街の中で天体観測!…星座・星雲・星団…


プロフィール

 私たちが空を見上げたときに見える,ほとんどの星は「恒星」。
 恒星は,太陽と同じように自分で燃えて光る星。
 でも,はるか遠くにあるため,光の点にしか見えません。
 恒星は,その位置関係をほとんど変えません。何千年も前に,星と星をつないで作られた「星座」が,いまも形を変えずに見えています。
 肉眼では,おもに星座の形をたどって楽しみます。
 双眼鏡や望遠鏡を使うと,二重星,星雲,星団などが楽しめます(この中には肉眼でも見えるものも,いくつかあります)。
 こうした天体を見つけるためにも,星座を覚えておくと,とても便利です。
 星の観測も,基本は肉眼から。


 星座の見どころ……

 星座はなかなか覚えられない!
 そう言う声を良く聞きます。
 でも,ちょっとしたコツさえわかってしまえば,そんなに難しくありません。

 でも,とりあえず,星座を探す道具として,星座早見盤か,毎月の星空の様子が出ているデータブック(天文年鑑など),あるいは天文雑誌などを用意しておきましょう。

星座探しのコツ
その1:……星座の向きは変わっても,星の位置関係は変わらない。
 同じ星座でも,東の空にあるときと,西の空にあるときは,向きが違っています。でも,星と星の位置関係は,全く変わっていません。特に,地平線を基準に観察すると,星座の向きが変わってしまうと,何が何だかわからなくなってしまうことがあります。
 これを解消する1つの手段として,「天空の座標系」を頭に入れて,星座を見てみましょう。
 天空の座標系は,北半球なら北極星のすぐ近くにある「天の北極」を軸に,空がぐるぐる回っていることを意識してみると,だんだん理解できるようになります。天空の座標系にも,赤道があり,北極と南極があります。天球上の「東西南北」を基準に考えれば,天球上での星座の場所や向きは,全く変わっていないのです。
 天空の座標系が飲み込めると,赤道儀のついた望遠鏡も,操作方法が理解しやすくなります。

その2:……緯度,季節,時刻を基準に
 同じ緯度の土地であれば,同じ季節の同じ時刻(もちろん地方時)であれば,同じ方角に同じ星座が見えています。昨年の1月1日午前0時と今年の1月1日午前0時の空を,同じ場所で見上げたら,ほぼ同じ場所に同じ星座が見えているはずです。
 季節が1か月進むと,星空は2時間早くなります。つまり,1月1日の夜10時の星空と,2月1日の夜8時の星空が,ほとんど同じになります。こうして1ヶ月に2時間ずつ早くなってゆくと,1年で24時間,つまり,一回り早く進んで,元の位置に戻ってくるわけです。

その3:……明るい星から覚えよう
 星座を作っている星は,だいたいは,明るくて目立つ星です。暗い星は星座の形に使われていません。
 そこで,明るい星の位置から覚えてしまえば,そこを基準に,星座を探すのも楽になります。
 全天で1等星以上の明るさの星は,約20個。日本で星を見るときは,そのうち15個覚えていればOK。2等星は全天で約40個,3等星は約200個……と言う具合に,暗い星ほど数が多くなります。
 1,2等星などの明るい星を起点に,星座の形をたどってみましょう。

その4:……どのくらい星座を覚えたらいいの?
 星座は全天で88個。日本から見えない,南天の星座も含めても,88個しかないのです。
 そのうち,明るくて形を覚えやすい星座を20〜30ぐらい知っていれば,ほとんど星空散歩で迷子になることはありません。
 日本から見やすい位置にある星座で,2等星以上の明るい星を持っているものは約30。このぐらいなら,何とかなりそうですね。

その5……市街地は星座が良く見える?
 実はけっこう,そう言う人が多いのです。
 星座の形を作るのに使われている星は,だいたい4等星以上の明るさがあります。……と言うことは,4等星ぐらいまでしか見えない夜空でも,星座の形はちゃんとわかる。それより暗い星まで見える場所では,よけいな星がゴチャゴチャ見えて,かえって星座の形がわかりにくくなることがあります。

オリオン座周辺の星図。
左の図は,ほぼ6等星まで,右の図は4等星まで示しています。
右のほうが,星座の形が良く見えると思いませんか?


その6……小さい星座は双眼鏡を使って…
 星座を見るときにも双眼鏡が役に立ちます。
 肉眼では見にくい,暗い星をたどるときにも,双眼鏡は便利です。
 双眼鏡の視野の中に入ってしまうくらい,小さな星座もありますよ。
 双眼鏡で見て楽しい小星座としては,春に見える「かみのけ座」,初夏の「かんむり座」,夏の「や座」「いるか座」「みなみのかんむり座」,秋の「さんかく座」など。


 かんむり座。こういう小さな星座は,双眼鏡を使うと楽しい。

星雲・星団の見どころ……

星雲・星団って,なんだ?
 「星雲,星団」と,おおざっぱにまとめてしまいましたが,星雲や星団には,いろんな種類のものが含まれています。
 簡単に予備知識として,頭に入れておきましょう。

・星雲:太陽系外天体のうち,望遠鏡で雲のように見えるもの。散光星雲,反射星雲,銀河などに分けられる。
  ・散光星雲:水素ガスが集まって温度が上昇し,光を放っているもの。
  ・反射星雲:水素ガスなどが近くの星の光を反射して光っているもの。
  ・惑星状星雲:星が大爆発した後に広がる,ガスの光芒。
   ……この3種類は,小型の観測機材では,銀河系の中にあるものを見ることになります。

  ・銀河:私達のいる「銀河系」と同様の星の集団。アンドロメダ大星雲などが有名。
   ……銀河系外星雲とも呼ばれ,近いものでも数百万光年離れている。

・星団:星が密集している場所のこと。散開星団,球状星団に大別される。
  ・散開星団:スバルのような,星がバラバラと集まっているもの。比較的近い(と言っても,数百光年ぐらい)。
  ・球状星団:銀河周辺部にある,ボールのように(「まりも」のよう?)星の集まった星団。

 このほかにも,星は,いろんな分類がありますが,とりあえず見やすいものだけ紹介し,あとは省略です(^_^;)。

初心者は「メシエ天体」を目指そう
 シャルル・メシエって,知っていますか?「M78」とか,“M”のついた天体の名前は,どこかで聞いたことがあると思いますが,この“M”こそが,メシエの頭文字です。メシエは200年程前に活躍したコメットハンター。彼が彗星の捜索中に,彗星と間違えやすい星雲や星団を,カタログにまとめました。それが,メシエの星雲・星団カタログとして,今もアマチュア天文家に親しまれています。
 なぜ,メシエのカタログが愛されているのか? 彼はこのカタログを,口径5cmの望遠鏡を使って作ったのです。ですから,小型望遠鏡を持っているアマチュアの,良い目標になるのです。メシエのカタログに載っている星雲,星団は109個(注:カタログ番号は110まであります。後年になって観測記録から1つ発見され,また,カタログの中には,どの天体を指しているのかわからない,「幻の天体」が含まれます)。もちろん,メシエ天体以外にも,見て楽しめる星雲,星団はいくつもあります。小さい望遠鏡でも,けっこう見えるんです。しかし,市街地ではこのすべてを見るのは難しいでしょう。また,見て楽しめるほどの見ごたえのある天体,となると,さらに限られてきます。市街地でどこまでメシエ天体が見えるのか?それは,空の条件,望遠鏡の条件,観測者の熟達度などで変わってきますから,根気良く狙ってみてください。
 概して,市街地では星雲状のものは見え味が悪く,星団のほうが市街地では強いので,参考になさってください。

市街地で星雲を見るなら…
 星雲は,初心者がいちばんがっかりする天体です。
 なぜって?
 みなさんも,天文台の大きな望遠鏡などで撮影された,すばらしい星雲の写真を目にする機会は多いと思います。スペースアートやSFコミックなどでも,いろんな「宇宙の絵」が描かれていて,小型望遠鏡で星雲を見るときも,つい,そう言う光景を期待しちゃうんでしょうね。
 もちろん,望遠鏡の大きさによる違いも大きいのですが,写真で見る星雲と目で見る星雲は,かなり条件が違います。
 写真は長い時間シャッターを開けて,光をフィルムやCCDに蓄積して撮影するので,ぼんやり広がった天体には,抜群の威力を発揮します。人間の目が光を蓄積している時間は,0.1秒にも満たないのです。また,水素ガスが光っている「散光星雲」では,水素から赤い光と青い光が出ているのですが,人間の目は暗いところでは赤に対する感度が落ちるので,写真では赤いガスが捉えられていても,肉眼ではほとんど見えていません。写真では赤く見えるオリオン座の大星雲も,肉眼では青い光芒として見えています。

 市街地ではバックの空が明るいので,星雲を見るのにはとても不利です。おおよその目標として,空のきれいなところで「肉眼で見える」と言われているものなら,市街地でも双眼鏡を使えば見えます。

 市街地で見やすい星雲を厳選してみましょう。
 ・散光星雲……オリオン大星雲(M42),いて座のM8
 ・惑星状星雲……こぎつね座のM27,
 ・銀河系外星雲……アンドロメダ大星雲(M31)

 M42,M31は,条件が良ければ肉眼でも確認できます。小型双眼鏡でも,星のように点像ではない光芒がわかります。
 M8も,双眼鏡で見るのがいいでしょう。
 M27は,大きめの双眼鏡か,小型望遠鏡が必要ですが,望遠鏡なら繭玉のような形が確認できます。


 オリオン座の大星雲(M42)。肉眼で,こんな感じに見える。

星団は市街地でも良く見える
 星雲に較べると,星団のほうが,市街地では見やすいようです。星団,特に散開星団を見るときは,望遠鏡よりも双眼鏡をおすすめします。望遠鏡だと拡大しすぎて,星がゴチャゴチャ集まっている様子が実感しにくくなってしまいます。
 肉眼で見える散開星団も,いくつかあります。
 代表的なのは「すばる」(M45)。このページのトップの画像も,すばるです。
 すばるの近くの「ヒアデス星団」も,見やすい星団です。なにしろ,星団の中でいちばん明るい星は1等星ですから。
 双眼鏡を使えば,季節ごとに,さまざまな星団が楽しめます。春には,かに座の「プレセペ」(M44),星座全体がMel.111と言う星団になっている「かみのけ座」がきれいです。夏には,さそり座のしっぽの先にあるM6,M7は,7〜8倍ぐらいの双眼鏡なら同じ視野に収まります。秋から冬にかけては,天の川沿いにいくつも散開星団が見られます。


かに座の「プレセペ」(M44)。双眼鏡の視野にぴったり。


 球状星団は,双眼鏡や小型望遠鏡では,星雲のように見えます。星団の星が分解して見えるのは,口径15cm以上の望遠鏡が欲しいところ。初夏から夏にかけて見やすい,ヘルクレス座のM13は,条件の良い場所なら,肉眼でも存在が確認できます。口径3cmぐらいの双眼鏡でも,10個以上の球状星団を見ることができます。


双眼鏡で天の川を散歩する
 市街地でも,台風の直後などには空気の透明度が上がり,星が良く見えます。また,お盆の頃には灯火や排気ガスも減って,ちょっと空の条件が良くなります。そんなときに,天の川を「散歩」してみましょう。肉眼では見えない天の川でも,双眼鏡を使えば,たくさんの星が飛び込んできます。口径が大きくて,倍率の低い双眼鏡を使って,いて座からはくちょう座のほうに向かって,天の川をゆっくり眺めてゆくと,とても面白いですよ。いて座付近が,天の川のもっとも濃い部分です。天の川沿いには星雲や星団も多いので,ゆっくり双眼鏡の視野を動かしてゆくと,いろいろ見つかると思います。

星雲・星団だけじゃなく……
 双眼鏡や望遠鏡で星を見る楽しみは,これだけじゃありません。肉眼では1つの星にしか見えないけど,双眼鏡や望遠鏡では2つ(あるいはそれ以上)の星に分離して見える「二重星」。星の色や明るさのコントラストが楽しく,また,近接した星が分離して見えるかどうかで,望遠鏡の性能テストもできます。
 もう少し星に詳しい人なら,変光星を観測するのも面白いでしょう。


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