政策の方針転換を求める、神奈川アピール

内閣総理大臣 小渕恵三様
神奈川県知事 岡崎洋様
地元 自治体首長  様

 近代から現代にかけて、私たちは経済的な発展を第一に、物質的、文明的な豊かさを追 求してきました。ある時期までは、国、地方自治体の政策と、日々の暮らしを営 む一般市民の大多数の求めるものは一致していたという評価もできるでしょう。しかし ながら 、高度経済成長から、公害問題、オイルショックを経て低成長時代に入り、徐々 にでは ありますが、市民の間には過去を反省し、開発、発展一辺倒の経済活動を見なお そうと いう意識が広まってきました。残念ながら、行政の意思は市民の意思とかけ離れ たとこ ろにあり、今なお、国土を食いつぶす形での開発に傾倒しています。取りやす く、止めにくい補助金制度がそれに拍車をかけています。この結果が、今日の財政破綻で す。本 来であればこうなる前に手が打たれてしかるべきところを、問題を先送りにして きたた め、もはやぎりぎりの選択を迫られる局面になっています。今なら間に合うこの 時期に 、政策の方針を変換する勇断を求めて、以下の項目を提言します。

・ 開発重視から環境重視への政策転換
・ 速やかな産業構造転換。
・ 現在計画されている大規模公共事業の抜本的再評価。
・ 土木建築偏重の公共事業政策の見直し。
・ 国庫補助金制度を見直し、不必要な事業の中止を容易化。
・ 行政情報の完全な公開 ・ 政策立案への市民参加 なお、個別の事業に関する要望を添付しますので、誠実に御検討の上、文書で御 回答 くださいますようお願いします。

1998年12月23日 シンポジウム ストップ・ザ「むだな開発と環境破壊」参加者一同

 
 
財政再建の一環として、大規模事業の見直しと環境重視政策を求める要望書
神奈川県知事 岡崎洋様
横浜市長 高秀秀信様
神奈川県内広域水道企業団企業長 山口栄蔵様

 未曽有の財政危機に際して、政策転換の好機と捕らえ大規模公共事業の見直し と、自然 環境重視の政策判断を求めて、個別の事業に対して以下のことを求めます。誠実 に御検討の上、文書でご回答いただきますようお願いします。

1. 神奈川新総合計画21の重点プロジェクトに位置づけられた施策について は、実施時 期、実施規模等を十分勘案して「見積もること」ではなく、見直すことの件等に 直ちに 入ること。県財政を破綻させた原因は、不況だとか、アジアの経済危機などの外 部の原 因のせいにするのではなく、ゼネコン向けの公共投資に莫大な税金を流し込んで きたこ とが真の原因だということをきちんと認識して、上記の検討を行なうこと。

2.県の財政危機だからといって、福祉、暮らし、教育、県職員の人件費などを 削るの ではなく、第2東名、厚木秦野道路をはじめ、県内の、さがみ縦貫道、横浜環状 道路、 川崎縦貫道などの、不要不急で環境大破壊の大規模公共事業である、高速道路の 計画を 根本的に見直し、取りやめる方向で検討すること。

3.丹沢山麓のオオタカ生息地を広くエリアとして保全していくための方策を至急、打 ち出すこと。

4.丹沢のブナ枯れ、大山のモミ枯れに現東名や国道246号などの自動車の排気ガス がどの程度寄与しているのか、調査すること。

5.オオタカ保護、ブナやモミの保全のためにも、丹沢山麓を通過するような第 2東名 、厚木秦野道路などの高速道路計画は、根本的に再検討すること。

6.県として、クルマ依存社会を助長するような新たな高速道路計画を見直し、 オオタ カやブナやモミとの共存ができる、環境容量に見合った交通需要に抑制する方向 に道路 行政を転換すること。

7.箱根ポーラ美術館建設に関して 自然公園法で守られるべき地域、すなわち国立公園「箱根」の特別地域に、博物 館法の 公益性を優先する美術館の建設は進められようとしている。本当に美術館は自然公園法地域に優先する施設なのか疑問である。このような手法がまかり通ると、全国の 国立公 園の自然は「公共性」という名の下に食い荒らされてしまう。環境アセスメント 条例上 の手続きでは、事業着手可能かもしれませんが、国民の財産を守るという観点か ら、慎重な対応を求る。

8.相模大堰に関して 過剰な水需要予測に基づいてダムや取水設備の整備を進めてこられましたが、今日水は 十分に足りており、設備は2重投資のそしりを免れない状況になっています。水道会計 は 赤字が続いており、どのように投資した莫大な公金を回収する計画になっている のか、 御回答願いたい。

9.廃棄物政策の根本的な見直し 大量生産大量消費経済のつけとして、廃棄物処理問題がもはや抜き差しならない 状況に あるのは、明白である。避けては通れない問題であるだけに、責任を単に先送り するこ となく、循環型社会の実現に向けて抜本的な路線変更が求められている。神奈川 県の計 画している芦名産業廃棄物処分場計画に関しては、情報公開と、住民参加を前提 として 、根本的な見なおしを求める。

10.都市近郊緑地保全 現在都市近郊の緑地は、私有地はいうに及ばず公有地でも、保全に関しては無策である 。身近な自然の重要性が叫ばれる今日、安易な宅地開発や、道路化は断固として 回避す ることが地域住民の望みであることを認識すべきである。横浜市保土ヶ谷区にあ る通称 「カーリットの森」の開発計画に関しては、問題点を指摘する声に耳を傾け、緑地保全 の立場で望まれることを要望する。

11.神奈川県公共事業再評価委員会に関して 単に世論を納めるだけのアリバイ作りの委員会ではなく、すべての公共事業を真 摯に検 討して結論を出し、委員会の具申が施政に反映されるかどうか、以後の行政を監 視する ように求める。また事務局側も、「対象事業に聖域なし」の決意で望み、検討対 象を県 庁内の独断で決定するのではなく、一般の県民が意見を出せるような場を設ける ことを 求める。

1998年12月23日 シンポジウム ストップ・ザ「むだな開発と環境破壊」参加者一同

取り扱い団体 神奈川の自然と環境を守る連絡会(略称かながわグリーンネット)
代表世話人 平松 紘 221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2
        かながわ県民活動サポートセンター気付 メールボックス24番