Moulton Bicycle との出会い

私が Moulton Bicycle を始めてみたのは,とあるバイク雑誌の広告のページの写真でした。

その頃はオートバイにしか興味がなく,当然自転車のことは全く知らない私でしたが,その写真の自転車には妙に惹かれる物がありました。

細いパイプで組まれた不思議なフレーム,それだけ見ればママチャリの様なやけに小さなタイヤ,そのくせロードレーサーみたいなドロップハンドルを付けて変速機まで装備している…。

広告の文面には確か「スピード世界記録・・・」とか言う文字があった様に思います。

しかし、そのデザインに惹かれる物があった反面,うさんくささを感じたことも事実です。何故自転車の広告がバイク雑誌に?こんな小さなタイヤで世界記録?何で自転車にバードゲージ・フレーム(当時,この様な細いパイプの組み合わせでできたオートバイのフレームをこう呼んでいたような気がします。)が必要なんだ?等々…。

その時感じた疑問はその後段々と解決するのですが,その時は結局「変わった自転車があるんだな。」程度のことで,メーカーの名前も覚えずに終わってしまいました。


偶然の再会

それから何年か経った夏のある日,神戸の垂水方面の海岸線をオートバイで走っている時です。ちょうど今は明石海峡大橋が架かっているあたりです。信号待ちをしていると,対向車線を一台の自転車が走っていきました。一目見て判りました。

「あ、あの自転車だ・・・・。」

夏の日差しを受けてメッキされたフレーム(当時はメッキと思っていました。)はキラキラと輝き,ドロップハンドルに巻かれた白いハンドルテープがより一層その輝きを引き立てているように思えました。

本物との出会いは一瞬すぎて特徴的なフレームの細かなディテールまでは確認できませんでした。しかし,その美しさは充分目に焼き付いたのでした。家に帰り早速以前見た広告を探したのですが,古い雑誌はすでに処分してしまっていて,見つからず終いでした。

その後、色々情報を探してはみたのですが,現在の様にインターネットがあるわけじゃなし,結局はなにも判らないまま過ぎていきました。


カー・グラッフィク・TV(1995年1月)

ところが思わぬところからこの自転車の情報を得ることができました。

タイトルにも書いたカー・グラッフィク・TVの「Moulton特集」の放映です。

夜遅い番組だったのでビデオにとって休日に見ていたのですが,テープの再生を開始しその日の特集が判ったとたん,一人で「やった!」と声を上げていました。

やっとあの自転車の名前が判りました。

Alex Moulton Bicycle

イギリスの古城で一台一台手作りされている工芸品のような自転車でした。

そしてその設計者が Mini のラバーコーン・サスペンションを手がけた Dr.Alex Moulton であることも知りました。このテープからは色々なことを知りましたが、よくある事故(?)で今は手元にありません。

誤って翌週のカー・グラッフィク・TVを上から録画してしまったのです。

しかし、名前が判ったところでどこで売っているかも判らないし、反対にめちゃくちゃ高価なことも判ったので,とりあえずは手の届かない憧れの自転車となってしまいました。


Land Rover APB

最初は Moulton Bicycle を買う気は全くなかったのです。

ただ、通勤に使用しているMTBが古くなったので新しいのに買い換えようと思い、どんな自転車がいいのか調べようと本屋で自転車が載っていそうな雑誌をあさっていました。自転車の専門誌があることはその時初めて知りました。

そのうち一冊に Moulton Bicycle の特集があったのです。サイクル・スポーツ誌の1996年1月号でした。

その記事は,1995年に行われた第二回 Alex Moulton Owners Meeting で取材された数台の Moulton Bicycle の紹介でした。

最後のページの片隅に 輸入販売元ダイナベクター の電話番号が載っていました。早速,電話をかけて カタログの送付 を頼みました。

2、3日後にカタログが手元に届きました。その中に新機種として Land Rover APBのパンフレットが入っていました。APBシリーズはAMシリーズと違い,W.R.Pashley社によるライセンス生産品ですが,その代わり(Moulton としては)値段も安くスタイルもMTB風でした。

「これぐらいの値段なら何とかなるかな。」という考えが浮かんでしまったら後はもう歯止めがききません。 カタログ に同封されていた 取扱店リスト で近い店を確認すると,頭金を握りしめて家を飛び出したのでした・・・。


その後の Moultoneer・・・

Land Rover APB を手に入れて以来、パーツを色々交換し、スタイルもMTB風からロードレーサー風,ツーリング車風と変遷し未だに完結を見ぬまま,更なる改造を続けています。そうして今は Alex Moulton Bicycle に関する Home Page を開くほど Alex Moulton Bicycle にはまった人生を送っています。

さすがに高価な自転車ですからそう簡単に新しいのを買うわけにはいきませんが,次の目標はAMシリーズを手に入れることです。マァ,いつになることやら判りませんが・・・。

何はともあれ AM life をまだまだ楽しむつもりです。

(1997/12/08)