かながわグリーンネット「環境講座−1998.4」

 

ドイツにおける廃棄物処理と市民生活
−廃棄物処理法から循環型経済創出への動きを中心に−
 
北山雅昭

 

 

■なぜ、廃棄物処理−ゴミ問題に関心を持ったか

 私は専門が今日のテーマである廃棄物ではありません。専門は民法で、民法の中でも公害が発生した場合に、その被害を受けた被害者が自分に発生した損害を加害者を相手取って賠償請求をする。あるいはこれから開発が行われようとしている場合に、その開発が行われると自分の権利が侵害される。もしかすると病気にかかるかもしれない。そういう場合に開発事業者を相手取って、その開発行為に差し止めをかける、ストップをかけるという訴訟制度です。これが私の専門です。

 なぜ廃棄物の問題に興味を持ち出したかといいますと、ドイツで、自分に発生した損害について加害者を相手取って賠償請求をする。生態学的な意味での損害、自分の土地の植物が枯れた、あるいは自分の持っている山の動植物に損害が発生した。こういう被害についても加害者を相手取って賠償請求ができるという制度を新しく作りました。この制度を調べていく途中で、自分の持っている土地上の自然に一定の被害が発生した。その賠償請求をするといっても、その賠償額をどんなふうに算定するのかがまずわからない。算定をして賠償を相手から取ったところで、そこで支払われた金額で本当に被害者が自分の持っている土地上の自然を復元、回復させるようなかたちでお金を使うのかどうかは保証がないわけです。その部分をドイツではどう解決しているのかを調べようと思って、ちょうど3年前にドイツのトリア大学に行って1年ほど研究をしていました。

 

 ゴミ問題を調べてみようかなと思うきっかけになったのは、トリア大学の学生生活の様子なのです。向こうの学生は、鞄を持って大学には勉強しに来る。この鞄の中にミネラルウオーターの 1.5リットル入りの瓶を突っ込んで歩いている。本当に分厚いガラスでできた瓶ですが、喉が乾いたときにはそれを飲みます。最近日本の学生を見ていると、 200mlとか 500mlというペットボトルの水を持って飲んでいる。大きな差があります。

 もう一つ、日本の場合は、町の中を歩いてもどこにでも自動販売機があります。何か飲みたいと思うと、自動販売機で買ってすぐに飲める。ドイツの町の中は、自動販売機というのがまずありません。トリアという町は十数万の人口の町ですが、町の中、その周辺で自動販売機を私が見たのは1台きりです。ガムの小さい自動販売機を1台見ただけで、もちろん大学の中にもないのですが、大学の食堂の横にコーヒーの自動販売機が置いてあります。お金を入れて自分で持ってきたコップをおいて、それでボタンを押してコーヒーを出す。紙コップが横にあるというような自動販売機ではありません。だから学生はミネラルウオーターのごつい瓶を鞄の中に入れて歩いて、鞄の外側にデイパックなんかを持っている学生が多いのですが、自分のコップをぶら下げて歩いています。日本人の学生から見ると格好悪いと思うのか、あるいはむしろ今風というか、リサイクルのことを考えた行動だと思うのか。とにかくドイツの大学の中でそういう学生の行動を見ていて、非常に関心を持ちました。

 

■環境問題へのアプローチ

 日本の今年成人した若者に、いまの環境の状態、あるいはこれから環境問題はどうなっていくのかというアンケートをした結果がつい最近朝日新聞に報道されていましたが、非常に危機的だ、破滅に向かっていると思っている学生が6割ぐらいいるらしいのです。いつごろその破綻が起こるのか、もう住めないような状況になると思うのかというと、自分の子どもの孫ぐらいにはおそらく地球は住めないような状況になるだろうと思っている。そう思っている若者が、それでは自分は環境保全のために何か苦労をする心構えがあるか。環境保全のために少しぐらいの支出、場合によっては給料から少し差し引かれるようなことがあってもいいかというと、数パーセントの人だけがそれでもいいと思って、圧倒的多数の若者は、それは困ると思うわけです。

 環境問題は非常に深刻だ、自分の孫の代にはもう住めないような状況になるかもしれないと思っていながら、月々の給料からわずかでも引かれるのは困るとか、自分が時間を割いてさまざまなボランティア活動に参加することは遠慮するというようなアンケート調査が載っていました。

 今日もそうかもしれませんが、こういう環境問題を取り扱ったシンポジウムの集まりの場に、参加されている方の年齢は熟年世代といいますか、それ以上の世代の方が多い。若い人を見掛けるというのは少ない。ドイツの場合には逆に環境保護運動とか市民運動の中心になって支えているのは学生を中心にした若い層です。この開きは非常に大きいと思いました。

 ドイツの場合を見てみると、ブントという自然保護環境問題を取り扱っている団体が最大の環境保護団体です。各州、各市、大きな市になると支部を持って活動しているドイツの全国組織です。これがだいたい40万人から50万人の会員を抱えている。もう一つその次に大きいのでグリーンピースというのは国際的に有名な団体ですが、グリーンピースの会員になっている数がだいたい30万人ぐらいです。年間会費が5000円ぐらいで、それを払って会員になっている数がそのぐらいです。それが自然保護団体の財政基盤を支えて、独自に研究者等を抱え、あるいは研究者に研究を委託する。

 そういうような活動を非常に活発にやっています。こういう市民に支えられた財政基盤を持った団体が活発に活動している。非常に大きな違いを感じました。そのドイツの中で学生の行動あるいは市民生活の中で廃棄物に対する関心の高さを感じたというのが、廃棄物の問題を調べてみようかなと思った一つのきっかけです。

 もう一つは、私の勤めている早稲田大学には10年、20年ゴミの問題を研究しているという方が何人かおられます。こういう方は国の廃棄物関係の審議会あるいは研究会の常メンバーといってもいいような活動をされています。そういう方たちが、あちらこちらの審議会・研究会で、特に家庭廃棄物についての提言を出されていますが、それを見るとちょっと納得できないという部分が多々あります。

 いま私の最大の関心は、家庭から出る廃棄物を減らすために、家庭廃棄物を有料化しようという動きがかなり進んでいることです。最近出されている審議会・研究会の提言を見ていると、家庭廃棄物の有料化の方向で提言を出しています。有料化されると少しは各家庭から出るゴミも減るだろうという考え方でしょうが、そううまくいかないだろうと思います。

 有料になったからといってゴミを出さないようにできるかというと、まず買ってくる商品にゴミになるようなものがすでにくっついています。それを出さないわけにはいかないし、せいぜい買い物をしたときに買い物袋は要らないとか、本を買ったときに、その袋は要りませんということが言えるぐらい、あるいは乗っている自動車を少しは長い年数乗ろうとか、家具だとか電化製品の買い替えを少し思いとどまろうと思えるぐらいです。ところが毎日企業のほうは宣伝で自動車のモデルチェンジをやるし、新しい製品の宣伝はバンバンやる。消費意欲、購買意欲を煽るようなことを一方でやりながら、家庭からゴミが出ないようにするために有料化しましょうというのは納得がいかないのに、なぜそんな提言を繰りしているのか。大学の中で一度聞いてみようと思っています。

 

■ドイツにおける廃棄物を取り巻く状況

 最近日本でもドイツの廃棄物の問題がよく報道されていて、ゴミの問題でも、先進国だというかたちで取り上げられています。その実態、背景、特にそれを包み込む法制度について調べてみようということで始めたところです。

 法律の話に入る前に1年ほど生活をしていた中で体験したことをいくつか紹介します。まず買い物に行くときには袋あるいは買い物篭を持ちます。私も子どもの頃には、母親が買い物をするときには網で編んだような買い物篭を下げて買い物に行っていましたが、ドイツでは買い物篭というのが必要です。買い物篭でなければ、最近日本でもよく見る布の袋です。こういう布の袋を持っていかなければ、スーパーやお店で袋には入れてくれないわけです。日本だと黙っていてもレジのところへ来ると買い物の量に合わせて、あるいは量以上にビニールの袋を入れてくれますが、ドイツの場合はそんなものは入れてくれない。何も持っていかなければすぐレジの横で、日本のスーパーでくれるようなプラスチックの袋を売っています。日本円でいうと一つ50円ぐらいで買わなければならない。

 スーパーの中の様子もだいぶ違います。ときどき日本でも紹介されますが、野菜だとか果物はそのまま積まれて売っています。日本だとトマトが1個だとか2個をトレーに乗せてきれいにラップでくるまれて売っていますが、ラップも何もありません。そのまま売っている。バナナは買うときには横に置いてある篭に入れて、秤が置いてあります。日本だとこんなにたくさん要らないと思っても、1房いくらで売っていると買わざるを得ないのですが、ドイツの場合は自分のほしいだけ、1本なら1本、2本なら2本を房から取って秤の上に置いて、バナナのところのボタンを押すと横からレシートが出ます。それを買うバナナにくっつけてレジに持っていって買う。こういう購入の仕方をします。

 ジュースとかビールにはすべて預託金、デポジット制です。普通の 1.5リットルぐらいの瓶だと60円から70円ぐらいがあらかじめ上乗せされています。家で飲んで、それがたまったらまた袋に入れて持っていけば、レジのところでそれを精算してくれます。あらかじめその商品が売られている段階からゴミにならないようなかたちで商品が販売されています。

 そうはいっても家の中でいろいろゴミは出ます。このゴミを捨てるについてどんなふうに各家庭でやっているか。ドイツの場合には日本ほど住宅事情が悪くありませんから、それなりのスペースの家にみんな住んでいます。その家の入口のところに物置があります。そういうところに何種類かの袋が配布されています。その袋にそれぞれゴミを分別して入れて、回収の日に外に出さなければならない。

 集合住宅の場合だと集合住宅の外の収集場所のところに、コンテナ3種類から4種類置が置かれており、それぞれ蓋がある。それぞれこのコンテナには新聞やダンボール類を入れなさいと絵で描かれています。ここには生ゴミを捨てなさい。こちらのものには金属類を捨てなさい。別に袋が配布されて、そこにはグリューネプンクトという緑のマークの付いたものを捨てなさいとなっていて、ドイツのどこの市もおそらくそうだと思いますが、通常4種類から5種類ぐらいの分別を行うことになっています。

 それをみんながきちんとやる。各家庭でその分別に気を使ってちゃんと分別をする。もし分別をしないで出していると、私の住んでいたところだと、隣のおばさん、大家さんが文句を言います。どういうふうに分別をするのか、何はどこに入るのかということが載った冊子が各家庭に配られていて、それを持っておばさんが家に来ます。それでページを開けて、これはここに捨てるんだよと、親切に教えてくれて、ちゃんと分別をしなければならないという意識が各家庭まで浸透していることを学びました。

 

■ドイツの法制度

 ゴミ問題に対する意識が高いから、そういうことが行われているという面も否定できないと思います。しかしそういう環境意識を側面から支え、促進する制度があります。あるいはそういう高い環境意識があるから法制度が成立し得ているという相乗効果という面があるとは思います。その分別がきちんと行われるというような法制度、あるいはあらかじめゴミにならないような商品の生産販売が行われている法制度について少し見てみようと思います。

 ドイツは各州で州の自治が徹底していますが、72年に連邦レベルで初めて「廃棄物に関する法律」が制定されました。これ以前は各州あるいは自治体の条例で廃棄物に対する制度が整えられていました。法律の名前を見てもらうと、72年、76年に改正されましたが、廃棄物の処分という言葉がまず出てきます。86年になると「廃棄物の発生抑制及び処理に関する法律」、廃棄物の発生抑制というのが法律の名前の頭にきています。さらに94年の法律になると「循環型経済の促進及び環境と調和した廃棄物処理の確保に関する法律」、通常日本で循環経済法だとかリサイクル法というふうに呼ばれている法律です。

 この法律の名前でもわかるように、廃棄物の処分というところに重点を置くのではなくて、廃棄物の発生を抑制しなければならない。抑えなければならないというところに廃棄物法制度の重点が大きく移行してきています。さらにいま目指されているのは、この廃棄物問題を一つのきっかけにしてさまざまな自然資源を消費するのではなくて、この循環を考えるような経済社会を構築していこうという方向に大きく踏み出しているというのが、ドイツの法制度の流れです。

 一つの転機になったのは86年の法律です。ここでいままでの大量生産、大量消費で出たゴミをどう衛生的に、かつ環境に調和したかたちで処理をするのかという考え方から、ゴミを出さないように、資源の循環ということを考える方向に大きく転換をさせる契機となった法律です。その後「包装廃棄物の発生抑制に関する命令」によって、この法律の理念が一部実現施行された。さらにそれを全面的に展開するために制定されたのが94年の「循環経済法」という法律です。

■ドイツのゴミ処理の現状

 法律の仕組みの話に入る前にドイツのゴミの状況ですが、日本と比較してどれぐらいのゴミがこれまで発生していたのかを紹介しようと思います。家庭から出るゴミ、あるいは小さな食堂から出るようなゴミを合計したゴミの発生量をグラフにしたものです。80年代はこういう状況にあったということで見ていただきたいのですが、ゴミの量はそう変化はありません。経済の状況によって、経済が好況に向かうとゴミの量が増える。日本も同じですが、その程度の変化で推移してきて、家庭廃棄物といわれるのが2200万tから2400万tぐらいの量です。日本で去年、一昨年あたりの家庭廃棄物は4000万から5000万tぐらいです。こちらのグラフは1人あたりに換算するとどれぐらい1年間にゴミを出しているのかというグラフで、80年代のこのあたりを見ると、1人あたりで 374kg、 350kgから 400kgぐらいのゴミを1年間1人あたり各家庭から出しています。これも日本と比較すると、日本でも年間 400から 500kgぐらいのゴミが昨年あたりでも出ているということで、80年代のドイツを見ると日本と比べて、そう大きな違いはないくらいのゴミの量が発生していました。

 こうして出るゴミを従来どういうふうにドイツでは処理していたのかということで、二つの地図を見ていただきます。これは東西を合わせたドイツです。たくさん印があります。この印は廃棄物の埋立処分場です。埋立処分場がドイツにはこんなにたくさんある。もう一つ、これはドイツの廃棄物の焼却処分場の数です。焼却処分場の数が現在は50カ所ぐらいの数しかありません。ドイツの場合に廃棄物をどう処理するか、あるいはどう中間処理するかというと、もちろん水を除いて乾燥させるという中間処理もありますが、焼却処分をするという比率は非常に小さい。廃棄物の対象の取り方によって、廃棄物の種類によって違いがありますが、8%から20%ぐらいが焼却処分に回されているだけです。ほかはすべて埋立処分に回されていました。

 ドイツにはそういう国民性があるのかどうかはわからないのですが、大気の保全というのに非常に神経を使ってきたといわれています。特にルール工業地帯から出る煤煙が非常に大きな問題となった歴史的な経過もあって、ものを燃やすということに対しては非常に神経質です。先ほどドイツの連邦レベルで72年に初めて法律ができたと言いましたが、それ以前には各州、それから市(10万人規模以上の独立市)のレベルで廃棄物の処分が担当されていました。日本の場合には市町村で、町村も廃棄物についての処分の権限を持って処理していますが、ドイツの場合にはそういう処分はさせません。クライスというのは郡ですが、いくつか小さい市町村が集まって郡を構成していて、郡政府が廃棄物の処分の権限を持っている。あるいは10万人以上のボンだとかケルンだとか、大都市については廃棄物の処分の権限が与えられていますが、小さなところには与えられていない。小さなところでは発生してくる廃棄物の処分のノウハウあるいは資金的な裏付けが不十分だということで、法律で72年法ができる以前から、そういう権限の分担が決まっていました。

 

■廃棄物処理は自治体が

 各自家庭で発生した廃棄物についてはすべて担当する自治体に委ねなければならない。自分の家で処分することは禁止されています。例外的に生ゴミの場合には、各家庭の庭で肥料づくりのために地面に埋めるということは部分的に小規模には認められていますが、それ以外の家庭から出るゴミはすべて自治体の処分に委ねなければならないというのが原則です。

 日本の場合を考えてみると各自治体の処理能力には限界があって、最近まで一生懸命市町村がやっていたことは、各家庭での自家処理です。それぞれの家庭でできるだけ処理してくださいというので、補助金まで出して焼却炉を買ってくれと推薦していました。いまはそこからダイオキシン等の有害ガスが発生していることが明らかになって問題になっています。

 ドイツの場合には各家庭でゴミを燃やすことは禁じられていたという経過もあります。それで廃棄物の焼却処分場は非常に少ない。焼却処分場についてはすべて一定規模以上の自治体が運営しています。自治体以外に各家庭から出るゴミを焼却処理することは認められていません。すべて自治体によって運営されています。運営されている焼却処分場の施設基準については度重なって規制基準が強化されてきていて、ダイオキシンに代表されるような有害物質の排出についての基準は非常に厳しくなってきています。厳しい基準をクリアするためには各自治体で費用がかかります。この費用を賄うために各自治体は、ゴミの収集処分については有料化し、各家庭からお金を取っています。処理手数料は、70年代の後半から80年代の末にかけて10倍ぐらい上がっています。市によって違いますが、だいたい年間4万円から5万円ぐらいといわれています。それだけのお金をかけて、施設基準をクリアするかたちで焼却処分場は維持されています。

■リサイクルの状況

 それでリサイクルはどうだったのか。これも原資料そのままで申し訳ないのですが、製紙企業等で紙を生産する段階でどれくらいの古紙が利用されているのかという利用率で、80年代を通じてだいたい30%の後半から40%の古紙利用率が維持されてきています。ガラス類のリサイクル率を見ると特にガラス容器のリサイクル率は80年代からずっと上昇して、90年あたりから急上昇しています。75年の段階で見ると、ガラス容器で総量として利用されているうち古いガラス容器、リサイクルされているものの率はわずか8%でした。それがずっと上昇してきて、91年の段階で55%に達していた。この80年代の後半から、86年に発生抑制をメインに掲げた法律が登場して、リサイクルしなければならないという方向が示されました。それによって各飲料メーカーもその対策を立てていったという結果がリサイクル率の上昇になって表れてきました。これをさらに引き上げようということで出されたのが「包装容器発生抑制令」という政令です。

 廃棄物の処理には厳しい基準が設定されている。それをクリアしなければならないために、ゴミの処理手数料は非常に高額になってきた。それと80年代の途中まで西ドイツの場合には海外にかなり大量にゴミを輸出していたということがあります。東ドイツを経由して東ヨーロッパにかなりの量を輸出していた。あるいはフランスを経由して北アフリカのほうにドイツのゴミを輸出というか、買い取ってもらって持ち出されていた。それがロンドン条約とかヘルシンキ条約といった、いくつかの条約を通じて域内処理、すなわち、それぞれの国で出たゴミについてはそれぞれの国で処理しなければならないことになったのです。原則としてヨーロッパ同盟、ECの中で出たゴミはECの外に出してはならないという条約を各国が寄って取り決めた。だから従来のように外にももう出せなくなったのです。

 

■ドイツ環境情報法の公布

 国内で処理するためには非常に厳しい基準をクリアしなければ処理できない。市民運動が非常に盛んな国ですから、どこかに埋立処分場を建設する、あるいは焼却処分場を建設するといっても、市民運動がそれに待ったをかける状況になりました。そういう処理困難な状況に拍車をかける法律が一つできています。

 1990年に環境情報法という法律ができています。環境にかかわる情報の公開制度ですが、この環境情報法は、特に環境にかかわりのある開発行為等について厳しい情報公開を求めた法律です。二つの点で従来の情報公開の制度を越える内容を持っています。

 一つは、従来だとある開発行為、あるいは建設計画等が打ち出された場合に、その建設計画、事業計画についての情報については明らかにしなければならない。特に開発予定地の市町村、地域住民には開発行為に対して公聴会等が開かれなければならないという制度がありました。それを一歩越えて、その計画が立てられるに至った基礎データの公開も求める内容を、環境情報法が定めました。つまりある事業計画を立てるにあたって、その前段階の行政の内部での検討があります。一定の焼却処分だと焼却処分をしなければならないという判断に至る段階でどういうことが検討されたのか。建てるについてどこが対象候補地として、代替地として検討されたのか。なぜここというふうに立ち至ったのか、という基礎的なデータについてもすべて公開しなければならないということを定めている。

 もう一つは、だれがその情報の公開を求めることができるのかということです。これはその地域住民、あるいは地域の自治体の住民でなくても、だれでもいいと拡大しました。直接その地域に住んでいてその開発が行われると、自分の健康等環境に影響が及ぶ住民でなくても、あるいは人でなくても、環境保護団体にも情報公開を求める権利が与えられています。情報公開というのはだれに対しても、基礎データを含めた情報の公開を求める権利を承認した制度です。

 こういう制度が出てきたために、いっそう廃棄物の処分場の確保は困難になってきました。廃棄物の発生した後の処分ではなくて、そもそも発生しないようにする根本的な対策を立てざるを得ない状況に追い込まれたというか、自らを追い込みました。そういう中でいくつかの画期的な転換を示すような政令、法律が登場してきています。先ほど上げた包装廃棄物の発生はドイツの場合、各家庭から出るゴミのうち、容積にして50%は商品についている包装廃棄物だということで、まず廃棄物の発生量を減らすためには包装廃棄物の発生を抑えなければならないということで政府の命令、政令を定めました。

 

■包装廃棄物発生抑制の政令の公布

 包装廃棄物発生抑制の政令の要点をまとめてみると、まず1点は、包装材の容積、それから重量を最小限にする。2点目に、包装材は可能な限り同じ商品に再利用する。3番目に、同一商品での再利用が不可能な場合には素材として再利用するという原則を立てました。包装廃棄物の回収、分別、さらにリサイクルを生産、販売事業者に義務づけるという方向を打ち出しました。ここでいう包装廃棄物は日本の容器包装リサイクル法とさまざまな点で比較できますが、まず包装材とは何を指すかです。おおまかにいって3種類上げられています。

 一つはさまざまな商品が生産事業者から販売事業者、あるいは卸店から小売店に運ばれる段階で使用される包装材があります。大きなダンボールとか、商品を傷つけないように木の枠、あるいは発泡スチロールなんかが使われます。こういうものが包装材に入ります。生産者から販売、消費に至る過程で輸送に使う廃棄物です。

 それから化粧包装材です。商品の化粧のために使われるようなパッケージです。チョコはそのまま売っていませんから、銀紙で包んで、さらにそれが10個か何個か入って箱に入っている。その上に日本の場合だとセロハン、ビニールでくるんでありますが、こういう化粧包装材ももちろん入ります。それから商店が消費者に商品を手渡す際に必要などうしても入れなければ商品を販売できないというような容器です。

 こういうすべての包装材が対象になっています。日本の場合には飲料用のガラス容器、ペットボトル等に限定して容器包装リサイクル法が去年の4月から施行されましたが、そういう限定をしていない。非常に広範囲な包装材がここで対象になっていて、その包装材の容積、重量を最小化する。できるだけリサイクルをしやすいものにする。リサイクルも同じものに再度利用できるようなかたちにしていこう。その責任はどこが起点になるのかという問題ですが、起点になるのはやはり生産販売事業者だと位置づけた政令です。この義務づけの部分も日本の容器包装リサイクル法とは大きく違います。東京都が最初回収・分別も事業者にというふうにかなり強引に押しましたが、国の法律ではそうはならなかった。きちんと分別してリサイクルしやすくしてください、それを生産者がリサイクルに回します、というところにとどまっています。

 

■DSD社の設立

 ここで大事なのは、生産販売事業者に義務づけられた。義務づけられた事業者はこれをどう収集し、分別し、リサイクルに回すのかということですが、自分で全部やらなければならないというのが、ここの政令の原則です。たとえば、日本でいうと森永が作ったチョコの箱は、森永が自分で各家庭から回収してリサイクルしなければならない。ソニーが販売したものは全部ソニーが回収してリサイクルしなければならないというのを原則として規定しているのがこの政令です。考えてみても、各家庭を個別のメーカーが回って、それぞれ自分のところの商品を回収するのは不可能です。そこで設立されたのがデュアル・システム・ドイチェランド、DSDという会社です。

 この会社は 600社が出資して、約 300万マルク、つまり3億ほどのお金を積み立てて出発させた独自の回収・分別・リサイクルを行う会社です。自治体の回収リサイクルのシステムと並行して、独自に包装材について行うのでデュアル、並行して行うという名称がつけられています。ここが回収し、分別し、リサイクルをすることになりました。


リサイクルをするにあたって自分のところですべて回収し、分別し、リサイクルしなければならないですから費用がかかります。その費用を賄うために作られたマークがグリューネプンクトといわれているマークです。包装材については各メーカーがあらかじめその商品のパッケージにこのマークをつけておかなければならないわけです。各家庭ではスーパーで買ってきた商品の廃棄物、ゴミでマークのあるものはマークのあるものだけを分別して黄色の袋とか黄色のゴミ箱といいますが、ここに全部入れなければならない。それに入れて1週間に1回か2週間に1回、DSD社の回収車が来ます。それで独自に回収をするシステムを取っています。各生産販売事業者が、自分のパッケージにこのマークをつけなければならないのですが、このマークをつけるにあたって各生産者がDSD社と契約を結びます。自分の商品についてこのマークをつけるから、これはDSD社の回収システムを使って回収・リサイクルしてくださいという契約を結びます。それで各生産者はDSD社にこのマークの使用料を払います。

 マークの使用料はどのぐらいの金額が支払われるのかというと、一つの例ですが、プラスチックのカップに入って、上にアルミの蓋がしてあるようなヨーグルトの入れ物です。このプラスチック部分の容器と上のアルミの蓋と別々に算定されます。ヨーグルトのプラスチックの容器の部分については、1個あたりだいたい1円95銭、2円ぐらいかかっています。 200mlぐらい入った小さいヨーグルトのパックですが、アルミの蓋の部分については8銭ぐらいの費用がかかる。それでそれぞれの素材について算定されるだけではなくて、容器そのものの重量、重さについて基礎額として2.03円ほどかかってきます。この場合はトータルで3円弱ぐらいの費用がかかります。

あらかじめメーカーはチョコのパッケージだったらパッケージに1個2円か3円ぐらいのお金×年間の生産量ということでDSD社にその分のマーク使用料を払います。そういうかたちでDSD社は各生産事業者からお金を集めて、独自の回収分別リサイクルの運営費にあてているというシステムを、包装廃棄物の発生抑制の政令で作り出しました。

 それでグリューネプンクトという緑のマークのついたものを各家庭で分別してくれなければならないのですが、環境意識が高いから分別するというところももちろんあるでしょうが、各家庭から出るゴミについて自治体で回収してもらおうと思うと全部有料です。DSDのシステムで回収してもらおうと思うと、これはただです。

 回収・分別・リサイクルについては生産者、販売事業者の責任でやる。責任というのは、その費用も負担するということです。だから各家庭についてはマークのついたものはただで回収してもらえます。ただで回収してもらえるから、できるだけ有料の回収の分を減らそうと思いますから、マークのついたものはちゃんと分別します。環境意識が高いだけではなくて、どっちが得かという経済的なメリットを考えて分別を行っているという側面もやはりあります。

 自治体が回収する場合には、各家庭が自治体と契約します。私の住んでいた場所ですと、うちの家は月何リットルのゴミが出る。だからこの60リットル入りくらいのゴミ箱でいいですとか、80リットルのゴミ箱が必要だ。その容量によって自治体と契約をして、その容量分が多ければ多いだけたくさんお金を払わなければならないというシステムが取られています。できるだけ少なくしようと思えば、きちんと分別してできるだけ減らして、小さなゴミ箱、安い費用を自治体に払おうというインセンティブが働いています。

 このシステムが動き出した結果、各自治体のゴミ処理の負担はだいたい4分の1ぐらい削減されたといわれています。包装廃棄物については出発してから今日まで、年間 100万tほどの包装廃棄物の減量化が実現しているということで、非常に大きな成果を生み出したということです。この成功をさらに大きく全面的に、廃棄物全体に押し広げようということで制定されたのが、先ほどの「循環経済法」という法律です

■循環型経済の促進

 この循環経済法の理念を一目でわかるようにというのでポスターをあちこちに貼っていますが、逆三角形になっていて、いちばん上の部分に大きく「廃棄物を回避しましょう」と書いてあります。廃棄物の発生を抑制しましょう。その次の段に「リサイクルをしましょう」と、2番目にリサイクルがきます。その下に小さな字で書かれているのが、「どうしても発生を防ぐことができなかった、あるいはリサイクルもできなかったものについては廃棄物の性格に合わせて、環境に適合したかたちで処分しましょう」と書かれています。

 循環経済法の理念を非常にわかりやすく示した図です。まず包装容器だけではなくて、消費社会ですから、ゴミというのは商品から出ます。あらゆる製品等について発生抑制というものを導入していかなければならない。あらゆる領域でリサイクルを推進していかなければならない。廃棄物問題を根本的に解決に導かなければならないということで循環経済法が制定されました。

 この循環経済法の中でカギになっている概念は生産者責任です。ちょっと詳しく見ますと、製品を開発、製造、加工および処理、あるいは販売するものは循環型経済の目標を実現する責任を負い、製品の製造および使用に際して廃棄物の発生を可能な限り抑制し、使用後に発生する廃棄物が環境に適合する方法で利用・処分できるようにしなければならないと規定されています。具体的には5点ほど上げられています。

 まず繰り返し使用できて、耐久性があり、使用後の再利用および処分が適法にかつ有害性のない製品を開発製造、流通させることがまず第1点目にうたわれています。簡単に壊れるような、すぐにゴミになるような製品を作っては駄目だということです。2点目に製品の製造に際しては再利用可能な廃棄物を優先的に使用する。紙を生産する場合には古紙を使う。古紙利用率あるいはリサイクリング率についてもこの法律の中で規定されています。3番目に環境に適合したかたちでリサイクル、あるいは処分できるように製品に含まれている有害物質をあらかじめ明記しておく。それから当該製品に返還再利用あるいはデポジットについて表示する。どういうかたちでリサイクルされるのか、あるいはデポジット制度が取られているのかどうかを、マーク等によって明記する。5点目に製品およびその使用後に発生する廃棄物を回収し、再利用し、処分する。これは先ほどの包装廃棄物に対して導入された考え方と同じです。廃棄物を回収し、再利用し、処分する。これを生産者の責任として規定されています。

 

■環境と調和した廃棄物処理の確保に関する法律と今後の動き

 この最後の点ですが、具体的にどういうかたちで回収し、リサイクルに回すのかということは政令、政府の命令に委ねられています。ただし回収方法等について、この法律が念を押している規定が置かれています。

 1点目は、一定の製品は返還できるものにかぎり流通に流すことができる。2点目は生産者または販売者は回収システムを創出、もしくはデポジット制度等適切な措置により一定の製品の回収、返還を確保しなければならない。ちゃんとシステムを整えなければならない。生産者、販売者が回収、デポジット等の制度、システムを作らなければならない。3番目に一定の製品については、生産者または販売者が引き渡し場所、または発生場所で回収しなければならない。日本の容器包装の場合もそうでしたし、家電についてもそうですが、それを回収するといってもどこで回収するのか。その場所を用意するためには、地価が高いですから場所が必要だ。場所は自治体のほうで用意してくれるのかという話にどうしてもなります。ここでは生産者の責任としてそこまで引き受けなければならないと書かれています。

 最後に4点目ですが、回収すべき廃棄物の回収、再利用および処分に要する費用を負担すべきものは政令で定めなさいと、規定がされています。ここの部分がドイツの緑の党、グリューネあたりからいちばん批判された部分です。そこまで考えるのだったら費用負担は生産者と明記しろと批判されたのですが、どうもこのあたりで落ち着いた。それはいろいろ状況を見ながら、最終的には生産者の責任として負担させることになるけれども、法律の次の段階に先送りされました。そういう部分はありますが、循環経済法が94年に成立をして、準備期間ということで少し時間を置いて96年10月から施行されています。96年10月に施行されて1年少したちますが、いくつかの成果がすでに生み出されています。包装材だけではなくて、さまざまなレベルですべての分野について生産者責任がまず明記されます。今後想定されるのは、いろいろな製品について生産者責任を具体化するような政令が打ち出されるぞと、生産者・販売者は予想できます。そうするとあらかじめ自分の生産工程、システム等をそれに合わせたような方向に持っていこうという動きがすでに作り出されてきています。

 それともう一つは、独自のシステムによる回収・リサイクルが定められたから、それにかかわる事業分野が新たに必要になってきます。さらにリサイクルというのが年度とリサイクル率、目標値まで設定されているために、技術開発が非常に迫られています。そのために各生産者を中心にして、リサイクルの方法の研究開発が非常に進んでいる。そのための技術者、そのための施設がまず必要になってきますが、そういうところへの投資がかなり行われた。ドイツ連邦政府の紹介によると、この間廃棄物分野において25万人の雇用が創出されたとうたわれていて、さらにこのリサイクルを国の重要な産業に育てていこうという方針を打ち出しています。

 ごく最近の動きだけ少し触れておきますと、去年11月に生ゴミについての政令案が閣議決定されています。ここからあとは循環経済法の理念を具体的に実現するために定められてきている政令です。生ゴミ命令というのは、各家庭から出る生ゴミをどうするか。自治体や何かがいくつかの州あるいは率先した自治体で、これを半分乾燥させて肥料として利用する。農地でまくという行為をやっています。ただしきちんと分別されて純粋に生ゴミでなければ、不純物が入っていると土壌汚染を招くということで、その基準を明確にする。さらに明確にするだけではなくて、コンポストを通じて生ゴミが肥料に至るまでのシステムを用意しようというのがこの命令案です。いまは 300万tから 400万tぐらい生ゴミが肥料化されていますが、これを3倍から4倍に引き上げようというのがこの命令案で意図されています。

 その次の今年4月1日に施行された廃自動車命令です。使えなくなった自動車は、日本の場合にはスクラップに回りますが、この廃自動車命令が施行されました。廃自動車命令は、廃自動車の引き取りとリサイクルを自動車の生産販売事業者に義務づけます。自分の乗っていた自動車を廃車にすると廃車届けを出します。日本でいうと陸運局です。廃車届けを出すにあたって、国が認定をしたリサイクル工場に自分の車を持ち込んだという証明書を、その認定を受けているリサイクル工場が出してくれます。そのリサイクル工場に自分の廃車にする自動車を持ち込みましたという証明書がなければ、配車の手続きができません。そういうシステムを作り出しました。もちろんただで自動車メーカー等がこれを引き取ってリサイクルに回さなければならないというのが内容になっています。

 それから4月2日に施行された廃電池命令も同じです。電池については独自の回収システムを用意して、無料で回収をしてリサイクルに回さなければならないというのが一つと、もう一つは水銀を一定含んだ電池の生産販売の禁止です。それから家電製品や何かにあらかじめ組み込まれたかたちで電池は使われています。そこで有害物を含んだ電池が固定されたかたちで家電製品等に使用されることを禁止する。だからどこにどういう電池が利用されているのかを明示して、それが簡単に取り外せるものでなければ使用してはならないということを内容にしているのが廃電池命令です。

 現在予定されていて政府のほうで命令案を作っているのが情報コミュニケーション機器というか、念頭に置かれているのはパソコンです。ドイツの場合も日本と同じでパソコンの生産販売台数はうなぎ上りに上っていて、それが廃品になる。いろいろな物質が、貴重な金属から有害物から、さまざまなかたちで利用されている。簡単にはリサイクルできないという状況があるので、この情報機器についてはリサイクルしやすいかたちで、いま上げたようにどこにどういう物質がどういうかたちで利用されているのかを明示し、それが簡単に取り外せるようなかたちで、リサイクルできるようなかたちで生産しなさい、生産されたものはさっきの回収・分別・リサイクルのシステムを生産・販売事業者が責任を持って行いなさいという命令をいま用意しています。こういうかたちで次々に先ほどの循環経済法に出てきた、一定の製品については生産者責任を果たさなければならないという、「一定の製品」が次々に特定されてきている。そういうかたちで循環経済社会の創出を目指した循環経済法が、いままさに動きつつあるというのがドイツの状況です。

 ひるがえって日本の状況を見てみると、どこの首を締めるというと人聞きが悪いのですが、どこをポイントとして押さえなければならないのかというところが肩透かしになっていて、うまくシステム全体が回らない。ドイツの場合、家庭ゴミは有料です。有料だけれども無料で回収するというシステムがある。そこの部分は生産事業者・販売事業者に責任を負わせるかたちで、有料化することをゴミの発生抑制、リサイクルの方向に誘導する一つの大きなインパクトとしてとらえて、それがうまく回るように責任をそれぞれ分担するシステムを作っています。そういうシステムを作らなければ、部分的に日本で真似をして導入してもなかなかシステム全体は動かないという気が、最近特にしています。

 

 

北山雅昭 きたやままさあき

1955年生まれ/早稲田大学教授/民法・公害環境法

著書:「ドイツ・ハンドブック」早稲田大学出版部、1997年
 

■質疑応答

−− 最近日本では産業廃棄物の不法投棄の問題が起こっていますが、ドイツではそういう問題は   ないのでしょうか。システム的な日本とドイツの違いがあるのでしょうか。

北山 ごく大雑把なことしか理解していないのですが、法制度で見る限り、やはり不法投棄の問題はなくはないようです。というのは非常に厳しい監視制度が年を追って整えられてきています。その裏側にはやはり不法投棄の問題があるのだろうと思いますが、なぜここまでなるまでだれも気づかなかったのか。放っておいたのかというような、日本で驚くような問題はないだろうと思います。

 自治体によっては農家というか、住民と一緒になって水の監視を通じて、廃棄物によって土壌汚染が進んでいないかどうかという監視制度を整えてきている。一方的に官庁が監視をするというのではなくて、ドイツの場合に最近はよく、自治体行政が事業者とか市民住民と共同して環境保全を図っていこうというシステムがいろいろなところで取られています。環境監視人の制度をとって、実際には農家の人がなっていますが、そういうシステムを作っていますので、日本のようになるまで放置されるということはまずないだろうと思います。

−− DSDのことですが、必ずしもうまくいっていないという話がときどきマスコミに出たり、   学者の人から出たりするのですが。

北山 DSDという独自の回収システムの会社ですが、これは出発した直後に財政危機に陥って、このシステムが破綻するのではないかといわれた時期があります。その原因はDSDの回収リサイクルシステムの運営資金はさっき言ったマークで賄われています。

 たとえば10万個の商品を販売し、実際にはゴミになっていて回収に乗っているのにかかわらず、3万個分ぐらいのマーク使用料しか払っていなかったということが、あちこちで出てきました。それでこの財政を立て直すために、ここを何とかしなければならないというので、DSD社に各生産事業者の事業所へ抜き打ちの立入り調査権を与えられました。それ以降DSD社のほうから工場のラインを見て、実際に1日何個ぐらい生産しているのか。月に直すと、あるいは年間に直すと何個ぐらい生産し、実際に販売しているのかという資料をちゃんと提示させてチェックするというシステムが取られて以降、ここの部分での財政破綻は回避されました。

 いま問題となっているのは、各家庭でちゃんと分別してマークのついたものだけを袋に入れることになっていますが、マークのついていないものもそのゴミの中に入れてしまうということです。これは透明の袋なので、回収のときにたくさん混入していると、すぐ見てわかります。そういうかたちでチェックをするという体制です。それともう一つは、マークをつけていな、マークの費用は払っていないにもかかわらず商品を販売している。小さい事業者に多いらしいのですが、量にすると結構な量になる。この部分をDSDのシステムに乗せるか何らかのかたちで立入り調査等をするというようなシステムを取らなければならない。そのための権限等をDSDに与えるための包装廃棄物の発生令の改正が予定されています。

 

−− ドイツのブントというのは40万から50万人いると言われました。ドイツではどうやってこ   んなに大きな団体ができたのかを知りたいのですが。

北山 それは私も知りたいと思っているところですが、調べていないのでよくわかりません。数字でいうと先ほど上げたように30万とか50万くらいの団体がいくつか存在する状況です。

 そういう団体はいろいろな催しをやっています。たとえば連邦レベルでブントという自然保護、環境保護団体がありますが、各支部を持っていて大学の中にも支部を置いています。それで非常に身近な問題から入っています。たとえば大学の裏の湿地に池があって、そこにカエルがすんでいる。カエルなんかがどうしたんだと思いますが、ドイツの場合はかなりの種類のカエルが絶滅の危機に瀕しているらしいんです。日本と比較すると降雨量が少ないせいもあるでしょうが、カエルの生息している場所をみんなで保護していこうというような身近な問題を取り上げる。それもブントの支部の大学の中の1団体ですが、底辺からそういう活動が活発です。

 
平松 いまの話のついでに宣伝しますが、会員でいらっしゃいますか。どうぞ30万、40万までわれわれは努力いたしますので。(笑) もし今日参加の方で非会員の方がいらっしゃいましたら、もちろんこの会はオープンですから、ここに来たから強制力が働くということではありませんが、もし賛同していただけるならば会員になっていただきたい。

 神奈川グリーンネットは個人の有志が中心になって始まったわけですが、今、約40団体、個人会員が 200ぐらいの規模です。30万、40万どころではないのです。私は1週間前にニュージーランドで調べてきましたが、ニュージーランドのいちばん大きい環境団体が6万ぐらいです。日本の人口密度で換算しますと 120万人の組織です。アメリカのシエラ・クラブは 300万、 400万ということがいわれていてご存じだと思いますが、日本の環境団体、環境運動はどうなのか。特に最近は一見環境ムードがありながら、そっちのほうはむしろ尻すぼんでしまっている中でわれわれは3年前にこういうものを、神奈川県の団体としてつくりましたが、1人でも2人でもご支援をいただければと思っています。