県下環境NGOからの報告

---INDEX---
1.相模川キャンプインシンポジウム
2.オオタカ情報
3.ポーラ美術館問題の現状
4.政策の転換を求める神奈川アピールへの「川崎市・横浜市からの回答
 

円卓会議41 ついに出た幕引き宣言
相模川キャンプインシンポジウム
(http://www3.justnet.ne.jp/~kanaoken/oozeki/OOZEKI.htm)

 5月23日(日)13時から16時まで、横浜駅西口徒歩10分ほどの神奈川県社会福祉会館で、相模大堰円卓会議の41回目が開かれました。今回は、前回に引き続き、「広報冊子 相模大堰」(通称青版、青い表紙なので)の第6章工事と管理の部分です。前
回、水道企業団は文字通り読み上げるだけの説明で終らせようとして、私たちの猛反発をくらいました。環境に配慮した工事を標榜しながら、「環境」は、基本的に近隣住民の居住環境のことしか述べず、自然環境に関しては、「配慮して工事を進めます」の一文だけ。さらに、これまでこの会議でも十分説明して来たからもう良いではないかという始末。工事はすでに終っているのに、何をどうやって、効果はどうだったかという総括もしないつもりのようだったからです。
 そういういきさつを踏まえて、今回はもう少し、何をやったかを話してはくれましたが、結局大枠のみを口頭で提示するかたちでした。彼らは特に配慮した項目に関して次の6点を挙げています。

・動植物生態の工事前、工事中、工事後の調査
・着工前の小動物の追い出し
・アユの産卵期の工事方法(仮設橋の渡し方 など)
・濁水処理(県条例に基づく)
・コアジサシの営巣への配慮(人口営巣地の 築造)
・タコノアシ(絶滅危急植物)の移植保護

 これに対して私たちは、自然環境に配慮した施工、措置に関してきちんと総括し、公の文書とすることを改めて求めました。結局のところ工事は終ってしまいましたが、市民との関係で自然環境保全対策に費用と時間を当初計画以上に費やしているのは事実で、その量は今までの公共事業を上回るものであると思われます。
 この点は、企業団は自負して良いとも指摘しました。この種の工事を行うにあたって、鉄骨と生コン以外の費用と手間がどれぐらいかかるのか、きちんとした形で記録にとどめておくことは、事業を行う側にとっても、自然保護運動体、納税者としても重要なことです。できれば、環境対策が莫大な費用なので、設備の新設は見合わせるというような方向になるような抑止力になってほしいものです。
 この求めに対して、はじめは手間がかかるからと面倒くさがっていた企業団は、悪い気はしなかったのか持ちかえって検討すると回答してきました。自然環境に関連して、アユの遡上量と、タコノアシの栽培試験の話も出ました。

 この次に堰のゲート(水門)操作の話になりました。川の流量によって、ゲートそうさや管理体制が異なるようなのですが、青版と相模大堰管理規定、相模大堰ゲート操作要綱によって、基準となる流量の値がまちまちなので、聞く側は良くわかりません。結局青版には、その当時の暫定的な値が書いてあり、相模大堰管理規程には、流量に応じた警戒体制、つまり人員の配置や必要な作業手順などが書かれていて、ゲート操作規定にはゲート操作用の流量基準値とその時々の操作が書いてるということのようです。口頭で聞いているだけでは難解なので、整理した資料の提示を求めて、この話しは終りました。

 最後に、神奈川県企画部水資源対策室長から、そろそろくるかなと思っていた話がついに来ました。この話し合いの完結の申し入れです。青版をテキストとして、40数回の話し合いを重ねてきましたが、青版に関する議論も最後まで来ました。このあたりが幕の引き時であると考えている、ということです。 情報開示に関しては、この話し合いの中で行われてきたのと同じように今後も応じると付け加えました。こちらも、こういう申し入れは予想していましたので、終るにあたっては、このような話し合いは、過去例がないのできちんとした記録を取りまとめたい。
  話し合いそのものを終結させるのは、当初の申し合わせにのっとったことであるが、記録をまとめるという作業の過程では、まだ両者の調整も必要であろうから、そのテーブルにはついてもらいたいと応えました。
 というわけで、次回継続課題が出なければ、次回が最終回となる可能性大です。最近来てない人も、ぜひ来て下さい。

 7月20日海の日 13時 場所未定
 (金尾憲一)         

オオタカ情報
神奈川オオタカ保護連絡会
(http://www.asahi-net.or.jp/~vq4m-snb/)

 「神奈川オオタカ保護連絡会」は県内に棲息しているオオタカを開発から保護しようと考えている団体が集まり、1995年に結成されました。

  各地から、抱卵開始の報が入って来ました。開発が差し迫っている地域が多く、ただ見守っているだけでは里山の環境保護はできません。連絡会では各地の団体と協力し合い、行政や事業者に対し保護を訴えています。
  第ニ東名関係では、昨年営巣の妨害行為を行なった道路公団、アセス会社は連絡会の強い抗議により、今年の「繁殖状況調査」は保護団体側の監視カメラの映像を使用しています。

★4月26日(月) アセス会社によるオオタカ繁殖状況調査の立会い記 <秦野>   
  午前8:00 最寄りの待合せ場所に秦野の守る会オオタカ班2名、アセス会社2名が集合。(当該の営巣地は昨年、調査による繁殖妨害により今年は営巣木を移動している為、監視カメラは設置していないので、ブラインドまでの接近となる事は打合わせ
済。)  
  アセス会社の調査方法の希望を聞いて唖然とする。計画は素人同然の若い女性1名をブラインドから目視 (記録撮影はせず) でオオタカが巣に居るかどうかを確認するとの事。(抱卵開始の微妙な時期に営巣木へ準備すらせず最接近させようとは何事か) ただ見るだけの為に危険をおかす事はできないので「当方1名が侵入し、ビデオ撮影して来る」という計画に変更し、全員で営巣林近くまで移動したが、オオタカの餌乞い鳴きが続いていたので、抱卵中と判断しそれ以上の接近はせず、餌乞い鳴きの意味を説明し、(責任者は植物が専門でオオタカの生態は知らなかったのが判明) そうそうに立去る。今までこういう軽薄な考え方と手法で通し、オオタカの営巣をいくつ妨害してきたのだろうか。聞けば調査マニュアルに添っての行動との事。(昨年は産卵直後の時期に営巣木の真下を通り、巣を撮影していた。平服で行動し、頭上ではオオタカが警戒声を発する。下山後、頭ごなしの抗議となる。)
 午後1:00 別の営巣地の調査 ネイチャーシネプロスタッフ1名、秦野の守る会オオタカ班1名、アセス会社2名が集合。内3名で侵入。(ブラインドに常駐スタッフ1名)
  ここのオオタカの繁殖状況は、離れた林内のブラインドで監視カメラにより逐一、把握しているので何時でも観察が可能。先の若い女性調査員にリアルタイムの映像を見せ、オオタカに何の影響も与えず繁殖状況調査終了。
(秦野の自然と環境を守る会オオタカ班記)
 

ポーラ箱根美術館建設問題の現状 (蛯子貞二)
        
 本件は、県アセス条例のスケジュールに基づく昨秋、箱根仙石原においての公聴会の後、3月26日県環境影響評価審査会は県知事宛答申書(別項)を提出、これを受けて県知事は、4月6日、事業者ポーラ美術振興財団に環境影響評価(アセス)審査書を
手渡した。
 箱根を守る会は、それらの内容を慎重に審議し、次のごとき要望書を県知事に提出し、知事から事業者に対し、これまで当該地域が、国立公園特別保護地区に準ずる扱いを受けてきたことを重視し、そのように至った経緯の調査と、杜撰な調査内容を改めるよう、強く要望した。
 以下その要望書を掲げ、ご協力をいただいております皆さまへの中間報告と致します
          −−−−−−−−
神奈川県知事 岡崎 洋 殿

箱根を守る会会長 信濃 一男

■ポーラ化粧品本舗による箱根美術館建設計画に対する環境アセスの今後の取り扱い
について要望書

 国立公園の箱根において、殊に、特別保護地域に準じた扱いがなされてきたブナ帯
に計画された、ポーラ化粧品本舗の美術館建設の環境アセスメントについて本会は、
3月26日付神奈川県環境審査会答申、ならびに、これをうけての4月6日付事業者宛県
知事審査書を慎重に審議した。
 いずれも本会のこれまでの主張と軌を一にする指摘が目立つが、アセスの基本であ
る実地調査の不備、補充調査・再調査の必要など具体的な指摘は充分ではない。また
今後なお懸念される問題も多く、特に、以下について、特段の対応を願いたい。

         記

1、当該地域のこれまでの経緯に関する調査の指摘、ならびに、それらを踏まえて建
設計画が進行した状況の説明について

 当該ブナ帯における当該建設計画に自然環境への配慮が不足しているとの答申は、
行政において事前に明確化されていた地域慣行の事実を充分に調査する必要の指摘で
あった。
 本会は、本地域が第2種特別地域でありながら、すでに特別保護地域に準じている
ことを繰り返し述べ、この定見を何故に隠蔽するのかを行政に問いただしてきた。
「自然公園法第17条に対する審査指針とその運用通知」に言う『定着した地域慣行、
公の学術調査の結果極めて高い学術的価値があると認められた地域』の二点が、この
地域が特別保護地域に準ずる扱いが適用されてきた基準であり、それがすでに20数年
続いている事実を踏まえれば、答申書ならびに審査書が述べる多くの自然保護に関す
る指摘は、この一事に要約されている筈、事業者アセスの冒頭に、このような地域慣
行や箱根の自然保護思潮の進展の経緯を、充分に調査する必要のあることを、事業者
に指示されたい。

2、実質的な現地調査の開始と、その結果の詳細な評価について

 事業者による学術的な実地調査とその報告書が、当該計画の規模に比べ、不備なこ
とを、本会は何回か指摘してきた。国立公園の指定以前より頻回行われてきた箱根の
学術調査の知見に立脚すれば、当該報告書は実質的な調査が行われたとは理解しがた
いほどに未熟であった。これは調査担当者の経験不足や調査日数の極度の寡少などに
起因するらしく、自然公園法地域以外の環境アセスの低劣な状況が、国立公園内では
通用しないことを痛切に感じさせる結果となった。
 加えて本会は再三にわたり、ブナ帯のこの地域の自然度「9」をあえて「7」と認め
させる欺瞞や箱根仙石原と小田原の観測データを足して2で割る式の気象資料の捏
造、開発計画を危うくする生物、例えばワシタカ科鳥類の出現を削除する隠蔽など、
正当な学術資料が歪曲されているこの報告書をもって、わが国有数の自然環境を保つ
箱根のブナ帯における環境アセスに値しない旨を訴えてきた。今後の学術的調査にお
いては熟練した調査団によってなされるよう配慮願いたい。

3、審査会答申ならびに県審査書に対する■ポーラ化粧品本舗側の対応と、行政にお
ける今後の取り扱いについて

 本会は、自然公園法地域における県の環境アセスが法的に適正か否か、またその整
備を全国的な署名運動を通して内閣総理大臣に訴え、要請してきており、現在すでに
約1万名の署名を得ながら現在なお継続中である。また地域慣行を行政が顧みない点
については、開発申請が陸続する連鎖的な状況を憂慮し、裁判や行政監査請求をもっ
てこれを阻止せざるを得ないと考えている。
 ■ポーラ化粧品本舗には、このような切迫した状況に対する認識が稀薄で、例えば
本会が意見書・再意見書で反復指摘した調査の問題点につても、文書上での誠意のな
い詭弁に類する答弁にとどまり、ついに本格的な調査に着手することはなかった。万
一、県知事審査書に対しても、上記の状況が反復されるにとどまるなら、単に県の環
境アセスが形式的なものと理解されるばかりではなく、それはすでに民間の自然保護
団体たる本会に対する回答とほぼ同様なものが、県知事ならびに県審査会にもたらさ
れることになり、事態は容易ではない。
 すでに行政として多数の指摘を加えた以上、調査を含めてその実現については、確
固として結果を追求されたい。

4、計画是正の具体的な方針について

 本地区においては、どのように形を変えても、当該計画の実現はあり得ない。しか
しながら、県の具体的な指導は、現状への認識が必ずしも充分ではなく、今後の是正
を要望したい。例えば、この地域のブナ林の自然度を本会が指摘した同じく「9」と
しながらも、同社所有の隣接植林地内に計画地を移す検討が指導されていない。また
駐車場の規模縮小を示唆しながら、専用バスなどの利用による駐車場の全面的否定が
指摘されない。仮に駐車場を廃止し、美術館本体を植林地内に移動する計画に変更す
れば、ブナ林の本体部分(美術館建設予定地)と、ブナ幼樹の目立つブナ林回復途上
林(駐車場予定地)の双方は、少なくとも直接的な破壊から免れ、環境影響評価も多
少の変化が生ずることが考えられる。
ただしこれをもって、周辺の開発の連鎖的発生の危険にも、全ての場合、植林地内な
ら可能とするものではありません。

5、着工時からの監視・公表・モニタリングなどについて

 これら監視・公表・モニタリングなどの措置は、箱根山におけるブナ帯の破壊の阻
止に何等貢献するものではない。ブナ帯の内部の自然環境はきわめてデリケートであ
ることは、本会が多くの事例をもって解説し、審査会答申も同じようにこれを指摘し
ている。着工した時点で自然は破壊され、い■かに慎重なモニタリングの累積があっ
ても、すでに失われた自然は完全には回復しない。
 行政の方針として、この地域に対しては、自然の破壊か保護か、そのいずれかに徹
するよう要望する。
    
[環境庁南関東地区国立公園・野生生物 事務所(いわゆる箱根事務所)経由で、1998
年12月提出]
 

要望書への回答

 政策の転換を求める神奈川アピール「財政再建の一環として大規模事業の見直しと
環境重視政策を求める要望書」を1998年12月に総理大臣、県知事、県内自治体首長に
提出し、その回答が川崎市・横浜市から届きました。
(アピール全文は前号をご覧下さい)
 財政破綻から市民生活をどのように守っていくか、今、本当に政策の転換を行う勇
断がもっとも求められている時期ではないのだろうか。

◆政策の方針転換を求める神奈川アピールについて
平成11年3月8日
川崎市長 高橋清

 お手紙拝見しました。
 川崎市では、長引く景気低迷などを背景として、かつてない厳しい財政運営を強いられています。そうした中でも、市民生活最優先の原則を堅持しながら、より成熟した社会をめざし、前向きに臨んでいく姿勢が必要であると思います。
 このような環境の中で、いただいたご提言につきましても、都市運営の効率的な運営に取り組み、変えるべきは大胆に変える、という決断と勇気をもって、川崎の新時代を築いていきたいと思います。
 なお、個別事業に関する要望についてですが、本市では、川崎縦貫道路が関係する事業かと思います。
 当該事業は■一般的な都市形成、■市内交通の整序化、■生活環境の改善、■業務核都市育成、などの役割を担うものであり、21世紀の本市のまちづくりの骨格となるもので、市民生活の利便性向上を図り、本市の調和のとれた発展を支える交通体系の形成のためには不可欠である、と考えております。
 今後とも、市民の皆様のご理解が得られるよう努力してまいります。
 

◆大規模事業の見直しと環境重視政策について
平成11年4月6日
横浜市長 高秀秀信

 さきに要望のありましたことについては、第10項が横浜市政に関係しますので、このことについて次の通りお答えします。
 横浜市では、市の総合計画である「ゆめはま2010プラン」において、緑あふれる街づくりを目指し、緑地や農地の保全、公園の整備、緑化などを推進しています。
 さらに、平成9年には「横浜市の基本計画」を策定し、市民、企業、行政が一体となった緑の街づくりを目指しています。
 
 日本カーリット工場跡地周辺の市街化調整区域の緑地については、横浜市における緑の拠点の一つとして、保全したいと考えています。
 緑地の保全にあたっては、土地所有者や地域の皆様のご協力をいただきながら進めていきたいと考えています。
 また、日本カーリット工場跡地の開発計画については、環境影響評価の審査の趣旨を踏まえ、周辺環境と整合を図るよう指導していきます。
 以上ですので、この旨ご了承いただき、貴会の皆様によろしくお伝えください。