友人の黒木という男が書いた日記である。
彼はいろいろなところに友人をもっている。
そこ
でも彼の人となりが判るであろう。
その1
本日の出来事を報告するよう書いてあったので、報告する。
本日は6時過ぎに起床した。ちかごろ寝坊していると妻が へその穴に指を突っ込むので怖いのだ。甚だしいときは、 おしっこちびってしまったりする。
何故人はへその穴に指を突っ込まれてぐりぐりされると おしっこちびるのであろうか。謎である。
朝飯は、パンと牛乳とレタスとキノコとソーセージとコーヒーと オレンジであった。 今日は燃えるゴミの日であるので、オレンジの皮などをゴミ袋に 突っ込んでいると、テレビで京浜東北線の事故の話をしている。 今日は千代田線で行かなくてはならぬなあ、と考える。
我が取手市は常磐線だけではなく千代田線も来ているのだ。 ま、乗り入れているだけではあるが。一応複々線なのだ。 だから住宅情報などを見ると「千代田線沿線」の所に乗っていたりする 僕はそれが気に入らない。我が取手市が代々木上原とか 表参道とかと同等の扱いを受けるのは許せない。 取手市は板東太郎・大利根の荒波にけずられ磨かれた 正真正銘の正統派の田舎町なのである。 表参道ごときと同列に並べられちゃあかなわねえや。
利根川の土手沿いの道を、猫を探しながら妻と二人で駅へと急ぐ。 うちの前にいつもいるのは向かいのアパートに一人住まいのおばあちゃんが飼っている 「黒ちゃん」だ。こいつはまだ1歳半そこそこの男の子で、 人なつっこくてすばしっこいが、喧嘩はまだまだ弱いらしく、 いつも傷だらけの顔をしている。 こいつにいつも喧嘩を売っているのが、白トラの「ボス」。 ふてぶてし顔つきではあるが、私が「ちっちっち」とか言いつつ近づくと ゴロにゃんと横になって腹を見せるお茶目さんでもある。 こいつにも、いつも家を出てすぐのところで出会う。 少し歩いたところには、まだ3ヶ月ぐらいの子猫がいる。茶トラである。 こいつはつい先週初めて発見したのだが、その後まだあっていない。 どうやらそこにある汚いアパートで暮らしているらしい。
その先、ゴミ捨て場の近くには、僕たち夫婦の最大の友人であった 「マーブル」がいる。2年前の9月、引っ越したばかりの我々の所に 毎晩遊びに来ていたが、11月のある寒い夜を境にぱったりと顔を出 さなくなってしまった。こいつはそのころノラだったので、てっきり どこかで野犬にでもやられたかと思っていたが、今ではそのゴミ置き場のそばの お屋敷で大事に飼われているらしい。 今でもふうふでその近辺を通りかかると、「にゃあ」と挨拶しに出てくる。 そしてしばらく後を着いてくるのだが、自分のナワバリを出ると急に不安そうになって、 迷いながらも帰っていってしまうのだ。
中華やの前をすぎ、床屋の時計を確認しつつ駅へ急ぐ。 国道の下をくぐりぬけると、バッテリー屋がある。 いや、本当は何やかしらないけど「バッテリー」と店のすすけた看板には書いてあるし、 中を覗くと本当に古そうな車のバッテリーがたくさんおいてあるので、 多分本当にバッテリー屋なのだろう。 その店では二匹の猫を飼っている。 年寄りらしく、近寄っても逃げもしないかわりにじゃれつきもしない。
猫の観察をしつついよいよ駅に着いた。 私は千代pだせんにのった。 案の定みんな考えることは一緒ですごく混んでいた。 柏あたりから松戸あたりまでは特にものすごく、座っていた私は この間ずっとおんなの人におっぱいを押しつけられていた。 でも、悲しいことにおばさんだったので、ずっと目をつぶって 耐えていたのです。
というところでひるやすみはおわたので、きょうのところはこのへんで。
その2
今日もいろんなことがあって、いろんなニュースがありました。 くたびれるいつものニュース。心躍る話題。
黒木家は今日、能登から送られてきた酒をあけました。 やっこは酔っぱらって風呂に入り、 私はおちょこに一杯の酒を手に目の前の利根川土手へと上ったのです。 北の空を見上げるとカシオペア座。 その下、昼間なら筑波山の見えるあたりに閃光がきらめくのが見えました 。 稲妻です。 ときどき、はっとするような入道雲のカタチが夜空に鮮明に浮かび上がり ます。 そのカタチは、一回一回まるで何か軟体の生物のように姿を変えていきま す。 そしてぼぉっと眺めているこちらを目指して空を引き裂いてくる稲光。 それらが、土手にいるさまざまな虫たちの声をBGMに北の空を演出して いるのです。
見上げるとカシオペア座。 東の方には上ってきたばかりの赤い半月。
僕は一升瓶を持って、これからもう一度土手に上ってくるのです。 今日もいろんなことがあって、いろんなニュースがあったけど、 空電は静かに地表を輝かせているのだ。
明日は土浦大花火競技大会。 ちょっとたのしみ。
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