逢坂 剛著  『百舌の叫ぶ夜』



                 
2009-08-25



(作品は、逢坂 剛著 『百舌の叫ぶ声』 集英社による。)

            

本書 1986年2月刊行

逢坂剛:
 

 1943年東京生まれ、挿絵画家の中一弥の息子。幼少期に母が病死し、父子家庭で育つ。中央大学法学部卒、博報堂に勤務する傍ら執筆活動。1997年31年勤めた同社を退社し、作家となる。ギターとフラメンコをこよなく愛する。


物語の展開 

“黒い牙”の幹部、フリーライタの筧俊三爆弾誤爆死事件後、殺しや新谷(しんがい)和彦を始末したが、その新谷が記憶喪失で生きていたと見られるところから・・・

主な登場人物:

新谷和彦(しんがい) 豊明グループの中で比較的まっとうな商売のリビエラというパブの店長。野本専務-赤井秀也より指示を受けテロ活動を行っている。
新谷宏美 新谷和彦と一卵双生児の妹。殺しや。
大杉良太 警視庁捜査一課警部補
倉木尚武 警視長公安部特務一課の警部。新宿の爆弾事件で妻の倉木珠枝が巻き添えを食って死亡、私的に捜査に乗り出す。
明星美希 警視庁公安部公安三課第六係部長刑事
津城俊輔 警察庁警務局特別監察官、警視正。
室井玄 警視庁公安部長、警視長。警視総監の椅子をねらう切れ者。

豊明興業
・野本辰夫専務
・赤井秀也企画部長

池袋周辺縄張りの暴力団


読後感:

 サスペンス小説として単なる娯楽作品としてみるとなかなか面白い。
けれど何かもの足りない感じが否めない。あの高村薫の「レディ・ジョーカー」の時のような狂おしい程のどんどん続を読みすすめたいという衝動が湧いてこない。筋そのものは面白いのだが、贅沢な要求か?

 それが何か?多分読者に感情移入をさせるにたる人間的にというか、精神的にというか共有できるものが入っていないからではないのだろうか? 確かに倉木警部にしろ、大杉警部補にしろ人間の弱みも記述されているが、ごく身近なこととして心に染みてこないのだ。
 この著者の後の作品に直木賞を取った「カディスの赤い星」があるので、それも後で読んでみたいと思っている。さてそれでこの著者の作品にさらに入っていけるかだ。
「あでやかな落日」はもう少し興味が湧いたのだが。


  

余談:

 本書の後記を見ていたら「せいぜい一日か二日もあれば読み飛ばせる小説を、何が面白いのか構想を得てから書き上げるまでに三年半も掛けてしまった。とりわけ、のんびりこの作品を書いているさなかに、同じような状況設定の海外ミステリが翻訳された時は、さすがに愕然とした」と。 


背景画は本書の裏表紙の強烈なイメージを利用。

                    

                          

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