巻頭言 野外活動と部活動

 

顧問 熊野谿 寛

 どうも、「野外活動部」という部活は珍しいらしい。他にどれくらいあるのかなと、ネットで検索してみたら、古くは大阪体育大学で、なんと45年の歴史があるらしい。また、龍谷大学・香川大学など、大学にはポツポツと見られる。中身はキャンプ中心という所が多い様だ。高校でも北海道・北摂三田高校に「生物野外活動部」と言う部があったが、高体連登山専門部に所属しているので、ちょっと中身は違うみたいだ。

 何度か部誌には書いたが、「野外活動部」の発足は、18年程前になる。この時期、学校で部活動について模索と再編があり、「部の顧問は、生徒が依頼する」という事で、新規の愛好会・クラブ発足がいったん解禁された。すると、初代部長となる釣り仙人が何人かと、生徒会指導を担当していた私の所に「釣り部を作りたい」と相談に来た。私は、「釣り部ねぇ??そりゃあ、顧問の引き受け手がいないだろう?だいたい学校内で活動できないのでは、部として存続できるかねぇ」と最初は返した。

でも、その後にふと考えた。「待てよ、もし俺が生徒を集めて山岳部とかワンゲルを再建しても、それはきっと俺が全部を教えて活動する部活になってしまうだろう。それで果たして本来のクラブとしての『自由な文化活動』になるのだろうか??」「彼らなら、自分達の世界を持っている。あんな濃い連中はそうはいない。だったら、彼らにつきあってみても良いのではないか」と。

数日後、彼らを呼んで話した。「釣りだけだったらつきあえないが、キャンプも、山も、何でも皆でできることを探っていく、得意な奴が皆に教えあっていく、そんな文化部ならつきあっても良いぜ」と。そして名前をと考えて、当時のアマチュア無線の転送系パケット通信ネットワークで、埼玉県・秩父の中学生がアウトドアのフィールドに「野外活動部」のことを書いていたのを思い出した。秩父の裾野の学校で、裏の小川で釣りをしたり、山に行ったり、夏はキャンプという部活だった。何をするのも自由に考えられる部活〜そりゃあ面白いかも知れない。そんな具合で野外活動部(愛好会)が誕生した。最初の夏合宿は上越・宝川水系のナルミズ沢で、イワナ釣りよりも水遊びに仙人たちは夢中になっていた。ちなみにこの時期には、ダンス部やハンド部など、今や「正統派中の正統」である部活も誕生している。

 それから20年近くになる。気がついたら自分は50代も半ばを過ぎていた。活動のパターンや中身はずいぶん定番が増えた。でも、「自由な文化活動のできる生徒諸君の集団」という目標は、どの程度果たすことが出来たのだろうか。お互いに話し合って総意をつくりだし、未知の地を調べて合宿を計画して、新しい事に取り組む…。そんなことを期待しつつ、残り何年かを送りたいと思っている。