デジカメでお気楽天体写真


 いま使っているデジカメはCASIO QV-8000SX。
 私にとっては2台目のデジカメです。
 実は発売前に,広告取材のために,明治神宮探鳥会にこのカメラが持ち込まれました。フィールドで活躍する高性能レンズと高度な撮影機能がウリのカメラですから,実際に自然観察に使えるかどうか,使用レポート付きの広告を出すために,明治神宮探鳥会を舞台に撮影が行われたのです。
 確かにレンズの性能が良い。そして,何よりも目を引いたのが,このクラスのデジカメ初の,64秒までの長時間露出が可能なこと。
 これは星に使えるかも知れない……。
 値段が下がるのを待って買おうと思ったら,発売から6ヶ月もたってしまいいました。結局,あんまり値段は下がらず,在庫も不安になってきたので,購入。
 そんなわけで,このカメラは,期待と思い入れのあるデジカメなのです。

 前置きが長くなりました。とりあえず,あんまり大掛かりな機材なしで,どこまで天体撮影につかえるのか,試してみました。

 まずは月の撮影。月の大きさは,35mm判カメラでは,レンズの焦点距離の110分の1の大きさでフィルムに写ります。フィルムサイズが24×36mmだから,1000〜2000mmぐらいの焦点距離がないと,見栄えがしません。QV-8000SXは,8倍ズーム目一杯で,35mm判カメラの320mm望遠に相当します。さらにデジタル2倍で640mm相当。このときの撮影サイズは640×480ピクセルになります。さらにデジタル4倍も可能ですが,画質が落ちるのでこれを避け,テレコンを装着して焦点距離を稼ぐことにしました。テレコンは純正品があまりにも高価なので,Kenkoの汎用品(1.6倍)を装着。これで約1000mm相当になりました。



 これが得られた画像です。320×240ピクセルにトリミングしているので,2000mm望遠相当のフレーミングになっています。画像処理の都合でバックの色が少々おかしいのですが,月面の模様やクレーターもしっかり捉えています。これなら月食の撮影ぐらい,チョイチョイっとこなせるかな。

 さらに月面のアップを試みます。
 実は天体望遠鏡も持っているんですが,あえて「お気楽撮影」にこだわり,野鳥観察用のスポッティングスコープを持ち出します。これは口径50mm,倍率20倍の,野鳥観察用の望遠鏡としは最低のスペックのものです。
 撮影方法はコリメート式。簡単に言えば,望遠鏡を眼で覗く代わりにカメラで覗いてシャッターを切るだけです。
 カメラのピントは無限大。望遠鏡,カメラそれぞれを三脚に載せ,適当に光軸を合わせて,ピントは望遠鏡側で,露出のコントロールはカメラで行います。
 こうして得られた画像が,次の画像です。



 気流が悪くて,これ以上シャープな画像が得られなかったのですが,どうでしょうか?
 このフレームの大きさで,5000mm以上の焦点距離に相当します。
 もうちょっと撮影条件を煮詰めれば,かなり良い画像が得られるのではないかと思います。

 さて,月は基本的には昼間の地上の景色と同じくらいの露出で済むので,高速シャッターが切れます。
 バルブ機能を試すため,今度は星を写してみました。



 「すばる」(M45)です。
 これは,デジタルズーム+テレコンで1000mm相当で撮影し,トリミングしていません。
 絞り開放,露出8秒です。
 固定撮影ですので,日周運動で星が動いています。
 QV-8000SXは,長時間露出するときは,撮影直後に露出時間と同じだけの時間をかけて,ノイズ除去作業をしています。ですから,8秒露出でも撮影には16秒かかります。CCDの特性上,やむを得ないことのようですが,将来的にはバルブ撮影でもノイズの出にくいCCDが開発されることを期待しましょう。
 さて,暗い星がノイズといっしょに除去されてしまわないか,ちょっと心配でしたが,けっこう写っていますね。原画では,おおよそ8〜9等星まで確認できました。肉眼では4等星がやっとこ,と言う星空でしたから,かなり健闘しています。星空のバックの明るさを抑えるために,思い切り望遠にして撮影した効果もあったようです。
 カメラを赤道儀に乗っけてガイド撮影すれば,星も点像に写り,もっと暗い星も狙えそうです。
 しかし,気楽に星座の写真を撮る程度なら,カメラ単体で,三脚に乗せて固定撮影,と言うのが,いいかも知れません。もっと星がきれいに見える場所で試してみたいものです。

 デジカメの場合,撮影した画像をソフトウエア的に処理するのが楽ですから,画像処理ソフトの使い方によっては,まだまだ良い天体写真が撮れる可能性は残されています。

 「ステライメージ」(天体用の画像処理ソフト)が欲しくなってしまいました。


(2000年3月23日記)

→もどる