巻頭言 第三世代の野外活動部

 

顧問 熊野谿

 

今年の春、部員の約半数をしめていた学年が高校三年となり、ずいぶんと部員の顔ぶれが寂しくなった。幸いと中一数名が入部して、野外活動部も新世代へと移行しつつある。創設部員とそれを知るのが第一世代、創設部員の後に一つの人数的なピークとなった第二世代、そしてその次の第三世代へと進みつつあるようだ。

さて、野外での活動にとって「人数」というのは実に大きな要素である。例えば7-8人で合宿に行くとすると、4-5人テント二つで間に合うし、ちょっと無理すれば一つのテントで食事をとることもできる。だが、十人を超えるとなかなか大変になる。7-8人用のジャンボなテントも部にはあるのだが、これがなかなかの重量級である。従って、ただでさえ軟弱な部員の顔ぶれから、あまり歩かない定着での合宿しか行えない事になる。また、幕営地についても、5人位だと恋之又の橋の横の国道端に張ることもできたが、まさかジャンボテントではそうもいかない。つまり人数が多ければ、いろいろな奴がいて活発に動けそうなのだが、反面、小回りが効かなくなるのだ。

今年の夏合宿は、人数が減ったことを活かして、久しぶりに少々歩く計画を立てた。と言っても、釣りをしたい諸君も多いので、八幡平から岩手の清流・葛根田川の上流にある滝野上温泉をめざすことにした。いわゆる裏岩手縦走路で、私は春にこのあたりを何度か山スキーで歩いたことはあるが、夏には行ったことがなかった。しかし、このあたりは無人の避難小屋が整備されているので、ずっと行動は楽チン…のはずだった。ところが、一日目は何も見えないどころか、ずっと降り続く強い雨だった。さらに遅い奴がいて、平坦なコースなのに一向に進まない。結局、三時間のコースに五時間もかけるはめになった。そんな中で大深山荘が見えたときはほっとした。なんと言っても、新築したばかりの避難小屋は快適だ。

翌日は縦走路を通って、三石山から滝之上温泉におりるはずであった。ここは岩魚の影が濃いので有名である。しかし、途中で一人が、「ころんだ時に耳に笹がはいって、その後、ジンジン痛い」と言いだした。しばし検討したが、滝之上温泉からはバスも無く、雫石の病院にいくことは大変すぎる。やむなくバスのある松川温泉に降りることにした。ここの釣り場は未知だったが、まあ、そんな事を言ってる場合でもない。ところが、温泉に降りて、一風呂してから病院に電話すると、すぐ下の東八幡平では「耳の中を見る医者がいない」という。土曜日だったこともあるのだが、仕方が無く盛岡の岩手医大救急センターまで行くことになった。バスがあると言っても、1日に数本である。テントを設営してからなんとか最終バスで盛岡に行き、「なんという事はない」という診断をいただいて、一安心したのであった。こんな時、小回りの効く人数というのは、やはり動きやすい。今回の場合も、だいたい外見からすると「どうってことはないな」と思えた。だが、高校生は精神的な心配事があると急に体力が落ちたり、つまらない事故を併発しやすくなる。我々くらいのオッサンの方が、精神がずぶとくなるだけ総合的な体力が勝ることもあるらしい。軟弱野活部員諸君ならば、言うまでもない。

そんなこんなで、今年も岩魚の顔をおがめない合宿となってしまったが、松川温泉のテント場で楽しい二日間を送ることができた。さて、来年はどこで何をすると良いだろうか。山も、川も、釣りも楽しめて、かつそこそこきつくて、人里離れて行きやすい場所…そんな場所があったら、夏合宿は毎年そこに定着したいと思っている。そのうち第五世代(人工知能世代?)の部員諸君になったら、探し出せるだろうか。

例年に無く(?)軟弱学園祭企画であるが、忌憚無くご指摘いただければ幸いである。