巻頭言 八年目の野外活動部

顧問 熊野谿

 

考えてみたら、早いもので野外活動部も今年で八年を迎えた。創部を知る生徒はもはやいない。

八年前、愛好会・クラブ新設が久しぶりに解禁された。たいていの人は、私は「ワンゲルを復活するだろう」と思っていただろう。しかし、初代部長となった通称「釣り仙人」があまりに面白い奴だったので、「釣りをする部活を作りたい」という話に、私は顧問を引き受けることにした。ただし、その時の条件は、「釣りでも、山でも、キャンプでも、それぞれが自分で極めると共に、部としてはともかくマルチにいろいろな活動をして行くのならばよい」という事だった。部の名前は、なんでもやる文化部という事から、当時、埼玉県の中学にいくつかあった「野外活動部」とした。そう言えば、当時、FWD-NET(アマチュア無線の世界的ネットワーク)で「野外活動部」という名前を教えてくれた中学生も、もう大学を卒業する年になるが、どうしているかなぁ。

創部してすぐの頃、週末の江ノ島の釣りから始まって、夏は源流に近い渓流での釣りに合宿した。と言っても、宝川ナルミズ沢出合で、沢登りではアプローチ程度の場所なのだが、初期のなかなかたくましい部員たちでも、ひーひー言っていた。でも、さすがにつり仙人たちである。この頃は、毎年、岩魚を釣っては丁寧に焚き火で燻製のように焼き上げて食べることができた。

やがて、春の合宿を谷川岳の麓、湯檜曽川の河原で行うようになった。最初の年は、三月末なのに大雪が降り、土合駅の上りホームへは腰上までのラッセルを強いられる有様だった。すぐ近くに国道があり、スキー場もあるのだが、雪の上でテントを張ったり、雪洞を作ったり、滑ったりして、雪で遊ぶことの面白さを、回を重ねるごとに部員諸君は楽しめるようになってきたと思う。

また、冬には公魚の「穴釣り」に出かけるのも恒例となった。列車で行くしか足がないものだから、白樺湖や松原湖に夜行日帰りで出かけるのだが、最近は釣果が渋い。白樺湖はブラックバスでワカサギが全滅したとかと言うし、松原湖はあたりが小さくて難しい。さらに、部員諸君はすぐに雪と氷での遊びに興じてしまうので、釣果以前に断念する者が多いのだ。まあ、それでもてんぷら(持っていったネタ)を作って食べたりして、眠い寒い思いをして帰ってくるのも、また格別ではある。

今年、たくさんいた高三が卒業したら、なぜか中学一年生が大量に入部した。ただ、中一は、釣り好きの面々ばかりのようで、釣る以外の「歩く」ことや野外での生活技術はダメ。さらに、自然とつきあうマナーの面では、ゴミは散らかすは、流しに飯は平気で流そうとするは…で、全くダメダメ君である。なんと言っても、上級生の人数の倍もの中一が入部して、部長はじめ上級生の面食らう所は大きい。

そんな中、今年は「島に行こう」というテーマで活動している。新入部員を迎えて出かけた東京湾の無人島・猿島、そして夏合宿は東京都の絶海の孤島(?)八丈島である。今回は、八丈島半周のサイクリングをしてみれば、海岸線から標高400mまで自転車で登る道にあごを出し、テント場ではあらゆる物が灼熱の太陽でとろけてしまい…と、今までの合宿とはずいぶん違うものとなった。それでも、フェリーで10時間の船旅は、波静かで快適だったし、釣った魚で食材とできたのも久しぶりだった。これもまた結構、悪くはないものだ。ただ、次に行くときは大きなクーラーボックスか、携帯冷蔵庫がほしいなぁ。

さて、秋から冬にかけて、このにわか大所帯の部活で、どんな具合のことができるのだろうか。来年の心配なんぞすると、「鬼が笑う」という事になるのだが、とりあえず八年目の野活は、また新しい時代を迎えつつあるようだ。