かに,じっとしているとき……産卵をしているかも知れません。
この画像をよく見てください。細い産卵管を,樹皮に刺しこんでいるのがわかります(黄色い矢印で示しています)。
これは産卵中のアブラゼミです。
産卵の様子は,横から見ると観察しやすいですね。
セミが去るのをゆっくりと待ってから,さきほどの場所の樹皮を観察します。
この小さい穴が,産卵管を刺した痕。樹皮は堅いので,1つの穴にたくさんの卵を産みつけることは困難です。そこで,何度も刺し直して,少しずつ,卵を産んでゆきます。
アブラゼミは産卵場所としては,枯れた枝先などを最も好みます。しかし,人間の生活圏にある樹木は,枯れ枝をすぐに片付けてしまうので,枯れ枝に卵を産みたくても産めません。そこで,樹皮の下や隙間に卵を押し込みます。
ちょっと失礼して,樹皮に穴のあいている場所を,少し削ってみました。
樹皮のコルク質の中に,卵が産みつけられているのが見つかりました。……なるほど,これなら保温効果もありそうです。卵の形も,隙間に押し込みやすいような,うんと細長い形ですね。あ,コルク質をはがしてしまったこの卵,越冬できるかなぁ……なんか,ちょっと悪いことしちゃったかも(ごめんよ〜)。
でも,よく観察すると,そこらじゅうの樹皮に,似たような形の穴がいっぱい見つかりました。すごい数の卵を産んでいたんですね。冬場にシジュウカラやコゲラなどが,樹皮をつついて何やら食べていることがありますが,もしかすると,セミの卵も食べていたのかも知れません。
アブラゼミの卵は,樹皮の中で越冬し,翌年の5月頃,孵化して地中へと向かいます。
よっしゃ,来年は,セミの孵化を探してみよう!
(2000年8月17日記)