巻頭言 適切に失敗するということ

顧問 熊野谿 寛

 

 今年度、野外活動部はある種の転機を迎えた。「野外活動部」と言うと、一応、アウトドアなはずだ。ところが、今年の中心となった高校1年生諸君は、どうもインドア指向ではないかと思われるメンバーが多いのだ。

昨年までの二年間を仕切った現高校3年生は、多分、学校的にはかなり怪しげだが、「砂漠に放り出しても生きて戻れる」タイプが多く、少々の悪巧みも必要な遊びを考える知恵もあった。対するに、その影で言われて動いていたメンツや、言われることから逃げていたメンツが現在の高校一年に多いかな、と思う。こんな具合だから率直に言って、「自分達の力で合宿を運営する力は乏しい」と評価した。

ところが、夏合宿の場所は中3の提案が通って、新潟の粟島となった。ここは新潟から電車で村上市まで行き、駅から全ての荷物を担いで30分は歩いて港に行く。しかも、キャンプ場は無料なので当然ながら常駐管理人はおらず、荷物を送る技は使えない。島の人口は400人位なので店も一軒で、多人数の食材があるかどうかは怪しい…という具合。これはかなりリスキーだ…と考えて、勢い「参加申し込み書」にはいろいろなリスクを上げて、「それでも参加したい人だけが申し込んでね」と書くことにした。でも、実際にはこうして書くと、思慮ある人が参加を見合わせ、あまり考えない人が参加することになったかも知れないのだが。(T_T)

この結果か、この数年では最小となる26人で夏合宿を行う事になった。もっとも、人数的にはこれでも多すぎる。そして実際に合宿に行くと、案の定、予定した列車と船に間に合わない事に始まり、トラブルやアクシデントが次々とやってきた。まあ、命を落とさず、大きなケガさえなければ、多少のことは何でも良い。だが、この調子で40人も参加していたら、正直言って大破綻したと思う。

ただ、一つだけ守ったことがある。「それではムリだ」と指摘しても、「いえ、出来ます」と言うならば、生命に関わること以外は基本的に「そうかい。でも、ムリだと思うよ」と言いつつやってもらう事だ。失敗して、そこから考える事が実は一番大切なのだ。山でも何でも、痛い思いをして死なない程度の失敗を重ねながらしか、知恵を本当に得ていくことは出来ない。ただ、そのためには失敗を正面から振り返って、どうしたらよいのかを共に考えあうことが大切なのだが。そんなこんなで、なかなか今年の合宿は「最悪」だった、個人的には風邪で咳と38度の発熱での引率となり、帰ってから寝込んだこともあわせて「最悪」だったかも知れない。

さて、多くの失敗から彼らは何を学んだのかな。それとも無駄に?どちらかなぁ。

例え自分が今年で定年だろうが、野活として20数年の歴史があろうが、実際にはいつも賽の河原の石積みみたいなもの。常にゼロからの模索の繰り返しである。