ホトケノザ


 ホトケノザは,比較的古い外来植物です。道端や空き地で,田園風景の中で,ホトケノザのある風景は,すっかり,「日本の風景」となっています。
 ホトケノザはシソの仲間。茎の断面が四角いことや,花の形などが,シソ科らしい特徴を漂わせています。
 でも,調べてみると,ホトケノザって,なかなかすごい生存戦略を持っています。

 春先に咲くピンクの花。花の形は,蜜だけ横取りされないように,長い筒状になっています。この蜜が取れるのは,おそらくハナバチの仲間か,小型のチョウぐらいでしょう。特にハナバチは,しっかりと花粉を運んでくれます。


 ホトケノザの花。シソ科の特徴がよくわかる。

 不幸にして花粉が運ばれなかったときはどうするのか。
 筒状の花が咲き終わったあと,ホトケノザは「第2の花」をつけます。これは,「閉鎖花」と言って,花を開くことも虫に花粉を運んでもらうこともありません。イチジクの花のようなものです。つぼみのような状態のまま,花の中ではどんどん種子が作られます。つまり,自稔性の花なのです。


  ホトケノザの閉鎖花。先端が赤紫色に見える。

 さらに,種子にも仕掛けがあります。
 ホトケノザの種には,エライオソームと言う粒子がくっついています。これはアリにとって魅力的なものらしく,アリはエライオソームのついた種子をどんどん運びます。ところが,しばらくすると,エライオソームが取れてしまいます。そうすると,アリは種子には見向きもしません。その結果,ホトケノザの種子は,広く散布されることになるわけです。このような種子散布方法は,カタクリの種子にも見られます。


 天気の良い日,種子がちらっと顔をのぞかせている。


実体顕微鏡で種子を拡大。
先端の色の淡い部分がエライオソームだろうか?


 身近な植物にもさまざまなドラマがあり,生き物としての力を感じます。
 だから,自然観察は面白い!


(2000年3月23日記)

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