街の中で天体観測!…太陽・惑星…


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 太陽と太陽系の惑星たちは,市街地でも十分に楽しめる天体です。
 実際,東京都内でも,太陽や惑星の観測をしている施設があります。
 私たちがよく見かけている惑星は,木星や土星,火星,そして金星ぐらいでしょうか。
 水星も肉眼で見える明るさなのですが,見える時期と時間が非常に限られているので,データブックや天文雑誌などを読んで,チャンスを狙う必要があります。
 もちろん,他の惑星も,星空の中を動いているので,データブックで位置を確認してやる必要があります。
 ここでは,太陽と,肉眼で見える明るさの5つの惑星について,簡単な観測方法を紹介します。


 太陽の見どころ……

 太陽を観測するのは,けっこう大変です。
 なにしろ,明るすぎる。
 最初にお約束。

 絶対に,望遠鏡や双眼鏡で,太陽を直接見てはいけません。

 では,太陽の見どころをチェックしてみましょう。

・黒点
 おなじみ,太陽の表面に発生する,黒い「しみ」。これは太陽表面の,温度の低い部分。逆に温度の高い部分は白斑として,明るく見えます。黒点は約11年周期で増減を繰り返します。黒点数は2000年に極大期を迎えたので,2001〜2005年にかけては,黒点の数はどんどん減ってゆきます。

 黒点を望遠鏡で観測する場合,いちばん手軽なのは「投影法」です。望遠鏡の影を見ながら,影がいちばん小さくなる方向に向けると,レンズを通った太陽の像が,望遠鏡の影の中に投影されます。これを白いスクリーン(紙などでも可)に,適当な大きさになるように映し,望遠鏡のピントを合わせます。この方法は,天文台の黒点観測でも使われる,伝統的な手法です。
 実は望遠鏡の代わりに双眼鏡を三脚に固定しても,同じ方法で黒点が見えます。多少,解像度は落ちますが,小さな双眼鏡で黒点が見えるなんて,ちょっと痛快です。
 大きな黒点が現れたときには,肉眼でも存在が確認できることがあります。色の濃いフィルターを使い,十分に減光して,安全に観測してください。

デジカメ+テレコンで撮影した太陽。
自作太陽フィルター使用。
太陽の周辺部が暗いことに注目。
太陽はガスの塊なので,周辺部は暗く見える。

・日食など

 太陽に関係した天文イベントで,いちばん華やかなのは日食でしょう。
 太陽が完全に月に隠れる「皆既日食」は,世界中から観測者や観光客が見に行きます。

 また,太陽の前を惑星が横切ることがあります。地球と太陽の間を回っている水星と金星です。これらの惑星が太陽の前を横切る現象を「太陽面通過」と言います。水星の太陽面通過は,平均すると8年に1度ぐらいの頻度ですが,金星が太陽の前を横切るチャンスは,滅多にありません。横浜の桜木町駅の近くには,明治初頭に金星の太陽面通過を観測したと言う記念碑が建っています。
 日食や太陽面通過も,「投影法」で観測できます。

惑星の見どころ……

・水星
 水星を見たことのある人は多くないのでは?
 水星は太陽の近くを回る惑星。ですから,太陽から離れた場所に見えることがありません。
 太陽からもっとも離れて見えるときでも,夕焼け空の中,または朝焼け空の中。
 でも,明るさは1〜0等級ぐらいで見えることが多いので,データブックや天文雑誌で,水星の見やすい時期と見える位置を確かめて,トライしてみてください。観測に必要な道具は,データブックと肉眼だけ。水星の大きさは,月より一回り大きい程度で,双眼鏡や小さな望遠鏡では,水星の表面の様子や満ち欠けする様子などは,ほとんどわかりません。

2000年11月19日明け方に撮影した水星。
朝焼けの空に,明るく輝く。


・金星
 金星は,地球にもっとも近づく惑星。但し,地球の軌道よりも内側……太陽寄りの軌道を回っているので,最接近のときは,太陽と同じ方向になってしまって,見えません。金星も水星と同様,太陽から大きく離れて見えることが無く,真夜中の空に金星が見えることはありません。金星ははダントツに明るく,いちばん明るいときには,1等星の100倍以上の明るさになり,昼間でも青空の中に見えることがあります。
 金星を双眼鏡で見ると,特に地球に近づいているときには,三日月形にかけて見えるのが良くわかります。もちろん,望遠鏡を使えば,もっとはっきりと,金星の満ち欠けの様子がわかります。

近づく金星。
これは,2001年1月14日。
ほぼ半月状。
同・2月20日。
見かけの大きさは大きくなるが,
どんどん細くなる。
同・3月5日。
さらに細く,見かけの直径は大きく……

・火星
 火星は地球のすぐ外側の軌道を回る惑星。
 地球に近いはずですが,大きさが地球の半分ぐらいしかないので,意外と観測しやすい時期が限られています。
 おおよそ2年2ヶ月ごとに,地球と火星は接近しますが,火星の公転軌道は地球に較べると,かなり楕円形なので,「接近」と言っても,条件の良いときと悪いときでは,かなりの差があります。2001年6月に,かなり良い条件で接近し,赤く,明るく輝く様子が見られることでしょう。その2年2ヵ月後,2003年8月には,素晴らしい条件の「大接近」となる予報です。

 火星が接近したときには,双眼鏡でも赤い,面積を持った天体に見えます。小型の望遠鏡を使うと,表面の大まかな模様がわかります。大きな望遠鏡を持っている観測者は,もっと遠いところにある時期から観測していますけど,「お気楽天体観望」を楽しむなら,接近したときがお楽しみ。(そんなわけで,まだ火星の拡大画像がありませんm(__)m)

・木星
 太陽系最大の惑星。いちばん地球に近いときでも,6億km以上離れていますが,なにしろ地球の11倍の直径がありますから,明るく,大きく見えます。
 双眼鏡を使うと,木星が面積を持った天体に見えます。それよりも注目したいのが,4大衛星(ガリレオ衛星)。木星の周りを回っている,木星のお月様です。木星はたくさんの衛星を持っていますが,その中でも特に大きい4つの衛星は,双眼鏡でも見えます。

 木星本体の模様を見るためには,望遠鏡が必要です。口径5cmぐらいの,ちっちゃな望遠鏡でも,ちゃんと縞模様が見えます。倍率は少なくとも30倍ぐらいは欲しいところです。口径20cm以上の望遠鏡で,200〜300倍ぐらいかけて見る木星は圧巻です。でも,木星の不思議な縞模様を確認するだけなら,小型の望遠鏡でも十分に楽しめますから,お試しあれ。

木星のガリレオ衛星。
ガリレオが口径3cmの望遠鏡で発見したもの。
双眼鏡で十分に楽しめる。
木星の縞模様。
ジオマED65+QV-8000で撮影。
小さなスポッティングスコープでも,
これだけの画像が得られる。
「お気楽機材」での撮影も,侮れないでしょ。

・土星
 おなじみ,環を持った惑星(最近では木星や天王星などにも環が見つかっていますけど,はっきり見える環があるのは土星だけ)。
 木星よりもさらに,7億km以上離れた場所にありますが,本体の直径は地球の9倍ぐらい。環がありますから,案外,見かけの大きさが大きく見えます。
 双眼鏡で見ると,辛うじて楕円形に見えます。口径70〜80mm,倍率20倍ぐらいの大型双眼鏡だと,環も確認できるようです。
 小型の望遠鏡でも,倍率40倍ぐらいから(性能の良い機種なら25倍ぐらいから),環の存在が確認できます。土星を望遠鏡で見ると,「想像したとおり」に見えるので,初めて見た人は,けっこう感動しますよ。
 また,土星も衛星をたくさん持っている惑星ですが,小型の望遠鏡では,土星の衛星が1つだけ見えます。土星最大の衛星,タイタンです。

上の木星の写真と同じ拡大率,同じ撮影条件。
かすかに本体の模様も写っている。
気流が安定すれば,もう少し細かいところまで
撮影できる……はず(苦笑)。


・そのほかの惑星
 上記に紹介したもの以外の惑星は,「気楽に楽しく」とは言いにくい観測条件となります。
 天王星は,明るさが約6等級。双眼鏡があれば,存在が確認できます。小型の望遠鏡でも,辛うじて,青緑色の面積を持った天体であることがわかります。
 海王星はさらに暗く,8等級ぐらい。大きめの双眼鏡で,ある程度,空のきれいな場所で探せば,見つけられなくも無いけど……。小型の望遠鏡では,存在が確認されるのみ。天王星と同様,青緑色をしているのを目安にして探します。
 冥王星を見るためには,大きめの望遠鏡が必要です。せめて口径25cm,できれば30cmは欲しい。

 このほかに,主として火星と木星の軌道の間に,たくさんの小惑星がありますが,これを見つけるのは,かなり大変です。しかし,一部の明るい小惑星は,双眼鏡で見えるチャンスもあります。4大小惑星(セレス,パラス,ジュノー,ベスタ)は比較的明るくなります。特にベスタは,双眼鏡でも探しやすい小惑星です。興味のある人は,データブックの予報図とにらめっこしながら,探してみてください。


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