雨とマイクロ波通信(5G/10G)の関係は??
byJF1TPR 
1.レインスキャッターについて
 

 「レインスキャッター」というのがあるらしい、なんでも「長野と横浜で59でできたらしい」と聞いたのは何年か前のこと。「こりゃあおもしろそうだ」と固定からの運用への願望がかきたてられた。で、やってみるとおもしろい。レインノイズは、ボツボツボツと、雨だれの音そのものみたいだし、ビームも雨雲とともに変化していく。長野の信号もビートの中に音声がかろうじて聞こえた。でも、5Gと10Gでは全然、つながり方が違うようだ。高崎との実験で、とてもおもしろい体験を何度もできた。

 そこで、「レインスキャッターって10Gの方がいいのかね」という事で、「天気予報の技術」という本を眺めていたら、「レーダー方程式」というものが紹介されていた。これはレイリー散乱というものらしいのだが、反射物が波長に対して十分に小さい場合におきるとのこと。雨粒と氷粒の比較も出ていた。それで5G/10G/24Gを計算して比較してみた。それにしても気象レーダーって偉大だなぁ。

よって、「10Gの方が5Gよりもレインスキャッターでの通信は頻繁にできる」というのは理論的にも正しいらしい。
 

2.5G/10Gでの降雨減衰量の比較


 しかし、台風の時には5Gで強いRSが出たのに、10Gはダメだったなぁ・・・という事で、降雨減衰についても比較計算をしてみました。で、わかった事は・・・ズバリ!!

降雨減衰量の比較では、10Gは5Gよりも極端に影響を受けやすい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


台風で大雨の日に、5GのRSの方がよいのは、10Gの降雨減衰が原因ではないかと思う。もしも一面に10mm/hの雨が降ると距離100Kmでは14dBも多く10Gは減衰してしまう。50mmだとなんと100dB以上も減衰する。台風で豪雨が数kmになれば、10Gの減衰は猛烈となり、RS以前に減衰して通信は困難となる計算が成立する。
 

ここから考えると、「5Gのレーダーなんていらない。5Gの全域を無線LANにまわせ」という様な主張は、いわば亡国の成金主義である。大雨の時、集中豪雨の時には10Gでは60dBもの減衰となることもあり、レーダーによる観測が5Gでなければできないという場合も多くなるのである。大陸であるアメリカさんは、日本みたいに複雑な気象ではないのだろうが、日本では天気予報の精度が「国民の生命と財産」にかかわるのではないだろうか。ここに「屋外での無線LAN」、そして特に「無指向性アンテナを使って高いレベルの信号を撒き散らすインターネットアクセスのような高レベル・広帯域・多数の電波が放出されたのでは、5.2Gの雨レーダーは都市部で壊滅的な障害をうけると思う。だが、都心部こそが50mm程度の雨でも洪水する河川が多く、緻密な雨の観測が必要なのだ。もしも、それで被害が出たら、「無線LAN」を推進している人たちは、損害賠償でもしてくれるのだろうか。