環境連続講座1999「ゴミと環境保全」
ゴミの再利用  プラスチックを中心に
惣田イク夫

 私は、微生物が専門ですが、今日は、ゴミ問題についてがテーマですので、ドイツの廃棄物については現地で調べてきていますので、ドイツと関連させながら話します。

◆ゴミ問題はプラスチック問題

 ゴミの問題はプラスチックをどう処理するかにかかっていますが、結局良い方法が見つからなくて先が見えないまま研究しているという情況です。日本の場合は、抜本的には法律体系を変えないと難しい。一般廃棄物と産業廃棄物を別々に処理しているようでは基本的に無理だという気がします。1996年の法律改正時にいろいろ言ったんですが骨抜きにされたという苦い経験があります。
 プラスチックの生産は、世界の80%弱が先進国で生産し、世界中に輸出しており、先進国の問題ということもできます。(表1)
 また、日本の需要別比率に問題がある(表2)その中でも塩化ビニールの問題が重要です。もともと堅いものを柔らかくしている、それは可塑剤が入っているからなんですね。それが玩具に多く含まれていることの問題が大きい。
 さらに、水道管に使われている。鉄管から変わったことの利点も多いが、問題も残される。農業用にも使われているが、安くて丈夫だし、可塑剤のなかの環境ホルモンが流出しないかどうか、わからないんですね。でもこれが無くなったら日本の農業生産に大影響をもたらすことがあきらかなんです。医療用で使われていることの問題もあるし、こうした特殊の使われ方をしているんですね。だから、代替をといっても何を使ったらよいか難しいというのが実情です。

◆プラスチック生産物はストックされない

 プラスチックは生産されたうちの60%くらいがその年にゴミになってしまう。ストックされないことが特徴のひとつである。本当にすぐにゴミになってしまう。例えば、学校で小型焼却炉が使われていることが中止された大きな理由は、学校では塩ビ製品が多いんですね、消しゴムです。だから、ここで燃すゴミからダイオキシンは排出されることになるんです。それで、廃止になった。
  いまペットボトルが増えていますよね、外国では禁止しろって言われているのに、逆に作ってしまうのが日本なんですね、全体の4.9%くらいでしょうか、これからの推移が気にかかります。いまのポリ容器を再利用すればよいというけれど、それにはたいへんコストがかかるんですね。最終的には、石油資源が枯渇するまで待つしか手はないなんていうのは悲しい話ですよね。
 今の段階ではみんなゴミになってしまいます。リサイクル率は低いですね。プラスチックの50%以上が焼却されているのが実情です。

◆処理方法の問題
 
  ゴミの問題は最初の段階で分別するしかない。私は昔、実験的にこれをやったんですが、きちんと分別すれば処理できるんですね。外国はこれをやっている。ドイツのようにきちんと分別をやることが重要だと思います。DSDを作ってシステム化し、
生産者責任でやらせています。
 日本とドイツのゴミの量は大体同じで年間5000万トンくらい。そのうち焼却率74% ドイツは25%ですね。スウェーデンではゴミの量が違いますが焼却率は55%ですね。神奈川県と同じくらいの人工規模でしょうか。でも、神奈川県は90%以上が焼却ですね、すごい割合です。
 農業で生きていく国はゴミを燃させないですね。オランダは23%くらい、できるだけ燃させない、ダイコキシンによる汚染に非常に気を使っています。日本では処理するのがいちばん簡単だから燃してしまう。医療廃棄物 は別に処理しています。ごみ処理の良い方法として固形化燃料(RDF)が一番いわれているんですが、ゴミを乾燥させなければいけない。そのためには600度以上の温度が必要になってくる。そうなると、ダイオキシンが出てきてしまうことがあります。そのうえ、塩化ビニールには可塑剤が入っているんですね、ハウスシック症候といわれるような、いわゆる環境ホルモンが物質が発生する。いたるところに飛ばしてしますことになるんです。結局、固形化燃料(RDF)を燃すとなると、大型の処理場でないといけない、小型のものでは無理でしょうね。そうなるとなぜ作るんだということになってしまう。
 油化という処理法もあるんですが、なかなか難しい技術のようです。もうひとつは、高炉で燃したらどうかという案もあります。ダイオキシンの出ないような技術ができてきており、高炉で焼却してエネルギーに替えるという方法はあると思います。新しい施設を造くるよりも夜中に運んで焼くというのもあると思うんですが、法的な問題があるように聞いています。再利用のために技術開発しても、高い金使って再利用を考えるより作らない、使わないほうがいちばんいいと思うんですが・・。

◆再利用より作らないこと

 リサイクルが大変なら、プラスッチックの使い方を考えることが、はじめの対処法ですね。なにしろプラスチック製品をできるだけ使わないようにする。ご存じのように、日本ではまだ普及していないが、買物の際には自分で袋を持っていくのは、ヨーロッパの先進国では常識になってきていますよね。日本だって昔から風呂敷があるじゃないですか。
 外国では、再利用というより作らないというのが思想になっていますね。無駄を省くことが第一なんですね。日本でも、法律には一応は入っているんですが、本格的に考え直していく必要があると思っています。
 
◆環境ホルモンへの対応
 
  内分泌撹乱化学物質、いわゆる環境ホルモンが話題になっていますが、このような作用を持つ物質とされた化学物質が可塑剤として塩化ビニールには多く使用されている。なかでも、フタル酸ジ(2ーエチルヘキシル)は多量に可塑剤に使われて、この
物質の汚染が世界的に広がっている。特に、こうした環境ホルモンが飲料用の水に入ったらと思うと、これを取り除くことは無理なんですね。だから、水を汚染させたらもう終わりなんです。世界的にみて、禁止や削減に取り組んでいるが、日本では対策が遅れているんですね。それと、日本の場合はゴミの不法投棄が大きな問題になっています。これをとめる法的な手立てが弱い。日本でもっともっと有害化学物質の管理をする必要があることは大きな声でいわないといけない。

◆代替が可能か

 塩ビの代替品があるかというと、コストのことを気にしなければあるんですがね。ただ、代替の限界があるようだし、医療品のように使わざるをえないところもある、だから使い分けるしかないと思う。少なくとも玩具みたいなものは木で作るとかをもっと普及させる必要がある。
 また、プラスチックの成分の何でできているかわからないことが多い。原料表示を守らせることが第一ですね。それをみて利用者が使い方を考えることですね。同時に、プラスチックの成分の見分け方と処理方法をもっと普及させなければならない。
 でも、回収するシステムがないから、交告先生の話のように、そのシステムを社会が作っていく方向にいかないといけない。外国では技術も進めながら全体として排出量をへらしていくように法律化していくようですね。

◆解決の方策

 解決策にこれという方法が無いんですね。ドイツの場合をみると、DSDを導入したときに、まず学校教育に環境問題を取り入れる、10年先に効果が表れることをめざしている。そのときにシステムが機能すればいいんだということがあります。本腰いれて国民がゴミを考えているかどうかなんですね。日本ではまだまだみたいだが、ドイツでは産業界を巻き込んで200回も討論したそうで、ゴミ処理を産業化することによって雇用も増やせることがわかったそうです。
 国民的な合意ができている、官僚もえらいけど、国民も承知しているわけです。私がドイツで官僚に「こんな厳しい法律を施行できるのか」と聞いたところ、いい法律を作るのは官僚の責任で、それを国民が守るのは当然だと話していました。
 国民の価値観をどのようにしていくか、自分たちの生活スタイルをどうしていくか、日本でも急がなければならない問題だと思います。
 それと、日本では、ゴミ処理の問題は外部不経済になっていることが一番の課題です。これからは生産から処理までを内部に取り込まなければならない、外国では内部に取り込んでいる。日本でも、生産するときに処理することまで考えて作らなければ
ならない。安ければいいという時代ではないことをもっと真剣に考えなければならないと思います。

     ★DSD については、会報13号、北山雅昭:ドイツにおける廃棄物処理と市民生活 、をご覧下さい。

★質 議

Q  ペットボトルを集めて生産者に返すようになると、最終的にコストを考えるようになりゴミは減るのではないか。
惣田 ぼくはそれだけでは、発生抑制にならないと思う。大事なのは計画性であって、管理してリサイクルできる仕組みを作ることが第一だと思う。集めさせてもゴミは減らないんではないか。もっと本質的な議論をしていくほうが大事だ。日本はプラ
スチックを使いすぎだと思う。いまの半分にしても生活の快適さは守れると思っている。それを具体的に示す必要があると思っている。日本のエネルギーをどうしていくか、もっと議論を広げて、市民は役人に政策を突き付けていくことが必要だと思って
いる。
                                                          (於1999.4.10 神奈川県民センター)
 

そうだいくお 神奈川県環境科学センター専門研究員(農博)専門は環境工学、廃棄
物処理(環境ホルモン、ダイオキシン対策、有害物の微生物処理)
連絡先  神奈川県環境科学センター 〒254-0072平塚市中原下宿 842